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貧困はなくせるのか?

<民主主義の危機>
 
英オックスフォード大の『Our World in Data』の調査で、世界の住人の7割が強権国家に住み、民主主義はいまや3割未満となりました。強権主義の台頭で、民主主義国家に住む人口はこの10年間で2割以上減りました。スウェーデンの民主主義・選挙支援国際研究所によると、2016年以降ジンバブエやベネズエラなど20カ国が権威主義に変わりました。
英誌エコノミストの世界の民主主義ランキングで2010年に19位だったアメリカは、2021年には25位まで後退しました。開発独裁型の経済成長に加え、ハイテク監視など自国統治の優位性を誇り、中国モデルを支持する新興国が相次ぎます。民主陣営と強権国家との間で独自色を出そうと動く、トルコやインドといった第三勢力も増えています。 
 
ドイツのキール世界経済研究所によると、世界のポピュリズム政権比率は20世紀末の7%から27%に増え約4倍になりました。世界価値観調査で『他者を信頼できるか』の問いに、北欧諸国は7割が『YES』と答えた一方、アメリカや日本では4割を切り、チリでは12%です。この『他者への信頼』は日経が作成したフェアネス指数を構成する項目の一つで、富が集中するほど他者への信頼が下がりフェアネス指数が低くなります。 
 
<コロナ対応と民主主義、専制国家> 
 
民主主義は専制主義など他の政治体制と比べて本当に社会に大きな利益をもたらすのか?古代ギリシャにおけるプラトンとアリストテレスの論争にまで遡る人類における長年のテーマです。経済学でも国際比較分析を中心に数多くの研究が行われ賛否両論が展開されてきました。コロナ対応も大きな違いが出ました。
コロナ発生当初は民主主義国家ほど感染が拡大し、多くの人命が失われ、経済的ダメージも大きく、GDPが大きく落ち込みました。専制主義国家では政府が人々の行動を厳格に管理し、感染拡大を未然に防ぐことに成功しました。
しかし、ワクチン接種が進み治療薬が普及するにつれて、多くの民主主義国家では状況が大きく好転し、GDPがコロナ前を大きく上回ります。一方、専制主義国家では依然として感染拡大のリスクから抜け出せず、それに伴う経済の停滞も深刻になりつつあるところが少なくないです。 
 
<アフリカの債務危機>
 
西アフリカのガーナは2022年12月、外貨建て債権や大部分の二国間債務について、支払いを停止すると発表しました。財務省は債務再編へ全ての債権者と協議する準備があると表明しました。中銀によると対外債務は2022年9月に284億ドルとGDPの4割を上回ります。コロナで債務が膨らみ格付が下落、資金調達が滞りました。外貨準備が減り、通貨は対ドルで急落。インフレ率は50%を超え、大統領の退陣を求める抗議デモも起きています。2022/12/12にIMFから30億ドルの資金支援を得ることで合意に達しましたが、前提として債務再編の十分な保証と進展が必要です。
東アフリカのジブチは、公的債務が2022年に3倍以上になり、政府が対外債務の一部の支払いを停止しました。東アフリカを襲った干ばつや、エチオピアの需要減速も逆風です。
アフリカでは2020年にザンビアが、2022年にマリがデフォルトに陥っています。
格付会社フィッチ・レーティングスは、南アフリカを除いたサハラ砂漠以南のアフリカ諸国について、対外債務支払の負担は2023年から2025年に増え続けると予想しています。アフリカの対外債務は2000年から2020年にかけて5倍以上の約7000億ドルに膨らみ、うち中国向けが12%を占めます。 
中国は一帯一路に沿った巨額融資政策を転換しています。米ボストン大によると、アフリカへの融資は2016年をピークに減少傾向です。英王立国際問題研究所は2022年12月、2023年に状況は悪化しアフリカ諸国の資金調達を制限する可能性が高いと指摘しました。 
 
<現代も奴隷制が続く>
 
国際労働機関は2022/9/12、世界全体で2021年に強制労働に従事されている人が2760万人、強制的に結婚させられた人が2200万人に上るとの推計を公表しました。約5000万人の人々が現代の奴隷制に苦しむ状態にあるとして、各国に法整備などの対応を早急に取るように求めました。
強制労働の被害者は2016年と比べ270万人増加し、子供が全体の12%に上り330万人です。地域別ではアジア太平洋が1510万人と最多ですが、人口1000人あたりの人数ではアラブ諸国が5.3人と最も多いです。国家が関与しているのは14%で、民間企業は63%、性産業関係は23%となっています。
強制的に結婚させられた人も2016年比で660万人増加と状況は悪化しています。地域別ではアジア太平洋が1420万人、人口1000人当たりではアラブ諸国が4.8人で最多でした。 

<CO2ネットゼロ>

世界の生態系保全の方策を話し合う国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は2022/12/19、2030年まで世界が取り組む23の項目『昆明・モントリオール生物多様性枠組み』を採択しました。採択した目標の柱は地球上の陸と海をそれぞれ30%以上保存する『30 by 30』です。日本は国立公園などとして陸の20.5%、海域の13.3%を保護しているため、今回の合意に基づき30%まで拡大する必要があります。生物の保全に官民で年間2000億ドルの資金を投じることで合意しました。
生態系の破壊は世界のGDPの半分に当たる44兆ドルの影響をもたらすとの試算です。 
なお、2020年までの『愛知目標』は取り組みが停滞し、化学肥料の使用減、外来種の抑制など20項目全てが未達で、生物種の絶滅が進むなど状況は悪化しました。

地球温暖化対策で先進国が脱炭素を急ぐ中、石油や天然ガスに恵まれるアフリカ諸国には、化石燃料の利用による経済発展は自らの権利だとの意識が強いです。2022年11月のCOP27では、気象災害で損失と被害を受けた途上国を支援する基金の創設を決めました。 

<貧困問題が全ての問題の根幹>

CO2の問題は中長期的な問題である一方、コロナ対応や債務危機は目の前の短期的な問題です。上記アフリカ諸国の対応で理解できますが、人間はまずは目の前の問題点を解決しない限り、中長期的な問題には取り組めないのです。
奴隷制度も元を辿ると、貧富の格差によるものです。親が多額の借金をしてしまい、子供を食べさせるお金がなく、借金のカタに自分自身や子供を人身売買してしまうことに端を発します。
専制主義と民主主義も、専制君主というごく一握りの富裕層が、国民の大部分の貧困層を支配するという構造です。国民がろくな教育も受けられない状況であれば、専制君主である『王』が長期に渡り君臨、支配することになり専制主義国家となります。
そう考えると全ての問題の根幹は、貧困が原因ということになります。SDGs No1の目標が『貧困をなくそう』と、まず貧困撲滅を謡っているのには理由があります。貧困をなくすことができれば、世界の多くの重大な問題をなくすことができるからです。SDGsの17目標のうちほとんどはクリアできると確信しております。

<貧困はなくせるのか?>

問題はどうやったら貧困撲滅ができるかです。有史以来、人類はずっと一握りの権力者=富裕層と多くの貧困層という構造を繰り返してきました。富裕層と貧困層はお金があるから発生します。ではお金をなくしてしまったらどうでしょう?
お金がない世界においては、力が強いものが支配者、力が弱いものが従属者でした。『Human beings is human being, they always fight』の名言が示すように、人類はお金がなくてもずっと争ってきました。

ただし、これは人間だけでなく、犬や猫、サル、ライオン等にも言えることです。動物は縄張り争いをします。お金がなくても、争っているのは人間だけでなく、動物も同じです。これは人間も動物も脳に競争本能があるため、本能的に争ってしまいます。
植物も光の当たる部分へ葉を大きく広げる植物もあれば、その下で日陰で光合成ができず弱ってしまう植物もいます。広く言えば植物も縄張り争いをしています。そういう意味では脳がなくても同じかもしれません。

競争するから差が発生し、差が格差を生み、格差が貧困を作り出す。こう考えると、競争本能がある生物は全て貧困が発生する気がします。貧困問題は解決不可能な問題なのでしょうか?歴史に学ぶことは多いのですが、人類が未だ成しえていないのが、この貧困問題の解決だと思っております。私が不勉強であり、まだまだ精進が足りないので皆様の中で、何かいい書籍、文献等ご存知でしたらぜひ教えて頂ければ幸いです。2030年までのSDGs No1の目標達成に、何かしらの光が見えることを切に望んでおります。


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