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『お上は正しくないこともある』を許容しよう

<貧富の格差は拡大>
 
ボストンコンサルティングが2022/5/25に発表した世界の資産運用市場に関する調査によると、運用会社が預かる資産の総額は2021年末に前年比12%増の112兆ドルと過去最高を記録しました。また、2022/6/9に発表した世界の個人資産に関する調査によると、金融資産と実物資産を合わせた資産の総額は2021年末に530兆ドル(約6京円)となりました。アメリカを中心とする株価の上昇が資産価値を押し上げ、資産総額は過去最高となりました。
うち、世界の上位10%の高所得者が保有する資産は全体の76%を占め、下位10%の低所得者層は2%に過ぎません。概算で約4.5京円は上位10%が保有していることになります。 
 
国連は2022/6/8、『ウクライナ戦争の影響。数十億人が一世代における最大の生活費危機に直面』と題した報告書を発表しました。ロシアによるウクライナ侵攻で途上国など世界94カ国の16億人が、食料・エネルギー・金融の3分野いずれかで深刻な危機にさらされており、うち12億人は3分野すべての影響を受けます。ロシアとウクライナの小麦輸出は世界の3割、ヒマワリ油で6割を占めます。トウモロコシと小麦の価格上昇だけで、家計の実質所得は世界平均で1.5%減りました。 
 
厚労省が2022/5/11に公表した2022年2月時点の生活保護の受給世帯数は164万世帯、前年同月比で約4500世帯増、受給者数は200万人を超え過去最多の水準が続いています。内訳は65歳以上の高齢者世帯が90万世帯で全体の55%、現役世代を含むその他世帯は125万世帯、全体の15%です。世帯内で働いてる人が一人もいない非課税世帯は137万世帯となります。 
 
<債務は増加>
 
国際金融協会が2022/2/23に発表した「グローバル債務モニター」によると、2021年度の世界の債務残高は前年度比10兆ドル増の303兆ドルと過去最高になりました。世界のGDPに占める債務の割合は351パーセントです。
世界の債務をセクター別に見ると企業債務が約89兆ドル、政府債務が88兆ドル、金融は70兆ドル、家計が57兆ドルです。
地域別では、新興国市場の債務は95兆ドル、GDPに占める割合は248パーセントです。主に中国の債務が60兆ドルとなったのが主な要因です。中国の債務がGDPに占める割合は330%です。
 
米ダラス連銀によると、主要25カ国の住宅価格はコロナ後に急上昇し、2021年7〜9月は前年同期比13%高まで上がりました。22カ国では住宅価格の上昇率が可処分所得の上昇率よりも大きく、結果として住宅ローン残高が膨らみ、世界の家計債務は2021年9月で55.4兆ドルとコロナ前より約6兆ドル増えました。
日銀の資金循環統計によると、家計債務は2021年9月で346兆円と2年前より4%増え、特に住宅ローンが216兆円と5%増えました。コロナ禍で住環境を見直そうとする需要は大きいです。一方、ダラス連銀によると日本の住宅価格上昇率は、コロナ禍を経ても1%程度で欧米を大幅に下回ります。 
 
<試行錯誤が必要>
 
コロナにより世界の貧富の格差は急激に拡大しました。また債務は増加し借金を負うものも増えました。上位10%の人々が3/4の世界資産を保有している状況です。資産運用は利回りは一緒でも元手が大きければ、当然ながらリターンの額は大きくなります。100万円しか持っていない人と100億円持っている人では同じ利回り4%でもリターン額は4万円と4億円と、1年間でほぼ利回りの分だけ差が開いていくことになります。すなわち今の市場経済では貧富の格差が開くのはむしろ当たり前のことなのです。
 
漫画『UQ HOLDER』では、世界中の人が皆等しく貧富になった世界を描いており、日本も含め世界中でスラム街が溢れかえっております。私も含め日本人には多分耐えられない世界でしょう。SDGs No1で上げられている『貧困をなくそう』はとてつもなく難しい課題なのです。
 
円安が134円まで進み、5月の資金流出額は過去最大の11兆円となっております。そして日本でも貧困層が増えており、一億総貧困時代と揶揄する人もいます。ミッションとして『日本を幸せにする』と掲げている当社としてこの状況は望んでいません。かといって今まで信じてきた市場経済に任せていては、格差社会は拡大することも分かっています。市場経済に頼らない新たな考え方が必要なのかもしれません。
新規事業において正解は分かりません。ただ考えていても結果は出ません。『考えてやる』をひたすら繰り返すことによって徐々に進んでいきます。貧困をなくすことについても今までの延長線上ではなく、新規事業と捉えベーシックインカム等も含め、新たな取り組みを試行錯誤することが今日本に求められているのではないでしょうか。
 
<『お上は正しくないこともある』を許容しよう>
 
私が首相だったら、日本で最も貧困率の高い県を一つ指定して、当該県にベーシックインカムを適用してみます。その上でベーシックインカムがどうやったら機能するか、またより良い制度になるというのを5年かけて試行錯誤してみます。うまくいくかは分かりません。ただ『政府がやることは正しい、間違ってはいけない』という考え方を国民も霞ヶ関もそろそろ脱却する必要があります。答えがわからない世界で、100%正しいことをやるのは不可能です。間違えるのが当たり前です。『お上は正しい』という神話をそろそろ捨てることが必要かと思います。 
 
自民党は2022/6/9、臨時総務会で夏の参院選公約を了承しました。公約のキャッチコピーは『決断と実行』。キーワードに『日本を守る。未来を創る』を掲げました。 ぜひ、日本の未来を創るために有言実行してもらいたいものです。


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