気候変動開示をきっかけに、Japan as No1を復活させよう
IFRS財団は3/31、傘下のISSBを通じて企業の気候変動リスクに関する情報開示の基準案を公表しました。7月末まで広く意見を募り、年内に正式な基準をまとめます。証券監督者国際機構などとも連携しながら普及を進めていきます 業種ごとに重要な気候リスクや対策の開示内容を細かく示し、投資家が比較しやすくします。主要国の金融当局による国際的な枠組み「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿っています。取引網まで含めた温暖化ガス排出量の開示を求めるなど、数値情報を重視します。
基準案は重要な数値情報を業種別に定めます。例えば日用品には総取水量や総消費水量、パーム油の調達量などを指標としてあげます。自動車ではハイブリッド車、プラグインハイブリッド車の販売台数などがあります。鉄鋼では総燃料消費量や石炭の割合、天然ガスの割合などが対象となります。医療機器では、引取額、再利用額、リサイクル量、寄付された製品の総量等が対象となります。
排出量は自社だけでなく取引網全体を開示対象とします。自社分(スコープ1)や購入した電力やエネルギー分(スコープ2)に加え、取引先の分(スコープ3)の開示も求めます。ISSB議長のエマニュエル氏は、排出量実質ゼロにするネットゼロの実現にはスコープ3が必須で今後の開示の主流になると話します。
開示項目が増えれば、企業への負担も大きくなります。取引先の中には中小企業も多く含まれるため、対応は現実的に難しい面があります。ISSBは中小企業等は開示手法を簡素化することを視野に入れます。地域や業種ごとの排出係数を参照できれば、排出量が計算できるといった仕組みを想定します。実用的で現実的な開示につなげたいと考えています。
日本での開示基準の開発を担う組織は7月に設立予定です。日本企業も東証のプライム市場上場企業には当該基準適用が想定されます。導入時期は2023年から2024年頃との見通しです。
ビジネスと会計は密接に絡んでいます。事象がビジネスで発生し、それを表現するのが会計です。開示も会計の中に含まれ、会計士監査の対象です。
ビジネス界でSDGs、ESGが2016年から叫ばれ、かなり浸透してきました。気候変動はSDGsの目標13です。ビジネス界でそろそろ成果が出始めたのに伴い、開示が必要になってきました。
今回スコープ3まで対象となったため、大企業だけではなく中小企業も真剣に取り組む必要があります。なぜなら取引先が東証プライムの場合、取引先から開示を求められることになるからです。日本の中小企業3万社がトヨタ系列と言われておりますが、トヨタ1社だけでもこの3万社が開示の準備をする必要があります。東証プライム上場企業は約1900社ありますので、この1900社とビジネスの川上、川下で取引のある会社は全て対応する必要があります。たぶんほとんどの会社が何かしらの対応を求められる事になるかと思います。
私はこの動きは素晴らしいと思います。人は「nice to have」では動きません。「must have」になって初めて重い腰を上げます。日本ではSDGsが2021年に広がりましたが、イマイチ「must have」感が企業に感じられず、「nice to have」で終わっていた感じがあります。今後「must have」になることにより、日本企業がSDGs、ESG経営に本腰を入れるものと思われます。
私はコミュニティであるC-ALLのビジョンで「Japan as No1を復活させる」を謡っておりますが、2030年までの目標は「SDGsでJapan がNo1になる」を考えております。ぜひこれを機会に日本全体が本腰を入れてサスティナビリティ経営に取り組むことで、日本のプレゼンスが上がることを期待しております。