オシツオサレツ表象とアフォーダンス、およびそれらを利用した行動の可否
【キーワード】
・オシツオサレツ表象
・アフォーダンス
・Bアフォーダンス
前回のnote
で述べた第三段階目の認知デザインを、哲学者ミリカンは【オシツオサレツ表象】と表現している。(「表象って何?」とおもうかもしれませんが、ここでは気にしなくて大丈夫です。ですが、やはり気になるので、またnoteに書きます。)
オシツ面とオサレツ面とに分けて考え、第三段階ではそれら2つの面が分かれていないことから、【オシツオサレツ表象】と名づけられている。
オシツ面は記述的、つまり事実を記す。オサレツ面は指令的、つまり記述された情報にそった行為をうながす。また、以下、オシツオサレツ表象をもつ動物を「オシツオサレツ動物」と名付ける。
オシツオサレツ動物の例として、ミツバチについて述べる。
ミツバチのダンスは有名である。このダンスは、エサのありかを示す(記述的)と同時に仲間に「エサのありかに行け!」と命令(指令的)である。
さて、このようなオシツオサレツ表象の動物には、何ができて何ができないのであろうか?
このオシツオサレツ動物は、何でもできるように見えるのだ。
理由を順に説明する。
そのために【アフォーダンス】という概念を紹介する。
【アフォーダンス】とは、「状態Aにあるとき、状態Bに移行することを行為者にしむける」といったところだ。
たとえば、ボタンを見たとき、そのボタンを「押す」という命令が暗に指示されている。このとき、「ボタンの知覚とは、そのボタンを「押す」というアフォーダンスの知覚」と言う。
また、こうも言い換えることができる。「ボタンは「押す」をアフォードする」。
また、Blissful(至福の、この上なく幸せな)の頭文字Bをとって、【Bアフォーダンス】とよばれるものがある。
これは、ただ一回の行動によって目的が達成するアフォーダンス、というもの。
さて、オシツオサレツ動物が状態1にあるとする。状態1が状態2をアフォードし、状態2が状態3をアフォードし、…とつなげていくと、最終的にはBアフォーダンスの知覚によって目的の状態に達成しうる。
図に示す。(じ、字がきたない!)
今述べた行動のつながりを【行動解発因の連鎖】と言う。途中のアフォーダンスが解発因である。
こう見ると、第三段階の認知デザインを持つ事物-オシツオサレツ動物-はなんでもできそうに思える。しかし、そうではない。
できないことの特徴について、2つある。
①すでに分かっていることしかできない。
②「今」やっていることによる結果と「過去」にやったことによる結果を照合できない
順に説明していく。
まず、「①すでに分かっていることしかできない。」について。
先ほどの図を見ていただければわかるが、オシツオサレツ動物の状態は各々のアフォーダンスによって結ばれている。
つまり、偶然性がないかぎり、新たな行動(異なった方法)によって目的を達成しようとすることがない。
ボタンインコの例を見てみる。
巣の材料となる木材の切れ端を、くちばしで挟めばラクに運べるのに毎回尾羽に挟んでもっていこうとする。これは、祖先はもっと小さな切れ端を運んでいたから尾羽で運んでいた、その名残であろう。
しかし、木材を見たら尾羽に挟むようにアフォードされているボタンインコは、その行動を逸脱することができない。
つぎに「②「今」やっていることによる結果と「過去」にやったことによる結果を照合できない」について。
これは、オシツオサレツ動物の記述面と指令面が独立してしまっていることによる。
たとえば、ある種のハチ(ここではジカバチ)が巣穴近くに獲物を運ぶ。すると、「巣穴をチェックせよ!」というアフォーダンスの知覚により巣穴を点検する。
ここで実験者がわざと巣穴から獲物を遠くの距離に引き離して置いておく。そうすると、再びハチは巣穴に獲物を運ぶ。
ここで、人間ならば「もう巣の点検はすんだし、さっさと獲物を運び込もう」となるだろう。
しかし、ジカバチは獲物を運ぶと巣の穴を点検するというアフォーダンスを知覚するので、またしても巣穴に異常がないか確認しにいく。
このように、オシツオサレツ動物は「今」知覚していないことを表象できない(思い浮かべることができない)。