ピンハネか?東芝エネルギーシステムズから回答が来た
ピンハネをしているのではないかと公開質問を行ったところ、東芝エネルギーシステムズ(以後、東芝)から回答が来た。
経緯などを説明してから回答を載せるので、お急ぎなら目次から「東芝の回答」をクリックで進んでください。
多重下請け構造のなかで、事故処理作業が行われ、人が被ばくをする。その構造を改善しようという姿勢は、規制者にも、事業者にも見えないままだという話。
<東芝に公開質問するまでの経緯>
・メルトダウンした福島第一原発の原子炉建屋地下で発生する汚染水。
・その汚染水から複数の放射性物質を取り除く多核種除去施設(ALPS)。
・3種類あるALPSのうち「増設ALPS」では、その配管に詰まる炭酸塩を硝酸で溶かす洗浄作業が年1回ほど行われている。
・昨年(2023年10月25日)の洗浄作業では、43億7600万Bq/Lという高濃度な洗浄廃液が仮設ホースに運ばれ、仮設タンクに入れられていった。
・この洗浄作業を東京電力から請け負っていたのは東芝だ。
・東芝の工事担当者が予定になかった弁操作を行って仮設ホースが外れ、下請け、それも3次請の作業員(AさんBさん)が洗浄廃液を被って、被ばくした。
<当初の嘘>
・当初、被ばくをしたのは1次請の作業員で、原因は炭酸塩と硝酸の反応で発生したガスでホースが暴れたからだと説明していた。それは嘘だった。
・仮設ホースはヒモで結えただけ。仮設タンクは蓋を閉じてもいない。お粗末な仮設施設、危険な労働環境で、廃液を被った作業員はカッパすら着ていなかった。
・AさんBさんの親方は不在。別会社のCさんがカッパを着せなかったと東電が東芝の説明を聞いて説明。それは偽装請負ではないかと指摘され、その後、Aさんが着なかったと主語が代わって説明が変化した。
・情報が二転三転し、嘘が事実に上書きされていく上で、奇妙な説明もあった。
・問題を起こした東芝の工事担当者は、東芝所属でありながら、一次請にも席があるという説明があったのだ。
<公開質問>(再掲)
・その後、偽装請負って何?と取材し、1月7日の講演のために頭の整理をしている中で、「下請に卸すだけで儲けちゃう業者」(飯田勝泰さん)の説明と上記がつながった。1次請は単にピンハネをしているためだけの存在ではないか?
そして、公開質問することにしたのだ(既報)。質問を再掲する。
<東芝の回答>
(1)(2)(3)の質問を中心に対面で「取材をさせて」という依頼をしたのだが、「書面にて回答」されてしまった。
(1) は明快。両者の「工事担当者」は同一人物だと確認できた。
(3) ピンハネは「はい」とは回答できないだろう。「委託した業務に対して対価」を支払っているという回答だ。中抜きをしたとも言えないだろう。
問題は(2)だ。はっきりわかるのは、1次請は東芝のグループ会社であること。東芝は1次請に工事管理業務を委託したことまで。「なお、当社が委託する工事管理業務と一次請けとしての工事管理の業務内容は異なり、当社が委託する工事管理業務は当社の内規に基づく元請けとしての工事管理の業務内容になっています」の意味はさっぱりわからない。そこで再質問を送った。
<原子力規制委員会 業務管理は未報告>
回答を受け取った翌日1月17日に、原子力規制委員会があり、定例記者会見でこの件の進捗状況を聞いた。
実施計画違反(既報)の起因である多重下請け構造について、原子力規制委員会はどこまで心を砕いて検証をするのか、その姿勢は見えてこない。
<発注者である東京電力は委託停止>
東京電力は、昨年10月の事件後、ALPS配管の洗浄作業を東芝に委託することを停止していることが、会見で複数の記者質問により、明らかになっている。
多重下請け構造のなかで、事故処理作業が行われ、人が被ばくをする。その構造を改善しようという姿勢は、規制者にも、事業者にも見えないまま、3ヶ月が過ぎている。
【タイトル画像】
2023年11月16日 東芝エネルギーシステムズ「福島第一原子力発電所における身体汚染発生に関する 調査結果・原因と再発防止対策について」P2
赤枠、赤字、赤矢印は筆者加筆