バー・レイザー#9〜アマゾンジャパンの中途採用 「即断」「行動」できる人を見極めるには? by もと中の人
簡単なものから複雑なものまで、仕事を進めていく上で常に「判断」が求められます。前回の連載で「自律性=自分で考えて自分で行動する」について考えてみましたが、自らが「判断を下す」には自律性が伴わなければなりません。上司に指示されたことをそのまま実行する、というのは「判断」とは言いません。
「判断力」を構成する要素を因数分解すると、以下の二つによって構成されていると考えます。
スピードを重視し、情報が少ない状況でも判断を下し、実行する
正解がないような状況下でより正しい判断を下し、実行する
今回は、1のスピードを重視した判断について掘り下げてみます。
アマゾンでは、本当にスピードが重視されていました。特に、顧客体験に対することについては、すぐに対応できることは即断即決が求められました。大企業であってもまさにスタートアップのようなスピード感を求められることが多々ありました。「自分ですぐに判断し、すぐに行動できる」このような人材はもちろんAmazonだけでなく、多くの企業で必要とされているのではないでしょうか。
それでは、
即断・即行動できる人を中途採用面接の中で見極めるにはどのような質問が有効でしょうか?
この問題に対するアマゾンのリーダーシッププリンシプルはBias for Actionが有効です。アマゾンのサイトからBias for Actionの定義を改めてみてみることにしましょう。
Bias for Action
ビジネスではスピードが重要です。多くの意思決定や行動はやり直すことができるため、過剰な調査や検討に時間をかける必要はありません。計算されたリスクを取ることに価値があります。
アマゾンでは、検討に時間をかけて結局何もしない、ということより、むしろ「間違ってもやってみる」ことの方を評価、尊重する文化があります。「何もしないで何も得られない」ことよりも「何かやって失敗し、そこから何かを学ぶ」ことを期待されます。このような人材を見極めるには以下の質問を用います。
質問:データなどが乏しい中、緊急で判断をしなければならなかった時のことをお話ししてください。
この質問をした時に、企業の中で情報システム管理部に所属し、システムメンテナンスを担当してきた候補者の方が、急なシステムトラブルに見舞われた時のことをお話ししてくださいました。
Situation: 社内基幹システムの更新中に予期せぬ場所でトラブルが発生していたが、その影響範囲が見えず、社内の各所から問い合わせが入りつつあった。
Task: その業務を担当していたのは別のチームだったが、自分のところにも問い合わせが入り、原因を探っていた。
Action: 自分の中で、想定される原因について仮説を立ててその問題解決方法について、担当していたチームに投げかけてみた。また、緊急度が高い案件だと考え、自分で何か手伝いができないか申し出た。
Result: 問題は早期に解決でき、大きな影響が及ばずに済んだ。
そこから、さらに質問を掘り下げ、「どのように仮説を立てたのか?」「その仮説を担当チームに投げかけた時の反応は?」「もしその仮説が正しくない場合はどのようなリスクを想定したか?」「その時に上司や周りと相談したか?それとも自分で考えたのか?」などをお聞きしました。その候補者の方のアプローチの仕方は、何が重要か何がリスクか、について自分なりに優先度・緊急度を考慮して、考えうる仮説を複数考慮した上で投げかける、というもので、大変良いストーリーであると評価できましたし、おそらくはAmazonにおいて似たような状況が再び発生してもその候補者が同じような行動をとる再現性が高く、同様の対応ができるだろう、ということを十分に感じさせるものでした。
One Way Door DecisionとTwo Way Door Decision
アマゾンでは決断、判断を大きく二つに分けています。「One Way Door Decision = 一方通行のドア、一度通ったら後戻りできない決断」と「Two Way Door Decision = 双方向のドア、一度ドアを通っても戻ってやり直しできる決断」の二つです。会議などで議論するとき、決めようとしていることはOne wayなのか、Two wayなのか、と問われることがしばしばでした。Two way、つまり失敗してもやり直しできることなら、まずやってみて軌道修正すれば良いのでは?という議論となります。
有名なOne Way Door Decisionとして有名なのはAmazon Primeの導入に関する決断です。年会費をいただいて様々なサービスを付帯させるという今ではアマゾンのリテールビジネスのみならずコンテンツやクラウドビジネスとも連関する基幹事業の一つです。このビジネスモデルは当初は年会費を払うことで配送料を無料にするというもので、会員制、サブスクリプションモデルであるが故に、失敗したらサービス終了します、では許されないアマゾンのブランドを左右する重大な決断でした。こうしたサービスの導入にはじっくり時間をかけて、多方面から検討した上で最終決定する、というのがアマゾンの考え方です。
Jeff BezosがこのOne Way, Two Way Door Decisionについて語る動画をご紹介します。
Two way doorならスピーディーにやってしまおうぜ!という文化がアマゾンの良さだったと今でも思います。そうした文化にフィットするにはBias for Actionの気質を持った人でないとついてこれない、とも感じます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?