考察への下準備1 ザコアドベントカレンダー15
はじめに
前回から引き続き、Pekora-Almond Effectについて考察していきたい。今回から、いよいよ本格的な分析に突入する。まずは、Pekora-Almond Effectを分析する上で必要になってくる知識を紹介しよう。
言葉の最小単位
筆者は中学の国語の授業で、「文の成分」という回があったのを記憶している。文は色々な要素の組み合わせでできており、それらは最小単位まで分解できる、という内容だった。分析の内容からかけ離れているようだが、重要な考え方なのでお付き合いいただきたい。
言葉は、まず一番大きなくくりとして「文章」がある。例えるならばこの記事全体のことだ。それからさらに「段落」と分けられる。この記事なら「はじめに」などから始まる文のまとまりのことだ。次に、「文」に分けられる。これは文章や段落の始まりや、「。」の直後から「。」までの言葉 の連なりだ。その次は「句」だ。例えば、「ホロライブ3期生の兎田ぺこらはとてもかわいい」という文があったら、「ホロライブ3期生の兎田ぺこら」が名詞句で、「とてもかわいい」が動詞句となる。文法の話を避けた厳密性を欠く表現だが、ここでいう文章の意味の中で主体となっている部分と、その主体が文章の中でどうなっているのかを意味する部分の二つのまとまりのように、文をおおまかな役割で区切れる単語のまとまりを句という。そして次が文節だ。「ホロライブ3期生の」「兎田ぺこらは」「とても」「かわいい」というように区切った単位を文節という。[「ホロライブ3期生の」→「兎田ぺこらは」]、[「とても」→「かわいい」]というように、句の中での関係を考えるのに役立つ。そして、最後は単語で区切れる。「ホロライブ3期生」「兎田ぺこら」「は」「とても」「かわいい」というようになる。
ここまでがざっと義務教育の範囲内である。だが、言葉はもっと分解できる。単語の次は形態素である。「ホロライブ3期生」は「ホロライブ-3-期-生」という風に分けられる。単語の中にさらに区切れ目があるのである。この単語をさらに区切った小さい単位のことを形態素と呼ぶ。それぞれが単位として成り立つので、例えば「にじさんじ3期生」「ホロライブ2期生」「ホロライブ3回生」「ホロライブ3期団」としても日本語として意味が通る。だが、形態素である「ホロライブ」をむりやり区切って何かと入れ替えて、たとえば「ヒポライへ3期生」とすると、もし「ヒポライへ」という概念があれば形態素を入れ替えたことになるが、そんなものがなければ、意味不明となる。
実は、言葉はさらに分解できる。それは、音節だ。そして、ここからの単位が重要となる。音節とは、母音を核にした音の区切れ目のことである。「兎田ぺこら(usadapekora)」は「u sa da pe ko ra」というように区切ることができる。だが注意すべきは「ん」の撥音と「っ」の促音、そして「あい」や「おえ」などの(徐々に弱くなる)母音の連続である。例えば「3期生」は「san ki sei」というように区切る。文字上では「さんきせい」と5文字だが、音節で区切った場合は3音節であることに注意していただきたい。この場合、文字数と発音上の単位は必ずしも一致しないのである。
これとは別の単位として、モーラというものもある。音節が母音を核にしたものであるのに対し、こちらは音の長さ(拍)を基準にする。基本的に母音と子音のセットで区切るが、モーラの場合「ん」や「っ」、「あい」「おえ」などの扱いが変わってくる。「3期生」は「sa n ki se i」というように、基本的にひらがな書きと同じように区切る。
そして、最後に音素というものがある。これは音節の構成要素である。たとえば「ぺこら」の「ぺ(pe)」は「p e」に分けられる。子音と母音といえばわかりやすいだろうか。とりあえず、本稿ではここまでを最小単位とする。ここからの分析では、ぺこーらの発言を音声的に分析する際は、この音節ならびに音素まで分解して考察していく。なお、ここまでの説明を暗記してから先を読むというよりは、ここで大体のイメージをつかんでもらって、それから読み進めながら覚えてもらえたらと思う。
音声の表記法
さきほど、音節・モーラや音素の説明の際に、日本語の文字をローマ字で記述した(前回の先行研究の回でもローマ字表記とこれから話す音声表記を合体させたものをなんの断りもなく使用した)。だが、実際日本語の音声を考える上では、ローマ字表記は使わない。なぜなら、実際の音声とは異なる場合があるからである。詳しく説明するとややこしくなるので避けるが、音声の特徴をローマ字よりもさらに厳密に記述する方法があるのだ。それがIPA、国際音声記号である。分析にブレがあってはいけないので、レギュレーションとしてこの国際音声記号に則って考察を進めていこうと思う。正直、ローマ字でも事足りると思うが、なるべく厳密にしておいた方が、あとあと何かに気がつけるかもしれない。なにぶん、筆者自身もおおよその見当はついているのだが、この分析の結果がどう進むかはこのシリーズが終わるまでわからないのだ。用心しておくに越したことはない。
長ったらしく全部の記号の説明をしてもしょうがないので、「どうも」と「アーモンド」を国際音声記号をもとに表記してみる。
どうも→「doːmo」
アーモンド→「aːmondo」
この表記については「EasyPronunciation.com(https://easypronunciation.com/ja/japanese-kanji-to-romaji-converter)」
を利用した。これで、一応一般的な「どうも」と「アーモンド」の音声表記を得ることができた。
ここで、音声表記にて記述された音素の特徴を一つ一つ紹介していこう
[d]…舌先と上の歯茎で押さえた気流を一気に開放する。声帯が震える。鼻に抜けない。
[m]…上唇と下唇で押さえた気流を一気に開放する。声帯が震える。鼻に抜ける。
[n]…舌先と上の歯茎で押さえた状態で、鼻から呼気が抜ける。声帯が震える。
[a]…舌をあまり動かさず、やや大きめに口をひらく。声帯が震える。
[o]…唇を丸め、舌を後ろへ動かし、やや狭めに口を開く。声帯が震える。
[ː]…記号の前の音声を長く発音する。
だが、これはあくまでどんな口の動きで発音するかを示したに過ぎない。すなわち、音の高さであるアクセントは含まれていないのである。
次回、アクセントについて紹介して、「どうも」と「アーモンド」の表記の完全版を作る。今回はここまで。
おわりに
今回は音声の特徴を考えるときに重要な音素・音節・モーラという考えと音声表記について紹介した。本題に入る前の準備が長すぎるが、実はまだまだ続く。だが、次の次あたりには第一回の考察に入ることができるだろうと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?