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【UFC 296】戦い納め。勝てよガーブ、ファーガソン。【メインイベント以外の注目試合】UnderCard PICK UP『Edwards vs. Covington』※試合後追記しました。


大会色合い

2023年を締めくる最後の大会となった今回のナンバーシリーズ。
メインイベントには長期に渡って王者に君臨していたウスマンを2度退けたエドワースと、トラッシュトークによるヒールキャラとレスリング力でランキング3位に位置付けるコヴィントンのウェルター級チャンピオンシップと、
ブランドン・モレノと激闘を繰り広げベルトを掴んだパントージャによる防衛戦が行われます。挑戦者はブランドン・ロイヴァル。この両者は2年4ヶ月ぶりの再戦で、前回はパントージャのRNCで試合が決着しています。

メインイベントの挑戦者コヴィントンはランキング3位といっても、2022年3月UFC272のマスヴィダル戦以来試合をしておらず、キャリアをどう終えるかというフェーズに入った感は否めません。
とはいえ、コヴィントンはUFC286でのエドワースvsウスマンの再戦においてバックアップファイターを務めており、体重もしっかり作ったことで社長のデイナからはチャンスを与えられることが約束されたような流れがあり、今回のタイトル戦が組まれたものだと認識しています。

注目試合

これが前座カード?と言わんばかりのラインナップなので、なんとか絞ってピックアップしたいと思います。
メインイベント、コメインイベント以外での注目カード。

(ヘビー級:アーリープレリム①)マーティン・ブダイ vs シャミール・ガジエフ

先日行われたヘビー級暫定王座戦ではトム・アスピナルのヘビー級らしからぬ速射大砲が炸裂していましたが、ヘビー級らしいムチムチゴロゴロ系のマッチアップ。

スロバキアから、2021年コンテンダーシリーズを経て契約。現在UFC4連勝中のマーティン・ブダイ。
32歳 13-1(UFC 4-0) 7KO/2SUB

前戦は今年8月でのジョシュ・パリジアン戦。堅いブロッキングとジャブで無駄撃ちすることもなく冷静にラッシュ、四つに組んだら膝と相手の嫌な事をし続けてキムラでフィニッシュしています。

対するは今年のコンテンダーシリーズで契約を決めたばかりのシャミール・ガジエフ。
33歳 11-0 (UFCデビュー)7KO/3SUB
開始早々カウンターのストレートでダウンを奪った後はバックテイクされてしまいますが相手のコントロールも虚しくすぐにマウントを奪って背を向けた相手をRNCで絞め上げています。

なんか重い打撃とゴロゴロしたグラップリングでフィニッシュに落ち着く見やすい試合になりそうでピックアップ笑

(フライ級:アーリープレリム③)タギル・ウランベコフ[#12] vs コーディ・ダーデン[#15]

ダゲスタンvsアメリカンのフライ級マッチ。
平良達郎も避けては通れないかもしれない両者。

ハビブ率いるイーグルスMMA所属、フライ級12位ウランベコフ。
32歳 14-1(UFC 3-1) 1KO/7SUB
前戦は約1年前のネイト・マネス戦。流石のトップキープ力でコントロールしケージレスリングから速いセットでスタンドギロチンを極め存在感を示しました。

対するは現在4連勝中、ATT所属のコーディ・ダーデン
32歳 16-4(UFC 5-2) 6KO/5SUB
アメリカンらしいボクレススタイルで前戦は注目株のジェイク・ハドリーとの激戦を制してランキング15位につけています。
最終ラウンド間際には観客にアピールしながらパウンドを続けてナッシュビルの会場を盛り上げていました。

平良達郎は5連勝を成し遂げたもののランキング入りは叶いませんでしたが、個人的にはここを飛ばしてさっさとモカエフと対戦して欲しいところです。

(バンタム級:プレリム②)コーディ・ガーブラント vs ブライアン・ケレハー

これはガーブを見守る試合です。

元UFCバンタム級チャンピオン、筆者推しのコーディ・ガーブラント。
32歳 13-5(UFC 8-5) 10KO
ベルトを戴冠することとなったクルーズ戦では魅せる事においても神がかった内容でしたが2017年、18年とディラショー2連戦からKO負けが続いてしまいフライ級に落とすもカイ・カラ・フランスにKO負けし、ここずっと窮地に立たされ続けています。

前戦は今年3月UFC285ではトレヴィン・ジョーンズと対戦し、勝ちに徹するガン待ちスタイルでなんとか勝利を掴みました。ブーイングが起こる内容でしたが、熱くならずに勝てたことが大収穫だったと思うので推しとしてはひとまずホッとする内容でした。

対するは現在2連敗中ブライアン・ケレハー。
37歳 24-14 (UFC 8-7) 8KO/10SUB
2017年からUFCに参戦していますがヴェラ、リッキー・シモン、ウマル、トップどころには敗戦しています。
前戦は2022年6月マリオ・バティスタ戦。マウントを奪われて背を向けた直後RNCをセットされタップアウト。
2020年9月にはファイトボーナスは獲得していて、レイ・ロドリゲスを相手にタックルカウンターでギロチンを深くセットして1R開始早々にタップを奪っています。これには気をつけたい。

勝ってくれ、ガーブ。

(フェザー級:メインカード①)ジョシュ・エメット[#6] vs ブライス・ミッチェル[#10]

ファイトナイトのメインイベントとして組まれても良いほどのこのカードが前座枠という豪華っぷり。(と思いきやルケvsギャリーが飛んでメインカードに昇格)

フェザー級屈指のワンパンマン、ジョシュ・エメット
38歳 18-4 (UFC 9-4) 6KO/2SUB

ヒカルド・ラマス戦マイケル・ジョンソン戦を見れば良しな選手です。
ケイター戦の判定は不可解でしたが、ケイターの肘打ちをクリーンヒットさせられてもびくともしなかった頑丈さは異常です。
ヤイール・ロドリゲス戦、イリア・トプリア戦とベルト圏内の試合が続いて2連敗中。

対するはフェザー級屈指のグラップラー、ブライス・ミッチェル
ギガ・チカゼの欠場を受けて代打出場です。
29歳 16-1(UFC 7-1) 9SUB

圧倒的なトップコントロールで相手の時間を作らせず、大差のポイントゲームで連勝を重ねました。バルボーザやフィリといったストライカーをそれぞれ10分以上漬けています。
前戦は今年9月のダン・イゲ戦でお得意のトップキープで判定勝利。
唯一の負けは次期挑戦者イリア・トプリア戦で、タックルを切られ続けてケージに背をつけた状態から肩固めの形に作られてしまいタップアウトしています。

(ライト級:メインカード②)トニー・ファーガソン vs パディ・ピンブレット

このカードが発表されたときは、6連敗後の扱いに対して思わず寂しさを感じてしまいました。

文字通り相手をカットで血祭りにあげるライト級トップファイター、エル・ククイことトニー・ファーガソン。
39歳 25-9(UFC 15-7) 12KO/8SUB


かつて最激戦区ライト級で12連勝したファーガソンも明らかに動き、反応は落ちているし、ゲイジー戦、チャンドラー戦のダメージは特に相当なものだろうと思います。あとUFCでは何試合やるんでしょうか。

対するは英国の人気者パディ・ピンブレット
28歳 20-3(UFC 4-0) 6KO/9SUB

キャラクター性たっぷりの元CageWarriors王者で、逆転する試合もあってポストマクレガーなんて持ち上げられた時期もありました。
現在UFC4連勝中ですが、前戦ジャレッド・ゴードン戦ではコントロールされる時間も多く主観ではポイント奪われてるのでは、と思っていたところ3-0判定勝利。ファイトパスのアーカイブも、勝ち名乗りの直後にカットされていて何かの意図を想像してしまいます笑
それまでは3戦連続華のあるフィニッシュ勝利を飾っていたので期待値が爆上がりしたんでしょうが、しこりの残る1勝となりました。個人的にはスター性たっぷりで、勝ち上がって欲しい選手の一人ではあります。

とはいえ勝負が組まれれば勝つか負けるかの厳しい世界ですが、まだまだUFCでは実績のないピンブレットには勝つだろうと、ファーガソンの勝利を信じて見届けたい試合です。

(ウェルター級:メインカード③)シャフカト・ラフモノフ[#5] vs スティーブン・トンプソン[#6]

実力者vsベテランのウェルター級ランカー戦。

四つ組み、ボクシング、回転系打撃なんでもござれのトータルファイター、ランキング5位のラフモノフ。
29歳 17-0(UFC 5-0) 8KO/9SUB

未だ負けなし全てフィニッシュ決着。UFCでの試合内容も、一撃で決着させるようなものではなく起承転結のあるフィニッシュを重ねていて幻想を纏っている、というよりは正真正銘の実力を披露するような内容で堅い強さを見せ続けています。来年ベルトを取ってもおかしくないほど。

前戦はUFC285でジェフ・ニールと対戦。近い距離でのボクシングのステップ、四つの膝を使って中に入って試合を組み立てていました。被弾しても頭を動かしながら外して対処。バックステップで下がって長いリーチや蹴りを使わず中に入る事に恐ろしさを感じますし顎の強さもなかなかでした。しかもスタンディングのチョークでフィニッシュ。穴どこにあるん?

未知なのはまだ5Rマッチをやってない事くらい?


対するは空手王子、ワンダーボーイことスティーブン・トンプソン。
40歳 17-6(UFC 12-6) 8KO/1SUB

40歳になってワンダーおじさんとなってもMMAにおいて空手スタンスを貫くロマン、そして爽やかフェイスも未だ健在。
前戦はちょうど1年前。ケビン・ホランドと対戦し、ジョニー・ヘンドリックス戦以来約6年ぶりのKO勝利を挙げました。

ラフモノフが中央を取りトンプソンが距離を取ってケージを背負う展開になると思われますが、ラフモノフが組み伏せてくるか距離を潰して打撃勝負するのか、楽しみです。

※※※試合後追記※※※


面白かった試合、見返したい試合

序盤からフィニッシュも多く観戦体力が維持できるかどうか不安でしたが、濃度たっぷりなプレリム〜メインカードでした!

(フライ級:アーリープレリム③)タギル・ウランベコフ[#12] vs コーディ・ダーデン[#15]

ウランべコフのセコンドにはライト級王者マカチェフの姿があります。
ダーデンはトップを取れるかどうか。序盤はオーバーハンド、強打を振っていくダーデン。
逆にフックのカウンターでダーデンの腰を沈めるウランべコフ、すぐさまギロチン!
これを解除して再びスタンドへ。開始2分で高密度。
1Rはケージ際の四つでウランべコフが技アリのテイクダウンを決めバックテイクしてラウンドを取ります。

2Rも同じくケージ際から重心移動の投げ?でテイクダウンしたウランべコフがバックを取って四の字ロック子泣き爺ポジション!
首に何度も腕をかけ、顎ごと締め上げる形になってダーデンがタップ!!!

ウランべコフの技ありテイクダウンが光る試合となりました。上位ランカーを目指してさらに駆け上がれ!

(バンタム級:プレリム②)コーディ・ガーブラント vs ブライアン・ケレハー

ケージを背にサークリングするガーブラント。
ケレハーは前蹴りを出してプレッシャーをかけてつつ、カーフキック。
ケージを背負ったガーブラントにタックルを試みるケレハーですが、ガーブラントはこれを切ります。

前進してコンビネーションを打つガーブラント。
ケレハーのアッパーにカウンターフック!!
一気にガーブラントの流れになるとケレハーも下がりながらなんとかカーフを蹴りますが、ガーブラントのショートフックがズドン!!!!

これが効いてケレハーがうつ伏せに倒れレフェリーストップ!!!
ガーブラントが3年半ぶりのKO勝利!!!7年ぶりの連勝!!!
内容的には完全復活、と言っても良さそうですがバンタム級ストライカーと当たった場合にどうなるか。
そこで冷静に勝負できれば良いなと思いますが、今はまずカーフを受けて負ってしまった足の怪我を直して次を楽しみにしたいところです!
おめでとうガーブ。よかったガーブ。

(フェザー級:メインカード①)ジョシュ・エメット[#6] vs ブライス・ミッチェル[#10]

ミッチェルが足を触るようテイクダウンフェイントでプレッシャーをかけていく中、エメットはミッチェルのボディに打撃を巻きます。
距離を取ってケージを背にするミッチェルが前手をちょんと出して奥手右ストレートを出したところに頭をずらしたエメットが右のオーバーハンドズドン!!!!

倒れるミッチェル、足を止めるエメット。
開始2分ちょっとでエメット砲が炸裂し試合終了!!!
ショートノーティスとはいえこの結末はエグすぎる。38歳、剛腕未だ健在。

これは見逃した人もいるのでは。さすが。

(ウェルター級:メインカード③)シャフカト・ラフモノフ[#5] vs スティーブン・トンプソン[#6]

ラフモノフは序盤から組んでケージに押し付けて、盤石にワンダーおじさんの打撃を封じます。
シングルレッグでの攻めをトンプソンも対処しつつ、テイクダウンされることは凌いだ1Rでしたがコントロールされていた時間は3分以上。

2Rになると同じくケージ際の展開から尻をつかされたトンプソン。支えにしていたトンプソンの右腕を裏からラフモノフが掴んで無防備状態に!
ここから一度角度の悪いバックチョークになりますがこれを解除。

肘を打ちながらガブってバックに回ったラフモノフが残り10秒ちょっとで再度バックチョーク!!!これにトンプソンがタップ!!!

またもやフィニッシュして無敗の連勝、連続Finishを18としたラフモノフ。
来年間違いなくタイトル戦になるでしょう。盤石すぎるトップランカー。

大会総括<糖分もあり、塩分もあり>

史上最も凡戦とも言われているタイトル戦、アデサニヤvsロメロが行われたのが3年近く前ですが、何が起こるか分からないリアルタイム観戦だととても楽しめたものです。
今年最後のタイトルマッチも塩な展開の少ない防衛戦になったと言わざるを得ないですが、その理由を探りながら見ると楽しいものです。

前蹴り、前足へのローを使ってスイッチしながらプレッシャーをかけ続けるエドワーズ、コビントンはタックルに入れず打撃で作るにはスキルの差がありすぎて中に入り込んでこじ開けられないという八方塞がりの状況が続いた5Rでした。
後半はエドワーズがケージを背負った一瞬のタイミングやなんとか足を持ってトップを取るなど見せ場は作りましたが時すでに遅し。ブーイングを浴びる結果になってしまいました。
エドワーズは自分からタックルにいってトップを取ったりとレスラーの心を折る試合運びで勝ちを譲らず見事防衛。強かった。

体格的には日本人が割り込める可能性のありそうなフライ級の防衛戦も王者のパントージャが圧倒的トップコントロールで自分の時間を作り続けて盤石の防衛成功。
どちらの防衛戦も共通して、挑戦者の能力を王者が封じてきたときにそれを打開できる道具があるかどうかの重要性を再確認する試合となりました。

プレリムはフィニッシュも多く、ガジエフやリプスキの強さがあらわになって今後の楽しみも増えたところです。それとは裏腹にファーガソンを下したピンブレットがかなりガス欠していて、大振りフックを被った耐久ゼロのファーガソンに攻めあぐねていて、タレントを喰ったけど評価は上がらずの結果に。ライト級ランカーの質の高さが伺えたと同時に次にこの人気者がどこに向かうか疑問視してしまいます。

今年のUFCはこれにて終了ですが、2024年1発目はジョニー”砂漠”ウォーカーの仕切り直しマッチをメインイベントとした大会から始まるので、お参りに行った際は「国名を比喩表現しませんように」と深くお祈りしたいと思います!
あと会場にて、来年1発目のナンバーシリーズで戦うストリックランドが対戦相手のドリカスに殴りかかっていたのも話題になっていました。席がどうも近かったようで笑

まだ書いてないUFCオースティン大会、Apex大会の記事の投稿をゆっくりしますが、今年もUFC観戦お疲れ様でした!
また来年もよろしくお願いいたします。2024年もレッツUFC!(適当)