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「上手くやろうとするな」

若い頃、仕事の愚痴みたいなことを父親に話したことがありました。
その時、父がこう言いました。

「上手くやろうとするな、目の前のことだけ一生懸命やれ。」

そうは言うけど、誰だって上手くやりたいよ。
望む事が上手く行くようにしたいに決まっている。

若い頃の自分は、そう思っていいたように記憶しています。
父は、昔気質で頑固者でしたが、仕事だけは一生懸命にやって来た真面目な男でした。
では、なぜそんな父が「上手くやろうとするな」と言ったのか?

上手くやろうとすると、目指す結果(願望)から逆算して行動する心理状態になります。その時点から、平常心が薄れて、失敗したくないという恐れや不安が生まれます。プレッシャーというものですね。

適度なプレッシャーは、集中力を上げる効果があると言われています。
しかし、アスリートでもない一般人が、どれだけの大きさのプレッシャーに耐えて自分を維持することができるのか?

結果だけに価値を持ち、その結果が望むものとかけ離れていた場合の落差に動揺してしまい、負の感情に翻弄されてしまう。

希望や理想は、生きていく上で大切なものです。
生きる糧となり、行動するための大きな力にもなります。

しかし、望む未来ではなくても、生きている限り未来は必ずやって来ます。

上手くやろうとすることは向上心である、とも言えますが、単なる我欲でもあります。

上手く行ったり、上手く行かなかったりするのが人生です。
むしろ、上手く行かないことの方が多いかもしれない。

不安、恐怖、怒り、これらの感情は、望む未来と望まない未来との落差の大きさが生み出すものです。

不安や恐怖は、自分の感情が生み出した妄想であり、怒りは、いつも欲望と背中合わせです。

父が言いたかったのは、
「結果だけに囚われるな。」
「目の前にあることに一生懸命になれたら、結果が良くても悪くても、動じることがない。」
ということだったのかもしれないです。


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