海外出張したらお土産として彼女を持って帰ることになりました

○○は中堅社員として忙しい日々を送っていたが、ある日突然、上司からヨーロッパの小さな街への出張を命じられた。

国内案件が多い彼にとって海外出張は初めての経験。

しかも、英語は苦手で、これまで海外旅行すらしたことがない。そんな自分に務まるのかと不安を抱きつつも、「やるしかない」と自分を奮い立たせて飛行機に乗り込んだ。

現地に到着した○○を待ち受けていたのは、言語の壁だった。

空港でタクシーを拾おうとするも、行き先を英語で伝えるのに苦戦。タクシーの運転手は不思議そうな顔で首を傾げ、○○は辞書アプリとにらめっこするばかりだった。

周囲を見回しても助けてくれそうな人はおらず、心細さが募るばかり。そんなとき、不意に背後から聞こえてきたのは、優しい日本語だった。

「困ってますか？」

振り返ると、そこには黒髪の若い女性が立っていた。

○○は驚きつつも、事情を説明した。

彼女は「お任せください」と微笑み、タクシー運転手に流暢な英語で行き先を伝えた。

その後、「ホテルまで一緒に行きますね」とついてきてくれた。車内で聞いた話によると、彼女の名前は遠藤さくら。大学で経済学を専攻しており、現地に留学しているという。

「こんな形で日本の方に会えるなんて思いませんでした。でも、少しでもお役に立ててよかったです。」

ホテルのロビーでそう言って微笑む彼女に、○○は深く頭を下げた。

「本当にありがとう。英語が苦手でどうしようかと思ってたんだ。助けてもらえて心から感謝してるよ。」

すると、さくらは「何かあればいつでも連絡してくださいね」と電話番号を渡してくれた。

翌日、○○は取引先とのミーティングに臨んだが、案の定英語の壁に苦しめられた。

通訳を介して何とか話を進めるものの、微妙なニュアンスが伝わらず、会議は難航。昼休みに思わずさくらに連絡をすると、「今から行きます」とすぐに駆けつけてくれた。

午後の会議では、さくらが同時通訳として大活躍。彼女の的確な英語と明るい対応のおかげで、会議は驚くほどスムーズに進んだ。終了後、○○は改めて感謝を述べた。

「本当に助かったよ。さくらさんがいなかったら、きっと失敗してた。」

すると、彼女は「○○さんの真剣さを見ていると、私も頑張ろうって思えるんです」と微笑んだ。

その言葉に、○○は胸が熱くなるのを感じた。

その後も、さくらは何度も○○の仕事をサポートしてくれた。

仕事終わりには現地のカフェに立ち寄り、彼女が教えてくれた美味しいデザートを楽しんだり、観光名所を案内してもらったりした。

ある日、彼女が「ここは夜景がきれいなんです」と案内してくれた丘の上から見る街並みは、○○にとって忘れられない景色となった。

「さくらさんは、どうしてここに留学しようと思ったの？」

夜景を眺めながら尋ねると、彼女は少し考え込んでから答えた。

「私、小さい頃からずっとこの国に憧れていたんです。本で見た街並みがとても素敵で。でも、実際に来てみると大変なことも多くて……英語も最初は全然通じなくて悔しい思いばかりでした。」

その言葉に、○○は深く共感した。

「俺も英語ができなくて苦労してるよ。さくらさんがいてくれなかったら、この出張は大失敗だったと思う。」

彼女は「そんなことないですよ。○○さんの頑張りがあるからこそ、私もお手伝いできてるんです」と笑った。

その笑顔が、○○の心にますます深く刻まれていった。

最終日、○○はさくらを食事に誘った。

地元の人しか知らない隠れ家的なレストランで、美味しい料理を楽しみながら二人で語り合った。その帰り道、石畳の道を歩きながら、○○はついに自分の気持ちを告白した。

「さくらさん、短い間だったけど、君といる時間が本当に楽しかった。もっと一緒にいたいと思うようになったんだ。もしよければ、これからもそばにいてくれないか？」

彼女は驚きつつも、少し照れたように笑った。

「○○さんと一緒にいると安心します。でも、今の留学生活を途中で終わらせていいのか、自分の中でまだ答えが出なくて……少しだけ時間をもらえますか？」

帰国の日、○○は複雑な心境で飛行機に乗り込んだ。

搭乗ゲートを通り、自分の席に着いたとき、不意に隣の席が埋まる気配がした。

驚いて顔を上げると、そこにいたのはさくらだった。○○は目を見開き、驚きのあまり声も出せなかった。

「○○さん、お隣、空いてましたよね？」

彼女はいつもの優しい笑顔を浮かべていた。○○は言葉を探しながらも、かろうじて声を絞り出した。

「どうして……ここに？」

「○○さんが帰る便を調べて、隣の席を取っちゃいました。びっくりしました？」

彼女は少し照れくさそうに笑いながら続けた。

「やっぱり一緒に帰りたくて。でも、伝えると驚きがなくなっちゃうから、黙ってました。」

○○は一瞬言葉を失ったが、次の瞬間には深い感謝と喜びが胸に押し寄せてきた。

「さくらさん……ありがとう。本当に驚いたよ。でも、こんなに嬉しいサプライズは初めてだ。」

飛行機は夜空を静かに滑りながら、未来へと向かっていた。隣にいる彼女の存在が、○○にとって最高のお土産であることを確信しながら、彼はそっとさくらの手を握った。