現役の選手が本を出版するということ
2017年、7月7日に僕の初めての作品となる『NPB以外の選択肢―逆境を生きる野球人たち―』が出版されました。
思えば、会社員を辞めて現役復帰しようと思ったのがすでに5年も前のことになります。その時に決意したのが、現役で選手をやりながら、先行きが不透明な中、挑戦を続ける野球人たちのストーリーを追った書籍を出版することでした。将来安泰の道を捨ててここまで来たのだから、他の野球人と同じことをやっていても仕方ない。自分なりの価値を造りたいと思いながら取り組んできました。
メジャーリーグやプロ野球という華やかな大舞台。そこに立てるのは、ほんの一握りの野球選手だけです。私のように競争からこぼれ落ち、それでも「何か」を求め続けてきた野球人は私以外にもいます。この道を選択したことで生じる苦悩や不安。野球に携わり続けることを選んだ人たちは何を思い、どう過ごしてきたのか。彼らのストーリーを追い、その人生観にせまりたいと思っていました。そのストーリーはどれも、決して華やかな世界ではないが、一際目立つ輝きを放っています。そんな彼らの輝きを多くの人に知ってもらいたいと思い、こつこつと4年をかけて書きためてきました。
ですが、私のように素人同然の書き手にこの作品の出版を引き受けてくれる出版社なかなかありませんでした。大きい出版社から順番に当たり、原稿を持ち込んでは断られるという日々が続きました。あと10社回ってダメなら、諦めて自費出版など他の方法を考えようと思っていました。彩流社の編集者さんからお返事をいただいたのは、ちょうどそんな時でした。その編集者さんが大の野球好きで、編集部長もされているということもあり、この作品を拾っていただいた次第です。
著書の中では8人の野球人を取り上げていますが、一人ひとりインタビューを行い、彼らの人生を掘り起こしてきました。そこから見えてきたものは、続けることで、道が開けることもあるし、その行動自体が人生全体を充足させてくれるかもしれないということ。そして、こうした生き方は社会的な成功や安定といった価値基準では、決して計ることはできないということでした。今でさえ書き手としてはとても未熟な私です。ですが、このような野球人たちの生き方が、人生の選択に迷う誰かの助けになることもあるのではないか。それを伝えることができれば、私のこれまでの歩みは価値があったと胸を張って言えると思っています。
1年前に出版が決まった時は、感無量でした。ここに登場いただいた8人の野球人、彩流社の編集者さん、出版までに携わって下さった方々、そして何よりこの本を読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
選手としても書き手としてもまだまだ成長できるように精進し、今後も自分にしか伝えられない野球の世界を描けていけたらなと思っています。