「広報でなんとかしたい」という会社にファンは集まらない|広報Tips
昨日投稿した記事、結構いろんなところで読んでもらえていてすごく嬉しいです。同じことでモヤモヤしていた人、多かったんだなぁ。
今日は、私がお仕事をする上で軸にしている考え方を。一言で表すと「怖れや不安ではなく『愛』からはじまる広報戦略にこだわりたい」ということです。
不安だから「広報でなんとかしたい」、という会社にファンは集まらない
私の仕事は、私のお客様である企業や、その企業のプロダクトのファンを増やすことです。そのために世の中と企業との接点をひたすら作り、メンテナンスすることを繰り返しています。
まだまだ道半ばですが、5年間、この仕事を続けてきて言えるのは、何かが不安だから広報で解決したい、という想いが根本にある場合、ほとんどの施策がスベるということです。
ちょっと大げさな話ですが、私は全てのメッセージは「愛」と「怖れ」に分類されると思っています。これを「北風と太陽」に例えてくださった素敵な方もいました。表現はなんでもいいと思うのですが、ヒトとヒトとのコミュニケーションは究極的には、全てこのどちらかに当てはまると思っています。
そして私たちは相手からのメッセージがどちらから発せられたかを、しっかり感じ取っています。
「月に3本、取材を獲得しないと上司に怒られる。何かネタを発掘してプレスリリース出さなきゃ……」
「売り上げがなかなか上がらなくてこのままだとまずい。これは認知度が低いせいだ。広報でなんとかしてもらおう」
「投資家から、最近動きが遅いと叱られた。とりあえずメディア掲載を『獲得』して、納得してもらおう」
「競合他社はみんなメディアに露出していて、うちは後れを取ってしまった。見せ方がキラキラで上手なだけで中身なし。あいつらに負けるなんて許せない」
これは自分自身の反省も兼ねて改めて言いますが、こういう背景のもとで考えた広報戦略やメッセージは、そこそこの成果は挙げられても、その会社の本質的な価値に影響するようなインパクトを与えることはできません。
なぜなら、不安から発せられるメッセージによって「人が動く」ことはあるけれど、「心が動く」ことはないからです(もしあなたが、電通や博報堂も羨む、天才的なキャッチコピーや企画のスキルを持っていれば話は別だと思いますが)。
心が動かなければ、ファンにはなりません。
ファンを産めない状態というのは、顧客に対しては価格競争や機能競争で上位を取らなければ売上を維持できない状態、従業員に対しては報酬や福利厚生などのニンジンをぶら下げないとすぐに転職されてしまう(あるいは新しい人材を呼び込めない)状態を指します。
一時的に売上や採用数が上がったとしても、ファンを産めない施策は会社にとっては中長期的に見れば浪費です。
「もっとみんなに知ってほしい!」を見つけにいこう
では、不安や怖れではなく、「愛」をベースにしたメッセージってどんなものでしょう? どうすれば良いのでしょう。
私は、まずは広報担当者自身が会社のことを「改めて好きになる/良さを再発見する」ことから始まると思います。人間と同じで完璧な企業なんてないので、全部を丸ごと好きになる必要はありません。
「うちの会社って、本当に変なヤツ、面白いヤツが多いな。この人たちと一緒に楽しく働けるまだ見ぬ『面白いヤツ』、どこに行けば見つかるかな。どんなことを伝えれば興味を持ってくれるかな?」
「みんなめちゃくちゃがんばってるなあ。もしこのプロダクトがメディアに載って、その記事をご家族が読んだら安心するだろうしきっと応援してくれるだろうな」
「たしかに他の会社でもやってるかもしれない。でもこれってユーザーの声と向き合いながら実装した機能だし……開発の裏側の想い、お客さんに知ってほしいな」
これらはほんの一例ですが、私が本当に思っていること。というか、現場をクリアな視点で見つめると「これ、もっとたくさんの人に知ってほしいよ!」という切実な想いが湧いてくるんです。
もし、その想いが湧いてこなかったら……?
厳しい言い方をしますが、その想いが一つも湧いてこないなら、その会社はあなたが広報として働くのには向いていないのかもしれません。多分やっていても辛いだけだし、仕事を「しているように見せる」、いわゆるアリバイづくりのための施策だけやって上滑りになると思います。
でも……個人的には、どんな会社にも素敵な「みんなに知ってほしいこと」は絶対にあると思います。
どんな人でも、自分の仕事を褒めてもらえたり認めてもらえるのは嬉しいもの。みんなのがんばりや工夫や歴史を再確認して、編集して、世の中と共有する。そうすることでファンが生まれて、社内のメンバーの自信にもつながる。人材開発や組織活性化、営業や採用にも間接的に貢献できる。そんな「広報」の仕事って、やっぱりめちゃくちゃ、良い仕事だと思います。
不安ではなく愛からはじまる広報戦略は、きっと皆さんの会社やチームをもっともっと幸せにしてくれると思います。
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それでは今日も良い1日を!
Photo by Bram. on Unsplash
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