海外PRパーソンのTED「PR成功のレシピ」がよかったので解説するよ|広報Tips
今日はちょっと趣向を変えてTEDの紹介です。題名は「A Recipe for PR Success」(PR成功のレシピ)。
2016年に公開されたこの動画、再生数は6万ちょっととそこまで伸びていないのが不思議なくらい、PRパーソンにとっては必見だと私は思います。
スピーカーはスウェーデン在住(TED発表当時はNYでも活動)のPR expert、Jerry Silfwer氏。この動画のなかで彼は、「リーチ数」を増やすことに執着するのを辞めて、一人のファンを作ることにこだわろうという話をしています。
中学英語で十分理解できる内容だと思うのでよかったら見てもらえるといいと思いますが、結論としては、現代のPR事情において「既存のつながりを大事にすること」の重要性が語られています。私自身の整理もかねて、まとめてみたいと思います。
PRにおいて重要なのは「既に持っているつながり(We already have)」
Jerry氏は「まだ接点のない人へのリーチをできるだけ多く獲得すること」よりも「既存のつながりの強化」を重視しようと説いています。
なぜならそれがファンの育成、ひいてはブランド拡大に繋がる最短コースだから。これが、このプレゼンのポイントであり、全てです。
彼は多くのブランドが陥る落とし穴を「PRのゴールを新規リーチ数の獲得にしてしまう点」だと指摘しています。(この動画が投稿されたのは2016年なので今は違う状況かもしれませんが、彼のもとには「Facebook投稿で新規顧客のリードを獲得して欲しい」という依頼が相次いでいるそうです。私たちも思い当たる節がありますよね。)
また、彼は、PRの主戦場がマス(大多数への)コミュニケーションから個人間のコミュニケーションに移ったことを示唆しています。
マスコミュニケーションがPRの主な手法だった時代は、限られた「誌面」への掲載をいかにして得るかがPRパーソンに必要とされることでした。しかし今はそうではありません。全ての個人が、SNSで情報発信できて、Blogを解説し、メディアになる時代。これにより、次のような変化が起きています。
・求められるPR手法の変化
かつて:有名な新聞の社説や、高視聴率の番組(Editorial space)に入り込むこと
→ 今:人々の心(Mental space)に入り込むこと
・PRする際にフォーカスするべき情報の価値
かつて:ニュースバリュー → 今:関連性と信頼性
そして、このPR手法で追うべきは「Big numbers(数の多さ)」ではない、としています。
ファンが新しいファンを連れてくる
しかし、このやり方だとブランドの成長につながらないのでは?という意見も聞こえてきそうです。そのような声に向けてJerryはこの絵を元に反論します。
一人の熱狂的なファンが、新たなファンを一人ずつ連れてくる。そうすることで、指数関数的にファンが増えていく。かつてPRパーソンたちがマスコニュニケーションを通じて行っていたような加速度的な拡大(スケール)も見据えているということを意味しています。(前回投稿した『ファンベース』もこれに近い話をしていますね)
そしてこれは顧客だけでなく、取引先開拓や従業員採用の現場でも同じことが言えます。採用の現場でも改めてリファラルリクルーティング(社員紹介採用)の価値が改めて見直されていますし、外部委託などの発注先は安さを追求して顔の見えない業者に発注するよりも共感できる企業に発注したいという流れが加速しています。
今、PRを成功させるために考えるべきこと
Jerry氏は、以下の質問について考えることがPRを成功させるための「レシピ」だと述べています。
How do you create that one true FAN ? (「真のファン」をどうやって作る?)
How do you make them fall in love with your brand ?(どうやって、彼らをあなたのブランドに恋させる?)
How do you make them join your mission your vision ?(どうやって、彼らをあなたのミッションやビジョンに参加させる?)
And how do you emphasize all of this ?(これらをどのように強調していく?)
「いかにメディア露出を獲得するか」や「いかに多くのリーチ数を得るか」も重要ですが、その前に考えるべきことはここですね。
短期施策を試しながら中長期のブランド戦略を構築し、少しずつ周囲の認知と信頼、そして共感を積み上げていく。これって多分、経営戦略そのもの。上記に挙げた4つの質問(難問!)に対する答えを考え続け、挑戦し続けていく道のりそのものが、ブランドの育成と強化につながることは間違いありません。短期と中長期の施策の一貫性を保ちながらいかに情報の流通量を増やしていけるかが広報・PRパーソンの腕の見せ所であり、ドーパミンがドバドバ出るポイントですね。
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さて。
この動画が公開されてから3年後の今、この内容はPR界隈の人たちの間では当たり前のように語られていること。
それでもまだまだ、経営層には浸透していない考えのように思います。
PRは魔法の薬でも劇薬でもありません。
あえていうなら日々の生活習慣やウォーキング、ランニングなどにちかいものなのだと思います。
面倒だけど、続けていく。
たまには休んでもいいけど、続けることが大事。
続けていると、「やらずにいると気持ち悪くなる日」が必ずきます。
やらなかったころはどうやって健康を保っていたのかもう考えられないというほどに。
そんな位置付けのものだよと、もっと多くの人に知ってもらえたらと思います。
・・・
ちなみに、この動画の中でJerry氏はRedBullやAppleなどの例を引用しながら「Stupid majority」と「Smart minority」という考え方を紹介しています。このプレゼンの中では少ししか触れられていませんが、Blogで詳しく書かれているのでよかったら参考にどうぞ。まぁ結論から言うと、「みんな言いたいことを言うけど、無知な大衆のアドバイスは無視してわかってくれるファンのために良い仕事をしよう。そしたらみんな後から気づくから!」みたいな話です。(多分)
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それでは皆さま、今日も良い1日を。
Photo by Milo McDowell on Unsplash
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