【考え方編】200人以上にインタビューをしてきた私が考える、企業のインタビューコンテンツ制作のポイント|広報Tips
2020年ですね。先日投稿した記事について、編集者の方からも広報関係者の方からも好意的な反応をいただき、嬉しい限りです。
今年は、より自分の得意領域に特化して、企業広報×編集領域のスキルアップについてお伝えします。今日は私のクライアントや友人・知人から相談や質問が多い、インタビューコンテンツづくりについて私なりの考えをまとめます。
私自身のインタビューキャリアの始まりは学生時代。当時、経営者を対象とするインタビューを掲載する学生向けフリーマガジンを制作していて、卒業までに100人以上の経営者に会いに行き、インタビューさせてもらいました。それがきっかけでビジネス書の編集の道に入り、そこからPRに目覚めて今に至ります。
PRパーソンとしてフィーをいただき、お仕事するようになってからも、ひたすらインタビューとインタビュー記事の制作は続けていて、数えたことがないのですがどんなに低く見積もっても200人以上にはインタビューしてると思います。たぶんもっといると思うけど、そこは謙虚に……。
私が企業コンテンツにおいてバズを狙わない理由
大前提として、私はインタビューやイベントレポートなどの企業が発信するコンテンツを「PV集めのための道具」とは思っていません。ですから、「どのようにバズを起こすか」にはあまり興味がありません。
Youtuberやインフルエンサーなど、フォロワーの数がビジネスに直結する(情報発信そのものが本業である)人々と一緒の土俵で考えてしまうと、目的が混乱します。
本業が別にある企業にとって、オウンドメディアやSNSを通じて発信するコンテンツは企業文化や取り組みを中長期的に伝える資産であり、公式の「お問い合わせ窓口」と属人性の高い「採用・営業担当者」の間に位置するフラットなコミュニケーションツールであり、(採用・営業双方において)自社とのマッチング確率を高めるためのフィルターだと考えています。この部分、数値化するのがすごく難しいので、社内で理解してもらうのが難しい領域だとは思うのですが、企業のコミュニケーションを考える上で、少なくとも広報担当者自身は意識しておくべきことだと思います。
情報には、ストック型のコンテンツ(資産になるもの)とフロー型のコンテンツ(流れていくもの)があります。もちろん企業活動の一環である以上、費用対効果を考えることも必要ですから、フォロワー数やPV数の推移を参考にすることもあるでしょう。しかし重要なのは、フォローやPVを稼ぐコンテンツがどちらのタイプのコンテンツに集まっているかを見極めることだと思います。もちろん企業の想いを伝える、ストック型のコンテンツに対して安定的にPVが集まっているのが理想です。
ゴールは納得と共感。説得する必要はない
オウンドメディアで発信する社員・役員のインタビューやイベントレポート。広報担当者になった人の多くがこれらのコンテンツの制作を経験していると思います。こうしたコンテンツは、そもそも何のために作成するのでしょうか。
いろんな捉え方があると思いますが、私はこんなことを目的として意識しています。
・企業の空気、雰囲気を知ってもらうこと
・わかりにくいビジネスの内容を当事者の言葉で語ってもらうこと
・その企業が大切にしている価値観を発信すること
無理に「盛る」必要はありません。いい会社だ、魅力的な会社だということを説得する必要はないのです。
「説得」や「証明」を試みた記事には体温を感じません。時として嘘くさくも見えます。なぜなら、ポジティブな内容ばかりをできるだけ多く盛り込もうとするから。そうではなく、「納得」や「共感」というところを目指して記事を作ると、少なくとも読者が不快感や違和感を覚える記事にはならないと思います。
社員(役員)インタビューで伝えたいのは、「その人ならでは」のストーリー
社員インタビューで重きを置いて伝えたいのは「その人ならではの考え方や働き方、仕事への思い」です。その人に聞かなくてもいいような内容を並べても記事としては成立します。しかし、読者の心を動かしたり、行動に影響を与えるものにはなりにくい。
よく、健康食品や化粧品の通信販売などで、「利用者の声」といった表現で商品やサービスを称賛するコメントを見かけますよね。ああいうテイストの社員インタビューって意外なほどに溢れているんですが、すご〜〜〜〜く浅く見えます。
会社が伝えたいメッセージをあらかじめ用意して、それを社員の声として掲載したいと言う企みはわかりますが、そうではなく、もっとその人自身の心の声を拾うようにしたほうが、絶対に良いコンテンツができます。
例えば、私だったらよく聞く項目はこんなかんじ。(相手に合わせて変えます)
「入社の決め手は何だったか」
「最近一番嬉しかったこと、悔しかったことは何か」
「今、会社で改善したいところや直したいところはどこか」
「入社してから気付いたこの会社の良いところはどこか」
「今の仕事のどんな部分にやりがいを感じるか」
「3年後にどんなキャリアを築いていたいか」
直接的に会社と関係ないことでも、その人ならではのオリジナルストーリーを聞き出すことができるかが、深いインタビューをするための大前提です。(そのうち、社員インタビューの質問リストを作ろうかな)
インタビュー相手のこれまでの人生と、今何をしてる人なのかをきちんと書く
基本中の基本。インタビュー相手の仕事の内容や役割はきちんと調べてからインタビューを始めましょう。できればその人が今まで歩んできたキャリアも。わからないなら、最初に本人に確認すること。
社内ではその人の役割が肩書きなどを通じてすごーくふわっと定義されている状態が多く、インタビューを担当する広報担当者自身が、相手が実は何をしている人なのかをよくわかっていない、ということがあります。
納得や共感につながるコンテンツには、「何をやったか」と同じくらい「誰が言っているのか」も大事。だれもが知っている文化人や芸能人なら前置きはいらないかもしれませんが、大抵の場合、読者はその人のことを全く知らない状態でインタビューを読み始めるわけです。だからこそその人の人となりをきちんと書いておくことが重要です。初めてその記事を読んだ人にも、最低限、登場人物の役割や仕事の内容がきちんと伝わるように書きましょう。
特に採用コンテンツの場合はその人の仕事内容に立脚した仕事観を書くことが多いので、そうした部分を補強する情報を入れておくことが必要になります。
本文の記事とは独立させる形で、その人のプロフィールを掲載することも効果的です。可能な範囲で、前職の情報等のバックグラウンドや、入社年、年齢なども入れられるといいですね。また、長期的に記事を掲載することがあらかじめ決まっている場合には、但し書きで「※インタビュー当時」と入れ、インタビューした年月を掲載しておくとあとから肩書きが変わった場合にメンテナンスするプレッシャーから解放されるので安心です。
現象や行動ではなく、「そのときどういう気持ちだったか?」にフォーカスする
読者が途中で離脱するインタビューの特徴として、行動やその結果(現象)のみにフォーカスされていて、その人自身がどんな気持ちでいたのかが全く入っていないということがあります。説明で全て終わってしまうやつ。
納得や共感を促すコンテンツづくりを目指すなら、その人がなぜそういう行動とったのか、あるいはその行動や結果に対してどんな感想を抱いているのかまでしっかりと聞いて、原稿に反映することが大事です。
見出しや太字でポイントを整理する
原稿が完成したら、強調して伝えたいところを太字にしてみましょう。そしてその太字部分を少しアレンジして見出しを作りましょう。よくわからなければ、最初は太字にした部分をそのまま抜き出すだけで構いません。
理想的なのは、太字と見出しをざっと眺めただけでその人が伝えたいことが大まかにつかめる状態です。
編集者・レビュアーを入れる
自分で書いた原稿は、自分では編集できません。おかしなところがあっても気づかないものです。可能な限り、社内の人にレビューを依頼してください。編集経験のある人は多くないと思うので、できるだけ、たくさん本を読んでいたり、文章を書くのが好きな人と日頃からコミュニケーションをとっておくといいでしょう。
もちろんインタビュー相手や上司に対しても確認は行うでしょうが、彼らに「コンテンツの質の向上」という観点でのチェックを依頼すると話はややこしくなります。文章が多少おかしくても気にならない人は多いですし、逆に細かな表現が気になって、全体的なフィードバックまで頭が回らない人もいます。
何人かの人に回し読みしてもらって、わかりにくいところや違和感を覚える表現がないかどうかを見てもらうと良いでしょう。
良いことばかり書きすぎない
最後に、大事なことなのでもう一度言いますが、良いことばかりを書くと嘘っぽくなります。あるいは、読み応えのない文章になります。
このような事態を防ぐためには、まず自分なりにそのインタビューを振り返り、咀嚼して、どんな印象を持ったかを考えてみることが大事です。正直に。その中で、ネガティブな要素があればきちんと盛り込みましょう。
組織には課題や問題があって当たり前。あまりにもネガティブな情報……法律に触れることやパワハラ・セクハラ関係などは書くことをためらうと思いますが、その場合は情報を公開することそのものを一度考え直したほうがいいです。今はまだ広報を本格的に取り組むタイミングじゃないのかもしれません。
「ここを改善すればより良くなるのに!」というリアルな現場の声はどんどん載せていくのがいいと思います。特に採用コンテンツの場合、目的は入社後のミスマッチを防ぐことでもあるので、理想的な姿だけではなくその組織の今をきちんと切り取って伝えることが重要です。
もうちょっと言いたいことはあるのですが、長くなったので【実践編】として続きは次回へ。
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それでは、今日もよい一日を!
Photo by Drew Hays on Unsplash
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