防衛テックのスカイゲートテクノロジズに投資した理由
こんにちは、ジェネシア・ベンチャーズの一戸です。
この度、防衛テックスタートアップであるスカイゲートテクノロジズ(以下、SGT)に、ジェネシア・ベンチャーズから投資させていただきました。
SGTを端的に説明すると、防衛省・自衛隊を主な顧客として、ソフトウェアやAIを活用したプロダクト及びサービスを提供するスタートアップです。
本稿では、ジェネシアが社内の投資委員会でも活用している「Market.iO」という独自のフレームワークに沿って、SGTに投資した理由を説明したいと思います。
防衛テックや、シードVCの投資仮説の立て方に関心がある方にご一読いただけると嬉しいです。
Market.iOとは
そもそも、社内で活用している本フレームワークを公表した目的は以下のとおりです。
本フレームワークは掴み所のない「市場」を立体的かつ多面的に、可能な限り素早く捉えるためのものですが、具体的には、市場を構成する要素を以下の3つに分解し(直観的な理解を促すために、川と船のメタファーを使用)、この3つの組み合わせから計8つの型を導きます。
川幅の広さ(≒市場規模)
→WIDE or NARROW船の数(≒競合の数)
→MANY or FEW流れの速さ(≒顧客獲得の速度)
→FAST or SLOW
例えばある1つの型を「WIDE-MANY-FAST」のように表すのですが、それぞれの型に論点が4~5つほど用意されており、基本的にはそれらを中心に投資仮説を立てることになります。
SGTに関しては「WIDE-FEW-SLOW」の型である前提、つまり、市場規模が大きく、競合が少なく、顧客獲得に時間がかかる前提で投資仮説を立てました(なぜその型であると考えたかは後述します)。そして、この場合は以下4つの論点を軸に据えます。
これらを念頭に置きつつ、防衛産業及びSGTについてご説明したいと思います。
防衛産業の拡大
ロシアのウクライナ侵攻や米中の対立、中国の台湾・南シナ海問題等によって、日本における安全保障環境は悪化しており、それを背景に防衛費が大幅に増額されています。
もちろん、予算の多くはミサイルや戦闘機に当てられますが、防衛省が掲げる国家防衛戦略では、「防衛力の抜本的強化に当たって重視する能力」として以下の2つも挙げられています。
これらは、約7.7兆円の時価総額(2024/4/15時点)を誇る、ピーター・ティールが創業したPalantirの事業とも大きな重なりがあり、同社は米国国防総省向けに上記2つを強化するようなプロダクト及びサービスを提供しておりますが、現在の日本においてはまさに今が和製Palantirが求められているタイミングなのではないかと考えています。
防衛産業におけるスタートアップの台頭
そして、急激に変化する国際情勢の中で、既存の防衛産業だけでは先端技術の安全保障領域への適用が困難と見られており、センシングやデータ処理、意思決定システムといった領域で、ソフトウェアやAIといった新たな技術を活用した企業の存在が今後も重要になると考えられることから、既存の大手ベンダーだけでなく、スタートアップにとっても大きな事業機会が眠っていると考えられます。
実際に、防衛省としてもスタートアップの参入に期待を寄せていることが伺えます。
また、米国ではSBIR制度における各省庁の支援金額のうち、DOD(国防総省)が約半数を占めていますが、日本でも直近数年間でSBIR制度が促進されており、上記の動きを踏まえて防衛省による支援金額が増大していくことが期待されます。
防衛省・自衛隊出身のCEO
一方で、当領域で事業を行うのは容易ではありません。まず、何よりも防衛省・自衛隊が持つ課題やニーズについて深い洞察力を有していることはもちろん、それに応えられるプロダクト及びサービスの開発力、高いセキュリティ要件をクリアできる技術力、防衛という国の根幹たる領域で事業を行うための信頼が求められます。
CEOの粟津さんをはじめとした開発チームはそれらの要件を満たし得る一方で、今後より強固な開発体制を築いていく必要があるため、少しでも関心がある方はぜひお問い合わせください!(急な宣伝)
まとめ
Market.iOへ戻ると、防衛費の増額に伴って市場は拡大する(WIDE)ものの、現状としては大手ベンダーしかプレイヤーが存在していません(FEW)。また、防衛省・自衛隊がスタートアップのプロダクト及びサービスを購入するのにある程度の時間がかかることは明らかです(SLOW)。
これらから「WIDE-FEW-SLOW」の型が導き出されるわけですが、最初に挙げた各論点についてもこれまでの説明で(ある程度)ご理解いただけたかと思われます。ただ、全て詳細に記載できているわけではないのと、シード投資という性質上そこから先は「信じること」と「自ら実現すること」が重要になります。
少しでも防衛テックや、シードVCの投資仮説の立て方への理解に役立っていれば嬉しいです。SGTや防衛テックに関心のある方、それ以外の領域でのシード調達を検討されている方はぜひお話しさせていただきたいので、XのDM等からご連絡ください。
https://twitter.com/ichinohe_GV
最後までお読みいただきありがとうございました!