あなたには価値がある

You deserve it.

コレは今から10年以上前、
当時参加したプロジェクトで一緒に働いていた
アメリカ人の友人に私がよく言われていた言葉。

私は英語を日本で勉強してきていたが、
外国人の友人がいた訳でもなく、
留学をしていた訳でもなかったので、
このdeserveという言葉に馴染みがなかった。

初めて聞いた時は、ん?と思ったけど、
状況的に彼女は私を励ましてくれてる気がした。

後に調べてみて、このdeserveという単語を知る。

辞書に載っているのは、
(賞罰に)値するという意味。

直訳すれば、「あなたはそれに値する」だけど、
ネイティブは、「頑張ってたもんね。」とか
そういうニュアンスでよく使うらしい。

彼女がどういう気持ちでその言葉を
選んでいたかはわからないが、
私は言葉の意味から、私がやってきたこと、
私が生きてきたことそのものが
肯定されている感じがして、
この励ましの言葉を好きになった。

そして、そうやって励ましてくれた彼女に
今でもとても感謝している。


遠く離れたハワイにいる友人との出会い

彼女は、ハワイに住む日系4世で、
年は私よりも5歳以上は若かったはず。
(あんまり人の年齢を気にしないので、
正直覚えていない)

日系4世ともなると、見た目は日本人ぽくても
中身はほぼアメリカ人だ。

彼女は大学卒業後、JETプログラムに参加して、
英語を教えながら日本に住んでいた経験もあり、
日本語も話せるが、流暢とまではいかなくて、
私の英語レベルと彼女の日本語レベルが
大体同じくらいだった。

要は、相手が話す外国語の内容は
大体わかるんだけど、
自分の考えを話すのに、第二言語を
そこまでうまく使えないレベル。

だから、私と彼女が話す時、
私が英語混じりの日本語で話して、
彼女は日本語混じりの英語で返し、
また私が英語混じりの日本語で話す
みたいな状況。

なんだめんどくさいと思うかもしれないが、
私が英語で話すよりも日本語で話す方が、
より深い話ができるし、
彼女も一緒懸命日本語で話しかけてくれても
細かいニュアンスは説明仕切れてないので、
英語で言ってもらった方が私も理解できるのだ。


そして、私たちは似たような立場で
プロジェクトに参加していた。

被災地の中学生をハワイへ招待して、
ハワイの自然や文化に触れて
元気になってもらおうという趣旨の
プロジェクトで、
私は日本側から参加する子どもたちの
募集から始まり、準備の手順などを
説明しお手伝いして、
一緒に同行する役目だった。

一方彼女は、当時はハワイ日米協会で
働くスタッフで、ハワイ側から
東北の子どもたちと交流する現地の子どもたちを
集め取りまとめて、
プログラムの準備などをしてくれて、
ツアーにも同行。

彼女はハワイのオアフ島に家があるから、
夜は自宅に帰ってしまうんだけど、
ツアーの中で、ハワイ島にキャンプで
2泊3日滞在する機会があり、
その時は彼女も一緒に同行したので、
同じ部屋に泊まってお互いの仕事の悩みや
プライベートな話もしたりした。

そんな時に、最初のYou deserve it.と言われて、
励まされていたのだ。



自分の価値の迷子になる

特に日本に住んでいると、
自分自身の価値みたいなものを
感じられなくなることがある。

私たちは、例えば持久走大会で1位になったとか、
学年で成績トップになったとか、
何か努力をしてその結果、形として見えた時には
褒められ、表彰されることが
あるかもしれないが、それ以外のことで
褒められることや
認められることはあまりないのではないか?

もちろん頑張って結果が出りゃ
それに越したことはないけど、
頑張っても結果が伴わないこともあるし、
何なら頑張る気力が起きなくて
何もできなかったり、頑張りたいことが
何なのかわからない事だってある。

そんな時、
私は生きている価値があるんだろうか?
ここにいる意味があるんだろうか?と
自問してしまうだろう。

当時の私はまさにそれで、
離婚して、仕事もうまくいかず、
精神的にも金銭的にもバーンアウトして、
実家に戻り、出直していたところだったから、
自信なんてどこでしょうか状態だった。

幸い、知人に声をかけられて、
子どもたちを支援する団体の事務局で
働くことになり、
ハワイへ行くプロジェクトにも
参加させてもらった。

プロジェクト自体は素晴らしいものだったが、
自分は実に場違いな人間で、
関わってしまっているこの状況を
うまく自分の中で整理できてなかった。

だから、きっと私の話す雰囲気の中に、
そういった自信の無さが滲み出ていて、
彼女はしきりと私にYou deseve it.と
伝えてくれていたのかもしれない。

deserve(値する)するのが、youという主語、
私自身である事が特に良かった。

私が行動した何か対して
値すると言ってない構文が良かった。 
私であることだけで値するような気持ちに
なれた。

だから、とても勇気づけられた言葉だった。

その後も落ち込んだりすると、
この言葉を自分で自分にかけて乗り切ってきた。


この言葉をより印象づけた話

この言葉自体は、ネイティブなら
よく言うセリフなのかもしれないが、
彼女との思い出深いエピソードがあって、
そのおかげもあって、私の中に
強く残っているのかもしれない。

ツアーの日程は10日間だから、
彼女と過ごすのはその間の少しの時間。
後は、日本とハワイにいる間に、
準備の関係でメールでやり取りする程度。

しかし、回を重ねることで深まった。

このプロジェクトは全部で10回開催され、
そのうち8回までは彼女の所属する
ハワイ日米協会が参加していたから、
彼女も8回目まで一緒だった。

私自身も最後まではこのプロジェクトを
見届けることはできずに
当時働いていた事務局を退職したが、
そのうち6回は同行させてもらったので、
その度に彼女と会えた。

何度か顔を合わせ、短くても
一緒に過ごしている間に
喧嘩をしたことがあった。

あるツアーの最中の彼女の態度がそっけなくて、
何だか対応が雑だなと思い、
私もそんな彼女に対してイライラしていた。

そんな時、集合時間になっても
彼女が現れなくて、
どこに行ったんだろうとなった。

子どもたちが主役で、
私たちはそれを支える側なのに、
時間に遅れるとはなんてこったと
イライラしながら私は探し回っていた。

キャンプ場だったので、トイレの中に
シャワールームもあるタイプだったんだけど、
そこで彼女の名前を呼んだら、
シャワールームの中いた。

時間に遅れてるよ。どうしたの?と
イライラしながら声をかけると、
着替えを持ってきて欲しいこと、
生理用のナプキンを持っているかと訊かれた。

後で知ったことだが、
彼女は生理のトラブルを抱えており、
(子宮内膜症みたいな)この時も、
思いがけないほどの出血で
洋服などを汚してしまったようだった。

シャワールームに入ったはいいものの、
これからどうしようと途方にくれていた時に
私が来たわけだ。

私は部屋に戻り、彼女の着替えと
自分の持っていた生理用品を持って
トイレに戻り彼女に渡した。

しばらくして彼女は身なりを整えて
みんなと合流した。

私はめちゃめちゃ気まずかった。

だって彼女の態度の原因は生理による
体調の変化で、どうにもならないことだった。

しかも、このキャンプに同行している
大人のスタッフは、私と彼女以外
みんな男性だったから、
彼女が頼れるのは実質私だけだった。

それなのに、そんなことも気づかずに、
彼女の態度にイライラしていた自分が
恥ずかしくなった。

しかも私は彼女よりだいぶ年上なのに。

着替えを渡す時も気の利いた言葉も
かけてあげられなかった。

むしろ、その気まずさを紛らわすかのように、
彼女が時間に遅れたことを
根に持つような感じで、
私はその後も彼女にそっけない態度を
とってしまってた。

なんと大人気なく、恥ずかしい。

彼女はそんな態度の私をみて、
勇気を持って話しかけてくれた。

なんで怒ってるの?と。
私は怒ってないよと返す。

いやいや怒ってる態度だよ。と彼女。

今日の事は避けられない出来事だったんだと、
彼女は自分の抱える生理トラブルのことを
話してくれた。

調子が悪くても、仕事だからキャンプ場に
来なきゃならなかったこと、
私のほかに女性スタッフもいないし、
心細い思いをしていることなどを
打ち明けてくれた。

だから、まさみがそんな態度だと辛いんだよと。

私も聞いているうちに彼女の気持ちが
よくわかり、自分の不甲斐なさもあって
泣き出してしまった。

ごめんね。そんなつもりはなかったの。
とやっとの思いで伝える。

そしたら、彼女は優しくハグしてくれて、
2人して泣きながらハグして仲直りをした。

そんな彼女とは、もうしばらく会えていない。
彼女は今や3人の男の子の母だ。

SNSで繋がっていて、時々彼女があげる
息子くんたちの写真を眺めコメントするくらい。

私は1人息子でヒィヒィ言っているのに、
やっぱり彼女は頼もしい。



私はあまりに無力だけども

なんで急にこんな話をしようかと思ったかと
言うと、昨晩こんな記事を読んだ。

私が関わってきた被災地の中学生たちと
ほぼ同世代で、彼女の出身の大曲小学校も
よく知る場所だから、他人事には思えなかった。

無力感を覚えて、
昨夜は酷く落ち込んでしまった。

私が落ち込んだところで、全く関係ないし、
私が思い悩んでも全く持って関係ない。

それはわかっているんだけど、
何だかなぁと思っていた時に、
友人から言われたYou deserve itを
思い出したんだ。

この記事の彼女の受けた傷の深さや、
10万人分の署名を集めるために
どれだけ大変な思いをしたかを思うと、
胸がしめつけられる。

また、一度描いた夢をこんな形で
打ち砕かれて、それでもこれから
生きていくという彼女の気持ちを考えたら、
本当に彼女にYou deserve it.と伝えたくなった。

日本語の頑張ってるもんねとは
全く違う意味合いがあると思うから、
あえて英語で。


彼女に直接伝わるとは思えないけど、
例え彼女に伝わらなくても、
これを読んでくれた人に
伝わったらいいなと思う。


生きてると理不尽なことや、
うまくいかなくて
もうお手上げだということにも遭遇する。

そんな時、自分自身の価値を自分で
疑ってしまうこともあるかも知れない。

でも、そんな時はこのYou deserve it.
という言葉を思い出して欲しい。

あなたにはその価値がある。


自分でどうしても自分の価値を
信じられなくなったら、
あなたが信頼できる人に相談してみて。

私でよければ、あなたの話をじっくりと聞いて、
You deserve itと伝えたい。

だってあなたにも私にも価値があるんだから。


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待ってます。


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