【オーロヴィル滞在記】③オーガニック農園でのボランティア
今回は、オーロヴィル(Auroville)での、農園でのボランティア体験について書きたいと思います。
なぜ農園でボランティアをしようと思ったか
世界最大のエコビレッジ、オーロヴィルで実践されている永続的農業について知ってから、実際にボランティアをして実践的に学ぶことに決めました。
日本でもインドでも、都市部で育ったこともあり、農業については教科書やインターネットでの情報しか知らず、実際に自分の手を動かすことで、より多くの学びが得られると思ったからです。
近年インドで急速に市場が拡大しているオーガニック野菜ですが、コストに敏感なインドの消費者は、手が届きにくいのも事実。
どうしたらオーガニック野菜の価値が認知されるようになるか?
なぜ価格が高くなってしまうのか?
そんなことを知りたいと思い、オーガニック農業を実践している農園で、ボランティアを行うことにしました。
農園ごとに異なる農法を取り入れている
オーロヴィルには、約20以上の農園があります。
私は滞在中、10以上の農園を訪問しましたが、自然農法、永続的農法、水耕栽培など、農園ごとに個性ある農法を採用していました。試行錯誤を繰り返しながら、土壌やインフラに適した農法を実践しているようでした。
特にどこの農園でも工夫されていたのが、水と電気の効率的活用。
オーロヴィルは、土地の性質上、地下水資源が十分ではないそうで、年に一度の雨季に降る雨水を回収するピットを作り、雨水が土壌に留まる仕組みを作ったり、水の使用量を最小源に抑える灌漑設備を作ったりしていました。
また農園で使う電気も、農園内で太陽光発電しているところが多くありました。
どこの農園でも聞いたのが、
「オーロヴィルは実験と探求の場所。色々試してみて、土地や気候に適していれば上手くいく。上手く育たなければ、また他の方法を試せば良いんだよ」という言葉でした。
ボランティアの活動~1日の流れ
滞在中、私は2つの農園でボランティアを行いました。
ひとつはオーロヴィル内で最大の敷地面積(40エーカー)を有するAuroorchard Farm。もうひとつは教育や最新技術の導入にも力を入れている、小規模なコミュニティ農園、Budha Gardenです。
(Budha Garden は、1日からの参加も受け入れており、その日の朝に農園に行けば誰でもボランティアに参加できるので、短期滞在だけどボランティアをしてみたい人には向いているかも)
それぞれ採用している農法も、活動しているボランティアのメンバーも異なり、2つの農園でのボランティアをしたことは、視野を広げる良い経験になりました。
Auroorchardという農園では朝7時~9時まで、Budha Gardenでは朝6:30~9時まで、ボランティアを行っていました。私は本業の仕事をリモートワークで行う必要があたため、朝9時までボランティアに取り組んでいました。
1日の作業は、その日によって異なります。堆肥作り、雑草抜き、マルチング、苗の植え付け、収穫、水やりなどです。
実際の作業を通じて教えてもらったのが、農業のほとんどは「土壌作り」だということ。いかに栄養のある土壌をつくるかが、収穫の量と農作物の質に影響する。
オーガニック農園では、化学肥料は使用しないため、牛の糞尿や枯葉、木炭などの有機物を使って、栄養を与える堆肥を作っていました。
また、作物を植えたらすぐマルチング(土壌を覆って太陽光によるダメージ、雑草の繁殖を防ぐこと)をして、土壌の栄養を保つようにしていました。
工業的な農業では、黒いビニール資材でマルチを行うことが多いようですが、ここでは、裁断した枝葉をマルチに使っていました。
こうすることで、微生物を呼び込み土壌の中の生物多様性のある環境を作るねらいもあるそうです。
世界各国から集まるボランティア
オーロヴィルの農園に来ていたボランティアは、非常に国際色豊かでした。
私がボランティア中に出会った仲間のバックグラウンドも様々。
イギリス、フランス、アルゼンチン、チリ、アメリカ、ロシア、、そしてインド各地から来た人々に出会いました。
海外から来た人々はバックグランドも様々。
インドを旅してオーロヴィルに行き着いた人、
世界各地のエコビレッジを放浪している人、
ボランティアをしながらオーロヴィルのメンバーになろうとしている人、、
インド国内から来た人も、多様な人がいました。
IT企業を辞めてオーガニック農業を始めようとしている人、
家庭菜園を始めようとしている家族、気候変動分野の研究者、
農業廃棄物で事業を起こそうとしている学生、自分探しの旅に出ている若者、、
ボランティア中に出会った人々には、多くの刺激を受けました。
ボランティア体験を通じて学んだこと
農園でのボランティアを通じて、多くの学びを得ました。
①インドのオーガニック農業事情について知れた
オーロヴィルの農園は、過去50年持続可能な農業に取り組んでおり、知見と経験事例が蓄積しています。ここでの経験や農園の人々から、インドのオーガニック農業事情について、多くの知見を得ることができました。
オーロヴィルの農園で採用されている自然農法や永続的農法(Permaculture)やアグロフォレストリーは、持続可能な農業の実践例として、インド国内やタミル・ナドゥ州の農業組合や企業から注目され、毎年多くの農家がトレーニングや視察に来るそうです。
こうした取り組みも貢献して、タミル・ナドゥ州ではオーガニック農業に転換する農家が急増しているようです。最も伸びが顕著なコインバトール地区では、過去2年で134%の土地がオーガニック農業に転換したそうです。
また、肥料や殺虫剤に補助金が拠出される現在の政策や、農業市場構造など、インドでオーガニック農業が普及しない、マーケットが発展途上にある課題なども教えてもらいました。
こうしたインドの農業事情について知れたことは、持続可能な農業の普及と課題について関心があった自分にとって、大きな学びになりました。
②住民参加型アプローチの実践例を知れた
オーロヴィルで育った農作物は、基本的にはオーロヴィルのコミュニティ内に供給されます。
農産物の供給過程で、様々な課題もあるらしく、それらは、農業を取り巻く一般的な問題と類似するところがありました。
例えば、オーロヴィルでは、オーガニック野菜に対する理解のある人がほとんどですが、生産過程でやむなく生じる、ふぞろいな野菜や、虫食いがあると、売れないこともあるのだそう。
また農産物は、食料分配グループやオーロヴィル内の小売店を通じて、
住人たちに供給されますが、小売店が高いマージンをつけることで、最終的な売価が高くなりすぎて、売れないことも。
農園としては、質の良いオーガニック野菜を、購入しやすい価格で提供したいが、小売店がつけるマージンによって、最終的な販売価格が高くなりすぎてしまう。
限られた水資源を、コミュニティの農園間でどう分配するかも、喫緊の課題だそうです。
こうした課題に対して、オーロヴィル内の農園主たちがグループになって、
最終消費者であるコミュニティのメンバーと直接対話しながら、オーロヴィルの農業や供給方法のあるべき姿を目指し、試行錯誤しているのだそう。
例えば、最終消費者に直接販売するファーマーズマーケットを開催したり、
地下水資源の分配方法を農園やコミュニティと協議したり、効率的な水の利用を実現する灌漑設備の導入に向けて、ファンド・レイジングを行ったり。
私は、こうした課題は、世界共通の農業の課題であるように思いました。
その課題に対して、農園(生産者)の人たちが協力して、コミュニティ(消費者)を巻き込みながら、課題に対する意識形成や、対策を実践していることは、コミュニティ参加型アプローチとして、問題解決のためのひとつの手本を示しているような気がしました。
以上です。インドに滞在していて、オーガニック農業に興味がある人は、オーロヴィルでのボランティア体験を、ぜひおすすめします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。