見出し画像

sayuras 結成のきっかけとなったライブ

sayuras 結成のきっかけとなったのが、ヴォーカル三上ちさこさんの2022年5月25日@下北沢Shelterでのソロライブ「Re:Born 20+2 Anniversary Live 三度目の正直」。

このライブで、sayuras メンバーの4人が初めて同じステージに立って演奏。終演後、ちさこさんは、バックバンドとして演奏していた、根岸孝旨さん西川進さん平里修一さんの3人にバンド結成を申し出た。

その時のセットリストをもとに、Web にアップされているライブ映像やライブレポートを繋ぎ合わせて、どのようなライブだったのか、追体験してみようと思う。

なお、このライブに至るまでの経緯は、ちさこさん、根岸さん、そしてプロデューサー保本真吾さんのインタビュー記事に詳しい。


オープニングは「JUNCTION」。ちさこさんを追い続けている音楽ライター、信太卓実さんは、こう評している。

まず1曲目「Junction」から、声量も表現力も全く色褪せていない三上の歌声に驚いた。人生のさまざまな転機を経験してきたことによる力強さも繊細さも寛容さも、すべてが滲み出ており、22年のキャリアを注ぎ込んで臨んでいるライブだということが伝わってくる、気迫に満ちた歌声だ。〈気づけば折り返し/大事なものもできた/限りある人生だ/くだらないプライドは/置いて行こう〉という歌い出しは三上のテーマそのもの。観客一人ひとりが持ち合わせた特別な感情に語りかけるように、しっかり目を見つめて歌詞を噛み締めながら歌い上げていく。

信太卓実「三上ちさこ、20年の歩みを肯定していく圧倒的な歌声 fra-foaの楽曲に新たな意味が生まれたアニバーサリーライブ」(リアルサウンド、2022年5月31日)

このオープニング曲を含め、ライブ前半は、保本真吾さんがプロデュースするようになってからのソロ曲が次々と演奏された。

二曲目は「Parade For Destruction」。この曲は、前回の sayuras ライブ(2024年4月@渋谷eggman)でも二曲目で演奏されている。

続いて「dear」。この曲は、ちさこさんが自身のインスタアカウントにこの時の演奏のハイライトをアップしている。

続いて、「Inner STAR」。そして、ちさこさんにとっての転機となった曲、「TRAJECTORY -キセキ-」。

ここまでの流れを、前出の信太卓実さんは、

〈求め合えぬさみしさ/許し合えぬ悲しさ/そのすべてが君を照らし出すから〉(「dear」)、〈君がその奥に閉じ込めている/誰も知らない哀しみは/どこかで泣いている/あのこを掬うだろう〉(「Inner Star」)、〈潜ってた日々が実を結ぶ/そんなキセキ 見たくはないかい?〉(「TRAJECTORY-キセキ-」)と歌うライブ序盤のソロ楽曲を聴いても、fra-foa時代の自分を今の三上が明るく照らし、“一緒に歩もう”と語りかけているようにさえ思えた。

信太卓実「三上ちさこ、20年の歩みを肯定していく圧倒的な歌声 fra-foaの楽曲に新たな意味が生まれたアニバーサリーライブ」(リアルサウンド、2022年5月31日)

と評している。

ここから、さらに昔に遡ったソロ曲が披露される。まず、2005年発表の「解放区」。その次に、2012年の自主制作ソロアルバムから2曲。「アザミノ」は、おもちろっくさんが会場で撮影した映像をYouTubeにアップしている。

続いて「wallless」。こちらは、ちさこさんのオフィシャルインスタグラムから。

この曲は、ちさこさんらしい憂いがぎゅうぎゅうに詰まってて美しい。


ライブ後半は、ちさこさんが長らく封印してきた、fra-foa の曲が次々と演奏される。

まずは、「プラスチックルームと雨の庭」。

「プラスチックルームと雨の庭」のイントロが鳴り始めた瞬間は、鳥肌が立つほど大きなハイライトだった。生きる価値を見出せなかった〈僕〉が、〈君〉との出会いを通して自分の中にある〈誰かの喜ぶ顔が見たい〉という感情に気づいていく同曲。もともと心のトゲがそのまま楽曲全体のエッジになって表出している印象だったが、今の三上が歌うことで、闇ではなく光の部分に、死への願望ではなく“生の実感”に最大限のスポットライトが当てられる。かつて殻の中で“愛されたい”という気持ちを抱えて何かを待っていた三上は今、過去の自分も含めて、誰かに手を差し伸べられるアーティストに成長しているのだ。

信太卓実「三上ちさこ、20年の歩みを肯定していく圧倒的な歌声 fra-foaの楽曲に新たな意味が生まれたアニバーサリーライブ」(リアルサウンド、2022年5月31日)

ハートカクテルさんが会場で撮影した動画をYouTubeにアップしている。

続いて、sayuras 結成後も繰り返し演奏されている「edge of life」と「blind star」。

続いて、fra-foa の曲としては珍しいストレートな失恋の曲、「煌め逝くもの」

「息継ぎする場所がなくて大変な曲」だと語った「煌め逝くもの」では言葉を畳みかける圧巻の歌唱を披露した。

信太卓実「三上ちさこ、20年の歩みを肯定していく圧倒的な歌声 fra-foaの楽曲に新たな意味が生まれたアニバーサリーライブ」(リアルサウンド、2022年5月31日)

idm ym さんが撮影したYouTube動画がこちら。

この演奏の最後は、fra-foa の原曲にはない、楽器隊3人によるアウトロが追加されていて、今思えば、これが sayuras の一番最初のオリジナルの曲と言えるかもしれない。そのアウトロが終わった後のちさこさんの表情がとても良くて、この瞬間にバンド結成を決心したのかも、と思った。

そして、fra-foa の代表曲、「青白い月」。

代表曲「青白い月」では、さらに声色が変わったかのように儚くて伸びやかな歌唱が素晴らしく、(全曲そうなのだが特に)かなり細やかなリズムを刻んだ語尾のビブラートで、味わい深さを増幅させている。

信太卓実「三上ちさこ、20年の歩みを肯定していく圧倒的な歌声 fra-foaの楽曲に新たな意味が生まれたアニバーサリーライブ」(リアルサウンド、2022年5月31日)

本編最後は、やはり、「月と砂漠」。

本編ラストを締めくくったfra-foaの1stシングル曲「月と砂漠」アウトロのセッションパートは圧巻だった。熟練の腕でスマートに低音を鳴らす根岸と、パワフルかつタイトなドラマー 平里による安定感抜群なリズムの上で、日本のオルタナティブサウンドを支えてきた西川の泳ぐようなファズギターが炸裂。演奏面も大きな聴きどころとなった。

信太卓実「三上ちさこ、20年の歩みを肯定していく圧倒的な歌声 fra-foaの楽曲に新たな意味が生まれたアニバーサリーライブ」(リアルサウンド、2022年5月31日)

アンコールでは、この時はまだリリース前だったソロ曲「レプリカント(絶滅危惧種) 」が披露され、続いて演奏された「澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの。」は、ハートカクテルさんの撮影した映像がYouTubeにアップされている。

そして、最後を飾ったのが「小さなひかり。」だった(この曲については、渋谷WWWでの sayuras ライブの前日に紹介する予定)。こちらは idm ym さんの撮影。


どの動画を見ても、やはり、sayuras 楽器隊の演奏力がすごい。ちさこさんが、この3人の演奏と共にこれからも歌っていきたい、と思ってバンド結成を申し出た気持ちがわかる。

そうして結成に至ったバンド、sayuras の次のライブが、ソールドアウト間近。そのことを伝える、ちさこさんの今日のインスタ投稿では、sayuras の 2nd シングル「RTA」の個人リハーサル模様をアップしている。

会場となる渋谷WWWは音響が良い事でも知られているようなので、京都から足を運んで見にいく私は、楽しみで仕方がない。

sayuras 渋谷WWW ワンマンライブ(イープラス / ローチケ)まであと8日

注:トップ画像は、この下北沢Shelterでのライブのアンコールシーン。撮影はヤスカワショウマさん(リアルサウンド2022年5月31日の記事より)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?