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「僕の子供」

sayuras がライブで演奏する曲には、sayuras の曲、fra-foa の曲、そして、三上ちさこソロの曲がある。このうち最後の三上ちさこソロ作品としては、「Anti Star」を以前紹介したが、今日紹介したいのは「僕の子供」。

前回のライブ(2024年4月@渋谷eggman)での様子が、ちさこさんのインスタアカウントにアップされている。

この歌は、昨日紹介した「プラスチックルームと雨の庭」に対する約20年後のアンサーソングだと私は解釈している。実際、この渋谷eggmanでのライブでは、「プラスチックルームと雨の庭」の次に演奏された。

この曲では、ちさこさんが母という立場から自分の子供へ語りかけるような歌詞が続く。

ただひとつ 確かなのは
為すすべもなく 君を愛して いる
変わらずに 抱き締めたい
いつまでも君は僕の子供

三上ちさこ「僕の子供」

無条件の愛であることが綴られていく。

躁鬱に苛まれて 起きる意味さえ 見出せなくなっても
大丈夫 僕もそうだよ
生きているだけで素晴らしいんだ
君は永遠に僕の誇り

三上ちさこ「僕の子供」

「ねえ僕は この世界に真実 望まれて 生まれて きたのかな?」と歌う「プラスチックルームと雨の庭」の主人公に対してのメッセージに私には聞こえる。

「起きる意味さえ」の「起きる」という言葉をドスが効いたような声で歌っているところは、「プラスチックルームと雨の庭」の「潰れそうな夜は」という言葉の歌い方と同じ。

この「僕の子供」という曲は、この曲だけ取り出して耳にすると、平凡なバラードに聞こえてしまうかもしれない(実際、私自身、最初聞いた時はピンと来なかった)。でも、三上ちさこというアーチストのこれまで生きてきた道という文脈の中に位置付けると、印象が大きく変わり、そこに物語が生まれ、説得力が増す。

最後の「君は永遠に僕の誇り」というフレーズの後、一瞬の沈黙をはさんで、西川進さんのかなりエッジーなギターの音でアウトロが始まる。このギターの音はソロ作品としてリリースされたオリジナルのアレンジにはない。この音のチョイスは、ちさこさんの生きてきた道の延長線上にこの曲があるという解釈から生まれたのではないかと思う。

そのギターの音は、sayuras デビューライブ(2023年12月@下北沢 Club Que)での以下のクリップ映像の一番最後で聞ける。


この曲のリハーサル風景の動画を投稿したインスタ投稿の中で、ちさこさんは

『僕の子供』という曲は、自分にとっても特別な曲で。 これはソロの曲だけど、バンドのメンバーはみんな その曲がどうしたら一番聴いてるひとの心に響くか、ということを一生懸命考えて、準備して、音を奏でてくれてる。

三上ちさこインスタグラム投稿(2024年4月3日)

と記している。

この sayuras の4人のメンバーの、心の深い部分にある何かを共有したからこそ生まれてくる真剣さ。これが sayuras の大きな魅力だといつも思う。


sayuras 渋谷WWW ワンマンライブ(イープラス / ローチケ)まであと18日

注:トップ画像は、sayuras の四人が初めて同じステージに立った2022年5月の下北沢Shelterでの様子(リアルサウンド2022年9月30日の記事から)。





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