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sayuras のデビューライブ

2023年12月16日、下北沢 Club Que にて、sayuras の最初のライブが開催された。当日、私は京都から高速バスで東京へ乗り込み、ライブ終了後、深夜バスで帰るという強行軍で、ライブに参戦。帰りのバスの中では、ライブの興奮にうなされて眠ったり起きたりを繰り返し、帰宅後もアーカイブ配信でもう一度ライブを観た。そして気づいたのが、ライブハウスで生で観るという体験の特別さ。体が360度全方向から音に包まれ(Club Queの音響はとても良かった)、ディスプレイの画面を通さずに直接ステージ上でのパフォーマンスを感じ、周りにいる他のお客さんの熱気が伝わるのを感じる。

そして、この日の sayuras の四人は、とても本気だった。新しくバンドを始めんだ、という決意をひしひしと感じるパフォーマンスだった。

なのに、この日のライブの様子を書き留めた記事が、Web上のどこにも見当たらない。ライブ終了後に私が sayuras ヴォーカルの三上ちさこさんにDMで送った感想と、sayurasオフィシャルYouTubeチャンネルの動画と、会場に足を運んだファンの方々(特に M.A.E.C. 80s さん)が撮影してYouTubeにアップした動画をつないで、追体験してみたい。


オープニングは、sayuras ギター、西川進さんが作曲したインストに合わせて、メンバーがステージに登場。一番最初に演奏されたのは、sayuras デビュー曲「ナイン –nine– 」。その様子はノーカットで観ることができる。

このオープニングで、私は既に感極まっていた。ちさこさんへの感想メッセージにはこう書いた。

最初の「ナイン」の途中で既に涙が出てました。ちさこさんらしい歌詞と、sayurasの演奏力と、Club Que の音響の良さと、目の前に見えるちさこさんの歌う姿、その組み合わせで、最初からノックアウトされ、そのテンションが途切れることなく最後まで続きました。

続けて、こちらはライブ当時未発表だった sayuras の曲「ウェルカムトゥブレインワールド」。まさかの横ノリの曲で、sayurasベースの根岸孝旨さんの心地よい音色に自然と体が動いたのを覚えている。その一方で、西川さんのクレイジーなギターが鳴りまくるというアレンジは、ちさこさんが1990年代にファンだったと語るICEを思い出した。

その後、ブレイクを挟まずに演奏が始まったのが、なんと、fra-foa のレア曲「daisy chainsaw」。西川さんによるギターのイントロが始まった瞬間、鳥肌がたった。

序盤の三曲がどれも音楽的な方向性が違うという目まぐるしい展開。セットリストは、この後もせわしなくあちこちに動き回るような構成で続いていく。

ここでMC。ちさこさんに fra-foa の「変なベース」の話を振られた根岸さんが、「今回、fra-foa の曲のベースは自分流にアレンジした」と話し、「先のない二人の、切ない思いを、歌った曲です」とのちさこさんの曲紹介に続いて演奏されたのが、私が fra-foa の曲の中で一番好きで、聞くたびに涙ぐんでしまう曲、「lily」。

この sayuras バージョンの「lily」は、正直なところ、受け入れられなかった。ちさこさんの歌を、根岸さんがアレンジしたベースラインが邪魔するように聞こえてしまったから。でも、sayuras の音に聞き慣れた今、改めて聞くと、美しい歌だと思えるようになった。

この曲のギターソロのところで、ちさこさんは後ろを向く。前に向き直った時、少し涙ぐんでいるような気がした。そんなかすかな表情の変化も、ライブハウスで間近に見えるところにいると、感じ取ることができる。配信のスクリーンではわからない。

そして、そのままMCなしで演奏が始まったのが「僕の子供」。

この曲の後に、ちさこさんは「大人になっても、自分って愛されているのかなあ、必要とされているのかなあ、と思う時、自分を必要としてくれた、愛してくれた人がいたんだと思い出して欲しくて、この曲を書きました」と話していた。この時は何を話しているのか理解できなかったけれど、「僕の子供」が「プラスチックルームと雨の庭」のアンサーソングであると気づいた今なら、よくわかる。

ここで、気分転換。大谷選手のドジャース入団記者会見の話から、メジャーリーグといえばこの曲、ということで「TRAJECTORY –キセキ–」が演奏された。

続いて、これも野球との関連で生まれた曲、「Red Burn」。

間髪入れず、西川さんのギターの即興演奏が始まる。ここからの流れが、私としてはこのライブのハイライトだった。まずは、「edge of life」。

そして、今度は、根岸さんのベースソロから始まって、「レプリカント(絶滅危惧種)」。原曲とはアレンジが随分変わり、極上の sayuras サウンドに生まれ変わっていた。

この曲の最中、ふと、斜め前にいた背の高い男性のお客さんが、涙を流しているのに気がついた。自分もこの後、別の曲でまた涙ぐんでしまうのだが、ステージ上のちさこさんも含めて、人それぞれに感極まる場所が散りばめられているのが sayuras のライブ。

そして、新型コロナの最中に病んでしまった時に作った曲です、との曲紹介で始まったのが、この時は未発表だった「揺れる」。

今聞くと、ライブ後にリリースされたバージョンとはアレンジが若干違うことに気がつく。

この三曲を通してずっと、根岸さんのベースがカッコよくて、特に「揺れる」での、ちさこさんの歌と絡み合う展開は、sayuras の大きな武器になると思った。

そして、この時は未発表だった sayuras のもう一つの曲「KYOKAI」が演奏された。sayuras オフィシャルYouTubeチャンネルで、ノーカットで観ることができる。

続いて、間を置くことなく演奏されたのが fra-foa の名曲、「青白い月」。でも、 sayuras の曲として生まれ変わっていた。平里修一さんのドラムがいい。

そして圧巻だったのが、「君は笑う、そして静かに眠る。」で、根岸さんのベースのハウリングから始まるなど、これも sayuras の曲に生まれ変わっていた。

曲の終盤、sayuras 楽器隊の演奏の迫力に引っ張られて、ちさこさんのヴォーカルの伸びに一層磨きがかかる。これこそが、ちさこさんが sayuras 結成を望んだ理由。

本編最後は、「blind star」と、平里修一さんのドラムソロを挟んだ後の「Anti Star」で締め括られた。この二曲が通しで、sayuras オフィシャルYouTubeチャンネルで、ノーカットで観ることができる。


アンコールは、sayuras のセカンドシングル「RTA」。motomasa117さんが撮影した動画がYouTubeにアップされている。

「これで終わりにしようと思っていたけれど、自分の原点になった曲も sayuras で演奏したいと思った」とのちさこさんの曲紹介に続いたのが「澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの。」だった。

そして、最後を飾ったのは、やはり「小さなひかり。」だった。ぼのぼのさんが、ちさこさんの目の前最前列で撮影した映像がYouTubeにアップされているが、残念ながら音質が良くない。でも、他に映像がWeb上に残っていないので、以下にリンクする。

この曲で、私はまた涙ぐんでしまった。

今、改めて聞いてみて気づいたのは、この「小さなひかり。」という曲は、fra-foa の原曲では、「小さく光がみえた」という歌詞を、ちさこさんが一人でアカペラで歌って、曲が終わる。ちょうど1年前の同じ4人でのステージでも、同様のアレンジで、ライブ全体が締め括られた

でも、sayuras としての「小さなひかり。」は、ちさこさんが一人ではないということを示すかのように、楽器隊の3人が音を出して盛り上げて終わる。sayuras とは何か、を端的に表す演出だと思う。


sayuras 渋谷WWW ワンマンライブ(イープラス / ローチケ)まであと5日!チケット、残り数枚だそうです。)

注:トップ画像は、sayuras 結成が発表された時のアーチスト写真(リアルサウンド2023年9月8日付記事より)。


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