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蒸し暑い夏の夜、路地にて。

この道、嫌だな。
なんだか良い感じじゃない。
こういうときの直感は大事にすべきだ……。
……とはいえ、だ。
もう門限過ぎそうだし、
今からこの道を戻って大通りから
家に帰るのは……現実的じゃないよな。
とんでもなく嫌な感じだ。
シャンプー中の背後霊の感覚。
あるいはリンス中の……。
ひたりひたり
やばい感じだ。
既にいるよ……これは絶対だ。
絶対の感覚……。
うらめしやー!!!
ひぃー、殺さないで殺さないで!
成仏してぇー。
相変わらずビビりだね。
渚ちゃん。
私だよ、私……。
ぬあ! ああ、なんだ……。
……。
…………。
マジかよ。渚ちゃん。
お姉ちゃんだよお姉ちゃん。
彩羽お姉ちゃんのことを忘れるかね。
あ、ううん。ごめんごめん。
彩羽姉ちゃん。
あんまりビビらせないでよ。
渚ちゃんが夜道を一人で歩いている。
ビビらせずにいられるかってんだ。
止まるよ……老人でなくったって。
心臓……。
あはは。ごめんごめん。
家、お隣だし一緒に帰ろうぜ。
うん……。
ありがとう。
彼女出来た?
出来てないよ。
セックスしてる?
誰とするんだよ。
シコってる?
まあそれは……。
へえ、大きくなったんだね。
主に下半身が。
下ネタばっか。
じゃあ上ネタを……。
なんだよ上ネタって。
乳首だろ普通に考えて。
結局下じゃないか!
あはは!
やっぱり渚ちゃんの突っ込みは気持ち良いな。
セックスほどじゃないけど。
……。
そこは、どうやってヤるんだよ!
でしょ。
……。
何泣いてんだよぉ。
うるさい!
下ネタが嫌いなんだよ。
知ってるよ。
でも意地悪したくなるんだよねえ。
だってそうしたらさ。
ずっと覚えていてくれるでしょ。
忘れないよ。
そんなことしなくたって。
ずっと。
そうだよね。
分かってるんだけれど。
そんなことしなくたって、ね。
うん。
家、着くね。
うん……。
また来年、会いに来てね。
……。
ずっと、覚えていてね。
……。
泣くなよぉ。
……。
じゃあね、ばいばい。
うん……。
ばいばい、また。
来年に……。
……はっ。
なんだなんだ。何が起きた。
どうして泣いてるんだ僕は。
なんだよここ、全然知らない道なんだけど……。
やっぱりシックスセンスを信じるべきだった。
我が絶対の感覚を……。
えっ、ここどこよ。
やばいやばい、パニックパニック!
やっべえ、あの人、絶対クスリやってる。
気付かれないよう駆け足で逃げよう。
落ち着け落ち着け。
こういうときはアレをブスっとやれば……。
マジでやってるよ。
結局、僕は門限を過ぎてしまい、
親にこっぴどく怒られた。
明日から忙しいのに、だって。
そりゃそうか。
爺ちゃんの家、車で3時間かかるし。


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