坂田昌子とその仲間たちVol.6 荒井美穂子
これは「坂田昌子とその仲間たち」のリレーコラムです。
こちらからつづいています⇒
Q1.あなたについて教えてください
「みほべぇ」こと荒井美穂子です。
仙台生まれの仙台育ち。生き物好きだった父の影響で、小さい頃からいろんな生き物を飼ったり、近くの山や池でドジョウやヌマエビ、ザリガニ、イモリなどを捕まえたりしていました。山菜とか野草については母や親戚のおばさんからも教えてもらいました。幸い、年頃になっても虫好き理科好きを恥ずかしいと思うことなく成長。高校の時は、夜は仙台市天文台に通い、そこで台長や社会人、大学生の科学談義に加わったり、ハレー彗星を見に行ったり。台長はもちろん物理の専門家だったのですが、「生物の方がずっと奥が深い。これからは生物学」と言っていて、元来の生物好きもあり、大学では生物学を専攻しました。大学の同級生たちも、小さい頃から生き物が好きで釣りが好きで、というようなワイルドな?人たちが多かったので、実習中も何か捕まえて食べたりするとか、遊んでるのか勉強してるのかわからないような感じでした。今思うと先生方には申し訳なかったです。
就職で東京に出てきてからは、化学系製造業の研究所や研究用の分析機器販売会社で働いていましたが、東日本大震災でのボランティアをきっかけに、復興支援のNPOに転職。
現在はNPO法人自伐型林業推進協会で環境プロジェクトを担当。自伐林家の山を自然共生サイトに申請するお手伝いをしたり、環境と共生する林業を実現するための山の見方や生物多様性への理解を深めるための資料作成・講座担当などをしています。
4年前から二拠点生活を始めた富山県氷見市の庭は、クモ、カエル、ヘビや様々な昆虫、鳥、さらにはアナグマやキツネもやってくるので、小さい頃の夢が叶ったような感じです。
9月からは坂田さんが理事をしている一般社団法人コモンンフォレストジャパンの事務局長としても関わっています。
Q2.坂田さんの生物多様性を重んじるワークショップを通じて
坂田さんのガイドではいろんな生き物同士の関係性について詳しく、しかもとてもわかりやすく話してもらえ、分野の最新情報などもカバーされているので本当にドキドキワクワクしっぱなしです。
美しいものや珍しいものではなく、いろいろな生き物とその生き方、関わり方、懸命で巧妙な命のやり取りについて楽しく話す坂田さんを見ていると、自分の気持ちも解放されていく感じがします。
ワークショップに参加した人たちがどんどん小さな生き物に魅かれていく様子も嬉しいです。一般的には「気持ち悪い」と避けられたりするような生き物を見る目が、どんどん変わり、輝いて、いつの間にかみんなが身を乗り出している。しかも女性が多い。その様子を見ると、「みんな、本当は好きなんじゃん。女性は理系が苦手とか、虫が苦手とか、そんなことない」って実感します。
そして、人間もまた、その大きな関わりの中の一つ。伝統技術や文化などがいかに深く自然と関わっているか、という話へと発展し、人間は上から一方的に自然を観察・利用するような立場ではなく、自然と関わり、自らの中に内なる自然を形成し、一緒に生き、生かされている存在であるということに気付かされる。その自然の中でこれから先も生きていくためには、個人で自然を愛でているだけでは守れないのだという、厳しい現実も教えられました。
それは、本当に厳しい戦いなのですが、悲壮感を跳ね飛ばすような坂田さんの笑顔に、こちらも笑顔になりながらシガラを組んだり、石を積んだりできることで勇気が湧いてきます。
いろいろな作業や発見の中には、目線が低く、体が小さい子供の方が得意なこともあったりして、「敵わないな」って思わされるのも楽しいです。
Q3.あなたにとって生物多様性とは
以前、中学生の干潟の生き物調査にアテンドした時、干潟生物研究の第一人者である風呂田先生(干潟の生物はほぼ全て食べたことがある、というツワモノでもあります)が「先生は今までいろんな生き物を発見してきたと思いますが、何を見つけた時に一番嬉しかったですか?」という中学生の質問に、「見つけて嬉しかったということよりも、普通にたくさんいた生き物が、いつの間にかいなくなっていくことが、一番ショックで辛い」と返答されたことは深く心に残っています。普通にいるものが普通にいて、毎年季節になれば、「ヤァ、今年も来てくれたんだね」と話しかけてしまう。そんな相手がたくさんいることが私が大事にしたい生物多様性です。
Q4.生物多様性の仲間で次にバトンをつなぎたい人
菊池幸子さんです。たおやかな雰囲気で重いものなんて持てないように見えながら、かけや(杭を打つのに用いる大きな木槌)を持つと体幹が決まっていて、とても凛々しく、男性以上に上手に杭を打ち込む姿に一目惚れしてしまいました笑。よろしくお願いします。