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双子の星 07
その時向うから 暴い声の歌が
又聞えて参りました。
大烏は見る見る顔色を変えて
身体を烈(はげ)しくふるわせました。
「みなみのそらの、赤眼のさそり
毒ある鉤(かぎ)と 大きなはさみを
知らない者は 阿呆鳥。」
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そこで大烏が怒って云いました。
「蠍星(さそりぼし)です。
畜生。阿呆鳥だなんて人をあてつけてやがる。
見ろ。ここへ来たらその赤眼を抜いてやるぞ。」
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チュンセ童子が
「大烏さん。それはいけないでしょう。王様がご存じですよ。」
という間もなく
もう赤い眼の蠍星が向うから
二つの大きな鋏をゆらゆら動かし
長い尾をカラカラ引いてやって来るのです。
その音はしずかな天の野原中にひびきました。
大烏はもう怒ってぶるぶる顫(ふる)えて今にも飛びかかりそうです。
双子の星は一生けん命手まねでそれを押えました。
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つづく
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