ウイッグ卒業
卵巣がん治療の記録をあれこれ綴る…と決め、少し書いてから半年経ってしまった……(汗)
運動不足と、おそらく(いや、確実に!)更年期からくる節々の痛みはあるものの、内科的には元気に経過観察期間を過ごしています。
先日、美容院でウイッグの下でモサモサになっていた髪の毛を整えてもらい、ショートヘア(地毛)再デビューしました。
私の場合、タキサン系の抗がん剤がアレルギーにより途中で使えなくなってしまったため、治療が終わる前から少しずつ、髪の毛が生えてきていたのです。その頃から、週1目標で自撮り写真を撮っていました。
抗がん剤治療が決まった日。先生がティッシュを差し出した
「卵巣がん疑い」で手術をしたのは、ちょうど1年ほど前の話。
結果は悪性。でも、がんは片側の卵巣内にとどまっており、全摘によりすべて取り切れ、ステージ1Aの診断。
「ああ、よかった。命拾いした」と安堵したのは束の間だった。
「明細胞癌なので、6回の化学療法=抗がん剤治療が必要です」とドクター。
いっしょに話を聞いていた夫は、「やっぱり…」と抗がん剤治療を覚悟していたいうが、私にとっては寝耳に水。なぜか、完全に手術で終わりだと思っていたからだ。
傷の痛みが回復したら、ぼちぼち仕事にも復帰して…とその後のスケジュールを入れている案件もあった。
私はフリーランスで仕事をしている。仕事相手に何と言ってリスケやお断りすればいいのか。病気のことをどこまで話せばいいのか。そんなことで頭がいっぱいのなか、聞かされたのはこんな内容。
●最初の投薬は入院。その後は通院で治療が可能
●ただし免疫力が下がる。治療中は感染対策を万全に。人混み外出厳禁!
電車に乗って都心へ仕事へ?そんなのもってのほか!
そして、全身が凍り付いたのが、副作用の説明。
●治療が進むほど、どんどんきつくなり、最後は這うように来る人もいる
●全身、つるつるになります…
え?ツルツル? まゆげもまつ毛も抜ける人もいる?
って、髪の毛は言わずもがなの前提…
「ウイッグもいいのがありますから」
そうか、抗がん剤治療をしているがん患者さんのイメージ通りの風貌になるのか……と理解した。
次の瞬間、先生が急に立ち上がって、消えた。
ティッシュの箱を持ってきて、私に差し出した。
気づいたら、私の目から水がポロポロと流れ落ちていた。
実際、いろいろキツイことがあったなかでも、「髪の毛がなくなる」ということは私にとってはある意味いちばんショッキングな出来事だった。
人のビジュアルの印象がどれだけ髪型に左右されているかを、痛感した。
副作用で顔がむくみ、髪の毛がなく、「いかにも、がん患者」になった自分の顔は、数年前に肺がんで他界した父の姿を思い出させた。
力持ちのサムソン⁉
旧約聖書に「力持ちのサムソン」という物語がある。
私が幼稚園(カトリック系)時代に読んだお話。あれから何十年も忘れていただろうに、この年になって、今回の出来事で急に思い出した
(これこそが三つ子の魂…ってやつか!)
不思議なことに、私も髪の毛が伸びていくにつれて、パワーが復活していった。
ここへ来ていろいろな物事のやる気がアップしてきたように感じている。
髪の毛が生えている自分の姿を見ることは、キーボードを打つ自分の指のネイルを見てうっとりするような自己満足感に似ているのかもしれない。
サムソンのように(!?)少しだけ力を取り戻した私。
自分の病気と向き合ったこの1年の経験、今も続く心の揺れを
また少しずつ、綴っていこうと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?