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新規事業を立ち上げるにはどうすれば? 知・人のキュレーションという発想から

この記事の元となる音源「Morning House」は、音声SNSアプリClubhouseで毎朝6:50から配信しています。一週間で一人の人生が「劇的」に変わる、新感覚のライフチェンジング番組です。
https://www.clubhouse.com/club/morning-house

Before-Afterのような「劇的な変化」を起こすプロデュースで、一人の人の生き方を変える「Morning House」、今週のライフチェンジャー(=人生を変えたい人)は、シングルマザー・上田美雪さんだ。彼女の夢は今、実現に向けて動いており、わずか一週間で事業化も視野に入ってきた(彼女の夢の詳細はコチラ)。今回は、株式会社学びデザイン代表取締役社長・荒木博行さんにアドバイスをいただき、ビジネス化への"壁打ち相手"をしてもらった。

それはどんな事業・サービスですか?

荒木さんはスタートアップの事業・学びの場づくりの支援をしているプロフェッショナルである。まさに、ママたちのためのサービス事業化を目指す美雪さんにとってはありがたくも最適な"壁打ち相手"だ。ちなみに、美雪さんがかたちにしようとしているサービスは以下のとおり。

事業①:ママがママらしくいられる新しいスタイルの保育園の仕組み化
事業②:ママ・パパが何でもぶっちゃけられるコミュニティをつくる
事業③:ホテル滞在中の子ども向けイベント型プログラムの実現
 ※上記「コチラ」のリンク先の記事とはカテゴリーが変わっています

特に今回は、事業③を深堀りしていく。これはもともと美雪さん自身が「欲しい」と思っていたサービスでもある。彼女は元来の旅行好き。しかしシングルマザーとなった今、旅行に行っても大抵の時間は子どもにつきっきり。自分で好きに歩くということはできない。そのため、旅行が遠い存在になってしまったという。そんな経験から、全国各地のホテルにキッズクラブが自ら移動して、短期滞在型でクラブを開設し、子どもを見られる場をつくろうと考えたのだ。そうすれば、ママ・パパが自分らしくできる時間も生み出せる。事業③は、そのキッズクラブを体感できるイベントを地域地域で開催していくというものである。

いつぐらいに事業を立ち上げる予定ですか?

と、ここまで聞いたところでさっそく荒木さんが切り出す。

「いつぐらいに立ち上げる予定ですか?」

プロデューサーの川原卓巳さんと美雪さんの間では「100日」で立てることを目途にしているようである。これは事業③だけでなく、事業①も合わせた目標となる。

事業のターゲットは誰ですか?

続けて荒木さんは「ターゲットは誰か」という問いをぶつけてきた。

「お伺いしたのは、そのターゲットに対し、どの辺に住んでいて、年収はどのくらいで、どんなライフスタイルで生きていて、といった具体的なイメージをどのようにお持ちかということですね」

美雪さんは、ターゲットとしては「変わりたいママ」をメインにしたいようだ。「これからスキルアップをしていきたいママ」「年収は……全般、です」とも答えるが、しかしどこか心もとない。続けて荒木さんが「スクールのターゲットはそのスクールがある現地の人ですか?」と問うと、彼女は「ワーケーションスタイルで、必ずしも現地の人だけとは限らないです」と答えた。荒木さんは「うーん」とうなりつつ「そうするとターゲットは、相当な富裕層とかになっていきますよね。めっちゃ絞られる」とつぶやく。

「全ての人」がターゲットではビジネスは続かない

これには美雪さんも悩んでいるようだ。

「そこはまだ考え切れていないんですよね。それこそ職業訓練みたいな仕組みとも連携させたいとも思っていて、それが可能なのかどうかを調べようとはしています」

これに荒木さんは「誰に寄り添いたいんでしょうか。それがまだ見えないですね」と応じる。「誰のどういう課題に寄り添いたいのかというところがわからなくて。それこそアッパーな人たちがよりキラキラとキャリアアップしたいという話なのか。トップレイヤーだけを相手にした高額で珍しいビジネスモデルだったら、やりようがあると思うんです。けど、ターゲットが『すべての人』となってしまうと急にやりづらくなるんですよね。本人の原体験に紐づくものでターゲッティングしたいですね。これがないとビジネスは続かないです」

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ターゲットを原体験から探る

では、美雪さんの原体験を聞こう。

「私自身は、産後、キャリアを捨てざるを得ませんでした。子どもが待機児童となってしまったからです。復職もできませんでした。正直、仕事はしたかったんですね。そこで保育園をつくろうと考えて、これまでやってきました。特に、子育てにいっぱいいっぱいで、預け先もないママさんでも学べるツールがあったらいいなって感じていました。でも、今から振り返れば、ビジネスをちゃんと学んでいれば違ったやり方があっただろうなとは思うんです」

ここに、ターゲットをどう関連づけるかだが、荒木さんは単刀直入に言う。「そんなママさんをターゲットにしたツールって、すでに世の中にいっぱいあると思うんです。美雪さんにとって、それでは満たされない何かがあるのでしょうか」

どんな事業化のプロセスに価値があるか

二人の会話を追う。

「そうですね。何だろな……」

「おそらく、美雪さんみたいな人を救いたくてビジネスを立ち上げたいのか、それともそうではないのかによって選択肢は全く変わってきます。ただ、既存のサービス・ツールにも課題はあって、たとえば出産のタイミングや、まだ子どもがいない人をターゲットにする困難がその好例だったりするんですね。リーチしたと思ったら『もううちの子は学齢期で手が離れてます』ってこともあるし、育休の期間しかサービスを受けたいと思わない方もいらっしゃる。マーケティングが難しいんですよね。ピンポイントでタイミング合わせて開校できるかってことが、リアルな課題になるかもしれません。子どもを抱えたママさんをターゲットにすれば、サービス化はできるでしょうけど、競合はたくさんいますね。だからこそ、美雪さんのサービスを特異なものにするにはターゲットをしっかり定める必要があります」

「そうですよね」

ペルソナの輪郭をハッキリさせよう

「ただし、どんなビジネスでも『合理的に考えたら厳しいよな』っていう問題は何個もでてきます。その時に『上等だ』『かかってこいや』くらいに、『助けたい!』というターゲットへの思いを保てるなら、やる価値はあるんです。そのうえで、F1、つまり最初のお客さんになる人から、F10、つまり最初の10人になるお客さんの、日々のスケジュールから慣習から普段読んでる雑誌、使っているアプリまでクリアに想像できるくらいの感覚は必要になります。ここはめちゃくちゃ考えをめぐらせてほしい。そこで先の問いに戻るのですが、美雪さんはターゲットにどんなイメージを抱きますか?」

「かつての私にリーチできてたらとは思うんですけどね(笑)」

「いや、これ、難しいんです。このテの話は本にはいくらでも書いてあるし、YouTube動画にもたくさんあると思うんです。ただ、ジャストタイミングで正しいかたちで(サービスに)出合えるかとなると、話はまた別なんです。情報はあふれてるんです。ただ、それをお客さんが自分ゴト化できるタイミングで提供できるかというと課題はあるし、まだこちらが攻めていける部分があると思う」

「まだ私の中でそこがまとまりきってないんですけど、それこそF1や F10、あと過去の自分を想像して、ペルソナみたいなものを鮮明にするのがまず第一歩になるんだなと感じました」

「そうですね。まさにペルソナです。あと、手段の話ですが、日々の仕事から解放されたいママさんたちのニーズと、旅行にからめたエンタメ的なニーズ、学びのニーズってあると思うんです。これらのニーズに優先順位はつけた方がいいです。美雪さんの事業①〜③にはこれらのニーズが混在していると思うんですけど、各事業においてどれが優先順位一番で、ターゲットのどのニーズに応えたいかはハッキリさせてください」

ターゲットのニーズに優先順位をつけて

「それでいうと、私は完全にエンタメ寄りで考えていました。それが川原卓巳さんと考えていくうちに変化して今があるんですね。ニーズについての棲み分けは、これからになります」

「想像してみてください。たとえば『移動できる短期滞在型のキッズクラブ』をエンタメ寄りのターゲットだと考えたら、どんな人が思い浮かびますか?」

「そちらでいうと、主に都内在住で、30〜50代の核家族、世帯年収が800万円以上、共働きですかね。まだきちんと言語化はできませんが、ある程度キャリアがあって、家に帰った瞬間から母親やってる、というイメージがわきます」

ここで、プロデューサーの川原卓巳さんが語らいに加わった。

「さっき荒木さんも言ってたけど、これだけ情報があふれてるから、基本的に答えって本に出てるんだよね。だから、サービスをどのタイミングでどのようなかたちで顧客にリーチさせるかが勝負で、そこの価値の方がサービスそのものより高かったりしてくるんだよね。多くの人たちはおそらくジャストタイミングで出合えてないんだと思う」

知のキュレーションと人のキュレーション

これに荒木さんが続ける。

「僕も今すぐ『コレだ』という提案は思いついていないですが、知のキュレーションはめちゃくちゃ大事だと思います。あと、人のキュレーションです。『美雪さん、この人に会って話聞いた方が絶対いいよ』みたいな文脈で人を紹介される、紹介もする、みたいな関係性、ですよね」

「ああ……」と納得する美雪さんは「サービスごとにしっかり区切って考えていくことと、知識として私が足りない部分を本と人で補うことが今やるべきことだと思いました」と語り始めた。

荒木さんがここで核心をついた。

「でも、最終、答えって外にはないんですよね。美雪さんの内にあるんです。美雪さんがどの課題に答え、誰に寄り添いたいのか。それが定まらないうちに外に答えを求めると迷っちゃうんです。だから、自分の中の軸をアンカリングしてから外を見てください。もし他人に話を聞くなら、『私が何をほんとうに欲しているかを明らかにするための』会話をしてください。『どんなビジネスがいいですか?』という問いではなく、『私が何を解決したいのか』を他人に聞いてください。そこを明らかにしてから、今度はそれを実現するためのビジネスの良し悪しを探ってください。これらをごっちゃにしちゃうと、迷路になります」

「ほんとに、そうですね」

プロデュースの本質

川原さんから「本質だな」と言葉がもれた。「思いがあふれてる人っているけど、思いの上手な伝え方ってあまり知られてないよね。これこそ僕が考えてるプロデュースで、その人の思いや才能について『こういうかたちになったらもっと世の中の人に伝わるな』『みんなの役に立つな』というところまで持っていってあげるんだよ。そのプランづくり? というか。これ、需要があるんですよ」

たとえば川原さん自身は、自分を支えてくれる人たちに、川原さんの思考の元となっている本を20冊読んでもらっているのだそうだ。「そういうのがあって、基礎知識の共有、言葉の定義の共有、前提の共有ができれば、プロデューサーとカスタマーの話し合いはずっと効率的になるしラクになる」

これは、プロデュースされる側、またPRやマーケティングを外注する際の大切なポイントを教えてくれているようにも思う。お互いの知識や前提を事前共有すること、また「自分たちがどうしたいか」を鮮明にすること、それがなければ、プロデュースする方も、やり方に困ってしまうだろう。

今日、美雪さんの頭の中が少しクリアになったかもしれない。こういう交通整理の場が、次に活きる。今後の活躍をまちたい。

[今日のプロフェッショナル]
荒木博行さん
川原卓巳さん

▼株式会社学びデザイン▼

▼荒木博行さんの近著▼

▼新生「Morning House」とは▼


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