【ノーベル化学賞】ゲノム編集
2020年のノーベル化学賞を解説していきたいと思います。今回のノーベル賞は、ドイツのマックス・プランク感染生物学研究所エマニュエル・シャルパンティエ所長とカリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授の二人が受賞しました。
ノーベル化学賞の受賞理由
二人は「細菌」の免疫の仕組みを利用して、ゲノムと呼ばれる生物の遺伝子情報の狙った部分を極めて正確に切断したり、切断したところに別の遺伝情報を組み入れたりすることができる「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」と呼ばれる「ゲノム編集」の画期的な手法を開発したことが受賞理由となります。
有効的な使い方と危険性の両面を兼ね備え
「CRISPR-Cas9」は従来の「ゲノム編集」の方法に比べて簡単で効率がよく、より自在に遺伝情報を書き換えることができるため、既に農水産物の品種改良で成果を上げている。例えば、近畿大学と京都大学歯筋肉量が多い真鯛を開発したり、筑波大学は、血圧の上昇を抑える効果のある物質が多いトマトを作成しています。また、癌治療のために患者の免疫細胞を強化して戻す「CAR-T療法」にゲノム編集を活用する臨床試験が実施されたり、新型コロナイウルスの検出にゲノム編集を応用にされており、人類にとって有効的な利用方法で用いることで、人類の進化に大きく貢献していくことでしょう。
しかし、遺伝子を操作することは倫理的に大きな問題を孕めています。この技術を胎児の遺伝情報の書き換えにも用いることができるため、倫理的にとても危険な行為になり得ます。この理由から、人や動物で実験を行う場合は倫理委員会に諮り、承認を受けなければなりません。
日本人研究者の発見をもとに「ゲノム編集」が開発!
「CRISPR-Cas9」は、大阪大学名誉教授の中田篤男氏と九州大学教授の石野良純教授のグループで研究内容で、大腸菌で見つけたDNAの塩基列がもとになっています。
当時は繰り返し現れる配列が何を意味するのか分かっていませんでしたが、その後、この論文をもとに、ヨーロッパの研究者が、この配列が外から侵入するウイルスなどの「外敵」を認識して攻撃する免疫の仕組みに関わっていることを突き止めました。
大腸菌では、繰り返される配列の間に、外敵の遺伝子が組み込まれることで、外敵を認識して攻撃します。この仕組みを応用して、繰り返される配列の間に目的とする遺伝子を組み込むと、遺伝子を切り貼りする、はさみの役割をしている物質を狙った場所に届けることができるようになりました。
この技術で狙った場所に遺伝子を切断したり挿入したりすることができるようになり、簡便で精度が極めて高いゲノム編集の方法として確立しています。