歩道に椅子をブッ刺して!?アクティブな外席の先にある、市民の幸せとは?<コペンハーゲン外席写真集>
世界の外席で愛を叫ぶ、その理由
みなさんは、中の席と外の席、どちらが好きですか? 僕らはテラス席というか、外の席が大好きで、とにかくチャンスがあれば、外の席を楽しんでいます。で、この楽しさって何なんでしょうか? 外の空気が気持ちいいっていうのは、もちろんですが、僕らが好きな外の席の楽しさというのは、内と外のエッジだからこそ、予想もしない人やモノゴトとの出会いや刺激を受け続けることなのかもしれません。
神田の珈琲屋「豆工房」。ここは1メートルほどセットバックしたところに2席外席が設けられていて、我々はその席を目指してよく通っています。このときは、ロンドンから美術家の近藤正勝さんが来たので、もう一席追加して道路でくつろぎまくると。居心地が良すぎて、午後は仕事をやめてゆったりとすごす。気付けば、ロンドンのイーストでくつろいでいる感覚と同じです。
どこか歩いていても、攻めてる外席があれば、とりあえずチェックイン! これは高円寺のアメリカ料理のお店。食べているとすぐ脇を、帰宅する人々や車、自転車が通過していきます。それがいい。まぁ、アジアのグランドレベルで食べるときなどの感覚と同じですよね。
時には、アブダビで現地の人に、こんなもてなしをされたり、
ドバイの下町で、こんなもてなしをされたときには、本当に感動したし、嬉しかった。彼らは、そばを通りかかった僕らに「まぁ、よっていきなよ!」と声をかけてくれるのです。外席には、さらに外の異物を招き入れる力もあるということ。で、ここからコペンハーゲンのまちへ移ります。
犬も歩けば外席にあたるコペンハーゲン
コペンハーゲンは、とにかく外席の宝庫だったんです。一番寒い季節だったにもかかわらず、雪が降ろうがおかまいなし、まさに犬も歩けば外席にあたるぐらいの勢いで。一番のお気に入りはこの写真。椅子の足元を見て下さい。その幅、正方形のブロック3個分ですよ!!
ここから外席写真が続きますが、外席がある写真を見て、外席がない状況を想像し、そこで巻き起こるであろうシーンの差をさらに想像してみてください。ブランケットがかけられているのは、本気のおもてなしです。実際零下でも構わず座っている人も少なくありません。外席が、あるのと、ないのと。
夜のまちに黄色。
夜のまちにピンク。外席が、あるのと、ないのと。テーブルと椅子の形や色を、きちんと本気でセレクトしていることがわかってきます。自分のお店には、この通りには、何色の、どんな椅子とテーブルが合うのか。どのお店も真剣です。(この本気度は、明かりのセレクトにも共通していました)
だんだん気付いてくる。この歩道のブロック、コンクリート、ブロック、コンクリートのレイヤーが、外席を設置する上でのガイドになっていることに! デザインそのものが、外席を出す人たちが、自然とアフォードされてしまうことを意識していることに感動します。
外席が、あることと、ないこと。そのの違いは歴然。
先日のレポートでも紹介したこの写真。歩道まで浸食するタイプ。
傘が外席だけではなく、歩道を歩く人にもかかっているこの優しさ。
春先から多くの人で賑わいをみせるニューハウン。左側の港には、たくさんの船。
まちのコンビニだって、外席は常設。日本全国のコンビニは、お店をセットバックさせてでも、こうなっているべきなんです。イートインよりも、魅力的な外席を。そして、たまに店員が出てきては、普通に客に話しかける。これが本来あるべき商店のスタイル。これに気付いてるコンビニは、例のヤバイコンビニでしかまだ見たことがありません。(写真は朝一で、若干仕舞われていますが、このあときちんとテーブルと椅子が設置されます)
番外編。これままちの歩道に設置された大きめの角材でつくられたベンチ。アンティーク屋さんが、そのベンチの一部をジャック。
こちらも番外編。美術館の内部。これもある種、外席的な捉え方ができます。
さらに番外編。先のレポでも使ったこの写真。集合住宅の敷地内に設置されたベンチ。誰かがここに座っているだけで、思わず話しかけたくなるようなベンチです。
折りたたみの外席は、コペンハーゲンではよく見かけるもの。外席は営業中のみ設置が許されているそうなので、このタイプだと片付けるのが簡単です。こちらは後日レポする予定の、子連れに人気のランドリーカフェの(閉じられた)外席ベンチ。
どうなってる?外席設置のルール
それで、見れば見るほど興奮し、そして謎が深まるばかり。一体これらは、どういうルールのもとで行われているのか、もしくはグレーゾーンで行われているのかが気になるわけです。
なので、今回、ゲール・アーキテクツを訪ねたときにDavidさん(写真右)に聞いてみました。すると、基本外席を出すには申請が必要で、最初は有料だったけど、最近は無料になったと。申請させることで、コペンハーゲン市は管理すると同時に、そのトータルの外席数を把握し、それをまちの魅力として世界に発信しているそう。なるほど、外席の数は、まちや都市が誇るべき武器にもなるわけだ。
さらに、日本で研究している方はいないのかなと調べていたら、こんな論文を発見!「名古屋学院大学論集 社会科学篇 第 51 巻 第 2 号 pp. 123―159|欧州 3 都市の公共空間活用の変化要因分析 ― オープンカフェ活用を中心とした15年間(1997/2012)の変化―|井澤知旦 名古屋学院大学経済学部」mosaki的には、激アツ論文。論文は3都市のことについて書かれているのだけど、コペンハーゲンのオープンテラスのことについて、下記のようなことが書かれている。
なるほどなぁ。やはりルールがきちんとしている。設置そのものに対するルールがあると同時に、しかし最後の項目のようなデザインに対するルールがあることが、実は一番大事だったりするんですよね。
これまで見てきた写真たちが、プラスチックの安テーブルだったら、ただの糞ダサいまちに留まるだけ。そこに人は、いきいきと群がりません。このあたりのデザインセンスの話は、これから日本で盛り上がるであろう、パブリックスペースだ、プレイスメイキングだと吠えている人々が大きく問われるところでしょう。ダサいものは一過性で終わるからです。
極めつけは、歩道にブッ刺さった椅子とカウンター。このエキサイティングさは、目にするだけでも自然とワクワクしてしまいます。存在そのものがアクシデント! こういったものがあるまちと、ないまち。あるまちには、たくさんのマイクロコミュニティが生まれます。マイクロコミュニティがたくさん発生するまちであるほど、そこに棲む人々の幸福度が上がり、そして結果健康にもつながるのです。それこそ、いきいきとしたまちと言いたい。
そして最後に、デザインとディテールはとても大事だということです。パブリックスペース、プレイスメイキング界隈の日本の問題は、まだまだデザインリテラシーが低く感じます。この写真の設え見てください。コーヒー屋のファサードからなめるように地面にかけてデザインされた外席。簡単なように見えて、形、高さ、大きさ、太さ、色... どこまでも考えられているということ。そして、考えられているからこそ、能動的に座りたくなってしまうんです。グランドレベルづくりに関わる人たちは、そういう視点を常に持っておかなくてはいけないよ、とコペンで見かけた無数の外席たちは、教えてくれました。
というわけで、今回は、ここまで。
次回は、ママたちに人気のランドリーカフェのレポートでもしましょうか。
大西正紀/http://mosaki.com
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