公園ってエッジデザインひとつで、こんなにも魅力的に!台北「永康公園」と大阪「靭公園」に見た、公園と街をつなげるデザインの可能性.
暑さも過ぎ去ってしまえば、寂しいもの。ってことで、今日は台北のフワフワかき氷&ぷりぷりのマンゴの写真で、少し暑さを思い起こしながら、前回の続きで、台北と大阪で発見した良い公園のお話を。
まずは台北から。この日の台北は、滞在していた東門から徒歩数分の「永康街」エリアを歩いていました。「永康街」は、台湾レポートの最初の記事で取りあげたエリアです。
幸福度アジアナンバーワンを支える豊かなグランドレベル!
台北「永康街」を歩く編
このエリアの中心には、「永康公園」という三角形の小さな公園があります。生い茂る緑があまりに魅力的なので、思わず入ってしまいます。「いきいきと生い茂る緑」、これは公園づくりの基本中の基本ですよね。
入って直ぐのところにある掲示板に目をやると、ポスターに「自己的銭自己花」とあります。自腹で自分の花??市民に参加を呼びかける感じが、きちんと内容がわからなくても、ヤバそうな匂いでぷんぷん。やぱり、こういうところでも市民参加が盛んのよう。
中には遊具があったり、こんなちょっとした舞台があったりしますが、基本は木陰にベンチをできるだけ置くってことで。
おばあちゃんたちもこんな感じになってしまいます。左のおばあちゃんのリラックス度、たまらないですね。奥にもたくさんのベンチが見えます。子供が遊んでて、サラリーマンが休んでて、地元の高齢者の憩いの場になっている。このレベルの公園が日本にはまだまだ少なすぎるんですよね。
なんてステキなんだろうと思っていたら、ひとつの看板が目に入ってきました。そこには...
エリアの紹介とともに、「この公園は台湾で初めて地元の住民たちが資金を出しあって作った公園です。ここではかつて老木の保護運動が行われ、公園の入り口にはその記念碑があります。この老木の保護運動は永康公園が存続する上で重要な運動となりました。」とあるじゃないですか。
日本語表記がどうしてあるの?と突っ込む以前に押し寄せる感動! やはりこのエリアを歩く度に感じていた“住民の住環境に対する意識の高さ”は、確実に根付いていたものだったんだなと。
そうしたら、地元の高校生たちに声をかけられて!
何かと思ったら、みんな高校の観光科で学ぶ学生さんたち。今日は実習として街へ出て、積極的に街ゆく人に話しかけて、観光案内をしているのだとか。観光ひとつ、やはりどんなことでもその国の本気度は、教育に現れるものです。
思わず、記念写真を!みんな本当に笑顔がステキでしょ!!
彼女たちオススメのマンゴーかき氷食べてからの中国茶。公園脇にみつけたココに入ることに。
居心地がよすぎて。
何杯でもいけます。結局一時間以上いました。最高。
そしてまた、街へ出て散策しはじめます。とにかくどこも緑豊か。
どうしても、すべての緑が適当に添えられているとは思えなくて。不思議と街ゆく人に対する心遣いを感じてしまうのです。自然と、この街に住みたい度が100%を越えてしまいます。
一見、住宅街のようにみえますが、こういう中にもショップがあって。
ここは雑貨屋さん。たくさんの中華系のオリジナル雑貨が。
ぐるぐるいろんなお店を巡りながら、振り返ったら「永康公園」が見えました。そして、ふと思ったんです。何か、公園から出たという感覚がなかったぞ。街に緑が多いから一体的に感じているだけの錯覚かな? そんなことを思いながら戻ってみたら。
実はこのシーンが、すごかった!
改めてさっきの写真。この場所、一瞬わからないけど、手前が「公園」、爺さんと孫が手をつないで歩いているのが「道路」、そして中国茶屋が1階に入る「集合住宅」。「公園」「道路」「集合住宅」、それぞれのエッジ(境界)がデザインによって完全に融解していたから、公園から街へ、街から公園へという感覚がほとんどなかったのですね。まさに“公園と街のエッジを緩める公園デザイン”のツボがここにある。
たとえば、頭の中で逆を想像してみてください。道路が普通にアスファルトになったら、店の軒先の植栽を取り除いてみたら、緑を日本によくあるようなショボショボした緑に置き換えてみたら、1階の茶屋を壁やシャッターにしてみたら。どれもアウトですね。
ここに写るすばらしい関係性、すばらしい光景は、それぞれの部位の素材や色、植栽の種類、いろんなディテールがすべての要素があってこそ成りたっていることがわかります。それほど、エッジのデザインって緻密なものなのです。
たとえば、お店の前のこの植栽は、きっと行政サイドのものだと思います。けど、きっとお店の人が管理をしているのでしょう。これがあるだけで、お店のアイキャッチになるし、行き交う人の心も豊かになる。こういったワンシーンひとつで、行政も、1階に入る店舗も、市民も、世界レベルのパブリックマインドの高さを持っているかがわかります。
帰国早々出会った大阪の「靭公園」.
と、台北から帰ってきて間もなく、大阪へ行きました。そのときグランドレベルフィールドワークで迷い込んだある公園で、これまたすばらしい公園と街のエッジデザインと出会うことに。
その名も「靭(うつぼ)公園」。場所は本町のちょっと西側。うわぁ!!いきなりこのビュー、この樹木、この過ごし方、ステキでしょう!
やっぱり樹木がいきいきとしているかどうかは、それだけ手塩にかけられているかどうかってこと。これは国内外いろんな公園に行って痛感したことです。そして、「芝生」「花壇」「樹木」「ビル群」のレイヤー。これ心地よい都市型公園の鉄板。
やはり良い公園は、入った瞬間に感動があるものです。樹木の密度、ベンチの密度、ベストバランス。
で、ちょっとお腹も減っていたので、公園から直ぐに出てカフェに入ったんですが。
カフェの奥はテラスになっていて、ぉお!!さっきの公園側か。借景というか、もう公園そのものをイタダキマス!という感じ。これは良い使い方だなぁと。けど、実はこの公園と街との関わりは、そんなものではなかったのです。
再び公園へ戻る。公園の入り口にもお店がたくさんあって良い感じ。
そして歩いていたら。
えっ。。マンションの裏とつながってる。ていうか、公園に壁がない。ていうか向こうまで抜けているし。ていうか、これ獣道でしょ!?1階のお店が公園側にも正面を持っている。台北のとは違うけど、こういうつながりかたもあるのですね。
興奮冷めぬまま歩いていると、またあった!なんだ、この公園は!? 公園の周囲に建つビルの1階の多くが、公園側にも顔を持ってつくられています。この獣道ができているところって、通常の公園ではまさに「進入禁止」とか書かれがちなところですよ。それをこういう風に使うだけで、公園の価値が何杯にもふくれあがってるのです。
“公園と街のエッジを緩める公園デザイン”には、こんな形もありえたと。公園のオフィシャルベンチと1階の軒先が重なって、実に良いグランドレベル。もしお店が公園に対して開くことを許されなかったら、もし公園の外周にフェンスや壁がつくられていたとしたら、そこにはただベンチがあっただけです。この差は大きい。
うわぁ、まだある〜!と次々と良い感じのカフェが登場します。金沢21世紀美術館の公園にも同じような風景がありましたが、こっちは量がとにかくスゴイ。もう、興奮して撮りきれません。
どういう経緯で、こうできているのかはわかりません。(誰か教えてください!)しかし、とにかく素晴らしい。公園にカフェを置く・置かないという問題ではなく、公園が接する街の建物に依存して、しっかり取り込むことで、公園・カフェ・街がウィンウィンの関係になれるということです。
というわけで、今回は台北の「永康公園」と大阪の「靭公園」でした。こう見てくると、“公園と街のエッジを緩める公園デザイン”には、まだまだいろんな可能性がありそうです。
[idea] 既存の公園をテーマにして、街と接するエッジだけのデザインを妄想する「公園のエッジデザインワークショップ」って楽しそうです。今までやってきている「パーソナル屋台ワークショップ」を発展させて、できそうです。公園に対する思考を一度リセットして、新しいステップに進める良い機会にもできそうです。もちろん主人公はあくまでも“自分”で。行政、教育機関、企業の皆さん、試しにやってみませんか?
良いまち・グランドレベルに見えてきた3つのポイント
さて、これまで世界のグランドレベルを見ながら、50ほどの記事を書いてきましたが、改めて良いまち、良いグランドレベルって、どういうことで、成し遂げられているのだろうと分析してみました。そうすると見えてきたのが3つのポイント。
1)行政・事業者・市民の高いパブリックマインドとビジョンのシェア
2)1)を実行するための“やる気・根気”を伴ったルールの整備
3)人に心地よく行動を誘発する高いデザインセンス
これらを逆にすると...
1)行政・事業者・市民の低いパブリックマインドと錯綜するビジョン
2)“めんどくさいことは避ける”を第一にルールを整備
3)人の心が萎えるような低いデザインセンス
ここの踏み込んだ話は、追々。というわけで、今回はここまでです。次回は、まだまだしつこいように台北が続きます。
高さ500m以上の高層ビル「台北101」の足元にあったのは、なんと保存されている昔の住宅群。そこの活用がまた素晴らしかったのです。
1階づくりはまちづくり!
それでは!
大西正紀(おおにしまさき)
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世界の日本の公園の話、グランドレベルの話を
もっと聞きたい方は、気軽にご連絡をください(^^)/