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スーパーの軒先が「喫茶ランドリー」のように!まちに愛されるスーパーの新しいカタチを目指すマックスバリュおゆみ野店のチャレンジ。

冒頭の写真は、スーパーマーケットのマックスバリュおゆみ野店の軒先の先週末の様子です。リニューアルオープンから3週間が経ち、改めて訪ねると、当初思い描いていた光景が感動するほどに実現されていました。

今回はここに至る1年半のお話です。

地域に根ざした真のスーパーマーケットとは?

プロジェクトのはじまりは、2019年5月にいただいた一通のメールからでした。これからのスーパーマーケットをつくっていく中で、どの会社も「地域」や「コミュニティ」といったキーワードを謳いますが、マックスバリュ率いるUSMH社は本気でより具体的にまちの人々とのつながりある日常を実現しようと、「喫茶ランドリー」をはじめとした弊社グランドレベルの試みに興味を持っていただき、お声がけいただきました。

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その後、本社でのプレゼンテーションをきかっけに、さまざまな立場の人たちとコミュニケーションを重ねさせていただきました。基本的なプロジェクトに対する理念は、私どもが普段手がけるものと同じでありながらも、その上でスーパーマーケットという存在価値についてのマインドセットを意識して進めていきました。

スーパーマーケットは、お客様のニーズにこたえるモノを売り、サービスを提供する場所だというのは、スーパーという業態の内側の理論から成熟していったものです。しかし、外側、つまりまち側から見た時のスーパーという存在は、非常に公共的な誰でもがアクセスできる場でもある。その視点は、さまざまな可能性に気付かせてくれます。

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私たちが従来のランドリーカフェに公共性を持たせ「喫茶ランドリー」へと化けさせたように、スーパーマーケットも、より公共性を搭載させれば「新しいスーパー」として、これまでにない価値を創出し、新しい機能も担えるはず

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具体的に言うと、モノを購入してそそくさと帰る場所という旧来型を脱却すること。買い物が目的でなくても行ける場所となり、誰もが自由に佇め、過ごせる場所となり、さらに市民のちょっとしたやりたいことを実現できるスペースにもなれる。そうなれたとき、市民がこれまでスーパーというものに持っていた存在感とは異なる、もっと温かみのある施設・場所に変わっていくはずです。私たちはそう考えました。

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目先の利益だけを考えていれば、不必要だという意見もあるかもしれません。従来のマーケティングとターゲティングを繰り返し、ひたすらニーズを掘り起こし、それに応え続けていく。

しかし、モノを購入するという入り口が多様化する中で、もはやそれだけはサスティナブルな企業の成長はイメージできない時代になってきました。

だからこそ、それぞれのまちに存在するスーパーマーケットが、地域の人々の幸せを大きく支える存在となれたら……

それは巡り巡って、愛され続けるスーパーになれる。

市民は、そのスーパーがある、そのまちをより愛することになる。

そこに共に暮らす人々の多様性を受け容れ許容できるようになれる。

これがシビックプライドが高まるということです。

スーパーの軒先にあるべき光景とは?

そのような対話をさせていただきながら、ある日、千葉のおゆみ野にあるマックスバリュを訪ねる機会をいただきました。

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実は元々私たちは、スーパーマーケットとショッピングモールが大好き!このマックスバリュおゆみ野店は、イオンタウンのショッピングモールの端部1階にテナントに構えるお店でした。大きく入り口は2箇所ありますが、その入口の間の軒先スペースががらんどうになっていました。

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しかも、こちらが駐車場がある正面。これは完全に機会損失です。「1階づくりはまちづくり」の理念が目指すものとは多極の光景。

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さらにガラスの内側に入ってみるとイートインスペースが。イートインスペースというのも、スーパーの内側の理論から出てきたものです。スーパーで購入したものを食べて下さいと誕生したわけですが、どうしてか心地良く過ごしてもらおうというデザインが施されていません。このことにも、私たちはずっと疑問を持っていました。

このイートインスペースは軒先スペースと隣り合わせ。だったら一体的に変わるべきだと提案をさせていただきました。

ちょうどその頃、こスーパー全体のリニューアル計画が進んでいて、急遽、合わせる形で、この軒先一体を変えていきましょうということになったというわけです。

スーパーを変えるための3つのデザイン

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実際に何をデザインしていくのか。ここでは「喫茶ランドリー」をつくる際に意識した、いつもの3つのデザインを、それぞれに考えていきます。

ハードは空間やそこに置かれるモノのセレクトを含めた目にする部分のすべてのデザインをどうするか。ソフトは、従来のどのようなサービスをモノを提供するかということは半分。もう半分は「何を許すか」ということを、関わる人たちとともに考えていきます。そして最後が、オルグウェア。これはコミュニケーションと言い換えることができます。

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ハードとソフトを整えたとしても、人々がそこでイキイキと過ごしたり、使われたりすることは叶いません。でも、日本のほとんどすべての施設がそのことに気付かずに、本来の力を発揮しきれていません。

スーパーマーケットの軒先も同じです。より多様な活動ごとが起きるように、またこれまで以上に愛される場所になるためには、ハードとソフトを取り持つ、コミュニケーションを担う人間が大切なポイントとなります。

そういう意味で、この新しい軒先空間にどスーパーのスタッフさんに立っていただけるかどうかが、オープン後、その場がアクティブにあり続けられるか、また簡易的でもカフェ的な機能を付随させられるかが、大きな分岐点でした。

新しくつくり帰る軒先スペースは、お店に来た人も、散歩で通りがかった人も、気軽に佇める場所を目指します。言わば、軒先に大きな大きなベンチができるようなイメージです。そのことをしっかりと理解し、珈琲が飲めるという機能と、そこに人が常駐するということを、マックスバリュさんは決断してくださいました。

場を動かすコミュニケーターの大切さ

さらにそこに人員を投入してくださることも決定!しかも、日頃サービスカウンターを担う、先鋭女性スタッフ8名というから最高です。さらにそこに専属の社員の方が付くことにもなりました。3つのデザインのひとつオルグウェア(コミュニケーション)を担う彼女たちが、その場の空気をつくっていく超重要なキーマンとなっていきます

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あらためて、8名の現地スタッフの皆さんへの講習は、田中の「1階づくりはまちづくり」から。日頃から、市民の皆さんとの接点が多い皆さんは理解がとっても早いことに感動しました。と同時に、普段、カウンター越しにたくさんのクレームを受けることも少なくない皆さんからは、スーパーがまちに開くことに対するさまざまな不安の声もいただきました。

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そういったさまざまな不安を圧倒的に拭うために、どのプロジェクトでも取り入れている「喫茶ランドリー」での研修。しかし、研修とは大げさで、実際は「喫茶ランドリー」でワンオペのスタッフと半日一緒に働いてもらうというだけのものです。でも、その間にスタッフと交わす言葉、お客さんとの接し方、お客さんの過ごし方を体現することで、お客さんと店員さんの自分が、「人間」という対等な存在であること、自分が自分らしくあるだけで得られることを身体で理解してく時間となります。

(このマインドセットのデザインが、弊社にしかできないことだなと今回改めて気付かされました。写真はある日の研修後の記念写真。弊社代表の田中を挟んで、左は喫茶ランドリーのスタッフ、右はマックスバリュおゆみ野店のスタッフさんたち)

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同時にハードの設計デザインも短い期間で行っていきました。今回は、店舗リニューアル全体の設計を手がけるプログレスデザインの皆さんに実施設計をお願いさせていただき、私たちは一つひとつのデザインを上のように指示させていただきながら、全体のデザインディレクションを進めていきました。

大きくは、高い天井の軒先に、パーゴラのようなものを設え、ちょっとした籠もり感をあえてつくり、エッジ部分には割と大きめのベンチのようなものを設えました。このあたりも絶妙にベンチ以外の使われ方を想定しています。一つ内側の空間は、すべて移動できる既製品の家具で構成しています。スーパーという公共性が引き出すアクティブ度は究極に高まることが想定されるので、あえて作り付けの家具はやめました。

デザインディレクションの際も、私たちのスタンスは少し巷の建築家やデザイナーさんとは異なると思います。事細かに寸法や素材を決めて指示していくというよりは、設計や施工会社の皆さんにややおんぶさせていただいて、「こうやったらいいよ!」をどんどん取り入れていきたいのです。おかげで皆さんの知見や技術が活かされる形で、図面のやりとりから現場の作業へと移行していきました。

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スーパーの軒先に生まれた新しいカタチ

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そして、2020年10月16日、マックスバリュおゆみ野店のリニューアルオープンと同時に、新しい軒先スペースがお披露目となりました。

スーパーのふたつの入り口の間のスペースに突然生まれた謎のスペースに、さすがに最初は皆さん戸惑いを見せていました。

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でも、買い物終わりのおじさんが、ふらっと歩いてきて

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腰をかける。

もうこれだけで、最高に嬉しいシーンですね。ちなみにおじさんの目線の先にある珈琲屋台では、珈琲を50円で売っていますが、別に購入しなくても過ごすことができます。ちなみに、スーペース全体には「Cafe&Dine(カフェダイン)」という名前が付けられました。

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そこからは、次々と買い物の前後のお客さんが、ふらっとやってきては過ごされていきます。従業員さんも遊びにきたり。そう、スタッフの皆さんもバックヤードの事務所で休むくらいなら、ここで自由に過ごしてほしいのです。すると「あら!あなた!」って、スタッフの方が、お客さんから話かけられるシーンも。きっとお友達だったのでしょう。そういう出会いが「まちの1階」スーパーの軒先にある。これが理想的な光景です。

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散歩で敷地を抜ける人がいらっしゃると聞いていたので、犬用のフックをつけました。

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散歩途中で、おじさんが犬と一緒に休憩を。

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すると、スタッフが自然と近づいていって、さりげなく声をかけます。こういった形でのスーパーのスタッフとお客さんとの人間的なコミュニケーションの積み重ねが、互いをより親密にさせ、その関係性を変えていきます。

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3週間後、再び訪ねてみると、新しい軒先スペースは、完全に風景として溶け込んでいました。そこかしこに、さまざまな過ごし方がひろがっていました。赤ちゃんも、お年寄りの方も、車椅子の方も、犬連れの方も、まさにあまねく人々が、入れ替わり立ち替わり、自然と過ごされていたのです。

コロナでも人と人との出会いをあきらめないこと

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設計が進む中でも、対コロナの議論は常にありました。そもそもこんな人と人が出会うようなスペースはつくらない方が良いのでは? 椅子やベンチにはバッテンを示す? テーブルにはアクリル板を立てる? 

そのことに対して私たちは一貫して、「このような場所は今こそつくるべき!」「バッテンもアクリル板も施さず、人間力を信じるべき!」と、どのプロジェクトでもお話しています。

コロナはウイルスにかかる・かからないというシンプルな話では済まされない部分が大きいのです。たとえば、実際にこの半年の自殺者は、かなりの割合で増えていますし、それは今後も続くでしょう。だからこそ、どんなことがあっても人間らしさを諦めててはいけません。コロナと共に、人間らしく生きていくそのためにできることを、進めていかなくてはいけません。

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数分ごとに、本当にいろんな人が、腰掛け、話したり、物思いに更けたり、ちょっとした作業をしたり、読書をしたり。こういう光景はずーっと見ていられますね。

そして考えるのです。このような光景を軒先に持つスーパーと、持たないスーパー、その10年後には何がどう変わっていくのだろうかと。

実はここがプロジェクトのスタート

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このプロジェクトは、スーパーの軒先に座れる・過ごせる場所をつくるということが最終目的ではありません。それは最低限の器であり、これがスタートライン。ここから、さらに市民の能動性を高めていこうというわけです。「小さなやりたい」をたくさん実現させてあげられる場所に育んでいく。そこでのキーマンが、8名のスタッフの皆さん。

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内側のイートインスペースもこんな風にかわって、内外が一体化しています。掲示板にはさっそく、今後の使われ方をかき立てるイメージがコラージュされています。すべてスタッフの皆さんによるもの。喫茶ランドリーを体感したことを思い出し、既にスタッフの皆さんが、「この場所はどうあるべきか?」と自問自答されているのが伝わってきます。これが最高にすばらしいことなのです。

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彼女たちは、ここで珈琲を介しながらお客さんと人間らしいコミュニケーションを重ねていきます。そして「よかったら、どんなことにも使って下さいね!」と声をかけていく。

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喫茶ランドリーもまた、同じでした。オープンした直後から、2年半経った今もなお、喫茶の営業をしながらも、予想も付かないさまざまな使われ方を変わらずしていただいています。

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コロナの真っ最中には、地域の皆さんによる手作りで、なんとスタッフの結婚式まで開催されたり。こんなこと、オープンした当初、誰も想像することなんてできませんでした。でも、こういうことが起きるのが「まち」なのです。

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喫茶ランドリーの軒先の光景。

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マックスバリュおゆみ野店の軒先の光景。

さて、ここからこの場所で何が起きるでしょうか。どんなエピソードが紡がれていくのでしょうか。

最近、隣の花屋さんが、ワークショップを開催してくださって好評だったそうです。A看板には、次は英会話教室開催!とあったり、すでに外からの「小さなやりたい」が実現される場所として育まれはじめています。

冬は寒さ対策で、カーテンや暖房も入れられることに。すでに現地スタッフだけではなく、それを支える本社社員の皆さんなど、会社が全体としてアクティブになって運営を支えていこうという気概もまた、これからの場のドライブ感に大きく影響を与えていくことでしょう。とにかくこれからも楽しみでなりません。

さぁ、あなたはこの光景の先に、どんなスーパーマーケットの未来を見るでしょうか。

全国のスーパーがこのように変わっていったときに、地域がどのように変わっていくでしょうか。

私たちも、皆さんと一緒に考え続けていきたいと思います。

それでは、今日はこの辺で。

1階づくりはまちづくり

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大西正紀(おおにしまさき)

ハード・ソフト・コミュニケーションを一体でデザインする「1階づくり」を軸に、さまざまな「建築」「施設」「まち」をスーパーアクティブに再生する株式会社グランドレベルのディレクター兼アーキテクト兼編集者。日々、グランドレベル、ベンチ、幸福について研究を行う。喫茶ランドリーオーナー。

*喫茶ランドリーの話、グランドレベルの話、まだまだ聞きたい方は、気軽にメッセージをください!

http://glevel.jp/
http://kissalaundry.com


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大西正紀
多くの人に少しでもアクティブに生きるきっかけを与えることができればと続けています。サポートのお気持ちをいただけたら大変嬉しいです。いただいた分は、国内外のさまざまなまちを訪ねる経費に。そこでの体験を記事にしていく。そんな循環をここでみなさんと一緒に実現したいと思います!