夏の真ん中に恋しくなる白
ドウホクの夏は美しい。
山々は深い緑に染まって、空は青い。
夕方には、夕焼けってこんなにたくさん
バリエーションがあったんだ!!って、毎日驚く。
陽だって長くて、
19時を過ぎてもまだまだ明るい。
イベントだって目移りするほど山盛りだ。
けれど私はよく、こんな夏の真ん中に
真っ白な冬が恋しくなる。
今見えている景色のすべてが
真っ白だったらいいのにって。
冬のいいところは、いろいろと閉ざされるところだ。
雪の降り方次第では、出かけられる場所が限られる。
運転がへたくそな私のような人間は特に。
だから近くでできることをする。
できるときにできるだけする。
すると、なんだか世界が狭くなる。
この感じが、私はたまらなく好きみたいなのだ。
実家の最寄り駅から
最終列車が発車するのは
午前1時9分。
そんなに遅くまで
出歩いているわけではなくても、
人と電車は動き続けていて
だからまちの空気もそわそわしていたりする。
自分にはコントロールできないこと、
しょうがないねって
あきらめられるなにかがあるということは、
私にとってはなんだかほっとできるもの
だということのようだ。
冬の入り口に雪が降り始めると、
まちの景色がなんだか
ワントーン明るくなる様子は、
これから寒さにやられる冬が
待っているとわかっていても
息をのむほど美しい。
夏の真ん中に冬の城さが恋しくなる。
それは、冬がくれる丁寧な暮らしのよろこびを
恋しがっている心のせいだ。
◎鯨井啓子 info
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