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【マーケティング基礎】顧客認知とアプローチ手段の考え方

はじめに

プロダクトを顧客に購入してもらうためには認知してもらうことが必要です。本稿では、その手法や考え方について説明します。

顧客へ認知してもらうために

顧客がプロダクトを購入するまでに、そのプロダクトを認知するというステップを必ず踏みます。認知されないことには購入はありえないためです。

認知から購入までのプロセスを考えるためのフレームワークとして「AIDMAモデル」「AISASモデル」というものがありますのでこれらを用いて説明していきます。

AIDMA / AISAS モデル

https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20200625.html

まずはAIDMAモデルから説明します。
AIDMAモデルとは、顧客の購買行動のプロセスを分解し、各プロセス別に最適な手段を考えようぜ、というコンセプトの分析手法です。
一般的に購買行動は「注目→興味→欲求→記憶→行動(購入)」というプロセスを辿るよね、というもので、主にオフラインでの購買行動などが当てはめやすいフレームワークです。

次にAISASモデルを説明します。
AISASモデルも分析コンセプトはAIDMAモデルと同じです。
違いとしては、インターネットが普及した現代においては、購入前にネットでプロダクトの詳細や口コミを調べたり、実際に購入して良かったと思えるものはSNSなどでシェアしたりといった行動の変化が起きています。これらを考慮した購買プロセスは「注目→興味→検索→購買→共有」というプロセスを辿るよね、というものになります。

どちらのモデルを使うかは、そのプロダクトの特性や顧客層によって決めることになりますが、このように購買行動をプロセス分解すると、各プロセスを促進させるために必要な手段や施策を考えやすくなります。例えばこんなかんじに。

https://yoshida.consulting/blog/2015/11/04/aisas(アイサス)って?/

カスタマージャーニーマップ

AIDMAやAISASを応用した分析手法としてカスタマージャーニーマップというものがあります。こちらは各プロセスをもう少し具体的に考えるためのフレームワークです。

例えばこのように、プロセスごとのタッチポイントを導き出すことができれば、自ずとそのプロセスを促進するための手段は何が最適か、を考えやすくなります。

実際には顧客へのアンケートやインタビューによる調査を行い、マップにプロットしていく作業を行うことになります。
このようにして、顧客の購買プロセス別に最適な手段を考えていくことにより、購買促進を具体的に考えていくこと可能になります。

アプローチ手段を決める

顧客の購買プロセスを具体的に把握できたら、次に具体的にどうやって顧客へアプローチするかを考えていくことになります
アプローチ手段とは、例えば以下のようなものです。

(to C商材なら) プロダクトを認知してもらうためにテレビCMを打つ
(to B商材なら) 対象企業へ電話してプロダクトを紹介する、または訪問して具体的に説明する

代表的なアプローチ手段

アプローチ手段は複数ありますので代表的なものを紹介します。

  • オウンドメディア

    • 自社HPやブログのことです。

    • 比較的安価に運用ができますが、アクセス数を増やすための施策が必要になります。

  • 自社のSNSアカウント

    • Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSアカウントを作り、情報発信していくことが可能です。

    • 比較的安価に運用ができますが、アカウントのアクセスやフォロワー数を増やすための施策が必要になります。

  • オフライン広告

    • テレビCM、情報誌などの紙媒体への広告掲載、などインターネットを介さない広告媒体を指します。

    • マスメディアとして多くの人達へ一気にアプローチが可能ですが、ターゲット層にアプローチできるかどうかは調査・テストが必要です。

  • インターネット広告

    • バナー広告、リスティング広告、SNS広告、アフィリエイト広告などのインターネットを介した広告媒体を指します。

    • 広告の種類によってはターゲットの属性を指定して表示させることが可能で、運用コストや効率をコントロールしやすい利点があります

    • オフライン広告と同じく、多くの人達へ一気にアプローチが可能です。

  • 代理店

    • 認知や販売を代理遂行してくれる業者を指します。

    • オフライン広告やオンライン広告などの認知促進を代行する広告代理店や、実際の販売営業活動を代行する販売代理店などがあります。

    • 広告運用ノウハウや営業ノウハウがない会社にとっては頼りになる存在ですが、ノウハウが自社に蓄積できなかったり、販売代理店を通じて獲得した顧客には自社からアプローチしづらくなる(商慣習により中抜きはNGとされることが多い)などのデメリットもあります。

  • 自社の営業組織

    • 内勤営業(Inside Sales)、訪問営業(Field Sales)などの営業部隊を指します。

    • 顧客へ電話や訪問を通じて営業することになり、認知から購入まで促す意味においては最も強力な手段になります。

    • 一方で人件費が固定的に発生するため、コストを回収できるだけの売上が見込める商材や、大口顧客を対象にする必要があるのが一般的です。

それぞれの特徴をうまく活かして組み立てていく必要があります。

コスト効率

アプローチ手段について紹介しましたが、活用にあたって安価に運用できるものもあれば、初期費用が高額になるものもあります。

予算が有限である以上、これらの利用/運用コストについては注意を払う必要があります。ここでは新規顧客を獲得するシーンを想定して説明しています。

新規顧客を獲得するにあたり、なるべくコストは抑えたいと考えるはずです。ですが、コストを抑えられているとは具体的にどういう状態を指すのでしょうか?

例えば以下のケースを考えてみましょう。

【施策A】100万円かけて10人の顧客を獲得
【施策B】60万円かけて4人の顧客を獲得

一見、かかったコストが安い施策Bの方がコストを抑えられているように感じますが、一人当たりの獲得コストで考えてみると、

【施策A】100万円かけて10人の顧客を獲得 ⇨ 10万円/人
【施策B】60万円かけて4人の顧客を獲得  ⇨ 15万円/人

施策Aの方が安価であることがわかります。つまり、もしかかったコストが両施策ともに同じだったら、施策Aの方が多くの顧客を獲得することができるわけです。

このような「新規顧客1人を獲得するのにかかったコスト」をCAC ( Customer Acquisition Cost )といいます。

CAC = 新規顧客の獲得にかかったコスト総額 ÷ 獲得できた新規顧客数

収益効率

ではCACが安ければそれでいいのでしょうか?
例えば「CAC=10万円」すなわち新規顧客一人当たりにかかった獲得コストが10万円だったら、一人当たりの利益が10万円以上確保できないと赤字になってしまいますよね。
このような一人当たりの利益を指す指標をLTVといいます。

LTV = 新規顧客の購入開始~購入停止までに発生した利益総額 ÷ 顧客数

※利益には粗利(売上から原価を差し引いた利益)
詳細説明はこちらを参照

つまり、LTV>CAC となるようにアプローチ手段や施策を設定していくことで収益性を維持した状態で顧客を増やしていくことが可能になります。

投資回収

投資回収のバランスを見極める際に以下2つの指標を覚えておくと便利です。

投資回収期間 = CAC = LTV になるまでにかかった期間

Unit Economics = LTV ÷ CAC

ビジネスによっては顧客を獲得したタイミングで、CACを回収できないビジネスモデルも存在します。

通販化粧品や健康食品、SaaSなどのサブスクリプション型のプロダクトもその一例で、初回は赤字で、それを数ヶ月かけて回収しています。これらは回収した利益をプロモーションへ再投資して顧客を増やしていくモデルなので、投資回収期間が長ければ長いほど資金繰りが難しくなります。
投資が回収できるかどうかだけでなく、それにかかる時間という概念は戦略上でも重要なファクターになります。

Unit Economicsは「LTVがCACの何倍見込めるか」を示す指標で、投資回収期間が時間の概念であるのに対し、Unit Economicsは投資回収のコンディションを測る指標として活用されます。この指標もLTVが組み込まれているため、時間の概念が含まれるため、キリのいいスパン(半年、1年)で算出されることが一般的です。

Unit Economicsを用いた意思決定は以下のような判断に使われます。

Unit Economics>1
投資回収ができていてGood
「施策は成功しているので拡大しよう」

Unit Economics=1
投資回収はできているが利益は出てないので微妙
「この施策を続けても意味がないので、別の施策でトライしよう」

Unit Economics<1
投資回収不能でBad
「施策は失敗なので直ちに中止。別の施策でトライしよう」

ボリューム

最後に紹介するのはボリュームです。これまでの指標は効率性を示す指標でした。
Unit Economicsも問題なく、一人当たりの回収利益(=LTV-CAC)が十分確保できていたとしても、あくまで一人当たりの話ですので、回収利益総額としての規模を押さえておく必要があります。

Volume = ( LTV - CAC ) ✕ 顧客数

例えば、「一人当たりの回収利益が高くても顧客数が少なくVolumeが小さい施策」より「回収利益が劣っても顧客数が多くてVolumeが見込めそうな施策」の方が事業収益へのインパクトは大きいわけです。このように効率だけでなく、Volumeも両立させて意思決定する必要があります。

効率 ✕ ボリューム で組み立てる

ここまで、投資回収のバランスを維持しながら、ボリュームを最大化させるために活用する指標を紹介してきました。
では実際にこれらを用いてアプローチ手段や施策をどう組み立てていくかについての一例を紹介します。

"高単価の商品には営業コストをかけられる”

一般的にプロダクトの単価によって、アプローチ手段が制約されます。
商品単価が高いほど、活用できるアプローチ手段の選択肢は増え、低いほどに少なくなります。

例えば自動車のような高単価なプロダクトの場合、テレビCM、ネット広告だけでなく、販売店舗や営業人員なども配備されていますよね。これは、これだけコストをかけても単価が高く、回収が可能だからできるのです。

一方で、単価が1,000円のシャンプーを売るために営業マンが電話してきたり訪問してくることはありませんよね?それは、CACとLTVの関係上不可能だからです。よってこの場合は、テレビCMやネット広告のようなマスマーケティングプロモーションが合理的なわけです。

更に低価格になってくると、有料媒体すら投資回収が厳しくなってくるため、オウンドメディアやSNSによる集客など、手段は限られてきます。

"高単価の顧客には営業コストをかけられる”

また、顧客単価(LTV)が高いほど、活用できるアプローチ手段の選択肢は増え、低いほどに少なくなります。

ターゲットが、コンシューマー(個人)、SMB(中小企業)、エンタープライズ(大企業)と大きくなるにつれて、LTVも大きくなるので、許容CACも大きくなり、許容CACが大きくなるほど選択肢が増えるためです。

高単価顧客であれば、マスマーケティングで認知や関心を引き、検討や購入意思決定のフェーズは営業がクロージングする、といった複数のアプローチ手段を組み合わせたハイコストな方法もとれますが、低単価になるにつれ手段は限定されていく、というのはイメージしやすいかと思います。

まとめ

  • 顧客の購買プロセスを分解し、各プロセスで最適なアプローチ手段をセットする

  • アプローチ手段は複数あり、それぞれ特徴や利用コストが異なる

  • 投資回収バランスとボリュームを考えて、最適な施策やアプローチ手段を選択する

  • 高単価な商品(顧客)ほど選択肢が多く、低単価になるほどに選択肢が減少する

参考記事


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