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韓国政界で保守派が狙うBプランとは何か?

◎韓国政界で保守派が狙うプランBとは何か?
 韓国は大統領選挙を来年3月に控えて野党側の有力候補だと言われてきたユン・ソクヨル前検察総長に赤信号がついている。ユン前検察総長の義母が6月末、医療法違反や詐欺罪で懲役三年の実刑判決をうけ、法廷での電撃的拘束劇が全国のテレビで中継されたのをキッカケに支持率が急落し始めた。14日付けのインターネット媒体「NEWS1」の世論調査によると、与党(共に民主党)でトップを走っている李在明京幾道知事とユン・ソクヨル前検察総長の「両者対決」の場合、「李在明知事が43%、ユン・ソクヨル前検察総長が33%」と逆転結果がでている。
 政権交代を狙う保守派グループや朝・中・東(朝鮮日報・中央日報・東亜日報)などの保守マスコミはさっそくユン・ソクヨル前検察総長に代わるプランB作戦を始動したと言われる。
 韓国政局を野球に例えると、政権交代を狙う保守陣営はユン・ソクヨル氏による犠牲バントが失敗に終わったと判断している。犠牲バントは走者を前に進めることを目的とするが、ユン・ソクヨル氏の犠牲バントでは走者を一歩も前にすすめることができなかったばかりか、自分自身もアウトになってしまったという見方だ。勿論、現時点(16日)ではユン・ソクヨル氏は政界の重鎮に毎日のように意見を聞き歩いているようだ。15日には元国連総長の潘基文氏の事務所を訪ねた。潘総長は前回の大統領選にも出馬の意思を固めたが、あまりにもマスコミや政界からのネガティブキャンペーンに失望して出馬を断念したという経緯がある。現在、ユン・ソクヨル氏はこのマスコミや与党陣営からのネガティブ攻勢にどれだけ耐えられるかのギリギリの段階にある。
 現在囁かれている保守派が狙うプランBの主役は崔在享(チェ・ジェヒョン)前監査院長である。崔氏はこの6月28日、任期を半年残して、文政権の原発政策などに反発して電撃的に辞任した人物である。数日前に保守系野党「国民の力」への入党を表明している。崔氏にはユン・ソクヨル氏のような義母や妻に関するようなスキャンダルは今のところ表面化していない。
 崔在享氏の父チェ・ヨンソプ氏は朝鮮戦争の英雄の一人と言われる。1961年5月の軍事クーデタで実権を握った朴正煕将軍が62年10月、鬱陵島を視察した際に小舟から上陸しようとして、足を滑らせて海に投げ出された際に率先して海に飛び込んで朴正煕将軍を助けたのがこのチェ・ヨンソプ氏だったという。この美談が保守メデイアの代表格である朝鮮日報(7月2日付け)に掲載された。先日、94歳で死去した父チェ・ヨンソプ氏の葬儀には政界保守派が大挙して押しかけて、保守派朴正煕の流れを組むとして崔在享氏待望論を煽っているようだ。
 崔氏は1956年慶尚南道生まれの65歳。ソウルの名門京幾高校とソウル大学法学科というエリートコースを経て、判事になった。2018年、監査院長に対する国会聴聞会でも与野党ともに圧倒的な支持を得て任命されたという経緯がある。現在、野党「国民の力」では36歳という若い代表(イジュンソク氏)が代表が選ばれたが、時間が立つほど、20歳代と女性の支持率が下落しているという不思議な現象が生まれている。イ・ジュンソク代表は現在の「女性家族部」と「統一部の廃止」を主張している。その発言の結果、20歳代女性の「国民の力」支持率はわずか1%に過ぎないという調査結果もある。政治経験のないユン・ソクヨル前検察総長と国会議員選挙出馬歴が三度(全て落選)あるものの、36歳のイ・ジュンソク代表というアマチュア・コンビでは彼らが狙う保守派による政権奪還は砂上の楼閣に過ぎないという批判もある。もう一つ注目すべきはユン・ソクヨル前検察総長の支持率下落と同時に与党候補の間で一番支持率が高かった李在明京幾道知事に関してもかつての女優とのスキャンダルが再燃してユン・ソクヨル氏と同様に支持率が大幅に下落し始めたことだ。李在明知事は一昨年来、「韓国のトランプ」と呼ばれて日本でも知られるようになった政治家だ。しかし韓国では実兄を精神病院に押し込んだ人物として裁判沙汰にもなっている。数年前には無罪で放免されたが、道徳的にも大統領としてふさわしい人物なのかという論議が始まっている。その女優が最近になって、「李在明は人間ではない」という暴露作戦を開始している点だ。米国クリントン大統領時代、ホワイトハウスの研修生モニカ・ルインスキーという女性と執務室でセックス・スキャンダルを起こして弾劾騒ぎまで起こしているが、このような女性スキャンダルが広がると政治家としては致命的となる。昨年、ソウル市長と釜山市長が二人ともセックススキャンダルで失脚したことは記憶に新しい。ソウル市長は自殺にまで追いやられてしまった。韓国では「トランプ」といえば、賛否両論ある名前だ。共和党支持が多い韓国保守派のなかにも「トランプは精神分裂症だとロシアの情報機関(元KGB)と分析している」「トランプ大統領は就任前の文在寅大統領(当選者)に対して事前に国防長官と情報部長官の名前を通告してほしいと要求して、文大統領から断られた時から文大統領を憎んでいる」と断定する人物もいる。「韓国のトランプ」と呼ばれる李在明知事に対しても米国トランプと同じように、「何をするかわからない」と警戒する声が高いことも最近の支持率の下落につながっていると見ることもできる。この二人の支持率下落に反比例するように支持率が上昇してきたのが与党民主党の李洛淵元首相(元全羅南道知事)である。李元首相は昨年、与党の間でも支持率がトップを走っていたが、「時期をみて李明博元大統領と朴槿恵前大統領の特赦を文大統領に提案したい」と発言して世論の反発を買い、支持率を下げてしまったという経緯がある。ただし李洛淵元首相は全羅南道知事や国会議員を歴任していて、マスコミや野党陣営からの「身体検査」も済んでおり、李在明京幾道知事のような女性問題が出てくる可能性は低い。同氏の強みは穏健な性格と同時に、元東亜日報東京特派員の経験もあり、韓日議員連盟の韓国側幹事長として日本政界とは与野党分け隔てなく広い人脈をもっている知日派であるという点だ。さらに日本の在日社会だけでなく、日本政界にも「李洛淵さんなら安心して対話ができる」という李洛淵待望論もでている。政界は「魑魅魍魎の世界」でもある。南北関係や日朝関係、日米韓関係を占う重要人物がいる。それは朴智元国家情報院長官の存在である。wrote by masaki tachikawa

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