017 嘆けない
017 嘆けない
NVCは「嘆き」を教えてくれます。
ニーズが満たされなかったとき、ただ「嘆く」。
嘆きを通じて「ニーズ」そのものに繋がっていく。
ところが、これが難しい。
そもそも「嘆き」って言葉が、私の生活の中になかったのです。
私の通常の考え方は、
「私がつらい思いをしているのは、私/アイツが悪い(評価・判断)」です。
妻に対しては「ビールを買ってと頼んでいたのに、買ってきてない、無視された。愛情の無い妻だ」と腹を立て
子どもに対しては「勉強してない、勉強しないのは子どもがオカシイ。」とイライラするのです。
自分に対しても「NVCをシェアする資格なんてお前にはない」と言ってしょんぼりします。
具体的な例を出してみます。今回は職場です。
架空の佐藤課長(上司)と田中君(部下)を出してみます。私は係長役です。
(佐藤課長)「有吉係長、ここの数字間違ってない?この起案は、有吉係長の係の田中君だね。この前も間違ってたよね、あなたも、ちゃんと確認してる?(怒)」
(私)「ええ?ああ、本当に申し訳ございません。また誤った数字でした。修正するように指示してたのですが・・・・(また、田中のミスか・・・アイツめ、修正しろと言ったところを直してなかったな・・・)」
(佐藤課長)「何度言っても、ミスを繰り返すよね(怒)、田中君は良く間違うのだから、上司として確認を徹底してから稟議を回してくれるかな?」
(私)「本当に申し訳ございません。私の確認が不十分でした。今後、徹底します。」
(佐藤課長)「お願いしますよ。(ため息)」
(私)「承知しました。(ぐぬぬ!田中め!!!アイツのミスのせいで、いっつも怒られるじゃないか!!!!)」
私は容易に、「100%田中が悪い、アイツのせいでひどい目にあった」という「評価・判断」に飲み込まれるのです。
するとどうなるか? もうお分かりですね。
(私)「田中君?(不敵な笑み)また間違ってたね。この数字を直すように言ってただろう!(怒)課長も怒ってたぞ!!!(怒怒怒)」
田中君はショックを受けるか、「そもそもチェックができてない有吉係長のせいだろ」と思うかもしれません。
田中君と雰囲気はかなり険悪になります。
それでは、この事例を「嘆き」を入れたものに変えてみましょう。
(佐藤課長)「有吉係長、ここの数字間違ってない?この起案は、有吉係長の係の田中君だね。この前も間違ってたよね、あなたも、ちゃんと確認してる?(怒)」
(私)「ええ?ああ、本当に申し訳ございません。また誤った数字でした。(反射的なお詫び)」
(ここで一呼吸。悲しい、怒り、驚き、うんざり・・・たくさんの感情が動くな)
(自分自身の誠実さや自己信頼が満たされなくなってる・・・・もっと、スムーズにチームに貢献したいというニーズがあるな)
(佐藤課長)「何度言っても、ミスを繰り返すよね(怒)、田中君は良く間違うのだから、上司として確認を徹底してから稟議を回してくれるかな?」
(私)(自己一致したニーズは、信頼や貢献・・・このエネルギーと繋がって)「はい。信頼にこたえられずとても残念です。もっとミスがなく、安心して任せてもらえるように、確認を徹底します。」
(佐藤課長)「お願いしますよ。」
少しトーンが変わったのが、おわかりでしょうか?
反射的なお詫びはその場しのぎになるのですが、自己一致して言葉にすると微妙に違ってくるのです。
次に田中君に対して
(私)(田中君に対して怒りやうんざりした感情があるな・・・・私に何のニーズがあるかな?安心、信頼、誠実さが満たされてない。
●安心のニーズを満たすため私自身に対して、チェックの時間をこれまで5分でやっていたのを、もう少し長く10分ぐらいの時間を取るようにリクエストしよう。
●田中君に対して、リクエスト・・・・まずは聞いてみよう、つながりのリクエストだ。
(私)「田中君、今回のミスをどう思う?」
(田中君)「本当にすみませんでした!」
(私)「ミスを残念に思ってるんだね。」
(田中君)「はい」
(私)「そうか、それでね、私たちと、佐藤課長との間にもっと信頼関係を作っていきたいと思うんだけど、どうやったらいいと思う?今回も、私のチェックが不十分だったというのもわかってて、私は、チェックの時間を倍ぐらい取ろうと思うんだ。
田中君にできそうなことはあるかな? 後でいいから、何か思いついたら教えてくれるかな。(行動のリクエスト)」
「相手とのつながりの意図」をもって、私自身のニーズと繋がってリクエストを考えていく。
そんなシンプルなことだけで、会話の雰囲気が変わっていくのです。
ちなみに、昔、「やっと嘆けたこと」をテーマに記事を書いたことがあります。
2014年にNVCを学び始め、嘆きができるようになったのが2021年。
実に7年かかってます。
いまは、嘆きは好きなことの一つです。
嘆くことを通じて、ニーズに繋がっていく。
それは甘い痛みであり、私の大切なものは、常に私の中にあることを教えてくれるのです。