はじめての仙台からの帰り道
新幹線に乗っています。
出張先の仙台から帰っているところ。
展示会ではお越しくださった沢山の方とお話しすることができました。
家具を前に、ほとんどの方があの震災のことを話されます。最近、地震が頻繁に起こっていることについても。
背の高いものは置かなくなったね。
倒れたときのことを考えるよね、これなら倒れても平気かなって。
家具のお取り扱い、お手入れについてお話しをすると、大丈夫よというように頷き、おっしゃる方もいました。
ひとが使うんだから、いいのよ、キズがついたってなにしたって、どれも生きてる証拠よ、大事にしていたものみんな無くなったからさ、そんな気持ちだね。
静かにひとつひとつの言葉を手渡すようにお話しされる方が多かった。
こちらの話すことについても、心の奥の方で受け止めてくれるような感触でした。
短い時間でしたが、決して表面だけでない対話ができたのです。
あなたにとって大切なものはなに?
どうやって、それを大切にしている?
私は、こうしていますよ。
ということが、どなたもはっきりとお持ちのようです。だから、するすると会話は深い方へと導かれていく。それぞれの方の芯となる方へ。
ひとりの女性がおっしゃいました。
お金があればね、欲しいものも買えるし、食べたいものも食べられるでしょ。だけど、私は働かないんだって決めたの。夫の少ない給料だけでやっていくってね。外食なんてしたことなかったけど、いっつも家族でいっしょにご飯食べられると楽しいよ。一緒にいられるってことがね、いちばんの贅沢よ。いろいろあると、それがよくわかる。子どもがともだち連れてきたらさ、ちらし寿司?作ってあげるでしょ。喜ぶよ。美味しいねっていっしょになって食べたらさ、なんでもご馳走よ。私の周りの人たちはさ、こういうこと同じように考えてるから、気が合うし、無理もしないから付き合っていて気が楽よ。みんな独身の頃は一生懸命仕事したけど、わたしもね、でも、もう働きたくないしさ。働かずに、その時間を趣味に使うわけね。自分の興味のあることをやるでしょ、自分が広がるから、それが大事なのよ。いまもヨガやってきた。帰りにこれやってるって知ったから見に来たんだ。良い物を見ると豊かな心持ちになるから。そうやって、毎日、自分の手で、良いいちにちにしていく、こんなことでいいんじゃない?
松本に着いたら、いつものようにお店に立ち、いつものように仕事をします。
そうだ、一昨日の月曜日、30年以上お店で働き続けていた先輩が引退しました。なにもわからないぼくに沢山のことを丁寧に教えてくれて、お店にぼくの居場所をつくってくれた女性です。
最後の出勤日、ぼくは仙台にいて会えないことはわかっていたので手紙を書いて置いてきました。
月曜日、用事があってお店に電話をかけると、彼女の元気で温かい声を聞くことができました。
手紙ありがとう、うれしかった。
うん。
あとは、お願いしますね。
うん、楽しく過ごしてね。
ありがとう。
そんなやりとりでした。
ずっと歳下のぼくに、いつも誠意を持って接してくれた人でした。正直で、まっすぐな姿勢から、沢山学ばせていただきました。
旦那さんと仲良しですよね。
って言ったことがあります。
うーん、仲良いっていうのかなあ。あのね、仲良くした方が良い、って思ったときがあったですよ、夫婦なんだったら。
ああ、思ったんだね。
そう、思ったですよ。うちのひと、私がいなくても、たぶん、大丈夫。わたしは、そうじゃないって気がついたのかなあ。はあ、嫌だね。
昨日の仙台は雪でした。
今日はすっきり、青空。
皆さん、それぞれのいちにちがはじまり、今日を生きているのですね。