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また太い道の上を

意外と人生は綱渡であるんだと、聞いてはいたが実感はなかった。

特に大きな病気をしたこともなく、今日食べる物がないなんて状態になったこともない。「死にそう」と言ってはみても、ほんまに死ぬかもと絶望したことはない。

それは今でも変わらないのだが、最近、顔の筋肉が麻痺によって動かせなくなるという症状が発症した。
健康体で特に病気をしてこなかったので、実際の症状よりも動揺が大きかったような気がする。急に、自分が歩いている人生の道幅が意外と狭いんやなということに思い至る。

落ちてはいない。でも、自分が恐れ知らずに踏み締めていたこの足元は意外に脆くて狭いのかもしれない。
それを意識する、その闇の底に吸い込まれてしまいそうになる。

上を向いて、とか前向きにと言われるのはとにかくこの闇からその場凌ぎでもなんでも目を逸らすためだろう。
またふとしたきっかけで、太い道の上を歩ける日が、自分の実感としてそう思える日が近い将来きっとくるのだが、それまでは注意深く前向きに過ごそうと思う。

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