僕がつくって失敗したサービスのまとめ
こんにちは!Jiffcyというテキスト通話アプリをつくっている、株式会社穴熊代表取締役CEOの西村成城と申します。
私は19歳、大学1年生の終わりごろから色々なサービスをつくってきました。
思いついたものを形にすることが楽しくて無邪気にサービスをつくってはリリースしていた学生時代。資金調達をし自信満々でリリースしたプロダクトが失敗し、焦りの中で試行錯誤し続けた暗黒期。どちらも失敗に彩られています。
今でこそ世界を変えるプロダクト「Jiffcy」にたどり着き、人生を懸けて挑戦することができていますが、ここに至るまで随分と遠回りしてきました。
失敗してきたサービス量ではおそらくトップクラスです。ニーズが無くて失敗、収益化できなくて失敗、やる気がなくなって失敗など失敗のラインナップは豊富です。
失敗したサービスが失敗した時、どんなことを考えていたのか….。赤裸々に書いたので楽しんでいただけると嬉しいです。
起業しようと思っている方以外にとっては大して参考にならないかもしれませんが、思考の過程も面白いと思うので、暇つぶしとか、人の失敗をみて安心する用として活用してください。
その前に
私たちが今やっているサービス、テキスト通話アプリ「Jiffcy」について紹介させてください。Jiffcyはさまざまな失敗の末たどり着いた最終奥義的スーパープロダクトなので、後述の失敗サービスリストに加わることはないでしょう。なので失敗リストが始まる前に紹介しておかなければならないのです。
Jiffcyについて
Jiffcyはテキストで通話をすることができる次世代コミュニケーションアプリです。
アプリを開いて真ん中のボタンをタップすると、相手に電話がかかります。応答すると通常の通話のように声が聞こえてくるのではなく、トーク画面に遷移します。(特許取得済)
トーク画面では入力した文字が1文字ずつ変換前から表示されます。送信ボタンはなく、入力したそばから文字が表示されていきます。
この一連の仕組みによって、Jiffcyではテキストで通話をすることができます。
よくわからない方はこちらの動画をご覧ください。
メッセージングアプリと何が違うのか
メッセージングアプリとは大きく2つの違いがあります。1つ目は電話、対面でのコミュニケーションに特有の「そこにいる感」があることです。電話、対面では一度会話が始まるとキリが良いところまで話をし続けると思います。その正体が「そこにいる感」で、送信を介したコミュニケーションであるメッセージングアプリにはない現象です。
Jiffcyでは入力した文字が1文字ずつ表示されるため、相手が入力している途中で相手が言いたいことを察することができます。例えば「昨日佐藤先生めっちゃおもしろかったよね!」と言いたい時、「昨日佐藤先生…」と言っただけで「ね!」と返事が返ってきたりします。
これはテキストコミュニケーションでは今まで起こり得なかったことですが、Jiffcyのトーク形式では相手が言いたいことが自然にわかるようになるため、このような現象が起こります。まさに「本物の」コミュニケーション。
2つ目は応答性です。Jiffcyでは応答率(=相手とすぐ会話を開始できる確率)が75%以上であり、極めて高くなっています。
例えば、「明日何時に集合だっけ?」というメッセージを送信して数時間返信が来ないというのはザラにありますが、Jiffcyを使えば75%の確率で今すぐ返事がもらえます。
今までは相手に通常の電話をして用件を伝えるか、電話をして相手が出た瞬間に切る、という方法しかありませんでした。Jiffcyを使えば、声を出すコミュニケーションを強要したり、相手が出た瞬間に切るなんていう無理矢理な行動を取る必要はありません。緊急の連絡手段が、声を出すことを強要するツールしかないなんて、変ですよね?
電話は老若男女問わず、世界中の人が使っています。なので、Jiffcyのニーズは老若男女問わず、世界中にあります。Jiffcyはまさにこの、当たり前だけど明らかに不合理、を解決するキラープロダクトなのです。
お待たせしました
以下失敗したサービスのまとめです。
大学講義情報サイト
大学講義情報サイト:講義の口コミ+講義ノート売買プラットフォーム
これは人生で初めてちゃんと作ったサービスだと思います。大学1年生の時につくりました。
大学の講義の楽単(楽に単位が取れる)情報、先生の評判を集めた口コミサービスです。食べログの講義版とか、楽天みんなのキャンパスみたいなものと考えてもらうと分かり易いと思います。
最初から講義口コミサイトをしようと思っていたわけじゃなく、狙いは学生のノート売買プラットフォームにすることでした。
学生生活をしている中で、出席している学生が取ったノートが有料で貸し借りされていることに注目したサービスでした。(私も有料で貸したり借りたりしてました。)
当時ノートの大半はワードとかドキュメントとかじゃなくて実在する紙のノートだったので、当然誰かに貸している間は別の人に貸せないわけです。そこで1ノートがもたらす収益に限界が来るわけですね。
大学講義情報サイトはその限界を打ち破るサービスでした。プラットフォーム側でノートの権利を買い取り、内容を複製し、複製したノートのデータを複数人に販売するモデルだったんです。
当時結構似たような方向のサービスが買収されたり資金調達したりしていましたが、多くがサービス終了してしまっているみたいですね…。
実際にノートを買い集めて、そこから予想問題集とか作ったり、講義の過去問とかを先輩から買い集めたりして結構豊富なラインナップを揃えていたのを覚えています。
ノート買取も私自身が実際に受け取るのは限界があったので、ポストみたいなのを設置して、半分自動化していました。
講義情報もかなり集まっていて、履修登録前とかは数字を見る限り大学の70%くらいの方がチェックしていたと思います。それでそこからノート・予想問題集購入に至る方が一定数いるみたいな感じでした。
ですがこのサービス、皆さんお分かりの通り色々なリスクを孕んでいまして…。取ったノートの権利が先生にもあるんじゃないかとか、講義情報で先生の悪口が書かれて、先生から抗議の問い合わせが来たりとか、とりあえず拡大するにはリスキーすぎたんですよね。
結局、拡大が難しい的なこともあり、ノート売買プラットフォームビジネスはあまり収益を生むことなく終了しました。
ただ、その後も講義情報の口コミのところは残して広告収益で細々と稼いでいました。卒業前に後輩に譲渡したのですが、今はほぼ運営していないっぽいですね。
家政婦のセルサポ
家政婦のセルサポ:家政婦の個人契約プラットフォーム
これは大学2年生の時につくったサービスです。
当時私は家庭教師をしていたのですが、家庭教師のトライ(ハイジのCMで有名)的な派遣家庭教師ではなく、個人契約で家庭教師をしていたんですね。
派遣となると時給も安くなるし、好きなように教えられないし、ということで個人契約でやっていました。家庭教師の個人契約マッチングサービスというのは幾つかあって、そこからよさげなところに掲載してもらって家庭教師をしていました。
家庭教師の個人契約マッチングサービスのビジネスモデルというのは、家庭教師側は一切お金がかからず、雇う側が面談につき9,000円とか払うモデルなんですね。このモデルを別の業界に応用できないかと考えて、始めたのが「家政婦」の個人契約マッチングサービスでした。
家政婦側、雇い主側両方から募集情報を出せるようになっていて、そこでやり取りして契約してくださいみたいなサービスでした。結構ニーズはあって、月間UUが10万人くらいだったと思います。
ただ、収益化がうまくいかなかったんですよね。当時の私の技術力では、ココナラのような、「決済すると独立したメッセージングができるようになる」みたいなことができなかったので、80%くらいの方はサービスの決済機能をを通さずこっそり契約しているようでした。
当時私はなんでも自分でやることにこだわっていたのでメッセージング機能の開発ができず、しかしマネタイズは必要ということで、利用は無料で上位表示するためにはお金がかかる「フリーミアムモデル」に変更しました。
一定の収益は上がっていましたし、今思えば自分のスキルを上げたりエンジニアを雇ったりすれば十分売り上げが立つようになっていた気もしますが、私自身の情熱がなくなってしまい、管理が疎かになっていって、結局サービスを終了しました。
当時送客の提携した企業さん、全然送客できず申し訳ありませんでした。
このサービスはある企業さんから買いたいみたいな話も来ましたが、売りませんでした。
Neeter
Neeter:リアルニート育成ゲームサービス
これも確か大学2年生の時につくったサービスです。
今になって考えるとTwitchの前身のジャスティンTVや、youtubeの当時はなかったスパチャ機能と似たようなサービスですね。
ニートの生活をカメラで見れるようになっていて、育成ゲームみたいな感覚でアイテム(食品とか家具とか)を買ってあげたりできるというサービスです。随分狂ってますね。
買ってあげたアイテムは家具だったら翌日とかにカメラで見える位置に設置されたり、食品だったらニートの方がカメラ前で食べたりしてくれるため、まるで育成ゲームみたいな感覚で愛着がわいてくるというものでした。
つくった当初ニートの方とのつながりが無かったため、ユーチューバーの方10名くらいに声をかけて育成対象になってもらっていました。
一定のPV数にはなっていたのですが、なかなかアイテム購入に繋がらず、ユーチューバーの方のやる気が失われるという形でサービスは終了しました。
今考えると、構造としてはライブ配信サービスに似ているなと思いますが、なかなかきちんとサービス運営しないとアイドルレベルの愛着はわかないという感じがありました。
メモ帳アプリ
メモ帳アプリ:Android用メモ帳アプリ(170言語対応)
これは大学2年生の夏終わりにつくったサービスです。
現在までで400万インストール以上されています。
当時大学のサークルで夏合宿があったのですが、そこでなにかアプリを作ろう!という決心をして、合宿が終わって速攻でリリースした記憶があります。
このサービスは、自分の中に2つのやりたいことがあって、その目的を達成するためにリリースしたという意味合いが大きかったです。
私は当時アプリをリリースしたことがなく、内容に凝る前にまずリリースまでやってしまうことが重要だと考えていました。簡易的であれゴールまでの道のりを感覚的に知っておくと、今後の役に立つと思ったのですね。
それと、私は自分自身のサービスで世界展開したことがなかったので、これもゴールまでの道のりを感覚的に知っておくために世界展開したいと考えていました。
こうして、アプリづくりを学び始めてから一週間くらいでメモ帳アプリをつくり、170言語くらいに対応させて世界にリリースしました。
このアプリは今に至るまで継続的に収益をあげていて、このアプリがなかったら会社は倒産していたかもしれません。
このサービスで学んだのは、自信満々のサービスが上手くいくとは限らないし、凝ったサービスが上手くいくとも限らないということですね。
メモ帳は他にも派生形のアプリを幾つか出していて、多少収益をあげました。
このサービスはある企業さんから買いたいみたいな話も来ましたが、売っていません。
IQテストアプリ
IQテストアプリ:質問に答えていくとIQがわかるジョークアプリ
これも大学2年生の時につくったアプリです。
当時診断系のサービスが流行っていたんですね。ツイッターで一ヶ月ごとに診断系のサービスがバズっているような状態で、なにかできないかなと思ったのがきっかけです。
そこで、アプリづくりのスキルを活かして、アプリでIQテストをつくりました。当時認知心理学のエキスパートの友人がいたんですが、その人の監修のもとジョークアプリとしてIQテストをリリースしました。
これがいきなり大ヒットしまして、アプリストアランキング3位に来たんですね。当時家庭教師バイトで稼いでいた一ヶ月分の給料が一日で入ってきました。
当時学校帰りで混んでいる電車に乗っている時に、隣に立っている人が自分のIQテストをやっていて、心臓がバクバクしたのを覚えています。
ですがそんな状態続くはずもなく…。IQテストとかの診断系というのは一回やったらそこで終わりなので、嬉しい期間は2ヶ月くらいで終わりました。総インストール数は20万くらいだったと思います。
このサービスは「自分のサービスが身近なところで知らない人に使われる高揚感」みたいなものを教えてくれたので、今も結構モチベーションに繋がっています。
診断系は他にも色々出して、多少の収益をあげました。
Youtuberに向いてる度診断
Youtuberに向いてる度診断:ユーチューバーにどれくらい向いているかがわかるアプリ
これも大学2年生の時につくったのですが、場合によってはバズっていたかなぁと思ったり、思い入れがあるので書きます。
当時ユーチューバーという職業が将来なりたい職業ランキング一位になったとかで盛り上がり始めていたんですね。そこでリリースしたのがYoutuberに向いている度診断です。
ユーチューバー戦国時代ということで、ネタを探しているユーチューバーの方が、このアプリを使ってくれるという目論見でした。
結果かなり多くのユーチューバーがこのアプリで遊ぶ動画を撮ってくれて、それがユーチューバー間で波及していくといったことが起こりました。
【ゆっくり診断】Youtuber向いてる度診断やった結果(´;ω;`)ウゥゥwww
そこから大物ユーチューバーまで波及すれば良かったのですが、大物ユーチューバーが取り上げることはなく、2ヶ月くらいでアプリの海に沈んでいきました。
今だったら何らかの手段でユーチューバーの方に直接連絡取ったり努力したんだろうなぁと思ったりしてます。
脱出成功率0%
脱出成功率0%:選択式脱出ゲーム
色々とチャレンジしていく中で、やっぱゲームつくんなきゃだめでしょ!というのがあったので、脱出ゲームをつくりました。
コンセプトはサービス名の通り「超難易度が高い脱出ゲーム」で、脱出できた方のニックネームを、脱出できた順にアプリ内に掲載するということをやっていました。
アクション的な面で難易度が高ければまだ楽しいのですが、このアプリは暗号的なところで難易度が高かったのでやっていて楽しくなかったです。
楽しくないものの、ちょくちょくクリアする方が出てきて嬉しかったです。結局クリアしたのは30人くらいかな?
理不尽ゲームシリーズでは他に、パネルが9枚並んでいて決まった順番でパネルを押していくとゴールにたどり着ける(途中で一回でも間違えたら最初から)という、なんとも生産性がないゲームをリリースしたりしました。
↑ゲームで使われていたパネルの画像
これが解けたら1万円
これが解けたら1万円:賞金が貰えるクイズアプリ
これはビジネスとしてやろうとした感じじゃなく、実験でやりました。
確か大学3年生の時にリリースしたアプリで、はじめてアプリに決済システムを取り入れてみたんですね。それで手っ取り早く決済システムを試すためにリリースしたアプリだったと思います。
ヒントがないと解けないくらいの難問を週1くらいの頻度で出していって、ヒントを15個くらい用意して、全部のヒントを買ったら確実に解けるみたいなものでした。
賞金=「ヒントを全部買った時の価格」みたいな感じにしていたので、理論上はあまり損をすることはないということで結構決済システムが使われるかなぁと思っていたんですね。
結果全てのヒントを購入したらほぼ確実に解ける、というのが信用されず、あまりヒントは買われませんでした。情報の非対称性と言ったりしますが、当たり前ですよね。
とりあえず少数ながら決済システムの実験は出来ましたし、情報の非対称性を学べたのでこれはこれで良しと考えています。
広告枠.com
広告枠.com:主にインターネット上の純広告枠を売買(貸し借り)できるプラットフォーム
多分大学2年生の時につくったサービスです。
コロナ最盛期の時、Zoomの背景を広告枠として販売するというトレンドがあったと思うのですが、まさにそういったものとかを売買するプラットフォームです。
打ち合わせ中の背景が広告看板に。Zoom背景スペース活用で働くビジネスマンを応援するオンライン広告キャンペーンを開始。
当時アプリを幾つかリリースして運用する中で、Google Adsenseの他にnendとかの広告配信サービスを使ってみたり、期間決めて10万円みたいな形で純広告として販売するタイプとか色々と試していたんですね。
その中で気づきがあって、運用広告より純広告の方が収益があがり、うまくやれば広告効果も高いということがわかったんですね。当時広告配信サービスは広告フォーマットにそこまでの柔軟性がなく、邪魔になる広告しかできなかったんです。
純広告だと宣伝するサービスの相性とかを考えて、良いタイミングで自然と広告を出すことができるわけです。当然このほうが広告効果も高いわけですね。
当たり前ですが中抜きもないので運用広告より純広告枠を直接売買した方が収益もあがるんですね。
それで純広告を独自に販売していくわけですが、いきなり広告しませんか?と連絡しても効果は薄くほぼ反応されないのです。それで、どこかに出品したいと思って広告枠を販売できるプラットフォームを探したのですが、存在しなかったんですね。それで仕方なく某スキル販売プラットフォームに出品することにしたんです。
そしたらこれが結構売れて、スキル売買プラットフォームにも関わらず広告枠を買ったりする需要があるということは、広告枠購入ニーズもすごく高いんじゃないかと思ったんですね。
ブロガーとかも含めると自分みたいに広告枠を売りたいみたいなニーズは確実にあるし、広告枠購入ニーズも高い、でも誰もやっていない。ということで、広告枠の売買プラットフォームを自分で作ったわけです。
広告枠売買のプラットフォームとしてまわり始めたら、今分散している広告出稿窓口を集約して運用広告も出稿・管理できるようにしたり、一大広告プラットフォームをつくれるんじゃないかとか思っていました。そこから広告管理システムに派生するとか。
このサービスは本腰入れて取り組んだら面白そうだと思っていて、つくったものの、本腰いれてやる体制をつくれず、結局リリースしませんでした。いつかやりたい。
記念アプリ
記念アプリ:アプリをプレゼントできるサービス
これは大学3年生の時につくったサービスです。
その頃アプリづくりができるようになった私は、スキルを活かしたい!と考えていたんですね。でも受託開発は面倒そうだったので嫌で、行きついた先が記念アプリというサービスでした。
これは誕生日とか、つきあって〇年みたいな時に専用アプリをプレゼントできる!というものでした。アプリを開くと事前に貰っていた写真と音楽が流れるというものです。
このサービスを販売するために某スキル販売系のサイトに登録したりとか、プロモーションもちょびっと行ったんですが、ニーズはほとんど無かったです。
そもそもアプリストア経由でアプリを提供するわけじゃないので色々なセーフティフィルターを外してもらう必要があるんですよね。「不審なアプリ:重大な影響を与える可能性があります」と警告出るけど無視してください、という感じになってしまい、プレゼントには合わなかったなという反省があります。
ただ、アプリをパブリックなものじゃなくて完全にプライベートなものとして違う価値を付けてみたらどうなるのか、という実験ができたので、これはこれで良い経験になったと思います。
kokoro
kokoro:寄付型クラウドファンディング
これは大学3年生の時につくったサービスです。
当時クラウドファンディングサービスの起業ブームが一旦収束し、勝者と敗者が明確になってきたみたいなタイミングだったんですね。
その中で、「勝者が確定していないカテゴリだったら後追いの方が色々と学びを活かせるので有利なのでは?」という考えがあり、クラウドファンディングについて色々考えていたんですね。
クラウドファンディングにはざっくり分けて購入型、投資型、寄付型が存在するのですが、当時寄付型クラウドファンディングで目立っているところがありませんでした。私自身その時赤十字社で活動していたので寄付に関する知見がある程度あり、いけるだろうということでつくりました。
一定以上寄付した方には感謝状を贈ったりとかも考えていました。
つくってみて分かったのですが、例え「お金が貰いたい」と言っていても、クラウドファンディングでお金を集めるまでのモチベーションはないという方が大半なんですよね。
本当に困っている人はインターネットもやっておらず、自分たちからアプローチできるところに本当に困っている人はいないということがわかりました。
アメリカでうまくいっている寄付型クラウドファンディングサービスをみると、緊急で困っているから助けてほしい!という案件が多いんです。例えば家が燃えたので助けてほしいとか、難病でお金を補助してほしいとか。
GoFundMe: #1 Fundraising Platform for Crowdfunding
その感覚でサービスをつくっていたのですが、日本だとそういった寄付というものはあまり一般的じゃなかったんですよね。
今日本でうまくいっている寄付型クラウドファンディングをみると、特定の飲食店を助けたりだとか、アーティストを助けたりとか、廃校になった小学校を憩いの場にしたいだとか、ファンクラブとか社会貢献的な意味合いが強い案件が多いんですね。
当時私は社会貢献的な領域で寄付型クラウドファンディングが成り立つということに気づかなかったので、案件を見つけることができませんでした。
もともと日本には寄付文化というものがあまりなく、名目GDPにおける寄付割合は0.14%程度です。一方アメリカは1.44%で、10倍の差があります。根底にはキリスト教的価値観があると思うのですが、これだけでも日本だと寄付型クラウドファンディングは厳しそうです。
また、撤退を後押しした理由としては購入型や投資型と違って「収益化が倫理的にかなり難しい」というところで、答えを見つけられなかったというのがありました。
クラウドファンディングというのは動いたお金から15%とか手数料を取るのが大半だと思うのですが、寄付金から手数料取るのは倫理的に…という問題がありました。「廃校になった小学校を憩いの場にしたい」的な方面だったら手数料を取るのに違和感はなかったと思います。
zeroapp
zeroapp:アプリリリースまで一日でできる無料プログラミング教室
これは大学4年生の時にやっていたサービスです。
それ自体がITサービスというわけではなく、場所を借りて無料のプログラミング教室を開いていました。ボランティアでやっていたわけではなく、成果物に運営者の広告枠を貼ってもらうビジネスモデルでした。
このサービスを始めた当時、既に色々なサービスをつくった経験から「無料でプログラミングを教えても、広告収入があればトータルでプラスになる」という試算があったんですね。
寧ろプログラミング教室に来てくれた方に一人あたり5万円くらい配っても3ヶ月で元が取れる、みたいな計算をしていた記憶があります。
実際に来てくださった方はプログラミングをやったことがない方ばかりで、無料でサービスリリースまで体験できるというのは結構評判良かったです。
コンテンツはサービスリリースを最短ルートで通るので、正直プログラミング技術は身につかないものでした。でもサービスリリースの経験を得たいという目的の方が多かったので、そういった方のニーズはピンポイントで捉えていて、ポジショニングは良かったかなぁと思います。
続けていれば手堅く良いところまでいったのかもしれないと思いつつ、爆発的な成長は期待できない、といったことでやる気が失われていきました。
ここあたりから、より多くの方に使ってもらえるサービスを作りたいという思想が強くなっていきました。
売り上げが立つからといってサービスを始めても、やる気があまりなければ続かないといった例でした。
若さフィット
若さフィット:フィットネスクラブ版ホットペッパービューティ
ここから社会人編になります。
ここまでは思いついたものを形にすることに楽しみを見出していたのですが、段々とサービスをリリースするだけじゃ物足りなくなってきて、より多くの人に愛されて長く使ってもらえるようなサービスをつくりたくなってきていました。
そういうことで、ここからはスタートアップ的にもっと市場が大きくて急成長していけるものをやろう!という方針に切り替わりました。それでつくったのが若さフィットです。
「若さフィット」という名前の由来は、ターゲットが40代くらいかなと思っていたので、「若い」という言葉を使ったらヒットしそう!的な感じだったと思います。
若さフィットは結局収益化と市場の大きさのところでつまづいてうまくいきませんでした。市場が大きいものをやろうという決断はなんだったんだ…。
当時ホットペッパービューティみたいに送客でお金をもらうビジネスモデルで考えていたのですが、フィットネスクラブって単発のお客さんはほとんどいないんですよね。
一回送客するとそこで会員になる感じなので、美容院とかと違って毎回送客が発生しない。ユーザーも一回フィットネスクラブに入ると他のフィットネスクラブを試したりとかっていう行動をしません。だからといって、こちらが提供している価値は集客だけなので会費から手数料をもらうみたいなことはできず。
あと、フィットネスクラブというのは単純に数が少ないんですよね。美容院とかと比べてもあまりにも少ない。市場が小さい。
さらに集客ニーズもあまりない。数があまりないので競争がそこまで激しくなく、お金かけてまで集客ブーストしたい!というニーズがあまりなかったです。
もっとよく考えれば失敗は目に見えていたと思うのですが、当時は競合があまりいない点だけを重視してしまっていました。
よく言われる「類似サービスがないのには理由がある」というやつでした。
ビフォパ
ビフォパ:ビフォーアフターSNS
これはかなり周りを巻き込んでいったサービスです。各方面ご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした。
ビフォーアフター専用のインスタグラムみたいなものです。当時投稿するタイプのSNSサービスにこだわっていて、あれやこれやとアイデアを考えていたんですね。
そんな時、実家に帰ったら親がビフォーアフターの記事を読んでいて、そこから化粧品を注文していたんですね。聞くとどんなに口コミがあってもどんなに評判が良くても、結局ビフォーアフターが一番参考になると。
最初聞いた時は「ふ~ん」という感じだったのですが、そこから時間をかけて考えてみると、これはSNSの題材としてイケるんじゃないかと思い始めてきたんですね。
ビフォーアフターというのはコンプレックス商材というか、環境によってかなり投稿しやすさが変わるテーマだと思うんです。例えば、海外だと美容整形のSNSがかなりうまくいっていて、日本でも同様のサービスが成長しています。
国内最大級の美容医療プラットフォーム『トリビュー』、シリーズCラウンドで約17億円の資金調達を実施し、累計調達額33億円へ
そういう感じで、投稿しやすい環境さえ作れれば、美容整形も含めてコスメとかダイエットとか筋トレとか美容院とか、ビフォーアフターが関わるジャンルのSNSとして良い位置にいけるという確信がありました。
投稿はビフォーアフターの画像をいっぺんに見ることができる形式で、ビフォーアフターが生じた部分に好きなように商品名をタグ付けられるようにしていました。
そのタグをタップするとその商品を使ったビフォーアフターがずらーっと出てきて、さらにアプリ内から商品も買える!というものでした。
がっつりプロモーションに力を入れ、300名以上のインフルエンサーの方に協力してもらってプロモーションを行いました。協力してくれたインフルエンサーの総フォロワー数は1,000万人を超えていたと思います。
リリースして、初動は悪くなかったのですが、段々とアクティブユーザーが減っていってサービスは終了しました。ビフォパで何万文字分も語れることはあるのですが、ちょっとだけ。
簡単に言うと、サービス設計が問題だったと思います。
というのも、インスタグラムでビフォーアフターを投稿している方たちは同じようにビフォーアフターを投稿している人をフォローしているので、そこで一定のコミュニティ感があるんですよね。
そこで一定のビフォーアフター投稿がしやすい環境がある。となると、ビフォパで投稿するインセンティブにはインスタ以上のものが必要になるわけです。そこをうまく設計できませんでした。
ビフォーアフターを参考にコスメとか買いたい層も、より情報が多い方に流れるわけですね、それが多少ビフォーアフターに最適化されていないとしても。
というわけで、インスタグラムの「ビフォーアフターに特化した下位互換」をつくってしまったことに気づき、撤退しました。
Yagura
Yagura:月額制インフルエンサーマーケティング
ビフォパを失敗した後、次のスタートアップ的事業が固まるまでその場しのぎで一定の売上をあげようというサービスです。
ビフォパでインフルエンサーの方300名とできた繋がりを活かしてなにかできないかな、というので安直にインフルエンサーマーケティングに辿り着いたわけです。
ただ、普通にインフルエンサーマーケティングをしてもつまらないので、月額制でやってみました。
月額制のインフルエンサーマーケティングというのは利用者側のメリットがそこまでないのですね。もちろん継続的なレポートが貰えるとか、反応を見ながら柔軟に起用インフルエンサーを変えられたりというのはメリットなのですが、月額制というリスクを冒すまでの価値があるのかというと、正直微妙なところなのです。
レポートというのは、ホットペッパービューティに掲載している美容院が毎月経営アドバイス的なレポートが貰えるみたいな感じです。感覚としては、ホットペッパービューティーの価値は集客なので、レポートのために掲載したりするところはあまりない、みたいなものです。
ということで、ニーズはあまりなかったです。
社内のリソースを活用したいからといって、明らかにニーズがあまりないことをやってもなんにもならないということを学べました。
第一志望就活
第一志望就活:内定辞退されない採用プラットフォーム
リリース前に炎上して終了したサービスです。
名前の通り第一志望に特化した就活サービスです。就活市場には「内定辞退される問題」というのがありまして、業界一位でない会社は学生と会う機会を増やしたり、食事に行ったりして、どうにか内定辞退率を下げようとしているんですね。
会社は「会社の目標」から必要な従業員数を算出して採用するわけですから、目標の数字と実際に入社した人の数に大きな差があると、大変困るわけです。場合によっては結構損失が発生したりします。
そこで、第一志望に絞り込んだ就活サービスをつくったら内定辞退がなくなりそう!と思ったのです。
もともとある大手の就活サービスはいかにたくさんの学生をエントリーさせるか、に力を入れていたので、全く正反対のアプローチだと大手も強みを生かせず真似しにくい、と考えていました。
第一志望なら当然内定辞退もしないし、会社側もやる気のある人を採用できるからまさにWin-Winです。
第一志望就活でエントリーできる企業は一社までだったので、第一志望ということを第一志望就活で意思表示できるのは一社までです。となったら、少しでも採用に有利そうな第一志望就活で第一志望企業にエントリーするはずです。
さらに「デポジット制」というもので保証を付けていました。エントリー時に一定の金額を預けて、選考から落ちた時と入社が決まったときに返金するという仕組みでした。内定辞退した際は預けたお金は返ってこず、寄付されます。
当時プロトタイプを30人くらいの学生に試してもらっていたのですが、「学生からお金を取るなんて最低」といった文脈で批判され、炎上してしまいました。
結局このサービスは正式リリースされることなくお蔵入りしました。サービスをつくる時には理詰め的な思考だけじゃなくて、ユーザーの心理的抵抗感を考慮したほうが良いというのを学べました。
クラウド返品SaaS
クラウド返品SaaS:返品自動化システム
ネットショップが導入できるサービスです。返品を完全に自動化し、返品金額をショップ専用のクレジットに変換し、別の商品の購入に繋げるというものです。
当時アメリカに似たようなサービスがあり、タイムマシン経営をしようと思って始めたサービスです。当時ReturnlyというSaaSがアメリカでうまくいっている感じだったんですね。
Returnly raises $3.2M to immediately refund your money after an online return
他にも、Happy Returnsというサービスが結構うまくいっていたり。
オンラインショッピングでの返品を快適に!Happy Returns
一方日本を見渡してみると返品関連SaaSやサービスがほぼ存在していませんでした。アメリカより劣るとはいえ、日本のEC市場も相当に大きく、返品率が1%でもあれば大きめのサービスになるのでは、というのがありました。
そして、プロトタイプを作りネットショップを運営している会社を回ると、明らかにニーズがありませんでした。
そもそも、日本では返品が一般的ではありません。アメリカでは返品率が20%近くなのに対し、日本は5%もありません。でも、5%もあれば十分な売り上げが立ちそうですよね?
実際はアメリカの20%と日本の5%では、数字以上の心理的差がありました。アメリカのネットショップ事業者は、返品は自社のせいではなく客の性質と考えている節があります。そしてそれを織り込んで経営をしています。日本では返品は自社の品質のせいと考え、返品率を下げることが企業努力だったりします。
ということで、返品をスムーズにするシステムなんて誰が導入するんだ、となりました。
プロトタイプをつくるのに結構時間を使いましたが、プロトタイプの状態でヒアリングを入念にしておいてよかったなと思いました。
SaaSHub
SaaSHub:導入企業からSaaSを探せるSaaSデータベース
SaaSを導入する際に、企業から検索してSaaSを選定することができるサービスです。
どの企業がどのSaaSを導入しているか、どのSaaSがどの企業に導入されているかがわかるようになっていました。15,000社ほど載せていたと思います。
当時どんなサービスをやるか連日悩んでいて、以下の2つの軸からサービスを考えていたんですね。
SaaSというのは、簡単に言うと業務効率をあげるためのオンラインサービスみたいなものなのですが、色々と種類があってどれを導入すれば最適なのかがわかりにくいんですよね。
資料を取り寄せてもまあ、「なんかすごそう!」というのが正直な感想なわけです。
それで、私自身がSaaSを探している時に思ったのが、ベンチマークとしている企業が導入しているSaaSなら間違いない、ということだったんですね。
それで、その企業が使っているSaaSを調べるわけですけど、意外とこの情報が出てこないんです。できることといえば、たくさんのSaaS会社に資料請求をして、たまたまその企業が導入事例に載っていることを祈ることくらいです。
この時点で、特定の企業が導入しているSaaSを一覧で見れたりすると絶対使うなぁと思っていました。これで当初考えていた軸の一つ目「・実際に自分が困ったことを解決するもの」はクリアしたわけですね。
さらに、外国でこういったサービスが成功している例を探すと、あったんですね。
Siftery, A Database Of What Services Companies Are Using, Raises $4M
Software marketplace G2 Crowd acquires Siftery to fold software usage into its dataset
調達金額はそこまで大きくないものの、きちんとExitしています。2つ目の条件「・外国で成功事例があるもの」クリアです。
アメリカと比べると日本のSaaS市場はまだまだ小さいのですが、今後大きくなることは約束されていますし、市場成長スピードも結構速いです。
ということで、最小限のデータで最小限の構成ではありますが、SaaSHubをリリースしたわけです。西武ライオンズが導入しているSaaSとか見てると楽しかったです。
利用者はそこそこいましたが、「Jiffcy」に注力するためサービスを終了しました。
アタルノ
アタルノ:占い口コミ+月額制占いプラットフォーム
占い師の口コミサイトと月額制占いプラットフォームがセットになったサービスです。大学講義情報サイトの時に口コミサイトと売りたいものをセットにすると良いということを学んでいたので、それを活かした構成ですね。
月額制、サブスクといったビジネスモデルはまだまだ発展途上で、色々と適用可能な業界もあると思うんですよね。それこそ毎月賃料を払うのが当たり前みたいな感じで、業界スタンダードになり得るものもあると思っていて、占いはまさにそれだと思ったんですね。
占いというのは生活の中で不安なことがあって、その不安を軽減するためにするものなんですが、どんな些細なことでもいつでも相談に乗ってくれる人がいたら良いですよね。
もちろん何でも相談できる友だちや家族、恋人がいれば良いのですが、中途半端に悩みを知っているから話しにくかったりということもあって、占いの需要はそういうところなんですね。
月額制の占いでいつでも相談できる環境をつくれば生活にセーフティネットができる。人は保険のような、安心のためにお金を使うことをいとわないので、月額制占いもイケる!というわけです。
占い業界というのはかなり市場規模が大きくて、1兆円ぐらいと言われているのですね。業界自体が成長しているわけではないのですが、縮小してもいなくて、さらにIT化が結構遅れている市場なんです。
SEOとかもあまり力を入れているところがなくて、多分IT企業が本気でやったら割と本気で業界全体をひっくり返せると思っています。(業界の競争も激しくなくて価格競争も起こっていないので単純に価格だけで一時的に勝つことも出来ると思います。)
占い口コミサービスとしては日本最大級で、月額制占いサービスとしても強いニーズは確認できていたので、続けていればそこそこ売り上げが立った可能性はあります。
利用者はそこそこいましたが、「Jiffcy」に注力するためサービスを終了しました。
というわけで
すごく色々と恥をさらしてきたのですが、こうしてまとめてみるともっとやり切れたかなと思ってしまいますね。色々な業界に手を出してきたので横断的に考える力はついたような気がします。この失敗を参考にして、みんな失敗を避けるようにしましょうー!
最後に…
今私が全力で取り組んでいる最終奥義的スーパーハイパーサービスであるテキスト通話アプリ「Jiffcy」をまだ使ったことない方はぜひ使ってみてください。多分気に入っていただけると思います。
恥ずかしすぎてここに書けないサービスもたくさんあったりしますが、いつか書くかもしれません。スキとフォローもお願いします。
西村成城でした。