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shift innovation #70 (西宮市 hack)
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今回、近畿運輸局・西宮市による「観光コンテンツ造成、磨き上げ、販路拡大まで一体的に学ぶ」というセミナーに参加しました。
【セミナー概要】
2025年に開催される大阪・関西万博を見据え、地域の方々が観光を舞台により活躍でき、稼ぐ力を高めていただくために、学びと横の繋がりを深める場として本セミナーを開催いたします。西宮市の観光まちづくりの取り組みを題材とし、観光コンテンツの魅力をさらに引き出し、販路を広げる方法を実践的に学んでいただけます。机上の議論だけでは得られない具体的なアイデアやノウハウを、フィールドワークなど現場での活動も通じて吸収していただけます。
【セミナー前半】
体験ツアーを造成するためには、体験ツアーを行う現場を実際に見てみることが重要であり、フィールドワークを効果的に実践するための「体験ツアー造成のコツ」として、「事前準備編」と「フィールドワーク編」に分けて説明がありました。
(合同会社JIN-仁)
体験ツアーのコンテンツを造成する上で、「定番ツアーのみ」「オリジナルツアーのみ」の場合、集客することは難しいので、集客するためには、定番ツアーで関心を持ってもらった上で、その中にオリジナルツアーを組み入れる必要があり、例えば、伏見稲荷の場合であれば、千本鳥居に合わせて、近隣の滝巡り(滝行)を入れるなど、オリジナリティを出すと良いようです。
事前準備として、フィールドワークの前にはコンセプトを設定しておくことが重要であり、例えば、ターゲットを外国人にするのであれば、外国人のライフスタイルなども含め、コンセプトのイメージを言語化できるまで落とし込み、自身の知見の範囲におけるコンセプトから始めると良いようです。
また、外国人観光客の中には、富裕層のオーダーメイドの旅行プランの依頼で、日本人の普段の生活や日本人の親切心の根源を知りたいということで、街中のカフェなどを1日体験したいというオーダーもあるようです。
フィールドワークでは、案内するルートを2回から3回、実際に歩いてみることが大切であり、ワークショップや料理教室を組み入れる場合は、外国人モニターなどに参加してもらい意見を聞くと良いようです。
そのとき、第一印象が重要であり、何に心を動かされたのか、そのことを体験ツアーに組み入れることにより満足度が上がるようであり、事前に検索した内容だけでは分からず、ターゲットに伝えることができないので、現地に出向きフィールドワークをすることが重要であるようです。
(辰馬本家酒造株式会社「白鹿」)
今回、体験ツアーの場所を提供する辰馬本家酒造株式会社「白鹿」の松原氏より、西宮地域を活性化させたいとの思いにより、日本の文化である日本酒に関する説明をはじめ、兵庫県にある灘五郷(西郷・御影郷・魚崎郷・西宮郷・今津郷)、その中の西宮郷、そして、辰馬本家酒造の歴史など、体験ツアーの観光客に説明することにより、日本酒に関心を持ってもらえるような様々な情報について説明がありました。
その中で、酒造業では事業の多角化を図っていたようであり、辰馬本家酒造では、かつて船舶事業や金融事業(興亜損保)をはじめ、人への投資に力を入れたこともあり、名門校の中高等学校(甲陽学院)がグループ事業にあるなど、文化・教育事業にも力を入れているようです。
また、西宮郷には宮水があったことから酒蔵が多く、特に宮水はミネラル分を多く含む硬水であるので、辛口でスッキリした味わいが特徴であることや日本酒には味覚の五味のうち塩味が含まれてないことから、塩を合わせることで美味しさが増すなど、日本酒や日本酒に合う食事に関する様々な情報について説明がありました。
そして、「酒ミュージアム『白鹿記念酒造博物館』」では、伝統的な酒造りの工程を丁寧に説明いただく中で、酒蔵によく吊るしてある「杉玉」の色と日本酒の成熟度合いの関係、かつて使用していた圧搾機械の別の用途、きつね桶の名前の由来など、聞くと「なるほど❗️」「怖っ❗️」というような説明もありました。
これらの答えを知りたい方は、ぜひ「酒ミュージアム『白鹿記念酒造博物館』」へ足を運んでください。
(松原氏の説明を聞いていると、今夜一杯飲みたくなるよね❗️ 私はお酒を飲まないのですが・・・。)
【セミナー後半】
今回のセミナーは、体験ツアーを造成することを目的に、西宮市内をフィールドワークの場として活用するものであり、参加者には体験ツアーを企画する人やツアーコンダクターの方がたくさんおり、西宮市内で体験ツアーをする予定の方もいれば、参加者の地元で体験ツアーをする予定の方もいました。
私はというと、体験ツアーを造成するということにこだわらず、地域活性化のため西宮市内のフィールドを活用し新たな企画を造成するという視点で捉えていましたので、セミナーでは自身が企画する体験ツアーのコンテンツやタリフに関するワークショップがあったのですが、体験ツアーを造成する予定はなかったため、ワークショップには参加せず、辰馬本家酒造株式会社「白鹿」の松原氏に下記企画を託し途中離脱することにしました。
(企画概要)
西宮市においては、観光資源がたくさんあるものの、観光名所としての認知度は低いという説明がある中で、体験ツアーを実施することとした場合、日時や場所を指定することにより、天候の問題や人数が集まらない場合、体験ツアーが中止となるなど、様々な課題があるのではないかと感じました。
また、最終目標を西宮地域の活性化とした場合、体験ツアーだけでは、観光客は西宮市内を周遊し、日本酒を買い食事をするだけで終わる場合もあり、西宮の日本酒などを買い続けてもらう、西宮に再び観光をしてもらうなど、永続的な仕組みとすることは難しいのではないかと感じました。
そこで、はじめから体験ツアーを実施するのではなく、時間や場所に制約がなく、費用や人員を使わない方法として、いつでも・どこでも・誰とでも参加することができる(スタンプ)ラリー形式によるスモールスタートの体験であれば、観光客も気軽に参加できるなど、参加者が増加することも想定され、日本酒体験がSNS等により拡散し認知された時点において、体験ラリーを体験ツアーに昇華させることもできるではないかと思いました。
そして、観光後も日本酒を飲みたくなるような仕組みを造成することにより、自国の家やレストランで日本酒を飲みたい、西宮にもう一度行きたいと思ってもらえるのではないかと思いました。
【企画内容】
(目的)
●「日本酒を家飲みに」
“旅行をきっかけに西宮の日本酒を飲み続けてもらう”
(コンセプト)
●「お酒を楽しめる酒蔵巡り『焼印ラリー』でオリジナルの『枡』をつくろう」
(タイトル)
●「酒蔵巡り焼印ラリー『SAKE-MASU』」
(内容)
ターゲット
●外国人観光客(お酒 : 20歳以上、スイーツ : 子供から大人まで(ファミリー))
「焼印ラリー」の仕組み
●「焼印ラリー」の参加者は、酒蔵巡りのための体験手形「枡」を購入(2,000円)します。
(「焼印ラリー」の料金2,000円には、「枡」の購入費用、「酒ミュージアム」の入館料、各酒蔵における一杯目の料金を含みます。)
●酒蔵を巡り、各酒蔵において「枡」に酒蔵のロゴの焼印を押します。
●「枡」を各酒蔵に持参した場合、酒蔵において一杯目は無料で飲むことができます。
●酒蔵を巡った焼印のある「枡」を旅行の記念品にできると共に家飲み用の器として使用できます。
(自国で家飲みする時、「枡」にラリーで刻印した酒蔵のロゴの焼印を見るたびに、○○の酒蔵の日本酒を飲みたい、西宮にもう一度行きたいと思っていただけます❗️❓)
●西宮市内の出店のスイーツ店とコラボし、酒蔵において日本酒に合うスイーツを購入し食べることができます。
(酒蔵においてスイーツを販売することにより、子供や日本酒を飲むことができない人も「焼印ラリー」を一緒に楽しむことができます。)
「枡」
●日本酒を飲むための器は、エコな木製の「枡」とします。
●「枡」の裏にレーザーカッターで掘ったQRコードを読み取ることにより、アプリから「焼印ラリー」情報・「家飲み」情報を確認できます。
アプリ
(「焼印ラリー」情報)
●酒蔵巡りの地図掲示、酒蔵の紹介、コラボスイーツの紹介、日本酒割引クーポン券掲示
(「家飲み」情報)
●海外日本酒販売店紹介、海外日本酒提供レストラン紹介、日本酒に合う日本料理レシピ紹介、日本酒に合う海外料理レシピ紹介
集客方法
●海外日本酒販売店・海外日本酒提供レストランにおけるイベント(PR)、旅行会社によるPR、ユネスコ無形文化遺産「伝統的酒造り」においてPR
●旅行サイト、SNS(インフルエンサー)、SEO(検索エンジン最適化)
スタート時間
●自由
スタート地点
●酒ミュージアム
(はじめに日本酒に関する基礎知識について学ぶことにより、日本酒や日本の文化に関心を持ってもらいます。)
開催時間
●酒蔵の営業時間
地域連携
●酒造組合が主体となり焼印ラリーを企画すると共に情報提供アプリを開発します。
●西宮市内に出店のスイーツ店と連携し、酒蔵において日本酒に合うスイーツをラリー参加者に販売します。
(外国人観光客が自国に帰ってからも、自国のスイーツと合わせて日本酒を飲んでもらうため、日本酒を使用したオリジナルのスイーツではなく、既にある日本酒に合うスイーツを提供します。)
費用(酒蔵)
●アプリ開発費用
●広告費用
●枡共同購入費用
●焼印作成費用
●プレゼント品費用
体験形式
●「ツアー形式」にする場合、時間・場所・費用(人件費)・人員確保の制約に合わせ、集客できなかった場合、ツアーが中止となるなど、多くの課題がありますので、観光客がいつでも・どこでも・誰とでも観光できると共に観光客の支出を抑制できる「ラリー形式」にします。
●酒蔵5箇所以上をラリーした場合、オリジナルミニチュア「杉玉」ストラップをプレゼントします。
●酒蔵5箇所以上をラリーした場合、国籍、名前、何箇所酒蔵を巡ったかをアプリに登録する仕組みを作ることにより、外国人観光客は自国の人がどの程度日本酒好きか、自国の順位、自国内の自身の順位を知ることができます。
(ここから、海外において日本酒好きのコミュニティができることにより、海外の日本酒好きが増えるかもしれません❗️)
効果
●各酒蔵は「焼印ラリー」による国内・海外における日本酒販売により収益化できます。
●海外日本酒販売店および海外日本酒提供レストランは「焼印ラリー」をPRに協力することによる日本酒販売により収益化できます。
●西宮市内に出店のスイーツ店は「焼印ラリー」によるスイーツ販売により収益化できます。
●「焼印ラリー」参加者による西宮市の周遊により西宮地域を活性化できます。
●アプリで様々な仕組みを構築し日本酒好きが増えることにより海外に日本酒の文化を普及できます。
満足評価
●「枡」に酒蔵のロゴの焼印の数が増えることにより、参加者の満足度が向上します。
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【まとめ】
「お酒を楽しめる酒蔵巡り『焼印ラリー』でオリジナルの『枡』をつくろう」という企画に至った思考プロセスとは、永続的に地域が活性化するためには、外国人観光客が自国に帰ってからも、家やレストランで日本酒を飲み続けてもらい、日本酒を飲むために西宮にもう一度行きたいと思ってもらう必要があると考えました。
そのためには、日本酒を海外で買うことができることはもちろん、日本酒を飲むための器も必要であり、日本酒をグラスで飲んでもらうも良いのですが、そこは日本を感じてもらう上で、日本酒を「枡」で飲むのはどうかと考えました。
そこで、西宮郷にはたくさんの酒蔵があり、酒蔵にはロゴがありますので、地域活性化のために酒蔵巡りをしてもらい、その時に酒蔵のロゴを「枡」に刻印してもらえれば良いのではないか、それも木製の「枡」であれば、酒蔵を巡るごとに酒蔵で焼印を押してもらえれば記念になることもちろんのこと、オリジナルの「枡」ができることにより、西宮へ旅行に行った証として、満足感が高まるのではないかと考えました。
そして、自国の家で酒蔵のロゴの焼印が入った「枡」を見るたびに、日本酒を飲みたいと思い家飲みをし、日本酒を飲むために西宮にもう一度行きたいと思い、西宮に再び観光に来てもらえるのではないかと考えました。
思考プロセス (「転移」「反転」「類推」)
転移 「日本酒」から「枡」
反転 「かさばるお土産(枡)」から「大切な観光の記念品(枡)」
類推 「スタンプラリー」から「焼印ラリー」
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