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shift innovation #34 (QUINTBRIDGE hack 1)

今回、QUINTBRIDGEで開催された「『アイデアが実り続ける場のデザイン』新たな商品やサービスの創造に大切な視点とは」というテーマのイベントに参加しました。

登壇者は、株式会社MIMIGURI デザインストラテジストの小田裕和氏であり、co-net代表、株式会社MIKKE社外取締役などもされておられ、「インスピレーションを孵化させる、場や道具のデザイン」をテーマに、事業開発から組織開発まで、幅広いプロジェクトのコンサルテーションやファシリテーションに取り組んでおられるようです。


【イベント概要】

今回、参加したイベントは、オープンイノベーションやコラボレーション、新たなアイデアを生むために大切な要素や視点を得るため、「点と点をつなぐ」をテーマとした第5段であり、「場のデザイン」「茅葺(かやぶき)」「創造的な産地をつくる」など、これらは関係がないようなテーマでありますが、専門外の知見が新たなアイデアの情報として、イノベーティブな発想に活用できるということもあり、連続したイベントとして開催しているようです。

参加したイベントのテーマが「場のデザイン」ということもあり、組織において、イノベーションの意欲を醸成させるためには、「創造性の土壌を耕す」ことが必要である中で、評価者が変わらなければ何も変わらず、失敗にも価値があり失敗に関心を持つなど、アイデアの方法論以上に、アイデアを継続的に出し続けることができる組織風土が重要であり、これらを変容させることによって,創造性の土壌の悪化を防ぐことができるようです。

京セラ株式会社の事例として、子どもたちは「食べたいもの」ではなく、「食べられるもの」を意識し食事を選択しているというインサイトに気付き、アレルギーが制約になる食事から、アレルギーの制約がない食事というように、食事をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに捉えることができるよう、各家庭において、アレルギーの制約から解放することができるオーダーメイドのミールキットを提供するという新規事業は、問いを生み出すことができる対話が根付く組織風土の事例として紹介されていました。(内容あっているかな・・・)


【イベントを終えて】

イベントの中で特に気になったワードとして、「アブダクション」というワードがあり、イノベーティブな発想をするためには、アブダクションが必要であるというお話がありました。

イベント終了後、小田氏とのお話の中で、例えば、自動車産業に関するアイデアを考える上で、アブダクションを活用しイノベーティブなアイデアを導出するためには、問いを強く意識する必要があり、そして、問いの内容によっては、自動車産業とはあまり関係ないような情報が結合することによって、イノベーティブなアイデアが生まれるとのお話がありました。

このようなお話があったこともあり、アブダクションを活用する中で、イノベーティブなアイデアが生まれるような「問い」とは、どのような「問い」であるのか思考を巡らせました。


【アプダクション】

はじめに、「アブダクション」とは、仮説推論のことであり、私の理解として、例えば、「階段の下で人が死んでいた」という事象に対して、「階段から落ちると人は死ぬ」という法則(常識)を適用することにより、「恐らくその人は階段から落ちたのであろう」という仮説が形成されるものと考えます。

ここで、重要となるのは、適用する法則であり、「階段から落ちると人は死ぬ」という常識的な法則を適用すると、普通のアイデア(仮説)となるため、例えば、「階段の下には魔物がいる」という非常識な法則を適用すると「恐らくその人は魔物に襲われたのであろう」というような面白いアイデア(仮説)となるのではないかと考えます。

そこで、非常識な「法則」を非常識な「問い」と捉え直した上で、非常識な「問い」からどのようなイノベーティブなアイデアを導出できるのか検討したいと思います。


【哲学アプローチ】

哲学アプローチを、意識的に問いを活用するものと捉えた上で、はじめに、イノベーティブなアブダクションとは、「事象」に対して、非常識な「法則(問い)」を適用することにより、今までとは異なる新たな「仮説」を形成するとします。

しかし、非常識な「法則(問い)」を、自身が捉えている常識以外すべてを非常識と捉えた場合、非常識は無限にあることとなるため、非常識の内容を一意に決める上で、哲学的な視点で捉えることとします。

そこで、哲学における「弁証法」に基づき、「テーゼ」「アンチテーゼ」「ジンテーゼ」における「テーゼ」と「アンチテーゼ」が二項対立することにより統合された「ジンテーゼ」を非常識な「法則(問い)」と見立てることとします。

そして、「事象」(テーゼ)に対して、「法則(問い)」(ジンテーゼ)を適用することにより、今までとは異なる新たな「仮説」を形成することとなります。

また、今まで当たり前と認識していた「事象」に対して、「本当にそれは事実であるのか」と事実の真偽を問うことにより、固定観念が顕在化することとなります。

一方で、当たり前ではないと認識していた「事象」も事実であることが判明した場合、「なぜそれも事実であるのか」と事実の理由を問うことにより、固定観念が排除されることとなります。

そして、当たり前ではないと認識していた「事象」を実現させる上で、「どうすればそれを実現できるのか」と実現させる方法を問うことにより、解決策が想起されることとなります。

これらのことから、事象に対して二項対立となる事象が生じるような問いを立てると共に事実の真偽、事実の原因、実現させる方法を問い続けることによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出することができるのではないかと考えます。


【哲学アプローチの事例】

事例として、「赤ちゃんの検診のため定期的に病院へ行くのは大変である」という事象に対して、「病院へ行かなくても良い方法」という問いを立てると普通の解決策(仮説)しか導けないのではないかと考えます。

例えば、便や尿などの検体を郵送し、問診は医師とリモートで対応するというように、現在のデジタル技術であれば、「病院へ行かなくても良い方法」という問いに対して、すぐに解決策を導けることとなります。

一方で、「赤ちゃんの検診のため定期的に病院へ行くのは大変である」という事象において、日本では「検診は受診するものである」という固定観念がある中で、「検診を受診しなくても良い方法」という二項対立となる問いを立てることにより、今までとは異なる解決策(仮説)を導けるのではないかと考えます。

そこで、「検診を受診しなくても良い方法」という二項対立となる問いを強く意識することにより、「検診は受診するものである」という固定観念に対して、「本当に赤ちゃんは検診を受診する必要があるのか」と懐疑的に捉えた場合、「そういえば途上国の赤ちゃんは定期的に検診を受診していない」と想起することによって、赤ちゃんが検診を受診するのは当たり前であるという固定観念が排除されることとなります。

次に、「どうして検診を受診しないのに健康でいられるのか」と懐疑的に捉えることによって、「そういえば不衛生な中でも健康に育っているので免疫力が高いのかな」と想起するなど、新たな仮説を形成することができるのではないかと考えます。

そして、「どうすれば赤ちゃんの免疫力を高めることができるのか」と捉えることによって、「もし常在菌の入った錠剤を飲むことにより、赤ちゃんの免疫力を高めることができれば、検診を受診する必要がなくなる」というアイデアを導出できることとなります。

これらのことから、「赤ちゃんの検診のため定期的に病院へ行くのは大変である」という事象に対して、「途上国の赤ちゃんは定期的に検診を受診していない」という「法則(問い)」を適用することにより、「もし常在菌の入った錠剤を飲むことにより、赤ちゃんの免疫力を高めることができれば、検診を受診する必要がなくなる」という今までとは異なる新たな仮説を形成できるのではないかと考えます。


【脳科学アプローチ】

脳科学アプローチを、脳の機能に基づき無意識的に知覚されるものと捉えた上で、人間の脳のトップダウン情報処理には、「比較する機能」「抽象的に捉える機能」「恒常性を求める機能」「非関連情報を排除する機能」があります。

これらが機能することにより、見ていること、考えていることと関連する情報が脳内で処理されることによって、「見たいものしか見ない(見えない)」という状態になります。

また、人間の脳にあるワーキングメモリには、「情報を保持・処理する機能」「注意を制御する機能」「二次情報を検索する機能」があります。

ワーキングメモリが処理できる能力には制約があるため、ワーキングメモリに負荷がかかると、「注意を制御する機能」「二次情報を検索する機能」が低下することに伴い、脳のトップダウン情報処理における「非関連情報を排除する機能」も低下することによって、非関連情報がワーキングメモリ内に流入することとなります。

そして、認知心理学における洞察問題解決においても、「インパスの発生(手詰まりの状態)」「心的制約の緩和」「問題空間の切り替え」「類推の利用」というフェーズを経ることにより、イノベーティブなアイデアを導出できると言われています。

例えば、9つの点を4本の線で一筆書きするという9ドット問題があり、はじめは、9つの点の枠内だけで発想していると4本の線で一筆書きできないため、問題を解くことができません。

そこで、さらに思考を続けると、手詰まりの状態になることにより、心的制約が緩和し問題空間が切り替わることによって、9つの点の枠外へ拡大すると問題を解けるのではないかという発想に至り、その結果、9つの点を4本の線で一筆書きできることとなります。

これらのことから、ワーキングメモリに負荷をかけ、手詰まりの状態にすることにより、問題空間を切り替え、非関連情報がワーキングメモリ内に流入することによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出することができるのではないかと考えます。


【脳科学アプローチの事例】

意図的にワーキングメモリに負荷をかける方法として、事象に対して二項対立となる事象(問い)を捉えることにより、事象間の対立がより鮮明となることによって、より一層手詰まりの状態になりやすくなるのではないかと考えます。

事例として、「赤ちゃんの検診のため定期的に病院へ行くのは大変である」という事象がある場合、「検診を受診する」に対して、「検診を受診しない」という二項対立となる事象(問い)を強く意識することにより、「日本では検診は受診するものである」という事象(固定観念)と「検診を受診しない」という事象が二項対立することによって、手詰まりの状態となる(ワーキングメモリに負荷がかかる)こととなります。

その結果、心的制約が緩和する(制御注意機能・二次情報検索機能が低下する)ことにより、「そういえば途上国では検診を受診していない」と問題空間が切り替わる(非関連情報を排除する機能が低下する)など、非関連情報の中でも二項対立となる事象を想起することができるのではないかと考えます。

また、「そういえば途上国では検診を受診していない」に対して、「途上国」から「不衛生」、「不衛生」から「免疫力」を類推したことにより、「そういえば不衛生な中でも健康に育っているので免疫力が高い」という事象を想起しました。

そして、「そういえば不衛生な中でも健康に育っているので免疫力が高い」に対して、「免疫力」から「予防接種」、「予防接種」から「常在菌」を類推したことにより、「もし常在菌の入った錠剤を飲むことにより、赤ちゃんの免疫力を高めることができれば、検診を受診する必要がなくなる」というアイデアを導出できることとなります。

これらのことから、事象に対して二項対立となる事象(問い)を強く意識することにより、「インパスの発生(手詰まりの状態)」「心的制約の緩和」「問題空間の切り替え」「類推の利用」というフェーズを経ることによって、今までとは異なる新たなアイデアが導出されることとなります。

なお、これらに関して、脳科学的アプローチのように無意識的に知覚している場合もあれば、哲学的アプローチのように意識的に問いを活用する場合もあり、例えば、無意識的に二項対立となる問いを発している、無意識的に事象の真偽、事象の原因、実現させる方法を問うている場合もあります。


【まとめ】

今までとは異なる新たなアイデアを導出するためには、「哲学アプローチ」や「脳科学アプローチ」に基づく「アブダクション」を活用する必要があることを説明しました。

アブダクション
(イノベーティブな)アブダクションとは、「事象」に対して、非常識な「法則(問い)」を適用することにより、今までとは異なる新たな「仮説」を形成するという
ものです。

哲学アプローチ
事象に対して二項対立となる事象が生じるような問いを立てると共に事象の真偽、事象の原因、実現させる方法を問い続けることによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出します。

脳科学アプローチ
事象に対して二項対立となる事象(問い)を強く意識し、ワーキングメモリに負荷をかけ、手詰まりの状態にすることにより、問題空間が切り替えられ、非関連情報がワーキングメモリ内に流入することによって、今までとは異なる新たなアイデアを導出します。

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