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shift innovation #45(KYOTO Design Lab hack)

今回、KYOTO Design Lab10周年記念連続シンポジウム「生存の未来―未来の生存」を京都工芸繊維大学で拝聴してきました。

これまでのKYOTO Design Lab10周年記念連続シンポジウム(サーキュラーデザイン、ランドスケープデザイン、ダイナミックヘリテージ、アダプティブデザイン)での議論を総括し、これからのデザイン・建築に求められる「世界観」とはどうあるべきか、世界観創出に必要な方法や技術とはなにか、その検討を深めます。

【イントロダクション】と【シンポジウムの振り返り】は、個人の関心に基づくメモであり、登壇者の説明の主旨(内容)に合致していない場合があります。


【イントロダクション】

世界観創出に必要な方法論
⚫︎危機の捉え方や認識の仕方の問題であり、現状の認識の仕方を変える必要がある。
⚫︎現在の世界観を異なる世界観に捉え直した上で、提示する必要がある。
⚫︎人類のための持続可能性を問うのではなく、全ての生物のための持続可能性を問う必要がある。

デザイン教育が抱える課題
⚫︎デザインが取り扱う領域が拡大しており、デザインの関係性が変化している。
⚫︎デザインが対応不可能な領域に拡大している。
⚫︎人間中心設計のデザインを乗り越え、捉える利害関係者を拡大する必要がある。


【シンポジウムの振り返り】

サーキュラーデザイン
⚫︎サーキュラーデザインにも様々な手法があり、社会システム全体を踏まえ捉える必要がある。
⚫︎市民の行動変容を促す仕組みを取り入れる必要がある。
⚫︎デザイン手法によっては、環境が破壊されることもあり、廃棄するためのデザインも必要である。

ランドスケープデザイン
⚫︎気候変動に適応した社会性と経済性が共創する風景が必要である。
⚫︎建材は老朽化する一方で、ランドスケープは気候変動も含め成長(変化)しており、全体が融合したデザインが必要である。
⚫︎生きている人のためのデザインは期間限定的である一方で、死んだ人のためのデザインは無期限であり、長期的視点で取り組む必要である。

ダイナミックヘリテージ
⚫︎文化遺産を空間軸だけではなく、時間軸も考慮し捉える必要がある。
⚫︎文化遺産をデジタルデータ化することにより、100年後に有効活用できる場合もある。
⚫︎文化遺産は文化財というテクストだけではなく、文化などのコンテクストも残す必要がある。

アダプティブデザイン
⚫︎デジタル技術を活用したオルタナティブなデザインシステムが必要である。
⚫︎古材の流通が活発化しており、解体した廃材をどう活用するのか検討する必要がある。
⚫︎アダプティブとは、固定化されたものではなく、ファジーな捉え方をすることにより、汎用性を持たせる必要がある。


【感想「世界観の普及」】

世界観を創出することは重要であると考えられますが、それ以上に市民が世界観を受け入れ実践できるシステムを構築することの方がより重要であると感じました。

登壇者と参加者による振り返りのセッションのときの登壇者の話として、考古学者が登壇者に対して収集したデータの素晴らしさを説明してくれたようですが、登壇者は共感することが難しかったという話があり、これが世界観の普及に必要となる全てを物語っていると感じました。

例えば、考古学者にとって関心のある内容を説明するだけではなく、相手が哲学者であれば、考古学に関するデータを、哲学的な視点に基づき、どうすれば有用となるのか、具体的な内容に転換し説明する必要があると考えられます。

これは、データの素晴らしさを説明するだけではなく、データを構造化し汎用性のある方法に転換した内容を説明するだけでもなく、汎用性のある方法を相手の状況にあわせて具体的な内容に転換し説明する必要があるということです。

つまりは、相手が当事者意識を持ち、自分ごととして捉えることができるシステムを構築する必要があるということとなります。

なお、他の登壇者より、デジタル技術を保存する意義に関して、100年後に有効活用できる可能性があるとの話があったのですが、これに関しても、建築に関するデジタル技術を構造化し汎用性のある方法に転換したものを、例えば、飲食業において、その方法を飲食店の店舗の設計、顧客とのコミュニケーションの方法、キッチン・ダイニングのオペレーション、組織体制などにおける具体的な内容に転換し説明することができれば、越境した領域においても、有効活用できると感じました。
(「このたとえ、余計わからないんだけど・・・❗️」)

これらのことから、市民が世界観を受け入れ実践できるようにするためには、市民自身が当事者意識を持ち、自分ごととして捉えることができるシステムを構築する必要があると感じました。

これは、イノベーションとなる技術が開発されたとしても、それが市場で評価されない限り、イノベーションと言えないのと同じでことであると考えられます。


【感想「世界観の創出」】

建築の構造設計に関わる登壇者より、最後の総括に「『設計しない』という発想も必要ではないか」という主旨の話がありました。

これは、イントロダクションの話の中にあった「危機の捉え方や認識の仕方の問題であり、現状の認識の仕方を変える必要がある」に関係するものであり、「設計しない」という今までとは異なる視点は、新たな世界観を創出する上で重要な視点であると感じました。

今までのように、経済的視点に基づく世界観だけで事象を捉えていると、「設計するものである」という固定観念に基づく既存の発想しかできないこととなります。

一方で、現状の認識の仕方を変える上で、経済的視点に基づく世界観だけではなく、社会的・環境的視点に基づく世界観により事象を捉えることで、今まで想定しないような「設計しない」という固定観念から脱却した発想を起点に、様々な事象を類推することができることによって、今までとは異なる新たな解決策を導出できると考えられます。

そこで、登壇者において、どのような経緯により「設計しない」という発想に至ったのか、そのプロセスは分からないのですが、その発想に至る一つのプロセスとして、例えば、現状の経済的視点に基づく世界観により設計をする中で、社会的・環境的視点を取り入れようとした場合、今までとは異なる視点であるため、解決策を導出することができず手詰まりの状態になったとします。

そうすると、手詰まりの状態であるものの、さらに検討し続けることにより、「一層のこと、『設計しない』ということはできないのか」というように、二項対立する事象を想起することによって、設計しないことで成立する様々な事象を類推するなど、今までとは異なる新たな解決策を導出できると考えられます。

これらのことから、新たな世界観を創出する上で、現状の認識の仕方を変えるためには、二項対立する事象など、今までとは異なる視点に基づき、様々な事象を類推する必要があると感じました。

これは、ブレーンストーミングにおいて、多様性を担保することは重要ですが、様々な視点に基づく情報を統合することなく、事象を捉えるだけでは、今までとは異なる新たな解決策を導出できないことと同じであると考えられます。
(「『本当にブレーンストーミングでいいアイデア出るの❓』ってよく聞くよね❗️」)


【まとめ】

登壇者より紹介された様々なデザイン手法(サーキュラーデザイン、ランドスケープデザイン、ダイナミックヘリテージ、アダプティブデザイン)に関して、使用後の活用方法として、古材の活用方法のデザイン、死者・遺族のためのお墓のデザイン、文化遺産の保存方法のデザインなどにおけるデジタル技術を活用し、領域を越境することによって、より大きな効果を生み出すことができると感じました。

また、伝統技術のテクストに関するデジタルデータを保存することはもちろんのこと、継承すべき伝統文化のコンテクストに関するデジタルデータを保存することができるシステムを構築する必要もあると感じました。

そして、様々なデザイン手法を活用することにより、新たな世界観を創出し、その世界観に基づく解決策を創造する必要があると共にその解決策を市民自身が当事者意識を持ち、自分こととして捉えることができるシステムもあわせて構築する必要があると感じました。

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