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shift innovation #3 (KYOTO Design Lab hack3)

KYOTO Design Labの「kyoto Design Thinking EXPO2022」のミニデザイン思考ワークショップに参加し、ミッション(テーマ)である「プレゼント体験をリデザインする」に基づき、新たなアイデアを導出しました。

導出した2つのアイデアのうち、ワークショップ当日に導出した「みんなが欲しいものをプレゼントしあえるアプリ」とは、ペアの方が普段している差し入れ(プレゼント)しあうという行為におけるニーズに基づき導出したアイデアとなります。

一方で、後日導出した「SNSを活用した社会貢献スコアサービス」とは、プレゼントの概念を「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」としたことにより、個人から個人だけではなく、社会から個人であっても、プレゼントに該当するのではないかという考えに基づき導出したアイデアとなります。

プレゼントを概念化したことにより、ブレゼントとは「個人から個人に対する行為である」という固定観念を排除できたことによって、「個人から個人に対する行為」だけではなく「企業から個人に対する行為」、さらには「社会から個人に対する行為」まで拡大することができました。

これらのことより、プレゼントの体験の新たな概念を導出することができたものの、これはあくまでも「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」という概念の範囲のものであると考えます。

そこで、前回は、インサイトに基づき、「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」というプレゼントの概念を抽出し、アイデアを検討する中で、プレゼントの概念をリデザインしました

今回は、はじめの段階で、プレゼントの概念に対して、意識的に今までとは異なる視点に基づき発想することにより、プレゼントの概念をリデザインすることとします。



【リデザインするための発想】

「リデザイン」を「既存の概念を変革すること」と捉えた場合、例えば、「プレゼント体験をリデザインする」とは、「プレゼントとは●●である」に対して、「プレゼントとは■■であるとも捉えることができる」というように、今までとは異なる視点で捉え直すこととします。

そこで、「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」というプレゼントの概念に対して、異なる視点で捉えるための発想として、「表裏発想(同じ事象を表と裏の視点から捉える)」、「背反発想(事象をトレードオフの視点から捉える)」、「逆転発想(事象を真逆の視点から捉える)」に区分することとします。

例えば、「表裏発想」とは、「便は臭くて汚いものである」とデメリットと捉えることができる一方で、「便は健康のバロメーターといい、大腸がん検診の検体である」とメリットとも捉えることができます。

また、「背反発想」とは、「衛生的にすると免疫力が落ちる」に対して、「不衛生になると免疫力が高まる」というように「衛生面」と「免疫力」はトレードオフの関係と捉えることができます。

そして、「逆転発想」とは、「温度設定を完全自動化する」をあえて「温度設定を手動にする」など、真逆の視点から捉え直すことができます。

これらの発想に基づき、プレゼントの概念である「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」を異なる視点から捉えることとします。


【表裏発想(→背反発想)に基づくリデザインの説明】

表裏発想の捉え方として、「同じ事象を表と裏の視点から捉えること」とした場合、プレゼントの概念である「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」における「喜んでもらえる」に対して、その反対と捉えた「喜んでもらえない」を両立させる事象として、「非常時用ラジオ」を想起することとなりました。

「非常時用ラジオ」の場合、非常時には、特定の電源がない場合であっても、手動によりラジオを聴くことができるというメリットがある一方で、平常時には、手動でラジオを聴くのは面倒であるというデメリットがあります。

そして、表裏発想により捉えた事象に対して、さらに「時間軸」や「空間軸」に基づき、事象を捉え直すことによって、異なる視点から事象を捉えることとなります。

そこで、次に想起した「ロウソク」の場合であれば、「時間軸」で捉えると、「非常時は役立つが、平常時は役立たない(効果的差異)」となり、表裏発想に基づく事象となります。

また、「意味軸」で捉えると、「明かりとして使用できると共に癒しとしても利用できる(用途的差異)」となり、表裏発想に基づく事象となります。

一方で、「空間軸」で捉えると、「一つのロウソクを誰かが使っているとその他の人はロウソクを使えない」となり、背反発想に基づく事象となります。


これらのように、同じロウソクであっても、当初、表裏発想で捉えた事象に対して、さらに「時間軸」「空間軸」「意味軸」で捉え直した場合、表裏発想で捉えた事象であっても、背反発想へ遷移する場合があります。

例えば、ロウソクを「時間軸」に基づき「非常時は役立つが、平常時は役立たない(使用しない)」と捉えていたものに、「(平常時において)明かりとしては役立たないが、癒しとしては役立つ」という「意味軸」が加わることにより、「状況によって、ロウソクを利用できる場合もあれば、利用できない場合もある」と捉えました。

そこで、状況により無駄なくロウソクを利用する方法として「シェア」を想起したことによって、表裏発想から背反発想(単体の場合、誰かが使えば他の人は使えない)に転換したものと推察されます。

そして、背反発想に転換したことにより、「空間軸」で捉え直すことによって、例えば、購入したカメラをプレゼントするのではなく、カメラのシェアリングサービスのように、複数台のカメラを用途にあわせて、自由に利用することができるサービスをプレゼントするというものとなります。

このことより、プレゼントの概念である「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」が、「シェアできるモノやコトを無償で提供すること」へ転換するなど、既存の概念を変革することができたのではないかと考えます。

そして、プレゼントを所有することに対して、喜びをもつものではなく、プレゼントを利用することによる体験に対して喜びをもつ、つまりは、体験自体が価値となることによって、喜ぶことができる範囲が拡大することとなりました。


【表裏発想による思考プロセス】

概念遷移
相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること
→「コンテクストにより用途が変わるモノやコトを無償で提供すること表裏発想
→「シェアできるモノやコトを無償で提供すること背反発想

(概念設計)
表裏発想による思考プロセス
「ブレゼントとは『相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供する』である」
「プレゼントにも正の部分もあれば、負の部分もあるという考え方もあるのではないか」
「プレゼントの場合、プレゼントされて嬉しいという正の部分に対して、負の部分として嬉しくないことが両立している場合があるのではないか」
「例えば、非常用のラジオの場合、普段であれば手動は面倒であるが、非常時には電源が確保できないので手動は役に立つ」
「同じものを時間軸や空間軸で捉えるという発想が活用できるのではないのか」
「ある時は役立ち、ある時は役立たないという捉え方をする」
コンテクストにより用途が変わるモノやコトを無償で提供する
「これは同じテクストであっても、コンテクストにより正にもなれば負にもなるというものである」
「例えば、ロウソクであれば、非常時は明かりとして役立つが、平常時は明かりとして役立たない(使わない)、一方で、平常時であっても、癒しのグッズとしては役立つ」

表裏発想から背反発想へ転換後の思考プロセス
「プレゼントをシェアする体験」
プラットフォーム上にプレゼントをシェアする、例えば、ロウソクをプラットフォーム上にシェアしておき、紛争地域の人は、明かりとして使用し、平和な地域の人は、癒しとして使用できるようにする」
シェアできるモノやコトを無償で提供する 

(アイディエーション)
カメラを購入してプレゼントするのではなく、カメラを1年間無料で使用できるシェアリングサービスをプレゼントする」

(プロトタイピング)
「シェアリングサービスであれば、1つのカメラをシェアするのではなく、複数のカメラをシェアすることにより、色々な状況にあったカメラを使えるのではないか」

(プロダクト)
シェアリングによるプレゼント体験サービス


【まとめ】

「リデザイン」の定義を「既存の概念を変革すること」とした上で、プレゼントの概念である「相手に喜んでもらえるモノやコトを無償で提供すること」に対して、様々な発想方法(表裏発想・背反発想・逆転発想)を活用することによって、「シェアできるモノやコトを無償で提供すること」という新たなプレゼントの概念を導出することとなりました。

新たに導出した「シェアリングによるプレゼント体験サービス」というシェアリングサービス自体は、新たなサービスではないものの、プレゼントの方法としてのシェアリングサービスは、新たなサービス(概念)になるのではないかと考えます。

そして、様々な発想方法を活用することにより、異なる視点に基づき既存の概念を変革することによって、新たな(無消費)層を取り込むことができる場合があると考えます。

例えば、「Wii」の場合であれば、コンテクスト(概念)が「仮想ゲームを楽しむ」から「仮想現実ゲームを楽しむ」へ遷移したことにより、今までテレビゲームに関心がなかった(無消費)層を取り込むことができると共に実際にスポーツをしたことがなかった(無消費)層も取り込むことができることとなりました。

これと同様、「シェアリングによるプレゼント体験サービス」の場合も、例えば、高価なカメラを買ってプレゼントする人は少ないと考えられますが、コンテクスト(概念)が「高価なカメラの購入」から「低額のカメラシェアリングサービス」へ遷移したことにより、プレゼントする人はプレゼントがしやすくなります。

そして、今まで自ら高価なカメラを使用しない人において、シェアリングサービスをプレゼントされることにより、カメラを利用する機会が拡大するなど、新たな(無消費)層を取り組むことができることから、既存の概念を変革することによって、市場を拡大させることができるのではないかと考えます。

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