shift innovation #42(f∞ studio hack 3)
今回は、FabCafe Kyotoで開催された「f∞ studio『これも写真❓』ワークショップ」に参加しました。
今、「写真」に囲まれて生きている中で、スマートフォンのカメラで簡単に写真を撮り、SNSで瞬時に共有する時代である一方で、「写真」の定義は曖昧になっています。
f∞ studioは、従来の「写真」の概念にとらわれず、その周辺の未来の写真の意味や価値を探求するコミュニティーであり、「写真」の可能性を信じ、未来の写真の意味・みることの意味を模索し続けています。
今回のワークショップでは、f∞ studioがこれまでに得た知見を基に、フィールドワークに出かけ、「これも写真❓」と感じるものを写真や写真以外の方法で採取し、それらを持ち帰り、グループディスカッションを通して、未来の「写真とは❓」を考えていきます。
【shift innovation #40(f∞studio hack 1)】
フィールドワークでは、「❗️」「❓」をテーマに、「これも写真❓」と捉えたものをスマートフォンで撮るという課題があり、1時間をかけてFab Cafe Kyotoの近隣を周り、私自身が捉えた「これも写真❓」をスマートフォンで撮りました。
フィールドワーク当日は、小雨が降っていましたので、はじめに目にとまったものとして「雨」があり、「雨」を通して「これも写真❓」を表現できないかと思いつつ地面を見たところ、「水溜り」があったことから、「雨」から「水溜り」「水面の波紋」を「これも写真❓」として捉えることとしました。
ただし、「写真」の捉え方として、対象物を「記録する」という機能があるものとした場合、「水面の波紋」は、記録できるものではなく、一瞬しか存在しないものであることから、「写真」の概念に含めても良いものか議論の余地があるのではいかとも考えました。
【shift innovation #41(f∞studio hack 2)】
フィールドワークで捉えた「水溜り」に「雨」が当たることにより、「水面の波紋」が生じるという「これも写真❓」に基づき、新たなコンセプトを検討することとしました。
そこで、「水面の波紋」は、記録できるものではなく、一瞬しか存在しないものであるため、「写真」の特性を踏まえ、「水溜り」に「雨」が当たることによりできた「水面の波紋」を記録できるコンセプトを検討することとしました。
検討したコンセプトは、「水溜り」にできた「水面の波紋」を記録する上で、スマートフォンを「水溜り」とみなし、スマートフォンの画面に当たった「雨」のリズム(テンポ)に類似した「音楽」を聴くことができると共にその時に撮った「画像(映像)」もあわせて見ることができます。
これらのことから、記録された「画像(映像)」と「音楽」によって、昔の思い出をより鮮明に回想することができるコンセプト(※「tap diary」)となります。
※「tap diary」は、「スマートフォンの画面に当たる『雨』」を「スマートフォンの画面をタップする『指』」と捉え直したコンセプトとなります。
【「これも写真❓」の構造】
今回は、「これも写真❓」の概念の範囲に関して、「カメラ」「デジタル機器」「3Dプリンター」「FedEx」の事例を踏まえ、ワークショップ終了後に検討した「コンセプト」が、「これも写真❓」の概念の範囲に含まれるものであるのか検証することとします。
【「これも写真❓」の構造の事例】
はじめに、「これも写真❓」の概念の範囲を検討する上で、「対象物」→「媒体」→「対象物の過去・現在・未来を表現」を「これも写真❓」の構造として捉えることとします。
【「これも写真❓」の範囲】
「カメラ」「デジタル機器」「3Dプリンター機器」の構造としては、「対象物」が「カメラ」「デジタル機器」「3Dプリンター機器」という物理的な装置である「媒体」を介することにより、「写真(二次元の画像)」「3D画像」「立体物」という当初の「対象物」とは異なる物理的なものに変換したものとなります。
一方で、「FedEx」の構造としては、「対象物」が「物流システム(移動)」という装置である「媒体」を介することにより、「対象物」そのものの移動に伴う傷などの痕跡の変化を捉えたものとなります。
これらのように、「これも写真❓」として一般的に想定される「カメラ」「デジタル機器」「3Dプリンター機器」の構造は、「媒体」が物理的な装置となりますが、「FedEx」の構造は、「媒体」がシステムという装置まで拡張したものとなります。
また、「FedEx」においては、「対象物」が「媒体」を介することにより、「写真(二次元の画像)」「3D画像」「立体物」という物理的なものに変換するのではなく、「対象物」が「媒体」を介することにより、対象物そのものの移動に伴う傷などの痕跡へ変化するものまで拡張したものとなります。
【「これも写真❓」の物理・機能の視点】
「カメラ」(「デジタル機器」「3Dプリンター機器」)「FedEx」「水溜り」を物理および機能という視点で捉えることとします。
例えば、「カメラ」を物理・機能という視点で捉えた場合、「カメラ」という物理的な装置があり、「光を感光材料に写す」という記録する機能があります。
また、「FedEx」を物理・機能という視点で捉えた場合、「物流システム」という物理的な装置があり、「移動する」という記録(維持)する機能があります。
一方で、フィールドワークで捉えた「水溜り」は、自然物であることから、「カメラ」や「物流システム」というのような物理的な装置はなく、また、水溜りに雨が当たり水面に波紋が生じるという機能のみであり、記録する機能はありません。
そこで、フィールドワークで捉えた「水溜り」の「媒体」である「雨」は、自然物であり、「雨」を「水面の波紋」に変換し記録するための物理的な装置がないことから、「雨」を「媒体」と捉えることは難しいのではないかと考えられます。
【「これも写真❓」の記録機能】
フィールドワークで捉えた「水溜り」を「これも写真❓」と捉えるためには、「対象物」を変換し記録することができる、物理的な装置である「媒体」が必要となります。
そこで、「水溜り」を「これも写真❓」と捉える上で、検討した「コンセプト2」とは、「水溜り」に「雨」が当たることにより、「水面の波紋」ができるという現象に基づき、「スマートフォン」に「雨」が当たることによって、スマートフォンの画面に「水面の波紋」の仮想映像が映し出されると共に「水面の波紋」のリズムを「音」に変換し再生(記録)するというコンセプトとなります。
このことから、「水溜り」を「スマートフォン」という物理的な装置へ変えることにより、「スマートフォン」に当たる「雨」を「水面の波紋」という仮想映像に変換し記録することができることによって、「雨」も「媒体」と捉えることができるのではないかと考えます。
【「これも写真❓」の条件】
前回、「写真」の概念として、「『媒体』を通して『対象物』を視覚的に捉えることにより、空間軸・時間軸に基づき『対象物』の原型は維持しつつも、その一部を変換し、且つ、その変換した内容を物理的に保存(記録)できるもの」を提示しました。
この「写真」の概念および今回検証した内容に基づき、「写真」を拡張させた「これも写真❓」の条件として、第一に、「画像」「映像」など視覚的要素があること、第二に、「変換」するための物理的な装置があること、第三に、「記録する」という機能があることと捉えることとします。
【「これも写真❓」である「コンセプト2」】
「コンセプト2」
雨の水滴がスマートフォンの画面に当たることにより、スマートフォンの画面に当たったリズム(テンポ)に基づき、「音」が奏でられます。
雨の水滴がスマートフォンの画面に当たることにより、スマートフォンの画面に当たったリズム(テンポ)に基づき、「水面の波紋」の仮想映像が映し出されます。
「これも写真❓」である「コンセプト2」
「コンセプト2」は、「これも写真❓」の条件である「視覚」「変換」「記録」の3つの条件を満たしていますまで、「コンセプト2」は「これも写真❓」と捉えることができると考えます。
【「これも写真❓」ではない「コンセプト4」】
「コンセプト4」(「tap diary」)
スマートフォンの画面をタップしたリズム(テンポ)に基づき、自動的に選曲された「音楽」が奏でられます。
スマートフォンの画面をタップした時に撮影した「写真」が、「音楽」に連動して映し出されます。
「これも写真❓」ではない「コンセプト4」(「tap diary」)
「コンセプト4」(「tap diary」)は、「これも写真❓」の条件である「変換」「記録」の2つの条件しか満たしていため、「コンセプト4」(「tap diary」)は「これも写真❓」と捉えることができないと考えます。
※撮影した「写真」は、タップした時のリズムに基づく仮想映像とは連動していないため、「視覚」の条件を満たしていないと考えられます。
【まとめ】
「これも写真❓」の概念の範囲に関して、「カメラ」「デジタル機器」「3Dプリンター」「FedEx」の事例を踏まえ、ワークショップ終了後に検討した「コンセプト」が、「これも写真❓」の概念の範囲に含まれるものであるのか検証しました。
「これも写真❓」の条件として「視覚的要素」「変換(物理)」「記録(機能)」があり、「コンセプト2」に関しては、「これも写真❓」の条件である「視覚的要素」「変換(物理)」「記録(機能)」の3つの条件すべてを満たしていたことから、「これも写真❓」の概念の範囲のものとなりました。
一方で、「コンセプト4」(「tap diary」)に関しては、「これも写真❓」の条件である「視覚的要素」「変換(物理)」「記録(機能)」の3つの条件すべてを満たしていなかったことから、「これも写真❓」の概念の範囲外のものとなりました。
ただし、「これも写真❓」の概念は、あくまでも現在において「これも写真❓」と捉えた事例に基づく条件であり、今後、デジタルのさらなる進展により、視覚的要素がないものであっても「これも写真❓」の概念の範囲となるかもしれない、また、「記録する」ものではなく、脳内に「記憶する」ものであっても「これも写真❓」の概念の範囲となるかもしれないなど、今後、「これも写真❓」の概念はさらに拡張するのではないかと思われます。
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