shift innovation #44(f∞ studio hack 5)
今回は、FabCafe Kyotoで開催された「f∞ studio『これも写真❓』ワークショップ」に参加しました。
今、「写真」に囲まれて生きている中で、スマートフォンのカメラで簡単に写真を撮り、SNSで瞬時に共有する時代である一方で、「写真」の定義は曖昧になっています。
f∞ studioは、従来の「写真」の概念にとらわれず、その周辺の未来の写真の意味や価値を探求するコミュニティーであり、「写真」の可能性を信じ、未来の写真の意味・みることの意味を模索し続けています。
今回のワークショップでは、f∞ studioがこれまでに得た知見を基に、フィールドワークに出かけ、「これも写真❓」と感じるものを写真や写真以外の方法で採取し、それらを持ち帰り、グループディスカッションを通して、未来の「写真とは❓」を考えていきます。
【「目的」の視点】
shift innovation #43(f∞ studio hack 4)において、「はじめに『これも写真❓』の構造を検討したことがトリガーとなり、それが固定観念となることによって、「写真」の範囲から出ることができなかったのではないなかと感じました」とまとめました。
今回は、「写真」の範囲から出た「これも写真❓」となるコンセプトを導出する上で、固定観念に影響すると考えられる「目的」の視点から、新たに「これも写真❓」となるコンセプトを検討することとします。
(「どんだけ・・・❗️まだ妄想続けるの・・・❓」)
【「これも写真❓」における目的・機能・物理】
「写真」における「目的」「機能」「物理」として、「物理」を「カメラ」、「機能」を「対象物を印画紙に定着させる」、「目的」を「記録する」と捉えることとします。
そして、「これも写真❓」を検討する上で、「写真」の構造である「対象物」→「媒体(カメラ)」→「写真(二次元の画像)」における「カメラ」という装置(物理)を意識したことがトリガーとなり、既存の「カメラ」という範囲内において捉えたのではないかと考えられます。
そこで、「写真」における「目的」を意識することにより、「写真」の範囲外を捉えることができるのではないかと考えられます。
【「これも写真❓」の事例の目的】
「FedEx」
ワリード・ベシュティ氏の「FedEx」は、「目的」を「作品の全ての軌跡(経過)を捉える」と捉えることにより、「完成した作品(対象物)を展示する」ではなく、「作品を展示会場まで、梱包することなくFedExで運送することにより、運送時に付いた傷や割れも作品の一部として展示する」へ、対象物のシステム全体を時間軸により捉えることによって、「瞬間」から「全ての期間」へ、目的を起点に時間が拡大した新たなコンセプトとなります。
「未来写真」
ワークショップを終えてからイメージした「未来写真」は、「目的」を「これからの未来を知る」と捉えることにより、「現在の対象物を捉える」ではなく、「カメラで撮った人物の過去の言動や人物の周辺に係るネット情報などから将来を予測する」へ、対象物の過去や現在の事実を捉えることによって、「過去」「現在」から「未来」へ、目的を起点に時間が転移した新たなコンセプトとなります。
「傷アート」
「傷アート」は、「目的」を「大切なものに残った傷を自分ごととして受け入れる」と捉えることにより、「その傷をないものとし曖昧に捉える」ではなく、「傷の痕跡をリアルに見続けることにより、傷は現実のものであり、傷ができる前に遡ることはできないことを自認する」へ、異なる「手段」で捉えることによって、「抽象」から「具象」へ、目的を起点に同じ事象が変異した新たなコンセプトとなります。
【「これも写真❓」の目的の捉え方】
「FedEx」「未来写真」「傷アート」に関して、瞬間から全ての期間へ拡大した「FedEx」、過去や現在から未来へ転移した「未来写真」、抽象から具象に変異した「傷アート」は、はじめに想定した「目的」を起点に「手段」を変換したことにより、新たなコンセプトを導出したものであることから、「写真」の範囲内のコンセプトであると考えられます。
そこで、今回は、はじめに想定した「目的」とは異なる目的に変換することにより、「写真」の範囲外を捉える新たなコンセプトを検討することとします。
【目的の視点により捉えた「これも写真❓」1】
「記憶を促すデバイス」
「見えないものを可視化する」というテーマに基づき、はじめに想定した「傷アート」の目的とは異なる目的に変換した、新たなコンセプトを検討することとします。
「傷アート」の前段のコンセプトである「スマホ依存からの更生」は、「スマートフォンに依存した行為」を「スマートフォンの利用履歴(文字)を立体的に可視化する」により表現するというコンセプトでした。
そして、「スマホ依存からの更生」の目的とは、「利用履歴を記録することにより、利用状況を把握する」ことですが、今回は、「利用履歴を記録せず、利用状況を把握しない」という目的へ変換することにより、新たなコンセプトを検討することとします。
スマートフォンの利用履歴は、利用したことを振り返る時に必要となるため、利用履歴を記録するものですが、逆に、利用履歴を全く記録しないこととした場合、必要な時に振り返ることができなくなるという問題が生じることとなります。
例えば、SNSで会話した内容が記録されず消えてしまう、また、スケジュールが記録されず消えてしまうと困ってしまうということとなります。
特にスケジュールに関しては、明日の予定を記録した場合であっても、当日には記録した内容が消えてしまうとスケジュール表の意味をなさないこととなります。
この場合、当日のスケジュールを毎日入力するものの自動的に消えてしまうため、何度も繰り返し確認することにより、脳内に記憶させることによって、この問題を解決する必要が生じます。
そこで、絵画の画像を保存(記録)しない新たなコンセプトである「記憶を促すデバイス」とは、保存(記録)した画像が翌日には自動的に消えてしまうという仕組みであるため、保存(記録)した画像を詳細に観察するなど、半強制的に記憶せざるを得ない状況を作るというコンセプトとなります。
(「これって、自分で消せばいいだけじゃん❓」)
現在、デジタル機器を使用することが多い中で、デジタル機器のOSが古くなった場合やデジタル機器自体が故障した場合など、記録したものが使用できなくなるという問題が生じることを踏まえ、最終的に頼ることができるのは、脳内の記憶だけであるという発想に基づくコンセプトとなります。
これらのことから、「これも写真❓」の構造として、一般的には、「絵画の画像」→「デバイス」→「絵画の画像をデバイスに保存(記録)」となりますが、新たなコンセプトは、「絵画の画像」→「記憶を促すデバイス」→「保存(記録)した絵画の画像を翌日に削除」となり、「保存しておきたい絵画の画像」を「繰り返し見返すことにより記憶を促すこと」により表現することによって、「記憶を促すデバイス」という「写真」の範囲外のコンセプトを導出したものとなります。
【目的の視点により捉えた「これも写真❓」2】
「イノベーションAIデバイス」
前段の「記憶を促すデバイス」は、翌日に自ら画像を消すことで事足りることから、前段の目的である「記録する」から「記録しない」へ目的を変換したことを踏まえた新たなコンセプトを検討することとします。
「記憶を促すデバイス」とは、「絵画の画像を自分だけのものにする」を「目的」と捉え、「絵画の画像を保存(記録)する」のではなく、「あえて翌日には消えてしまう仕組みとすることにより、絵画の画像を積極的に記憶する」へ、上位の「目的」を捉えることによって、「記録する」から「記録しない」へ、下位の目的が反転した新たなコンセプトとなります。
ここで、記憶を促す方法として、観察するだけではなく、文字として書き出すことにより記憶を促すことができる場合もあり、ここでは絵画の画像を文字に変換する(解説する)ことにより、記憶を促すこととします。
しかし、これは既にあるプロダクトであるため、例えば、文字に変換した文章を音声に変換することにより、より記憶が促すこととします。
しかし、これも既にあるプロダクトであるため、例えば、「原型を維持しつつ、その一部を変換する」という「写真」の概念に対して、「一層のこと、原型すべてを維持しないこととする」と捉え直すこととしました。
そこで、原型を維持しないものを新たに創るということに対してイメージしたのがイノベーションであり、イノベーションとは、二つのものを結合することにより、新たなものを創造することとなります。
そこで、原型を維持しない新たなコンセプトである「イノベーションAIデバイス」とは、二つの絵画を提示すると、指示をした概要に基づき、全く異なった新たな絵画を創造してくれるというコンセプトとなります。
(「妄想、ひどすぎ・・・❗️」「いやっ、AIだったらこれくらいできるでしょ❗️」)
事象をそのまま捉えると、捉えた「目的」の範囲内のものとなることから、異なる新たなものを捉えるためには、異なる「目的」を捉えるなど、「目的」の範囲外まで拡張する必要があるという発想に基づくコンセプトとなります。
これらのことから、「これも写真❓」の構造として、「記録した二つの画像」→「イノベーションAIデバイス」→「新結合となる新たな画像」となり、「全く異なる二つの画像」を「結合させることにより全く異なった画像を創造する」により表現することによって、「イノベーションAIデバイス」という「写真」の範囲外のコンセプトを導出したものとなります。
【「これも写真❓」に必要となるマインドセット】
ここでは、導出したコンセプトの内容ではなく、コンセプトを検討するにあたり、思考した方法やそのプロセスについて確認することとします。
「記憶を促すデバイス」は、目的を「記録する」から「記憶しない」に変換したコンセプトであり、「イノベーションAIデバイス」は、目的を「原型を維持する」から「原型を維持しない」に変換したコンセプトとなります。
そして、「記憶を促すデバイス」の場合は、意図的に目的を反転させたものでしたが、「イノベーションAIデバイス」の場合は、意図せず目的が反転したものでした。
そこで、「イノベーションAIデバイス」が意図せず目的が反転した理由としては、新たなものを発想するための「マインドセット」が大きく影響していると考えられます。
そのマインドセットとは、「俯瞰的思考」「飛躍的思考」であり、「俯瞰的思考」とは、事象を高次のレイヤーにおいて俯瞰的に捉えようとする姿勢のことであり、今回、目的の視点を意識していたことから、「俯瞰的思考」であったと考えられます。
そして、特に重要となる「飛躍的思考」とは、極端に振り切った想定外の非常識な事象を捉えようとする姿勢のこととなります。
「イノベーションAIデバイス」では、二度アイデアを想起したものの、普通のアイデアであり、極端に振り切った想定外の非常識なアイデアを想起することはできなかったことから、手詰まりの状態となりました。
そして、手詰まりの状態となったものの、さらに解決を試みようとしたとき、「一層のこと・・・」と意識したことによって、上位レイヤーの目的である「原型を維持する」を捉えると共に「原型を維持する」から「原型を維持しない」へ反転することとなりました。
これらのことから、無意識の思考パターンである「俯瞰的思考」「飛躍的思考」という「マインドセット」により、意図せず目的を異なる目的へ変換することができたのではないかと考えられます。
(「詳しくは・・・こちら ❗️↓ 」)
【まとめ】
「これも写真❓」とは、「写真」が拡張したものであり、例えば、「FedEx」のように、今まで「写真」と捉えていなかったものまで、「写真」と捉えようとした場合、当然、我々が想定する「『写真』とはこういうものである」というような固定観念から脱却する必要があります。
しかし、長年、「『写真』とは、カメラという媒体を通して捉えた被写体を印画紙に定着させたもの」と捉えていると、「FedEx」はもちろんのこと、「デジタル画像」「3Dプリンター」なども「写真」と捉えることは困難ではないかと考えられます。
そして、新たな「これも写真❓」を創造する上で、自ら「これも写真❓」の概念を拡張させることは、さらに困難なことではないかと考えられます。
よって、不確実性が高く変化が大きい環境においては、「常識」「当然」「前提」というような固定観念にとらわれることなく、今までとは異なる目的や上位の目的を捉えるなど、捉えるべき事象の範囲を拡張することによって、今までとは異なる新たなものを創造(認知)できるのではないかと考えられます。
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