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shift innovation #61 (KYOTO CREATIVE ASSEMBLAGE hack 修正版)

今回、京都クリエイティブ・アッサンブラージュのダイアログ「社会課題とデザイナー 佐藤可士和の仕事を読み解く」を聴講してきました。



【京都クリエイティブ・アッサンブラージュの概要】

京都クリエイティブ・アッサブラージュは、社会をよく見て表現する人文社会学的視点、別の現実を作って体験することで日常を捉え直すスペキュラティブなデザイン、そして既存の枠組みを宙吊りにし安易な結論づけを妨げるようなアートの実践にそれぞれ触れることで、新しい世界観をつくる力を導きます。


今回は、「無意味を救い出す」という視点に基づき、佐藤可士和氏がデザインした「GLP ALFALINK相模原」の物流施設について読み解くこととします。

(これは、山内裕氏が佐藤可士和氏の仕事を読み解いた内容を、さらに私が読み解いた(勝手に解釈した)内容となります。)


【ダイアログ概要】

イノベーションを「既存の意味のシステムを解体すること」と捉えた場合、既存の意味のシステムから排除された「無意味」を救い出す必要があり、これを「敗者の救済」と表現しています。

そして、「敗者の救済」においては、「勝者」と「敗者」などの序列の基準を解体し、フラットに扱う必要があり、そこには、根拠のないこと、意味のないことを前提とする必要があるということのようです。


【「敗者の救済」の捉え直し】

前回、ダイアログ「社会課題とデザイナー 佐藤可士和の仕事を読み解く」を聴講した内容に基づき、私が解釈した「敗者の救済」の構造とは、「敗者の救済」においては、二元論的発想による対立構造により負のループが発生するため、「対話」により二元論的発想を解体するフェーズ、二元論的発想はやむを得ないこととし、生じた対立構造を協調構造にするため、目的や意味に基づく利害を一旦反故にするフェーズに分けて捉えました。

今回、「敗者の救済」に関するアドバイスをいただいたことから、改めて、「敗者の救済」について問い直すこととしました。その構造とは、前回のように、「敗者の救済」を捉えた場合、二元論的発想による対立構造が生じることにより、フェーズを分けることとなるため、今回は、もともと二元論的発想とはならず、序列自体がないフラットな状態からはじめる上で、「敗者の救済」を「無意味を救い出す」と捉え直した上で、進めることとします。


【「無意味を救い出す」の概要】

それでは、そのアドバイスとは、「序列とは物流施設が排除されてきた序列のことであり、そもそもその序列自体をわけがわからなくする表現が重要である」となります。

ここで、アドバイスにある「物流施設(「GLP ALFALINK相模原」)」を「敗者」と捉え直すと、「序列とは敗者が排除されてきた序列のことであり、そもそもその序列自体をわけがわからなくする表現が重要である」となります。

ここでいう「序列自体をわけがわからなくする」とは、「敗者(悪い)」に対して、対称となる「勝者(良い)」というように、一意に捉えるではなく、「敗者」に対して「敗者以外の全て」と捉える方が適しているのではないかと考えます。

これは、「敗者」に対して想起するのは、対称となる「勝者」となりますが、一意に捉えた「勝者」は、本当に捉えるべきものであるのかは不確実である中で、実は捉えるべきは「勝者」ではなく、「敗者以外の全て」の中に存在するのかもしれません。

一方で、「無意味を救い出す」における「意味」に対する「無意味」とは、「意味」に対して一意に捉えられるものではなく、「意味以外の全て」と捉えることができ、そして、「意味以外の全て」の中に捉えるべき「意味」があると捉えることとなります。

そこで、「意味」「無意味」と「勝者」「敗者」、つまりは、「事象」「非事象」と「事象」「反事象」とは、捉える範囲が異なるものであり、「敗者の救済」と「無意味を救い出す」とは、同じであると捉えることはできないと考えます。

これらのことから、「事象」に対して、対称となる「反事象」を一意に捉えるというように、二元論的発想をすると、本当に捉えるべき「意味」を捉えることができない場合があります。

よって、「序列自体をわけがわからなくする」という意味において、「敗者の救済」という表現よりも「無意味を救い出す」という表現の方が適していると捉えることとし、今回は、「無意味を救い出す」を「無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を探し出す」とし進めることとします。


【「GLP ALFALINK相模原」の概要】

佐藤可士和氏がデザインした「GLP ALFALINK相模原」とは、一般的な物流施設のイメージである「広大な敷地に物流倉庫がいくつも連なる物流施設内のことはよく分からず、物流施設外ではトラックが頻繁に往来するなど危険な場所」というイメージとは異なるものとなります。

このような物流施設のイメージを払拭するのが「GLP ALFALINK相模原」であり、物流システムのフラッグシップとして、敷地内には物流倉庫だけではなく、地域住民の方が交流できる場もあり、年間300ほどのイベントが開催されるなど、「オープンハブ」というコンセプトに基づく「創造連鎖する物流プラットフォーム」として、「GLP ALFALINK相模原」と地域住民が共創し続ける施設となります。


【佐藤可士和氏の仕事】

佐藤可士和氏は、「無意味を救い出す」という文脈において、「GLP ALFALINK相模原」に関して、「アップデートするのではなく、別次元の世界をつくりたい」と表現されていました。

この「アップデートする」とは、既存の意味を序列に基づき一意に捉えることにより、新たな価値を創造すると捉えることができるのではないかと考えられます。

一方で、「別次元の世界をつくる」とは、無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を捉えることにより、新たな価値を創造すると捉えることができるのではないかと考えられます。

そこで、佐藤可士和氏は、「『GLP ALFALINK相模原』を敗者(無意味)と言って良いのか」と慎重に表現を選んでおられましたが、「無意味」を新たな「GLP ALFALINK相模原」ではなく、旧来の物流システムと捉えた場合、物流システムに対して、無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を捉えることにより、新たな価値を創造したものが「GLP ALFALINK相模原」であり、別次元の世界をつくることができた、つまりは、「無意味を救い出す」ことができたのではないかと考えられます。


【「無意味を救い出す」ための捉えるべき範囲】

それでは、「GLP ALFALINK相模原」において、どのようにして「無意味を救い出す」ことができたのか、つまりは、無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を捉えたのかという問いを立てることとします。

ここで重要となることとは、「無意味を救い出す」ためには、どのような視点(誰の視点)に基づき意味を捉えるのかということであり、それは、社員であるのか、企業であるのか、物流施設内の他企業であるのか、地域社会であるのか、行政であるのかなど、捉える視点により、捉える範囲が異なり、そして、捉える意味も異なることとなります。

例えば、社員にとって意味のあるものとした場合、「働きにくい環境で働いていた社員」が「働きやすい環境で働くことができる社員」となることにより、社員を無意味から救い出すことによって、「社員が働きやすい物流施設」という新たな意味を与えることができることとなります。

しかし、このような物流施設は、企業にとって意味があるのか、物流施設内の他企業にとって意味があるのか、地域社会にとって意味があるのか、行政にとって意味があるのかなど、新たな問いを捉えることとなります。

そこで、「GLP ALFALINK相模原」においては、地域社会という視点で物流施設を捉えたことにより、物流施設には、地域住民の方が交流できる場もあり、年間300ほどのイベントが開催されるなど、「オープンハブ」というコンセプトに基づく「創造連鎖する物流プラットフォーム」となったのではないかと考えられます。


【「無意味を救い出す」ためのビジョン】

それでは、「GLP ALFALINK相模原」において、社員にとって意味があるものではなく、企業にとって意味があるものではなく、物流施設内の他企業にとって意味があるものではなく、行政にとって意味があるものではなく、どうして、地域社会にとって意味のあるものとしたのでしょうか。

これは、佐藤可士和氏が「GLP ALFALINK相模原」との対話を通じて捉えた「物流施設の”次”をつくる」というビジョンを実現する上で、一般的な物流施設のイメージである「物流施設はトラックが走り回る危険な場所」というイメージを払拭する必要があったのではないかと考えられます。

そこで、今までは、「物流施設はトラックが走り回る危険な場所」であるため、地域社会から隔離された物流施設であったものを、一層のこと、地域社会に開かれた物流施設とすることにより、今までにはない新たな物流施設、つまりは、「物流施設の”次”をつくる」ことができたのではないかと考えられます。


【「無意味を救い出す」ための二つの価値】

それでは、地域社会に開かれた物流施設とする上で、どのような方法により、どのような価値転換を図ることができたのでしょうか。

「物流施設は地域住民と交流できる場所」という地域社会に開かれた物流施設は、「GLP ALFALINK相模原」と地域社会において、「対話(コミュニケーション)」をすることにより捉えたものとなります。

そして、「対話(コミュニケーション)」により捉えた価値(意味)とは、物流施設における異なる二つの価値(意味)を捉えたものであり、一つ目に捉えた価値(意味)とは、「物流施設はトラックが走り回る危険な場所」という従来の物流システム(暗部)を捉えたものとなります。

一方で、二つ目に捉えた価値(意味)とは、「物流施設は地域住民と交流できる場所」という地域社会の視点で捉えたものとなります。

「GLP ALFALINK相模原」においては、従来の物流システムという「暗部」を包み隠さず見えるようにする一方で、物流施設内で地域住民は交流できるものの、トラックなどが決して地域住民と交わらないよう動線を配慮するなど、物流システムを理解でき、且つ、安全でもある「地域社会に開かれた物流施設」となります。

これらのことから、「GLP ALFALINK相模原」と地域社会との「対話(コミュニケーション)」により、従来の物流システムという「暗部」を肯定しつつ、無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を捉える、つまりは、新たな価値転換を図るができたのではないかと考えます。

これは、事象の「暗部」を見えないものとして扱うのではなく、あえて「暗部」を見せる、それも、「暗部」を「暗部」のままではなく、異なる視点から「暗部」を見せることにより、価値転換を図るものであり、決して、「暗部」をよく見せるものではないということです。


【「無意味を救い出す」ための視点】

それでは、「無意味を救い出す」において、新たな価値転換を図る上で、物流施設を捉える視点(範囲)の違いにより、異なる新たな価値を創造することとなります。

例えば、物流施設にけるステークホルダーとして、従業員、トラック、施設、自社、他物流企業、地域住民、行政(自治体・省庁など)、さらには、株主、金融機関、保険会社、不動産会社、システム会社、エネルギー会社など、多くのステークホルダーが存在することとなります。

そこで、ステークホルダーの中でも、従業員の視点で捉えた場合、「綺麗な物流施設」「働きやすい物流システム」という新たな価値創造により、「働きやすい労働環境に整備する物流施設」という目的(意味)を導くこととなります。

また、他物流企業の視点で捉えた場合、「企業同士が交流できる施設」という新たな価値創造により、「イノベーションを創発する物流施設」という目的(意味)を導くこととなります。

そして、地域住民の視点で捉えた場合、「地域住民と交流できる施設」という新たな価値創造により、「創造連鎖する物流プラットフォーム」という目的(意味)を導くこととなります。

さらに、行政(自治体・経済産業省等)の視点で捉えた場合、「スタートアップエコシステム」という新たな価値創造により、「地域創生を促進する起業プラットフォーム」という目的(意味)を導くこととなります。

これらのように、捉える社会課題の範囲により、創造できる新たな価値は異なることになるため、社会全体を観察し、社会の微妙な変化を感じ取ることにより、既存の枠組みを宙吊りにし、「無意味を救い出す」ことによって、新しい世界観をつくることができるのではないかと考えます。


【まとめ】

イノベーションを「既存の意味のシステムを解体すること」と捉えた場合、イノベーションを創発するためには、既存の意味のシステムから排除された「無意味」を救い出す必要があります。

「無意味を救い出す」とは、無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を探し出すこととなります。

無意味を救い出す上で、新たな価値転換を図るためには、ビジョンに基づき、捉えるべき視点(範囲)を探し出す必要があります。

異なる新たな価値を創造するためには、無意味の中から序列に関係なく、本当に捉えるべき意味を探し出すための「対話(コミュニケーション)」が重要となります。

本当に捉えるべき意味とは、「暗部」を見えないものとして捉えるのではなく、あえて見せた「暗部」を異なる視点で捉えることにより、新たな価値転換を図ることができることとなります。

(これは、山内裕氏が佐藤可士和氏の仕事を読み解いた内容を、さらに私が読み解いた(勝手に解釈した)内容となります。)

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