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shift innovation #39 (WIRED hack 2)

今回は、WIRED「CREATIVE HACK AWARD 2023」に応募した内容について紹介します。

AWARDでは、「なにをハックするのか」「なぜそれをハックするのか」「いかにそれをハックするのか」、この3点を明記/定義するのみ。

どんな表現方法(フォーム) 映像・ゲーム・小説・模型・アプリ・ビジネスアイデア・メタバース・DAO・NFT・論文でも構わない。


懲りもせず、また応募しました。当然、落選。


ハックするものは何でもよく、表現方法も何でもよいということで、"これって面白いんじゃな〜い❗️"と思い込みが激しく、好き勝手に書いたところ、全く面白くなかったようです。(残念・・・・・・)


アイデアのタイトルは「おもんぱかリンガル


タイムパフォーマンスを重視するデジタルネイティブの世代が増加することにより、人間にしかできない、相手を気遣った「慮る」ということができなくなるという、世知がない世の中になるのではないのかと妄想する中で、AIを活用することによって、相手を気遣った「慮る」言葉に自動的に変換してくれるスマホアプリ(「おもんぱかリンガル」)を作ることができないのか、日本独自の相手を気遣った「慮る」文化を継承することができないのかと思い、「おもんぱかリンガル」のアイデアを提案しました。


【タイトル】

おもんぱかリンガル


【なにをハックするのか】

デジタルネイティブ世代における「慮る」ことができないマインド


【なぜそれをハックするのか】

日本独自の相手を気遣った「慮る」文化を継承するため


【いかにそれをハックするのか】

相手を気遣った「慮る」ということがAIにできるのか、実際のジェネレーティブAIを活用することにより、本音となる表現を「慮る」言葉に変換できるスマホアプリ(「おもんぱかリンガル」)の可能性を検証


【提案概要】

デジタルネイティブ世代は、ソーシャルネットワークでは、スピーディーな会話を好み、YouTubeを倍速で視聴するなど、タイムパフォーマンスを重視する傾向があります。

また、ソーシャルネットワークでは、会話をする相手と直接対面するものではなく、匿名性があることから、言葉を選ばず本音を言う傾向があります。

そのため、オンラインだけではなく、オフラインにおいても、間を読むことができない、気遣うことができないなど、相手を慮ることができなくなっているのではないかとも考えられます。

今後、デジタルネイティブの世代が増加することにより、人間にしかできない、相手を気遣った「慮る」ということができなくなるという、世知がない世の中になるのではないか危惧されます。

そこで、ソーシャルネットワークで発信しようとした言葉が本音の言葉であっても、相手を気遣った「慮る」言葉に自動的に変換してくれるスマホアプリ(「おもんぱかリンガル」)を活用することにより、相手を気遣った慮る言葉を発信できるものと考えます。

そして、慮る言葉に自動的に変換してくれるスマホアプリを継続して活用することにより、慮る発言をすることが習慣化することによって、オフライン、オンライン共に人間にしかできない、相手を気遣った「慮る」文化を継承できるものと考えます。


【課題】

ジェネレーティブAIは、プロンプトに指示した内容に対して、インターネットより入手した内容に基づき、回答を生成するものであり、人間における感情や想像力を保持していないことから、本音となる表現を、相手を気遣った「慮る」表現に変換することはできないと考えられます。


【仮説】

「慮る」表現の構造(事例・条件)を示した上で、プロンプトにおいて段階的に指示することにより、本音となる表現を「慮る」表現に変換できる。


【手法】

ジェネレーティブAIを活用し、本音となる表現を「慮る」表現に変換できるかを検証することとします。

第一段階では、ジェネレーティブAIを活用し、「慮る」表現の定義を示した上で、本音となる表現を「慮る」表現に変換するよう指示する。(教師なし)

第二段階では、ジェネレーティブAIを活用し、「慮る」表現の構造(事例・条件)を示した上で、本音となる表現を「慮る」表現に変換するよう指示する。(教師あり 一括提示)

第三段階では、ジェネレーティブAIを活用し、「慮る」表現の構造(事例・条件)を示し、プロンプトにおいて段階的に表示した上で、本音となる表現を「慮る」表現に変換するよう指示する。(教師あり 段階的提示)


【仮説検証】

「慮る」の意味
1.熟考 「一度失敗しているので、今回は慎重に検討します。」など
2.配慮 「業務の経験が浅いので、業務分担について考慮します。」など
3.建前 「(他社で決定予定であるものの)一度社内に持ち帰り、検討します。」など

今回は、「慮る」の意味の中でも、3.建前(「(他社で決定予定であるものの)一度社内に持ち帰り、検討します。」)について、検討することとする。

ジェネレーティブAIは、本音と建前という表現、メタファーという表現など、表層の意味と深層の意味が異なるような場合、上手く表現を変換できない場合があります。

例えば、本音と建前に関して、本音としては、既に他社でコンペが決まりかけているものの、直接的な表現で断ると今後の取引に影響するため、検討する余地はないことは事実であるが、建前として、一度社内に持ち帰り検討しますと、一時的に結論を保留する表現で対応するという場合、ジェネレーティブAIは、「(他社で決定予定であるものの)一度社内に持ち帰り、検討します。(表層的表現)」という表現に変換できませんでした。

また、メタファーに関して、新たなアイデアを創出する上で、事象と事象を融合させる場合、おでんの出汁のように、様々な具材を入れることにより、具材の味が滲み出ることによって、旨味が増すという場合、ジェネレーティブAIは、「事象と事象を融合させる。(深層的表現)」という意味に変換できませんでした。

今回は、「慮る」という表現を通じて、このような表現や意味に変換するための方法について、検証することとします。


(第一段階)
検証内容
ジェネレーティブAIを活用し、「慮る」表現の定義を示した上で、本音となる表現を「慮る」表現に変換するよう指示する。

検証結果
プロンプトへの指示に関して、「慮る」の定義を提示した上で、相手に対してそれとなく断っているというニュアンスが伝わるよう「慮る」表現方法について付け加えた。

そして、「慮る」の意味が、3.建前(「(他社で決定予定であるものの)一度社内に持ち帰り、検討します。」)であることをジェネレーティブAIに理解させた上で、改めて、「慮る」表現方法となるよう質問を繰り返し実施した。※検証内容(参考1)

その結果、「お断りします」や「遠慮します」など、相手に対して断っているというニュアンスが伝わってしまう表現方法の回答しか得られず、3.建前(「(他社で決定予定であるものの)一度社内に持ち帰り、検討します。」)という「慮る」表現方法の回答を得ることができなかった。※検証内容(参考1)

これに関しては、ジェネレーティブAIは、自己学習機能を持つため、継続的に学習して成長しているものの、例えば、「慮る」をはじめ、「本音と建前」や「阿吽の呼吸」など、すべての文化的背景や言語の微妙なニュアンスを完全に把握することは難しいようである。

これらのことから、定義付けする手法として、文脈により定義を提示するだけでは、その他の情報が介入する余地があるため、条件等を明確に提示する必要があるものと考えられる。

(第二段階)
検証内容
ジェネレーティブAIを活用し、「慮る」表現の構造(事例・条件)を示した上で、本音となる表現を「慮る」表現に変換するよう指示する。

検証結果
第一段階においては、「慮る」表現方法の定義のみ提示した上で、ジェネレーティブAIに対して質問を繰り返し実施したが、第二段階においては、「慮る」の基本構造を提示し、あわせて「慮る」事例を提示すると共にその他の条件を提示した上で、ジェネレーティブAIに対して質問を繰り返し実施した。※検証内容(参考2)

そして、はじめは、既に提示した事例と同内容の事例に基づき、「慮る」表現方法となるように指示した上で、質問をしたところ、期待する「慮る」表現方法を回答した。※検証内容(参考2)

さらに、既に提示した事例とは異なる内容の事例に基づき、「慮る」表現方法となるように指示した上で、質問をしたこところ、期待する「慮る」表現方法を回答した。※検証内容(参考2)

これらのことから、ジェネレーティブAIは、基本構造・事例・条件を明確に提示することにより、提示した基本構造・事例・条件などの情報を保持した上で、提示した質問に対して期待する「慮る」表現方法を回答するという結果となったものと考えられる。

なお、第一段階における「慮る」表現方法の定義のみ提示した場合、ジェネレーティブAIにおいて、その他の情報が介入する余地があるため、「お断りします」や「遠慮します」など、相手に対して断っているというニュアンスが伝わってしまう表現方法になったものであると考えられる。

(第三段階)
検証内容
ジェネレーティブAIを活用し、「慮る」表現の構造(事例・条件)を示し、プロンプトにおいて段階的に表示した上で、本音となる表現を「慮る」表現に変換するよう指示する。

検証結果
第三段階に関しては、第二段階の手法により、期待する内容を得ることができたことから、実施しないものとする。


【考察】

ジェネレーティブAIは、「慮る」表現方法に関して、「慮る」定義を提示するだけでは本音から建前を類推することができなかったが、本音から建前となる基本的構造・事例・条件などを提示することによって、はじめて本音から建前を類推することができました。

これに関して、「慮る」だけではなく、「メタファー」などでも同様のことが言えることであり、いくら定義や事例を提示した場合であっても、その構造が明確になっていない場合は、「本音から建前」や「表層的表現から深層的表現」を類推することができないものと考えられます。

このことから、仮説である、「『慮る』表現の構造(事例・条件)を示した上で、プロンプトにおいて段階的に指示することにより、本音となる表現を「慮る」表現に変換できる」に関して、今回の仮説検証において、段階的に指示しない場合であっても、基本的構造・事例・条件を提示することにより、本音から建前を類推することができるものと考えられます。

よって、慮る言葉に自動的に変換してくれるスマホアプリ(「おもんぱかリンガル」)をソーシャルネットワークと連動させることによって、人間にしかできない、相手を気遣った「慮る」文化を継承することができるのではないかと考えられます。


【むすび】

慮る言葉に自動的に変換してくれるスマホアプリ(「おもんぱかリンガル」)をソーシャルネットワークと連動させることにより、ソーシャルネットワークに本音を入力すると、相手を慮った建前となる表現方法に変換してくれることによって、相手との会話がスムーズに進むこととなり、良好な人間関係を保つことができることとなるものと考えられます。

また、これらのように、「おもんぱかリンガル」を継続的に使用し、変換された「慮る」表現方法を確認することにより、オンラインだけではなく、オフラインにおいても、「慮る」表現方法を理解することによって、良好な人間関係を保つことができることとなるものと考えられます。

これらの結果、デジタルネイティブの世代が増加することにより、人間にしかできない、相手を気遣った「慮る」ということができなくなるという、世知がない世の中になるのではなく、デジタルを活用することにより、人間にしかできない、今まで以上に人間らしい世の中になるのではないかと考えられます。

なお、「おもんぱかリンガル」を活用することにより、個人の性格を解析することによって、その個人と良好な人間関係を保つことができるアドバイスを得ることができるなど、様々なサービスに適用することができるものと考えられます。


「CREATIVE HACK AWARD」では、「よくわからない・・・・・・けど、なんだかおもしろそう」「ぜんぜん空気を読んでいないけど、大切なところを掴んでそう」といった作品に、スポットライトを当てるということですが・・・・・・、本当に空気を読んでいなかったようです。


俺らが慮っていないって❗️お前の方こそもっと空気読んだ方がいいんじゃねーの❗️
 (デジタルネイティブ世代の声)


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