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バカボンのパパと博士ちゃんに聞いてみるのだ

1.バカボンのパパは行動する

 子供は好きなことをするだけで、親から褒められます。本を読むのが好き。絵を描くのが好き。自動車の車種を覚えるのが好き。多くの日本の親達は、そんな子供達を褒めます。
 しかし、年齢が上がるにつれ、その評価は変わります。好きなことをするのもいいけど、勉強することはもっと大切だ、と言われるようになります。
 更に大人になると、本を読んだり、絵を描くのは「遊び」と言われます。「いつまで遊んでいるんだ。さっさと仕事をしろ」と言われます。
 大人は生活費を稼がなくてはいけません。お金にならないことをするのは、「バカ」な行為とされます。それでも、芸術性が高い行為や、世間から尊敬される行為ならば許されます。お金にならなくても、芸術家や聖人と言われれば、世間から名誉が与えられます。
 ある意味、大人は金と名誉のために行動するものであり、金にも名誉にもならないことをするのは、バカだ、と言われるのです。
 赤塚不二夫の「天才バカボン」の実質的な主人公、バカボンのパパは、突然、何かを始めます。というか、常に何か面白いことを探していて、それを見つけると、即、行動に移します。
 例えば、近所の子供が「海は楽しかったね」と話しているのを聞くと、「今日は海に行くのだ」と宣言し、全ての仕事を放り出し、誰かを無理やり誘って海に向かうのです。その結果、様々な事件を起こし、皆に迷惑をかけますが、最後に、「これでいいのだ」、と言って完結します。

2.バカボンのパパのような友人がいた

 多くの人は、「バカボンのパパみたいな人は実在するはずがない」と思うでしょう。しかし、私の友人のTは、バカボンのパパのような男でした。お金とか名誉に関係なく、面白ければ行動に移します。
 例えば、昔、神楽坂のギャラリーで友人と写真展を開いたことがありました。別に写真展をするために写真を撮ったのではなく、海外出張でロケハンのように写真を撮ってきただけです。その写真をみて、ギャラリーの主人に、「面白いから、写真展をやったら」と言われ、急遽、写真展を開くことになりました。
 その話をTにすると、「オープニングに暗黒舞踏のOさんを呼ぼうよ。ギャラリーの向かいの空き地で、突然、暗黒舞踏が始まったら面白いでしょ」、と言うのです。こちらも、「面白いならいいか」、ということになり、オープニングの日に突然、白塗りの舞踏家が神楽坂の商店街に出現するという事件が起きました。その後、もちろん、Oさんを交えて、打ち上げの大宴会を行ったのは言うまでもありません。
 その後も、居酒屋で酒を飲んでは、「単に酒を飲んでも面白くないから、こんなことをしよう」という話は続き、打ち上げで飲むために、仕事をでっち上げました。
 Tは、自分の本業でも面白いことを続けました。犬のための音楽というコンセプトで、犬のしつけのための音楽CDを作り、犬に聞かせるライブを開催し、モーツァルトの音楽を聞くと頭が良くなるという話があると、高速モーツァルトというCDを作りました。幸いにも、これらの企画は当たったとのこと。しかし、その何倍も当たらない企画があったのです。
 Tは、「売れるものはつまらない」、と思うところがあり、「つまらないもの、くだらないものが面白い」という感性を持っていました。「この企画、くだらないでしょ」、と言いながら、ニッコリ笑う顔を見ると、あまりの馬鹿馬鹿しさについ笑ってしまい、「売れなくてもいいからやろう」、という気になるのです。バカボンのパパのような、「これでいいのだ」という気持ちです。
 

3.「博士ちゃん」のブランド

 世の中の変化の先頭を走っているのは、バカです。バカが走って、流れを作り、流れができれば、ビジネスが発生します。多くの場合、儲かる仕事は、後追いです。
 コロナで世界が止まって、空白が生れました。先頭を走る人が見えないので、後追いができません。先に誰もいない状態で走るのは怖いのです。
 昨年実績がないなら、一昨年の実績に準じればいい、というものでもありません。最早、時代は変ってしまったのです。
 お金のために働く人は、どうすればお金が稼げるかが分からないと、身動きが取れません。じっとして、周囲を見ているだけです。誰かが儲ける道を見つけたら、追いかけようと身構えているのです。
 それでもバカは走れます。バカは状況を見ていません。自分の内面を見ているだけです。自分の心に引っかかったら、目が、「キラリン」と光り、「ワシはこれをやるのだ」、と宣言するのです。
 例えば、「博士ちゃん」というテレビ番組があります。博士ちゃんは子供なので、天才扱いされますが、あのまま大人になったら、変人扱いされるでしょう。バカと呼ばれるかもしれません。
 子供の頃は「魚博士ちゃん」でも、大人になっから「魚バカ」になります。でも、魚バカなら、迷うことはありません。
 魚博士ちゃんに、ファッションブランドの企画を依頼すれば、魚の柄のプリントやジャカード生地を作るでしょう。とにかく魚が好きなのです。
 魚の柄の刺繍をするかもしれないし、魚のような流線型のドレスを作るかもしれません。魚の色をテーマにした商品企画も面白いですね。
 魚の美しさ、楽しさ、美味しさを世界に伝えたい、と考えているのですから、迷うことはありません。
 同様に、「野菜博士ちゃん」は、野菜をテーマにしたブランドを作るでしょう。野菜のフォルムを生かしたアクセサリーは、ヴィーガンにもウケルかもしれません。野菜から採った染料で染めたストールも面白いし、野菜ジュースのカフェもいいでしょう。
 同様に、化石の博士ちゃん、恐竜の博士ちゃん、お城の博士ちゃんなら、各自独特な商品企画をするはずです。
 売れるか売れないか。そんなの関係ありません。欲しいから作る。何を作っていいのかわからないなら、そんな発想の商品が面白いはずです。
 

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