2020年、世界は立ち止まり方向転換する
1.新型コロナウイルス禍、先行き不透明
2020年、中国武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎が発生し、中国政府は武漢市を封鎖し、その後海外渡航も禁止した。しかし、既に春節の大移動は始まっており、大型クルーズ船でも感染が発見され、乗船客は上陸できずに、海上で待機を余儀なくされた。
「今後、感染者はどのように推移するのか」、また「いつごろ収束するか」など先行きは不透明である。
間違いないのは、世界経済は大きな影響を受けること。そして、世界中の人々の感情もまたその影響を受けることだ。
2.環境少女グレタさんに共感する気分
環境少女として有名になったスウェーデンのグレタ・トゥーンベリは、2018年の国連気候変動会議で「なにもかも間違っている。私がこの壇上にいるべきではないし、私は海の反対側で学校にいるべきだ。それなのに、あなた方は私たち若者に頼って希望を求めにくる。あなた方は、私の夢や私の子供時代を、空っぽな言葉で奪った」と演説した。
彼女の正直で率直なスピーチは人々の胸をうち、多くの科学者や若者に影響を与えた。
彼女は、両親に飛行機旅行を断念させ、肉食を止めるように説得し、日常生活でも二酸化炭素排出量の少ないライフスタイルを実践している。
ネット上では、グレタさんの背景や陰謀説が紹介されているが、それとは関係なく、直感的に協調する人も少なくない。
例えば、ヴィーガンと呼ばれる「完全菜食主義者」が世界で急増している。彼らは、肉や魚はもちろん、卵、チーズ、バター類、はちみつ、ゼラチンなども一切口にしない。革製品の靴やバッグ、ウールの服なども身につけない。シルクの下着やファーのコート、革の財布なども駄目だ。洗顔料やボディーソープ、コスメ用品も動物性油、ハチミツ、牛乳、卵の成分が入っていないものを使う。生活全般において「動物性の素材を使わない」を貫いているのだ。
グレタさんが発言した「飛び恥」も、いのである。欧州など先進国を中心に飛行機の利用を手控える動きが広がり始めた。KLMオランダ航空は、2019年6月に衝撃的な企業CMを公開した。
「いつも直接、顔を合わせて話しをすることは必要ですか?」「飛行機の代わりに電車で移動することはできませんか?」と問いかけ、テレビ電話会議や鉄道利用を促す内容である。
こういう時代の気分がジワジワと拡大する中で、2020年の新型コロナウイルス禍が起きたことに注目すべきである。
世界の工場である中国は麻痺し、世界の生産と消費は縮小し、経済活動は低迷するが、世界は立ち止まる機会を得たとも言える。これまでの惰性で動くのを止めて、自分たちの生活、ビジネスを見直す人が増えるだろう。そして、方向転換が始まるはずだ。
3.自由と平和から、統制と戦争へ
第二次世界大戦後、多くの先進国は平和を謳歌し、経済活動に専念した。個人の自由は保証され、所得は増大し、ファッションやグルメを楽しんだ。その結果、貧富の格差は拡大し、環境は汚染された。
アメリカと中国の覇権争いが貿易を規制するようになり、経済は原則した。経済よりも政治を優先したのだ。
そんな中で、新型コロナウイルス禍は発生した。中国では自由に外出することもできず、マスクも配給に変わった。正に、戦時の生活である。
新型コロナウイルスを生物兵器だとするネット上の意見も目立っている。それが本当でも嘘でも、我々の気分は、自由・平和から統制・戦争へと転換しているのではないか。
小さな行動規制であっても、人間はその理由を考える。新型コロナウイルスは、人間が自然を破壊した結果、神の怒りに触れたのではないか、と言う人もいる。科学的な発言ではないが、我々の感情を表現した発言とは言える。
我々はあまりにも経済第一主義ではなかったか?あまりに強欲ではなかったか?そして、あまりに自然を破壊してしまったのではないか?
自由を阻害されるほど、そういう気分が強まってくる。我々は統制にも順応してしまうのだ。
4.日本のビジョンが必要
日本は人口も減少に転じている。それでも、居住可能地域の人口密度は異常に高い。本来、りどの程度の人口が適正なのか、という数字は出ていない。
この数字を出すには、日本がどのような国を目指すかというビジョンが必要だ。現状で人手不足だから、場当たり的に移民を認めろ、というのも乱暴な議論である。
現在、進めているような富裕層と大企業に優しい政策が果たして正しいのか。それとも、日本人全体を底上げするべきなのか。
本来ならば、この政策の違いを明確に打ち出して議論を進めるべきだろう。少なくとも、アメリカはこうした政策対立の結果、トランプ大統領が誕生したのだから。
少子高齢化が国の弱体化を招くという意見が多数派だが、少子高齢化の延長に幸せな未来を描くことはできないのか。
5.高度経済成長政策の逆方向に進む
例えば、高度経済成長時代に行った政策の反対を行うのはどうだろう。
集団就職では、地方から都会に若者を集中させたが、在宅勤務や本社の地方移転で人口の分散を図る。その上で、快適な生活環境を整備するために、シェアハウス等を基本とした大家族的なコミュニティを育成していく。
国際競争力のある大企業よりも、生活に密着した個人企業、中小企業を育成する。
人口分散と共に、教育もインターネットを基盤とした新しい教育制度を作り上げる。そこでは、ディスカッションを中心とした考える教育を実践し、起業家精神を高め、ベンチャー企業を増やしていく。
大企業、大組織の中でストレスを抱えるよりも、自分が意思決定を行い、ビジネスをコントロールすることで、幸福度は増すだろう。日本人が幸福になれば、独自の文化を持つ幸福の国として日本への憧れを強めるはずだ。日本は、人口減らし、文化と教育で生きていくという選択肢もあるのではないか。*