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第22回 #書き出し祭り 第四会場 感想

 こんにちは、お祭り大好き、まさかミケ猫です。本Noteでは、第22回 #書き出し祭り 第四会場の感想を書いていきたいと思います。


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第二十二回 書き出し祭り 第四会場

何かありましたら質問箱まで

感想

4-01 聖女様は断罪間際の令嬢になりました

 これは予想をひっくり返してきましたね。そんな形での「すべてを奪われる」は想定していなかったので、とても面白かったです。登場人物たちに裏がありそうなので、黒幕が誰なのかなど、色々と気にる第一話でしたね。どんな方向に転がっていくのか楽しみになりますね。
 冒頭、まずは婚約破棄シーンからですが、定番の流れからの「どうして、そこにあたしがいるのですか?」ですよね。本作のあらすじからの印象を一気に変えた部分かと思います。この中身の入れ替わりをタイトル・あらすじであえて伏せているのは、書き出し祭りとしては強いやり方ですよね。おそらく実際の連載時にはあらすじなどに書く部分になるのかなと思っていますが、これはやられたなぁと唸りました。作者様はしてやったりという感じでしょうか。
 そして、アイリーンの過去。なるほど、ヴィオラは従姉妹同士だったわけですね。それなのに、アイリーンばかり大切にされて憤っていたと。いやまぁ、気持ちは分からなくもないですが、ちょっと考えなしに暴走しすぎだろうって感じですよね。悪役令嬢の中でも、策を弄して陰湿に危害を加える系ではなく、感情のままに暴走する系なのかなと思います。なので、この時点でのヴィオラが「黒魔術を使って中身を入れ替わろう」などと思うとはどうも考えにくいかなと思うんですよね。つまり、黒幕がいるんじゃないかなと。
 そして、エルヴィスによるヴィオラの国外追放を決めるシーン。ここで気になったのは、本作でのエルヴィスの描かれ方なんですよね。立場はありますし、言動はアイリーンを大切にしている風なんですが。メインヒーローに据えるにはちょっと小物風だなぁと思いまして。こう、彼を本気でヒーローに仕立て上げたかったら、ヴィオラが魔術を放ったところに割り込むくらいの演出はすると思うんですよね。そしてキラキラ感が薄い。この描かれ方をしてるってことは、小物王子として当て馬になるか、黒幕側に近いかのどちらかだと推測しています。
 さて、断罪シーンに戻ってきてからの、絶体絶命からのハロルドの救出。そう、これですよね、ヒーローの演出と言ったら。そして、黒魔術に言及した時のエルヴィスの反応がちょっと引っかかったんですよ。先程まで殺そうとしていたヴィオラについて、「ヴィオラがそこまでの罪を背負っていると言うのか!」とちょっと庇ってるじゃないですか。もし仮にエルヴィスがヴィオラを殺したいほど毛嫌いしているなら「ヴィオラごときにそのような黒魔術が使えるか!」みたいな反応になると思うんですよね。そして、ハロルドの調査の申し出にだいぶ渋ってます。「だが、黒魔術などそう簡単に」「もし、証拠がなかったらどうするつもりだ」「どうして、そこまでするのだ」と。いや、これはだいぶエルヴィスが黒幕臭いなぁと思います。
 改めて全体を振り返ると、作者様は情報の出し方で読者真理を操ってくる人だなぁと思います。なので、私がエルヴィス怪しいって思ったのもミスリードかもしれません。ハロルドも怪しい風には描かれていますが、「悪魔の魔術師」あたりが露骨すぎるのと、救出シーンがある→ヒーロー枠→無実パターンかなと私は思いました。というのも含め、作者様はひっくり返してくるのかもしれませんが……いやぁ、面白かったですね。この先どうなるのか楽しみになりました。ありがとうございます。

4-02 最後の願いはその死の真実を。

 おおお、これは切ない第一話でしたね。二人の関係性がすごくよく分かるので、最後の無理難題のためにリリエッタが奔走するのも理解できますよね。彼女にはぜひ頑張って真相を突き止めてもらいたいところです。
 冒頭から刑を言い渡されるシーン。ここは緊迫した状況の中、様々な情報を混ぜ込んで提示してくれた場面だったと思います。王様が病に冒されていること、厳格な法ではなく人治国家として身分制度があること、凶器とされている剣はリリエッタしか抜くことができないこと。ロザリアの首が持ち去られていること。状況としては誰かの陰謀臭くはあるのですが、王は分かっているのかいないのか、それ以上の捜査を打ち切って死罪を申し渡すと。なかなかに追い詰められた状況ですよね。
 場面は変わって、いきなり牢獄から抜け出した後。ここのタイムスリップは上手いですよね、冗長になる部分をうまく削ったなぁと思います。さて、ここでのポイントは「対魔術師拘束錠が彼女の開発したものであった」ですよね。つまり、宮廷魔術師でありながらこういった道具類の開発も彼女の得意とするところなわけです。これからの捜査で役立ちそうですよね。そして、大教会の細部の描写もいいですよね。冷たい空気が外に流れ出す描写なんかから、自然とこの場所がどのようなものなのか察せられます。
 そして語られる、リリエッタの思い。ロザリアとの関係はあらすじで想像していたよりも濃いものでしたね。そして、「一緒にこの国を変える」と言っていたロザリアが殺される――ものすごく陰謀臭いですよね。王様も含めて、このあたりの動機に絡む構図がどうなっているのかとても気になります。リリエッタが罪を着せられたのも当然の流れだったのかも知れません。
 さて、ロザリアとの最後の会話が泣けますよね。最後のお願いは、自分を殺した犯人を見つけて真相を明らかにすること。冤罪で処刑をギリギリ免れたリリエッタにするお願いじゃないとは思いますが、まぁ彼女はもう残滓でしかありませんしね……それに、これがリリエッタのためを思ってしたお願いだという可能性もあります。このあたりは色々と可能性がありますが、それはまた続きの中で明らかになっていくのでしょう。そして、ロザリアへの主従を超えた友情のようなものが籠もった最後のセリフ。これがいいですよね。
 改めて振り返れば、リリエッタをとりまく状況はめちゃくちゃシビアですが、彼女をすごく応援したくなる第一話だったと思います。事件の真相がどんなものなのか、それをどんな風に明らかにしていくのか、先の気になるお話でした。めちゃくちゃ面白かったです。

4-03 バスケ部の篠原さんが「私を寝取って下さい」と迫ってくる!

 これはこんがらがってて面白かったです。なんか全員拗らせてる感じですね。大変だぁ。私はたぶんまだ関係性のすべてを受け止めきれていませんね。けっこう複雑な状況なんですが、明るく楽しいNTRラブコメ(?)になっていくのかなぁと思いました。
 冒頭からタイトル回収、インパクトのあるシーンをフックにして、女の子が絡まれているシーンからスタート。美月ちゃんはポニテのバスケ美少女と。なるほどなるほど……ナンパにしてもかなり強引な感じですよね。で、主人公がそれを救出すると。ただ、すでに美月ちゃんは主人公のことを知っていたようですね。このあたりは何かの伏線でしょうか。この東高のバスケ部たちも美月ちゃんの手のひらの上って可能性もありますからね。
 場面は変わって。ここでは脳破壊されている健二に笑っちゃいました。可哀想に。で、さらりとNTRの説明をしてと。このあたりは読者に前提となり知識を紹介する場面でしょうか。健二については今後のストーリーにあまり強く関わってくる気はしていない(どちらかというとNTRされる側の哀愁を感じます)というか、陽太はNTRを好んでいるもののさっぱりしているのでNTR主人公の適正は低めなんじゃないかなぁとも思ったり。そんな中で表れた美月ちゃんから放たれる「私を寝取って下さい!」のインパクトよ。いやぁ、面白く転がしてきましたよね。
 で、家に帰るとみどりがいる。これは、普通に矢印の向いている幼馴染だと思うんですが、どうやら彼氏がいると。BSSっぽいですが、これはあれですね。みどりは陽太の気を引くためにBSSをしかけたけど、創作として好むのと自分が体験してどう行動するかっていうのはやっぱり違いますからね。みどりは「BSSを体験させて気を引きたかった」なのか「NTRの寝取る側の男役になってほしかった」なのか、そのあたりが妥当でしょうか。盛大に失敗している感があった残念な子だなぁと思います。ダシに使われる先輩が可哀想でしたね。美月もそこに現れて、陽太を巡る構図がバンと提示されると。なるほどなぁ。
 さて、改めて全体を眺めてみると、陽太は基本的にカラッとしていてあまり深く拘らないっぽい感じですからね。NTR作品の楽しみ方も、なんとなく健二のように没入するのではなく、俯瞰してシチュエーションを楽しんでる風な空気感を感じます。なので彼のキャラ的には、現実で彼の身にNTRが……例えば、付き合った後に浮気なんかをされたりしても、「うわ、リアルNTRだ。悲しいなぁ……さようなら」ってなって終了するだけだと思うんですよね。そのあたり、陽太の嗜好としてのNTR好きと性格としてのNTR不適格さを、みどりと美月がどの程度まで理解して行動するか、これで今後の流れが変わってくるような気がします。これは楽しいラブコメになりそうだなぁと期待が持てました。

4-04 俺含めクラスメイト全員、終わってる乙女ゲーに転生ってどういう事ですか?

 これは楽しい第一話でしたね。ゲーム世界舞台のラブコメになっていくのかなぁと思いますが、メインはシェラートとエリカで、ビビリアがサブヒロインみたいな形になる感じでしょうか。わちゃわちゃしてて楽しそうな第一話でした。
 冒頭、まずはシェラートの置かれた状況から。いやぁ、なかなかハードな世界観のゲームですね。画面の向こうで行われているならいいですけど、自分がそこに入り込んでっていうのは勘弁してほしい感じの。冒頭からとても追い込まれててワクワクしてしまいました。ヤバげですよね。
 そして現れる悪役令嬢エリカ。流れるようにして、シェラートの正体を鑑定した彼女は、なんかもう色々とポロポロ情報を漏らしながら去っていきます。で、さらりと彼女が前世の友人であることが判明。さらには、シェラーとが主人公の身代わり転生だったことが分かって……これは逃げられないやつですね。冒頭で「危ない運命を辿る女」って言ってたのが自分自身になってるじゃないですか。いいぞぉ、拗れてきた。
 さらには、他のクラスメイトまで転生してきていることが分かると。キラキラネームは笑っちゃいますが、本来女性じゃないと成り立たないストーリーがいきなり破綻しているのはヤバいですね。どうやってカバーするんんだろう。まぁ、なりふり構わずどうにかするしかないんだとは思うんですけどね。ヤバい未来が待ってるというシチュエーションなので、読者は楽しくても当人たちはマジヤバですからね。
 さてさて、エリカ(菫)に引きずられる形で作戦会議へ。いやぁ、これは困っちゃいますよね。男相手にヤバい儀式をするわけにはいかないでしょうし(相手も嫌がるでしょうし)、ってことはビビリアちゃんをどうにか落とすしかない状況。友人はオタクの菫か、中二病ぼっちの子しかいないと。ほうほう? そうして、二人で行動し始めようとしたところに現れるビビリアちゃん(中二病ぼっち)……で、エリカもまた王家の血を持つと。なるほど、一気にラブコメの構図になりましたね。
 全体を通して、主人公の語り口が軽めなので、ヤバい状況でも重苦しくなく楽しめたのかなと思います。三人の関係を中心に、今後どうなっていくのか、楽しみになってきますね。とても面白い作品でした。

4-05 悪役令嬢に転生した私は失脚後にパイロットになる~えっ待って結局悪役じゃん!?~

 いやぁ、このような作品になるとは予想外でしたね。すごく面白かったです。しっかりと宇宙舞台の搭乗型ロボット戦闘を読ませてくれたなぁという感じで、非常に満足感がありました。素晴らしい第一話だったと思います。
 冒頭、このタイトルでいきなり宇宙から始まるとは思いませんでしたね。なるほど、銀河帝国と来ましたか。宇宙空間での人形機動兵器の戦いが始まりましたが、パイロットってこういうことだったんですね。追い詰められていくアルフレッド、緊迫感のあるシーンから始まりました。敵はめちゃくちゃ強いようです。いいですねぇ、臨場感があってすごくワクワクします。
 奥の手を見切られて、敵機の正体が明らかになる。銀河帝国軍の悪役令嬢、なんとロイヤルガードの機体のようですね。かろうじて距離をつめ、盛大に死亡フラグを立てながらほくそ笑むアルフレッド。さぁ、どうなるといったところで急速離脱するも、時すでに遅し。アルフレッドの操る黒うファントムは大打撃を受け、もうおしまいだ……というところで、最後に一矢報いて意識を失う。いやぁ、手に汗握る戦いでした。
 もう死んだんじゃないかなぁと思われたアルフレッドはどうにか生き延びていたようで、病院で目を覚まします。ほほう、後に彼が「英雄」と呼ばれるようになるわけですね。めちゃくちゃ良いじゃないですか、すごくワクワクするホットスタートでした。
 ここで視点は変わり、悪役令嬢側。こちらはタイトル通りの転生者で、どうやら原作をご存知の様子。アルフレッドのファンのようですね。この温度差は笑っちゃいます。構図としてはアムロとシャアを彷彿とさせる感じなんですけど、このめちゃくちゃクセのありそうな子が一気に持っていきましたね。見逃したというより、しっかりと救ってますし、これはぶっ飛んでますが嫌いになれない悪役令嬢です。面白いなぁ。
 さて、改めて振り返ってみると、宇宙舞台でのロボット機動戦をしっかりと見せていただいて、ワクワクさせてもらったなぁと思っています。こういうの好きですよ。なかなかシビアな世界みたいですが、悪役令嬢ちゃんのキャラで一気にコミカルになって、作品全体の楽しさがぐんと上がった気がします。とても面白かったです。

4-06 召喚されたら5秒でリリース~付き合ってやる義理はないので勝手にします~

 なるほど、これは面白い作品でしたね。魔王様のキャラがいい感じに人間を超越しているので、シチュエーションのわりに重くならず楽しんで読むことができました。また、魔王様のキャラが活きるように、現地人の普通さ具合と対比させる感じが出ていて、上手いなぁと思いました。
 冒頭、いきなり「捨てて来い」は強烈でしたね。殿下と呼ばれた青年が怒っている理由は、魔王を倒すための勇者が赤ん坊だから。なるほどなぁ。読者的には笑える状況ですが、殿下としては魔族に国が滅ぼされる瀬戸際ですからね。甘いことも言ってられないのでしょう。それにしたって、赤ん坊への扱いはちょっとヘイト感マシマシって感じでしたが、追い詰められてんだろうなぁ……という感じで読んでいると、赤ん坊が消えると。ほう。
 で、順当に赤ん坊視点に移っていくと……なんと中身は別世界の魔王。で、普通の人生を歩もうと思っていたら勇者召喚に巻き込まれ、記憶を持ったまま赤ん坊になってしまったと。可愛そうなんですけど、読者的にはすごい笑っちゃう状況ですよね。そりゃあ、この世界の事情に付き合ってやる義理はないので、彼の思考もすごく納得できます。強く生きてほしいですね。
 周辺の情報を収集する様子は、赤ん坊なのにさすが魔王様。そして、一気に青年の姿になった彼は、サクッと迷惑料を頂きに行くと。うん、さすが魔王様。このあたりサクサクいくのがいいですよね。そして、いざ出発というところで……なるほど、赤ん坊だから魔力を維持できないのか。赤ん坊転生の意味があんまりないかなぁと思っていたので、こんな風にデメリットがあるとホッとしますよね。いやぁ、魔王様の愉快な姿を楽しませていただきました。これは面白かったなぁ。
 改めて全体を通して、現地の人々の必死さと対比するように魔王様の超然として人間離れした思考や行動が際立っていて、サッパリと面白い読み味になっていたと思います。この舞台の中で主人公だけ飛び抜けている構図が面白いと思うんですよね。赤ん坊のデメリットに苦しみながら活躍していく魔王様の姿をもっと読みたいと思いました。面白かったです。

4-07 生殺与奪の権利は彼女にあります……故郷に帰らせてください

 いやぁ、面白かったですね。途中途中、いろいろと笑っちゃいました。ハランは奴隷商にやってきて奴隷を購入しただけなのに、なんだかもうこれから苦労する様子が透けて見えるようで、今後が楽しみになりましたね。
 冒頭、ハランが変な奴隷を見つけるシーンから始まります。なるほど、彼は退役軍人で、人手を欲して奴隷を買おうと考えた。そして、アルビノっぽい少女シータ。口枷をしているのは魔術師だからって設定のディテールに納得感があって良いですよね。あとタイトルもあいまって、脳内では洋風な禰豆子みたいな感じで再生されています。いやぁ、こういう細部に私はワクワクしちゃうんですよねぇ。あとこの時点で既に色々と訳ありっぽいと察せられます。
 案の定というべきか、ハランは彼女を購入するのを渋っている感じですが。店主との会話で、自主退職して帰って来ることが分かると。予言書が不幸を呼ぶ……あらすじにあった攻略本ですよね。掠れて読めない字があるってことは、あらすじの通り「攻略本だよ」ですかね。本だよは笑っちゃう。それでまぁ、怪しさ満点と。内容も絶対ってことは、メインストーリーは変えられないってことなのか、改変するたびに攻略本が更新されていくのか、どうなんでしょう。
 さて、購入を渋るハランに泣き落としのような形ですがりつく店主。そして、奴隷娘が鉄格子に頭を打ち付ける。このカオスな光景はめっちゃ笑いました。あー腹筋痛い。そして、念話によって会話をすると……ほほう、ここで生殺与奪の権をニギニギしちゃうのかぁ。他人にニギニギ握らせるな! それで、どうやら彼女はハラン推しみたいですね。ゲーム世界っぽいのでそりゃあ弱点も知っているでしょうし、これは強いですね。で、購入することになるわけですか。
 全体を通して、語り口がコミカルで面白かったですね。世界観の描き出し方もすごく良かったですし、色々と楽しいことになっていきそうです。ともするとダークファンタジーになりがちな奴隷事情も、彼女のキャラがぶっ飛んでいるので笑っちゃいましたし、この先の物語も読ませていただきたいなと思いました。めちゃくちゃ面白かったです。

4-08 ソメイヨシノで在りたくて

 面白かったですね。あらすじから想像していたより文章がコミカルで、いちいちぶっ飛んだ描写がされるので、良いなぁ好きだなぁと思いながら最後まで一気に読んでしまいました。これは楽しい第一話でしたね。
 冒頭の入りが良いですよね。大島桜っていう名前が本作の中心にあって、YouTuberで女優で何か痛ましいことがあったのだということを、すごい切り口から説明してきたなと驚きました。これはインパクトのある良い入り方ですね。一気に引き込まれました。そして、彼女の活躍や、幼馴染だったことなんかがスッと入ってきます。その一方で、主人公の置かれている状況、もう一人の幼馴染なんかの情報も、説明的にならずにエピソードで読ませてきますよね。これが上手い。いやもう、めちゃくちゃ上手いなぁと思って読んでいました。
 さて、そこに物語を動かすメッセージが来るわけですが、これも上手いんですよ。「ごめんなチャイコフスキー」ですよ。平凡にならずにこういう端々でフッと尖らせてくるのが本当に上手いです。そこからの「──だって、桜は半年前に自殺未遂を起こしたんだから」ですよ。この読者の転がし方は絶対上手い人じゃないですか。冒頭からここまで、あの手この手で読者を引き込んでいく手腕に私は震えてます。上手すぎる。これはいいなぁ。
 場面は変わって、バンドメンバーがまた尖ってますよね。なんでバントとして成立してんのかもはや謎。こういう端々の描写の尖らせ方が神がかってます。こう、テンションで吹っ切るタイプの強引さじゃなくて、端的に違和感を混ぜ込んで読者を引き込むタイプというか。こういう部分、私もぜひ真似していきたいところです。喫茶店の名前とか、マスターの細部とかもそうですよね。いちいち面白いなぁ。綾女との会話もめっちゃ楽しいですよね。読者を楽しませながら情報量を込められたらもう勝ちですよね。そして、桜の子どもが現れるという衝撃の最後。いやぁ、これはこの先の展開が楽しみになります。
 改めて振り返ると、やはり私はこの文章の端々でぶっ飛んでいく描写が好きですね。もしかするとSFの書き手の方なんじゃないかなぁとも思ってるんですが、どうだろうなぁ。こう、社会の捉え方も斜めから切り込んでいくじゃないですか。こういうところがホント面白くて、好きだなと思いました。とても面白かったです。

4-09 出戻り令嬢は年下王子様の夜の教育係になりました。〜実は処女だなんて言えません…!

 読みながらだいぶソワソワしてしまう第一話でしたね。これは面白かったですね。幸せになってくれと願わずにはいられない、そんな主人公だったなぁと思っています。
 ちょっとドキドキする冒頭。暗い廊下をゆっくりと歩く情景が、世界観を織り交ぜながら描写されていって、イルゼの心情が伝わってくるようなシーンから始まりましたね。逃げたいけど、逃げるわけにはいかない。けっこう可哀想な状況ですもんね……望まない仕事ですし。相手は粗暴だと噂になる王子様です。だけど、どうやら実際は少し違うようで……? いやぁ、これはイルゼと一緒に読者もそわそわしてしまうような、良い焦らせっぷりです。
 そして、過去を思い返すイルゼ。ファンタジックな世界観ですよね。四属性のどれかを持っているとされる世界。メタ的には無属性が無能な作品って見かけないわけですが、やはり世界の常識が違えば扱いも変わってしまいますからね。そして、なかなかに辛い境遇。父親の反応も、母親の反応も、元夫との顛末も……彼らが特別に悪人というわけではなく、きっとこの世界の常識がそうさせた部分もあるのかなと思うと、やるせない気持ちになりますよね。そして、第三王子の教育係をすることになったと。
 第三王子との初対面。ここはイルゼと一緒に手に汗握って読んでしまいました。いやぁ……この「帰れ」ってなかなか辛いですよね。もちろんホッとする要素でもあるんですよ。ここで「わぁいよろしくね」って王子だったら物語が即終了だとも思います。ただ、これまで親に失敗作として必要とされず、嫁ぎ先でも無価値と扱われ、第三王子にまで「必要ない」と言われてしまうのは、だいぶ悲しいだろうなぁという気持ちになってしまいまして。イルゼの境遇だとたぶん、人に必要とされたいって気持ちが強いと思うんですよね。もちろん物語の始まりですから、ここから彼女もまた救われていく話になるんだと思うんですが……もうね、可哀想で、早く報われてくれと願わずにはいられませんでした。切ないなぁ。
 さて、改めて素敵なお話だったと思います。イルゼの境遇はつらいなぁと思いますが、なんとか幸せなところに着地してほしいと願ってしまいますね。殿下とも打ち解けてほしいなぁ。面白かったです。

4-10 蛮族ヴァンパイア少女とオオカミ男の娘

 いやぁ、楽しかったですね。ツッコミどころ満載な二人の出会いの物語でしたが、とりあえず舎弟くんたちが可哀想なのと、献血被害者の行く末が気になります!笑 面白い作品を読ませていただきました。
 冒頭から、だいぶ愉快な感じで物語が始まりましたね。ヴァンピレスで蛮族な火煉。繁華街を歩いていくと、男たちに囲まれた少女を見つけると。そこに近づいていくと――え、火煉そんなデカいの??? なんかこう、世紀末にヒャッハーするモヒカン共を片付ける感じの絵面しか浮かんでこないんですけど、デカいのかぁ、そりゃあ蛮族だわ。自分で言って自分で突っ込む。そんな彼女のバチバチなバトルがけっこうカッコよくてこれは予想していなかった作品だぞとなりますよね。
 かと思えば、カツアゲは勘違い? ということで構図が一転しますが。囲まれていた少女はめちゃくちゃ可愛いと。が、声は少年のもの。どうやら火煉はマジの蛮族仕草をしてしまったようですね。めっちゃ笑えます。ヴァンパイアの生態も謎ですが、それ以上に火煉ちゃんの生態が謎すぎる。面白いぞ、この子。
 視点は変わって、オオカミ男の瑞牙。女装男子みたいですねぇ、なるほど。しかも借りたのは献血カードかぁ。でもオオカミ男の血を輸血すんのは普通に大事件だと思いますよ。えぇぇ……そして、火煉のことをカッコいいお姉さんだと思いつつ、殴られるのはごめんだと思っている。いやぁ、彼もまた変なやつだったわけですね。
 改めて全体を見ると、かなりぶっとんだボーイ・ミーツ・ガールだったなぁと思います。お互いに変なやつ過ぎる! これは面白かったですねぇ。設定のディテールも愉快な感じで、笑いながら楽しんで読ませていただきました。面白かったです。

4-11 悪役転生物語 ~どろぼう少年と人形使いのプリンセス~

 これは良いファンタジーでしたね。二人の感情に透明感があって、悲しい過去をお互いが救ってあげられるような、そんな作品になったら良いなぁと願ってしまいます。素敵な第一話だったと思います。
 冒頭はマリーの独房での独白から始まります。マリオネットの力はなかなか有用そうですよね。単純にモノを操るだけでなく、心を読んだり、糸を使った探査もできるとなると、活用の幅が一気に広がりそうです。そして、彼女の動機が復讐であり、そのために逃げずにここにいるのだと分かります。彼女の置かれた状況や能力、そして心情がグッと伝わってくるシーンだと思いました。そこに現れるマルコ。なるほど、盗賊の力というのも商人の家ではたしかに疎まれるでしょうね。
 さっそく脱出をする二人のバディ感がすごく出てて、面白いと思いました。盗賊の力と人形つかいの力。どちらもめちゃくちゃ有用そうです。緊張感がありながらも、お互いの能力を活用した行動。これは面白いですよね。そして、明かされていく前世のこと。なるほど、今回は力で叩き潰すような行動は避けたい、というわけですね。ふむふむ。
 二人はお互いに、過去について思うところがあるようですね。マリーは自分の前世を「罪」だと思っていて、今回は優しく生きたいと思っているけれど、状況は否応なく彼女を巻き込んでいく。一方のマルコは、誰かに必要とされたり、友達として一緒にいてくれる誰かを望んでいる。二人の間柄が今後少しずつ変化して、良いバディになってくれることを願うばかりです。
 さて、改めて全体を見返すと、シビアな世界なのですがどこか優しい雰囲気の流れるファンタジーだったなと思います。能力の組み合わせも面白いですし、二人それぞれの感情も伝わってきて、すごく素敵な作品でした。とても面白かったです。

4-12 いわく付け屋

 本作はアイデアが光っている作品で、そこからリアリティのある職業モノに落とし込む手腕もすごいなと思って読んでいました。とても面白かったです。先の展開もすごく気になりますね。
 冒頭、メールが届くシーンからですよね。このメールがなかなか興味をそそるんですよ。「いわくを付けて頂いた物件情報ができあがりました」ですから、これはどういうことだと思うじゃないですか。すると、呪い代行という話が始まる。そっちの方はなんか聞いたことありますよね。それで、そのながれでいわく付き物件の話を聞く。うんうん、いわく付き物件は聞いたことあります。そういう需要もあるんでしょうね。そして、彼は「いわく付け屋」を思いつく。いやぁ、ここが面白いですよね。普通だったらその二つを組み合わせようとは思わないですから。楽しいアイデアです。
 さて、それでも生活がカツカツな状況で、考え込んでいると。女性客が訪ねてくることになったと。これが本作の事件の始まりということですね、ふむふむ。さて、どんな依頼内容なのかと思えば……自分にいわくを付けてほしいと。あらすじにもあった通りではあるんですが、これは気になりますね。女性の真意は何なのか。先の展開を読みたくなる引きです。
 本作はとにかくコンセプトが面白い作品だと思っていまして、いわく付き物件→いわくを付ける仕事があるっていうアイデアから現実的にいてもおかしくないような業者の姿まで生々しく落とし込んでいるのが、本当にすごかったなと思っています。こういうアイデアを私も思いつきたいものですね。また、細部に至るまで拘って書き込んでいるなという印象で、とても面白かったなと思います。ありがとうございました。

4-13 星山蒼空の戦闘姫

 わー、面白かったです。戦闘姫の設定がいい感じに参加者同士の争いを誘発していて、これぞ異次元存在の思う壺なんだろうなぁと思って楽しく読んでしまいました。いやぁ、いいですねぇ。
 冒頭、異次元存在の会話がひたすら不気味ですよね。意見を交わし合っているものを、それを諌めている風のものも、みんな人間を「食料」としてしかみておらず、感情を「スパイス」としか思っていない。ちょっとSFチックな感じの設定ですかね。いや、ファンタジーにするかどうかは呼び方の問題だけな気はしますが。
 場面は変わって。顔の良い者が行方不明になる世界観で、消えた先は箱庭世界。様々な世界が区画分けされており、そこに少年がひとり立っている。勇士とミドリの会話はちょっと楽しいですよね。もちろん、冒頭のシーンがあるので心のどこかに引っかかりを覚えながら読み進めていくわけですが、転移ファンタジー風のなかなかに楽しいシーンになっています。ちょっとライトな雰囲気ですが……うん、かなり怪しいですよね。
 そして、ミドリが「主様」と呼ぶものが勇士たちを集めたのだと教えてもらうと。食事と言っても、殺しはしないと。しかしその説明の仕方がひたすらダークですよね。損傷を受けてもカウント十で回復するというのを、実際に潰して確認するっていうのはなかなかに悪意に満ちています。いやぁ、もうこの時点で「あ、ダークだわこれ」と確信を得ます。
 さて、戦闘姫についての話題も出てきましたね。他者を戦闘姫にするか、自分が戦闘姫になるか。そして、美しさを力に変えて戦うと。で、案内人であるスライムは他者を戦闘姫にすることをオススメしてくるわけです。なんて胡散臭いんだろうなぁ! そして、バイク、ロードレーサーとドタバタしている間に、戦闘姫が登場するわけですが。めちゃくちゃ多種多様ですね。これは面白いなぁ……そして、背後には戦闘姫のマスターたちと思しき男女が。絶体絶命! というところで引きですね。いやぁ、これはこの先が楽しみになります。
 改めて読み返すと、やっぱりSFに振り分けたくなる(のは私がSF好きだからかもしれません)なぁと思います。シーンを切り取ればアクションになりそうですし、能力次第ではファンタジーにもなるかもしれませんが、全体としてはそんな感じかなと。この先どうなるのか、すごく楽しみな第一話でした。

4-14 弾丸なんか、イヌも喰わない。

 すごい作品でしたね。インパクトが強烈で、すごく生々しかったので、背筋がゾクゾクしてしまいました。恐ろしかったです。
 冒頭、舞台となる台湾の情景がなかなかシビアな世界観として描き出されていますね。そして、通信しながら何かのお仕事を行う様子。あまり日の当たる職業ではない様子ですね。で、どうやら浴室内で死体の始末でもするような仕事らしいと。なるほど、いきなりダークな舞台と職業を見せてくれますね。特殊清掃……大変そうなだなぁ。
 さて、ホテルにやってきたアザミは、支配人と会話をしながらこれまたダークな世界観をこれでもかと見せつけてくれます。ディテールの書き込みがすごいので、妙なリアリティを感じますよね。さて、なかなか辛そうな過去を滲ませつつ、仕事が始まります。この仕事の描写がまた生々しくて、ヤバいわけですが。
 なんて思いながら読み進めていくと、どうにもキナ臭そうな感じですよね。まさかこのタイミングで違和感を突きつけるとは思っていませんでしたが……すると、拳銃が出てくる。なるほど、本作はミステリのような感じではなくて、もっと激しい作品なんだなぁと分かります。そして出てくる「シュイグイ様」というワード。これがきっと、本作の鍵になっていきそうな言葉になるんですよね。
 いやぁ、改めて読み返すと、生々しい描写がヤバいなぁと思いました。あまり映像として想像したくはないのですが、つい想像してしまうほどの作品だったと思います。社会の裏側のかなりヤバいところを覗いているような気持ちにさせられる作品でした。すごかったです、ありがとうございます。

4-15 倫欠探偵・真名板鯉子 ~めちゃくちゃ死ぬ殺人事件~

 いやぁ、笑った笑った。とても面白い作品でした。ミステリの皮を被っていますがぶっ飛んだコメディでしたね。面白かったです。
 冒頭からぶっ飛んだ世界観がヤバかったですよね。日本も世界もどんな事になっちゃってるんだろう。端的に大混乱に陥れられて、ついニヤニヤと笑ってしまいました。これはよい冒頭でしたね。
 鯉子さんのところに舞い込む連続怪死事件。さっそく倫理のない返答に笑えます。強制連行されるの笑えます。この勢いよ……! 桑津くんもななかなのクセ者っぽいですが、鯉子さんもおかしくて世界もおかしいので比較的常識人に見えますよね。『凶悪犯vs探偵デスゲーム事件』て。個人情報とか確かに、世の探偵なんかも普通にGETしてますが、法整備されていんのかぁ。いやぁ、世界観に張り倒された気分です。
 葬儀場にやってきても、まったく勢いの衰えない鯉子さん。「轢いちゃって」で大爆笑してしまいました。そうしながらも、なんだかんだちゃんと探偵ぶりも発揮しています。そうだ、これ探偵ものだったんでしたね。出てくるキャラにツッコミどころしかない。加木鉢さん……!
 さて、どうやら冤罪を受けているらしいクマ男が荒れているところで、倫理(暴力)ってルビの振り方……! いやぁ、桑津くんもしっかり変なやつだということが分かってひと安心……安心? うん、いやぁ、ツッコミんで笑いながら読んでしまいました。もう勢いが良いですよね、すごく面白かったです。
 全体をとおして、これはミステリの皮を被ったコメディ極フリの作品だったなぁと思います。舞台設定から登場人物から何から何まで過ぎましたね。あー笑った。面白かったです!

4-16 海に飛び込んだ元バ美肉人魚VTuberが本物人魚と歌をうたう話

 だめだぁ……私はもうこの作品でガン泣きしてしまいました。もうね、心の深いところをグッサリ刺されてしまいました……めちゃくちゃ良かったです。
 冒頭から、けっこう極まった状況が描かれていきますよね。顔に自信がない配信者が人魚のアバターを使っていての――顔バレ。これは純粋に可哀想になってしまいますね。アイドルに近いエンタメだとどうしても顔面重視になってしまう分野があると思うんですが、それをなんやかんや言われずに済むのがVの良いところでもあるじゃないですか……そして、自慢の声で人気を集め、ささやかながら自分への自信を持っていたところに訪れる、不運。こういう時、世間は冷たいですからね……読んでいて心が抉られるようでした。これはつらいでしょ。
 失意の中で生活をして、ふとした瞬間だったのでしょう。カップ麺をひっくり返すような、ともすると些細な出来事が、彼の感情を溢れさせるきっかけになった――ほんとうに、きっかけというのはちょっとした瞬間に訪れるものだなと思って、胸が苦しくなりました。
 そして、自宅近くの崖へ。さぁ、もう落ちてしまおうと……その時、人魚と出会う。この失意の縁で出会った彼女の姿がキラキラと輝いていて、ちょっとこの時点で私は泣きかけてました。ひんひん言ってました。そして海の中、奥深くへ。つらい思いを全て吐き出して――「貴方の歌声、とても綺麗だった」もうさぁ、ここでボロ泣きですよ、私は。こんなん泣いちゃう。そして、人魚と一緒に歌を歌うことになると。
 はぁ……好きですね、これは好き。もうさぁ、これまでいっぱい苦労してきましたから、人魚と一緒に歌を歌って楽しく暮らしてほしいものです。あらすじにある通り、自分の愛し方を知ってほしいなぁと強く思いました。涙腺直撃、最高でしたね……とても素敵な作品をありがとうございます。

4-17 死に戻りの悪役令嬢は拗らせ王子の護衛執事に溺愛される 〜ループの果てに〜

 なるほど、無限ループはつらいですからね。望んでいないのならなおさらといったところ。
 冒頭のシーンは、女神様にお願いして転生するシーンですね、彼女は悪役令嬢ナタリーが死なない未来を見てみたいと言った。なるほど、これをあえて最初に提示するということは、これが伏線になるのかもしれません。これが主人公の忘れている記憶なのか、はたまた主人公とは別の誰かの望みなのか。私としては、別人説を推しますかね。「私は生きたいの。もっともっと生きていたかった」だなんて、主人公は言わないと思うので。この作中の誰か、それこそイグニスという可能性もあるかもしれませんが、彼女がどこかから観測しているのではないかなと思っています。
 さて、侯爵令嬢に生まれ変わった主人公。前世ではほとんどまともにプレーしていなかった乙女ゲームの世界で、やり直しを始めると。ふむふむ、彼女の気持ちもちょっと分かりますよね。なんとなく肌に合わなくてやめたんだろうなぁ……こういう思考になって、ぜいたくするだけして死のうと思うのも、まぁ分かりますよね。そして、最初の死。なるほど、イグニスが何か鍵を握っていそうだと分かるわけですね。
 そして、二度目の転生に向け、YESしかない選択肢が強制的に選ばれるギミック。全く望んでいない転生をさせられるのは地獄ですからね。それでも彼女はナタリーとして生きることを強制されている以上は、どうにか生き延びなきゃいけない。個人的には、彼女の心にある本当の願いもこの繰り返しを通して叶えられると良いなと思っています。
 改めて全体を通してみて、まだまだ隠されている謎がありそうだなというのは強く感じましたかね。明かされていくごとに色々とひっくり返りそうな気がしていますし、何より主人公自身が「生きたい」と思えるような心の救済があるといいなと願っています。とても面白かったです!

4-18 箱入り魔王様の非合法なお見合い

 ニヤニヤしちゃいました。面白かったです。いやぁ魔王様、これ本当に結婚できるのかなぁ、うーん。けっこう大変そうな気はしていますかね。
 冒頭から、グレイギース様が女性たちを前にするシーン。20歳の女性が夫人で、幼女が娘、30超えの女性たちが使用人でしょうか。既婚未婚なんかも気になるところですよね。さて、彼女たちの目的は保護の様子。魔族の保護を受けて生きていこうという考えのようですが、果たして。そうこうしているうちに、魔王様は幼女との仲を深め、「結婚する」とまで言わせます。お見合い終了では? とりあえず、あんまり深く考えていない感じの幼女にほっこりしつつ、ここが魔王城であると分かると。分かってなかったんかい!
 さて、ロリコン呼ばわりされて結婚を逃した魔王様は、どうやら箱入り息子らしいですね。母親のことは「知らなくて良い」らしいですが、どういうことだろうなぁ。めっちゃヤバい存在なのか、逆に平凡すぎるって話なのか、今はまだなんとも言えないといったところでしょうか。ヤラパちゃんとは友達になったみたいなので、仲良くやってくれそうですね。
 本作はタイあら時点では突き抜けたドタバタコメディみたいなイメージを持っていたんですが、わりとしっかりしたファンタジーだったのかもしれません。読み違えてたらごめんなさい。まだ隠されている真実もありそうですし、どういう物語になっていくのか楽しみです。魔王様の日常を見せてくれる作品になるのかなぁ。面白かったです!

4-19 この世界に未来があるのなら

 面白かったです。イズミがカッコよくて痺れましたね。こう、スパイ映画を見ているようなドキドキ感がありましたよね。楽しませて頂きました。
 冒頭は、イズミとヤジマの仲よさげな会話から始まり、世界観を見せてくれました。ふむふむ、スキルのある世界かぁ。瞬間記憶とかすごく便利そうですし、武神なんてめちゃ強な気しかしませんが。お互い、仕事が忙しいんですかね、なかなか会える立場じゃないというのは。
 さて、青年と出会うシーン。瞬間記憶にないということは、この国に住んでいる人間ではないということ。この特定手段がいいですよね。瞬時に照合までできるとは、めちゃくちゃすごい能力じゃないですか。で、少年に問いに即答で断るのもカッコいい。芯のある男は、若造なんぞの誘いには乗らんのですよ。ですが、潜んでいた他の能力者によって動きを止められ、薬を飲まされてしまうと。なかなかハードな状況ですよね。
 夢の中で起きたことは、あらすじだと未来視の能力を植え付けられたらしいですが、果たしてどんな未来を示唆しているんでしょう。そして、彼の記憶能力が地味に有能ですよね。夢で見たことを忘れないで済むというのは、今後の展開において重要だと思います。敵も色々と厄介そうですからね。
 あらためて読んでみると、スキル主義のシビアな世界観のなかで生きるハードボイルドな男を見せていただいたなと思います。これからどんな事件に巻き込まれ、この世界はどうなっていくのか。ぜひとも楽しみにしたいと思います。面白かったです。

4-20 紅茶館の女給は探偵のまねごとを

 冒頭から良いですねぇ。砂時計の描写がさらっとオシャレで引き込まれます。情景の中で語られる単語から自然と世界観を想起できて、これは上手いなぁと思いました。これはあらすじから期待していた推理モノを楽しませてくれそうだぞ、ワクワクしてきます。また、館主の清志郎もさらっといいキャラしてるんですよね。世界観を壊さないレベルの尖らせ方がフックになっていて、いい味が出てるんですよ。こういうキャラの置き方いいなぁって思います。
 さて、事件についての話が自然と始まります。そして、事件の内容を理解したところで一度清志郎のワンクッションを挟みつつ。紅茶の描写がいいんですよね。ここで焦って確信に行かず、焦らしに焦らして、そこからズバリと語るこの流れ。この読者を手のひらで転がす感じ、最高じゃないでしょうか。え、こういうのを私も書けるようになりたいです。いいなぁ。
 そして、事件の内容についてズバズバと気持ちの良い推理を披露しているところに、「帝都機密秘匿警察」ですよ。はぁ、いい展開ですね。そして、相手の言葉の端々からも展開していく推理。美月の名探偵っぷりを見せてもらえそうで、すごく楽しみになる引きでした。
 全体を通して、世界観の描写の仕方が過不足なくおしゃれで、会話も面白く、推理も期待を超えてきて、もう何もかも上手すぎたなと思います。公募ですか? 連載ですか? 世に出るの楽しみにしてますから、よろしくおねがいしますね! めちゃくちゃ面白かったです!

4-21 女よ殴って世界を掴め

 なるほど、本作は私はちょっと主人公の心の動きを理解しきれないでいます。前半と後半の彼のキャラクター造形が繋がらず……いや、作品の課題ではなく、単純に私が掴めていないというだけの話なので、作者様の中は繋がっているのだと思います。ちょっと食べきれてないのは悔しいところではありますが。
 冒頭、アキラが男だと分かって驚きますよね。イメージしてたのと違うぞ。可愛いって言われるのが苦痛ってことは、見た目に反して中身は男だったのでしょう。そして、女子の玩具にされる日々。けっこうつらい思いをして育ってきたんだろうなと思うと、ボクシングを始めるのにも納得がいきます。なるほどなぁ。そして、プロとして大成は難しくても、男らしく過ごせるようになったじゃないですか。良かったなぁと思いますが。
 さて、そんなある日。片岡会長のもとで練習を積んできた彼が、会長の言葉で折れてしまうと。なんでだろう。これについては、私はまだ彼の感情を理解しきれていないんですが、普通に会長をボッコボコにして辞めますじゃダメなんですかね。別に尊敬している人から言われたわけではなく、クズだと分かっている酔っ払いの戯言だと思うんですが。少なくとも、才能のなさを理由に女子に転向するというのは、彼の生い立ちからすると一番やらない選択なんじゃないかなぁと思うんですが……ここの感情分析がなかなかうまくいかなくて、私としては読みながら苦しんだところではありますかね。
 そして女子との試合。男子と女子との違いは、格闘技においては特に、非常に大きなものだと思います。身体の作りが違いますからね。女子を打ち倒して興奮するのは……うーん、なんでだ。いやぁ、これは私の中にないキャラクター像なので、ちょっと解像度を上げきれないでいます。栄光なきチャンピオンベルト、と分かっていながら手を伸ばすのはひたすら惨めなんじゃないかなぁと思うんですが、違うかのなぁ。これは難しいぞ。
 本作はまさに、私の中からは生まれてこない物語を読ませていただいたなぁと思います。私もまだまだ人間について知らないことばかり、勉強不足だなぁと痛感しました。ありがとうございました。

4-22 魔導書に名前を付けようとしたら全力で拒否られた件について

 面白かったです、これは良かったですね。楽しく読めたので、世界観の説明もすんなり入ってきて、続きの物語も楽しみになりました。
 冒頭、すごく可哀想な晴人の様子が目に浮かぶようでした。ぜ、全力で拒否されてる。なんかもう、めちゃくちゃ可哀想。これまで色んな人との人間ドラマがあったんでしょうし、諦めたものやらなんやら色々とあったんでしょうが、ここに来ての全力拒否とは。強く生きてほしいですね。
 さてそこから、実は晴人が指定した名前は既に存在すると分かる。ホッ、そういうことか。ここで語られていく世界観がまた面白いですよね。そして、晴人が名付けようとした「あの言葉」とはどんな言葉だったのか。いやぁ、すごく気になるなぁと思います。
 そして、語られる過去。どうやら晴人は、かつて女の子に助けられていたらしく、その女の子の持つ魔導書が彼の望む名前をつけていると。そういうことですかぁ……それで、その言葉は? というのが分からないまま第一話は終了となりました。引っ張るなぁ、気になる!
 全体を通して、晴人が「可哀想映え」するキャラだなぁと思って感心していました。可哀想に落ち込んでいる姿が面白いっていうタイプの子ですよね。こういうキャラを転がして楽しい話を書いていくのって、私はまだ感覚が掴みきれていないんですよ。たぶんヘタレヒーローに近いものがあって、ここぞという時にカッコよく決めた時の爆発力が強いキャラだと思うんですが、私はなかなか。本作を読んで勉強させてもらおうと思います。とても面白かったです!

4-23 初恋と受験、どっちが大事なの?

 いやぁ、青春でした。これはナイス青春でしたね。すごく良かったです。ちょっとこの栄養素が足りていなかったので、美味しく食べさせていただきました。ありがとうございます。
 冒頭、学年の中心にいる天原さんはちょっと変わった人で、なんか感謝されるとめちゃくちゃ喜んでいる様子。おう、なんか変わった子だなぁと思って読んでいると、なるほど、温泉旅館の子で。おもてなしの心がめっちゃ強い子と。めっちゃくちゃ変じゃないですか。私はこういう変なキャラが大好物なので、この時点ですごく興味が湧いて前のめりになってしまいました。
 すると、今度は下地くんの背景が語られる。なるほど、背が低くて、それをからかわれてコンプレックスに思っていると。そこに、天原さんはおもてなしの心を発揮して視線を合わせてくれる。ほうほう、彼にとってはそれがすごく嬉しかったんでしょうね。そして――恋に落ちると。あぁ、これは彼女が学年の中心人物なのも分かるなぁ。変な子だけど。
 そして、いい感じにはなるものの、高3の10月といえば受験で一番いそがしい時ですからね。私も記憶ないくらい……で、一日だけほしいと。なるほどなるほど、これはとてもよい青春ラブコメ空気を感じますが、悩ましいところですよね。あぁぁ、これはいい、これは良い青春の悩みですよ。私はこういう成分を定期的に摂取することでなんとか生きてる人間です。はぁ、これは良かった。
 改めて全体を振り返ると、変わった女の子とコンプレックス男の子のキュンキュンな恋愛ものでしたね。漫画でも読みたいですし、アニメでも見たい。受験と初恋の葛藤の中で、良い未来を掴んでほしいものです。とても面白かったです。

4-24 【ハーレム系勇者のパーティーメンバー】なんて、こちらからお断りです!!

 めちゃくちゃどうでもいいことから呟くんですが、Xで本作のタイトルが並んでいるのを見ると、なんかすごいお断りされてる作品があると思ってドキっとしちゃうんですよね。こう【ハーレム系勇者のパーティーメンバー】までがタイトルに見えるじゃないですか。パッとみた時に、脳がそう判断しちゃって、なんかみんなからお断りされてると思って……!
 さて、それはさておき、すごく面白い作品でしたね。私はもう読みながら笑っちゃって、最初から最後までずっと楽しませていただきました。ありがとうございます。
 冒頭から、面白いシーンから始まりますよね。冒険者カードの返納……もうなんか、運転免許証の返納みたいなノリで笑いました。そりゃあ窓口の人も困惑しますよね。しかも、王都に五名しかいないA級冒険者って立場だったらなおさら。インパクトのあるシーンで引き込まれたなぁと思っています。
 そして、流れるように回想に入る。スムーズでいいです。魔王軍幹部を倒してお祭り騒ぎの王都。そして女の子ばかりの仲間たちですが……ほっほーん。追放された戦士と盗賊は、さてはニーナを狙ってたな。そして、魔術師のティアと神官のアイリスはニーナに気があるんだな。だんだんとこの作品のことが分かってきたぞ。読者に非常にわかりやすい形で勘違いの構図が作られていて、つい笑ってしまいました。これは楽しいですねぇ。
 さてさて、案の定というべきか、王都近郊の森へきた勇者一行。ティアとアイリスがニーナ推し? 知ってた。戦士と盗賊が惚れてた? 知ってた。勇者がニーナの気持ち全然分かってない? 知ってた。これは見事な答え合わせでしたね。爆速回収で笑っちゃいます。そして、ニーナが冒険者やめたって連絡がきて――ふふふ、これは荒れるぞぉ。
 全体を通して、ニーナを中心とした勘違いの構図作りと、それをとことん利用した展開で、楽しい第一話を読ませてもらったと思います。もう見るからに拗れに拗れていくことが分かっているので、腹を抱えて笑っちゃいまhした。いやぁ、とても面白い作品をありがとうございます。

4-25 花薫の姫神

 すごい作品だったなぁと、圧倒されました。これは面白かったですねぇ。かなり没入して読みふけってしまいました。
 冒頭、世界観にぶん殴られますよね。強い衝撃を受けました。イメージとしては、和風ファンタジー(古代)といったところでしょうか。そして、母親の腹を破って生まれてくる姫神。これを、オキマは大喜びで迎えると。なるほど……よくあるストーリーだと、不吉な生まれで迫害されて育つみたいなものはわりと見るんですが。父親が不吉な赤子を大喜びするっていうのは、なかなかに価値観を揺さぶってくるぶん殴り方ですよね。そして、違和感を補完するように世界観がすっと頭には言ってきますから、これは巧くてやられたなぁと思います。
 姫神のために神殿まで建てて、十六年。シシの能力を最大限活用して、恐怖によって国を治めている状況のようですね。皆から恐れられる中、連れてこられた青年は闘志を剥き出しにしている。「ほんに、ヒトは面白い。わらわとは大違いじゃ。羨ましいのう」この言葉が、切ないですよね。彼女が内心で何を思っているのか、それを考えてくれる人なんてどこにもいませんからね。一方のミホシは、命を救われて、身体をすべて元通りにされる。埋め込まれていた呪詛玉もない。といったところで、今後どうなるかといったところ。
 いやぁ、とても面白かったですね。とにかく世界観に引き込まれていって、圧倒されているうちに読み終わってしまいました。怪しくも悲しいシシの様子、能動的に動いてくれそうなミホシ、そして二人をとりまく舞台。このあとどうなるのか想像して、楽しくなりました。すごいものを読ませてもらったなぁと思います。ありがとうございました。

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