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第23回 #書き出し祭り 第三会場感想

 第三会場の感想になります。前評判でもかなりの激戦区だと聞いていますし、あらすじも尖ったのがいっぱいありましたからね。楽しんで読んでいきたいと思います。


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第二十三回 書き出し祭り 第三会場

タイトル・あらすじ感想

第三会場

第三会場 タイあら感想

本文感想

3-01 片ロール令嬢のドリルは伊達じゃない

 これはすごい作品ですねぇ。めっちゃ面白かったです。
 冒頭から汚らしい泣き声に爆笑し、ドリルの設定に爆笑しました。何より良いのは、登場人物がドリルの存在を茶化したりせず、その価値観を当然のものと思って真面目に物語が展開していくところですよね。彼女たちが真剣になればなるほど読者は笑ってしまうという構造になっていて、単純にコメディとして見ても非常に良い作りの作品だと思います。
 また、ぶっ飛んだ設定をフックにしていますが、骨格はミステリーですよね。姉が事件の犠牲になり、それぞれキャラの濃い三人の容疑者がいる。そして真相を追いながら、状況の巻き返しを図る妹。そういう構図を自然と理解させつつ、バチバチの会話で読者を引っ張っていく腕前が光ってました。これは先が楽しみになりますよね。
 そうしてコメディで掴み、ミステリーで引っ張りながらも、作品ジャンルとしては間口の広い異世界恋愛になるものと思います。これはいい感じにジャンルの良いところを混ぜてきましたよね。個人的にもこういうジャンルの混ぜ方をしたいなぁと思っているので、悔しいって思いながら勉強させていただこうと思っています。ここから先どうなっていくのかも気になるところですよね。面白かったです。 

3-02 宵闇に焦がれて

 これは二人には幸せになってほしいものですね。
 種の採取については、R-18にならないギリギリの描写だったかと思いますが、すごく辛かったですよね。おそらくは魔導士の趣味もあるんでしょうが、イスキオスにとっては非常に屈辱的で、しんどいものだったかと思います。また、セナの描写もすごく痛々しかったですね。明るく振る舞うのは暴力を振るわれないため。すごく可哀想になりました。二人の状況は、読んでいてどうにかしてあげたいと思わされます。
 世界観としては、魔法があって獣人がいてというファンタジーな世界ですが、かなりシビアな状況に置かれているようです。獣人を支配下に置こうとして、その能力に怯えて種を絶つ計画を立てる。人というのはどうしようもないものだなと思います。しかしそんな情勢ですので、二人が魔導士のところを無事に逃げ出したとしても、生きていくのはかなり大変なんだろうなとも想像できるんですよね。それに、魔導士の扱う魔法は強力そうです。
 あらすじにあった通り、この後はセナが例のところを目撃して、一緒に逃げようと計画を立てることになるんだと思っています。お互いに辛い境遇の二人が手を取り合って……どうか、最終的には優しいところに着地してくれる物語になるといいなぁと願ってしまいます。面白かったです。

3-03 ルチーナは真実を知りたい~育ての母は無実の罪で追放された悪役令嬢でした~

 わー、これは良い書き出しでしたね。ルチーナを応援したくなります。
 ルチーナが知っているスピラはきっと、色々あって強くなった後のスピラだったのかなと思います。婚約者がいるのに浮気をしている方が悪いのはやっぱり普通だと思いますが、伏魔殿の貴族社会では押し切られることもあるでしょう。失意の中で娼婦になり、でもそこから再起して、頂点を掴み取る。血はつながっていなくても娘を育てて……スピラなりに精一杯頑張った人生だったんじゃないかなと思います。良い人生だったかどうかは一概に言えるものでもないですが、死後、ルチーナの胸にスピラの姿がしっかりと残っているのは、誇っても良いことなんじゃないかと思います。
 ルチーナが護身術を身に着けていて、ヒーローポジションの青年を逆に助ける展開は笑ってしまいましたが、かっこよかったですよね。ルチーナは強くなったスピラの薫陶を受けて育ったので、これから貴族社会に突っ込んでいっても痛快な活躍をしてくれるんじゃないかなと思います。それと、ユークレイトの事情は第一話では出てきていませんが、そちらも色々とあるんだろうなと思います。けっこうシビアな社会だと思うので、大変なことが多そうですよね。
 ルチーナはスピラの濡れ衣を晴らせるのか。そして、そもそも娼婦の娘として育ったルチーナがどのようにしてユークレイトと行動を共にすることになるのか。身請けでもされるんですかね。どうか、気持ちの良い逆転劇を読ませてほしいなぁと期待しています。

3-04 猫になる。君の心まであと少し

 わー、そういう? ラストで盛大にひっくり返されましたね。
 冒頭から、青春の四角関係が良いですよね。ちなみに栞ちゃんのキャラはけっこう私の癖にぶっ刺さるので、既に脳内派閥ができつつあります。無口っ子ってとても良いですよね。感情を表に出さないけど、行動で気持ちが分かっちゃうみたいな感じの子がすごく好きです。それはそれとして、去り際に何を言おうとしていたのかが気になりますが。
 CAT-Lifeの設定にはなるほどと納得しました。てっきりVR空間などで猫になるのかなぁと思っていたのですが、現実空間の人工猫に入り込んで猫生活を楽しめるとは思いませんでしたね。すごくワクワクする設定で、これは私もほしいなぁと思ってしまいます。主人公が病弱だというのもあって、自由に猫として振る舞えるのはとても良いなと思いました。
 さて、そうして油断しているところに、ラストの展開ですよね。どうしてこうなったんでしょうか。可能性としては色々とありますよね……四角関係にある他の三人しか今のところ容疑者はいないかと思いますが。白猫の正体が誰なのか、そもそも白猫が犯人なのかも気になりますし、これは先の展開がとても楽しみになりました。面白かったです。

3-05 魔法少女コノハラズリ☆スプリングのいない街

 おー、そっちがコノハラズリだったのかぁ。どうなっちゃうんだろう。
 魔法少女ものといえば色々ありますが、本作はかなりシビアな世界観のようですね。魔法少女は市役所と連携しており、市町村を守っている。しかし大怪我をすることも多いのに、ある意味で「戦って当然」のような空気に晒されている感じですよね。いなくなったコノハラズリに対して、「そんな勝手な話あるかよ、一般市民が死んでんだぞ」とみんなが思っている。それは、とても残酷な状況だなぁと思っています。
 一方で、主人公の一般人としての意見もまぁあるものだと思います。自分たちは弱く、戦う力がない。これまで守ってくれていたのに姿を現さなくなった。ちゃんとしてくれよ……というのは、例えばですが現実社会での警察や自衛隊なんかに対する意見に近いものを感じます。公務員に対する不当なクレームにも近いかもしれませんね。その人も人間であり、心と人生があるということに対する不理解というものは、少なからずあるのだと思っています。良し悪しの話は別の議論として、そういう意見が出てくるのはそうだろうなと思ってしまいますね。とはいえ、魔法少女がちゃんと給与をもらって働いているのかは分からないんですけど。
 さて、主人公にとっては妹が死に、友人が魔法少女だったという状況。色々と情緒がぐちゃぐちゃになりそうですが……ここからの短い逃避行。あまり良い予感はしませんが、どうか少しでも救いがあると良いなと願っています。

3-06 ガラスの靴のディアマンティーノ

 仮面ライダーだ! いや、仮面ライダーではないんですが。
 構図がね、ヒーロー物の中でも私の好きな仮面ライダーのものに近くてちょっと興奮してしまいました。失礼。まず、主人公と敵の力の源が同じじゃないですか。共に「悪魔の力」をベースにしている。その上で、方やそれを自分の欲のためにリュセットを害するために使う者。方や妹を守るために使う者。これでディアマンティーノの形状がベルト&最後の技がキックだったら完全に仮面ライダーの構図なんですよね。めっちゃ好きです。
 ミュリエルの孤独さがまた良いんですよね。威圧感のある外見で人に怖がられるけど、実はめっちゃいい子で、妹を全力で守ろうとする。ヒロイックで安心感のあるキャラですよね。もちろん味方がいるヒーローものもそれはそれで楽しいんですが、本作は彼女が一人で(相棒はいますが)戦うところに魅力があると思うんですよ。それに、しっかりと初変身に向けた覚悟も見せてもらいましたし。変身もちゃんと戦うための肉体に変化しているのがポイントが高いです。
 二人のバディ感がいい感じに出ているのもめっちゃ好きで、まるで映司とアンクのような(伝わらなかったらゴメンナサイ)いろいろと言い合いをしながらも一緒に戦っていく二人になるのかなーとワクワクしました。面白かったです。

3-07 黒幕ムーブは降りれない~災厄の元凶と呼ばれた俺は今日も今日とて暗躍する~

 いやぁ、面白かったですね。
 パターンとしては流行りの(流行りの?)悪役転生ものにはなりますが、色々と捻ってあって独自性を打ち出していましたよね。黒幕が闇落ちする前の身体に入り込むんですが、脳内で会話をしながら、闇落ちの原因となった事件を起こさせないために暗躍していく。主人公の口調は関西弁で、ワードチョイスが愉快なタイプのキャラになっているのも面白いです。読んでいてちょいちょい笑っちゃいました。
 それと、作品としても挑戦的でしたよね。なにせ絵面が何も動いていないんですよ。脳内にいるアーテルと会話をしているだけの第一話だったんですが、それでも面白く読めるのは、若の語り口が面白いからというのが一番大きいと思います。楽しんでいるうちに、あっという間に第一話を読み終わってしまったなぁという印象です。
 また物語の謎として引っ張っていく要素は、原作のことをほぼ知らないということですよね。妹が死ぬという情報だけがあって、その詳細が何もわからない。ここの真実の持たせ方によっては大きくひっくり返すこともできる部分だと思うので、楽しみな部分だなぁと思っています。面白かったです。

3-08 昨日空が青かったから、ルカは世界を滅ぼすことにした。

 これはドキドキしましたね。設定も面白くて好きです。
 なるほど、LUCAは生物共通の祖先であり、この遺伝子を滅ぼす=世界の生き物を絶滅させる必要があるということ。一方でアンドロイドはLUCAの遺伝子を持たない。人間を攻撃できないロックさえ外せれば、思い通りの行動ができる。そして、ジーン博士に命令されたRUCAは全てのLUCAを排除するべく行動を開始すると……事情を何も知らない人からすると、RUCAは狂ってしまったようにも見える構図ですよね。さて、ここからどのように展開が転がっていくのかが恐ろしいところです。
 最初はドロシーが主人公なのかなと思って読んでいて、タイトルのルカ=LUCAだと思い、あらすじの意味を掴めないまま読み進めていましたが……追い詰められたドロシーがついに戦うかどうかという場面になって、RUCAが出てくると。ここで一気に状況がひっくり返って全てが繋がっていくのが、読んでいて気持ちよかったですよね。これは良い仕掛けをしたなぁと思います。思わずニヤリとしてしまいました。
 この後はどうなっていくんですかね。主人公がRUCAに移っていくのか、それともドロシー&ヘリオの視点からの物語が続いていくのか。どちらであっても面白そうですし、かなり大変な状況ですからね。ヘリオの中にLUCAの遺伝子があるのかどうか、みたいな部分も気になりますし。色々と妄想の広がる第一話だったと思います。

3-09 鳥籠令嬢は幽鬼と踊る

 これは怪しい話でしたねぇ、どうやって真相に迫っていくんでしょうか。
 ウィルはまぁ、けっこうな怪しさがありますよね。死んだ弟っぽく振る舞ってはいますが、それが本当かどうかも分からない。カルバス夫人が弟を突き落としたのだって、何がどうなってそんな事態になったのか。人には見えない幽鬼が見えていて、それに唆されたのか、はたまた弟が殺さなきゃいけない存在だったのか。主人公が指を噛みちぎったのは本当に彼女の意思だったのか。そういったあたりも色々と気になるなぁと思っています。
 家族も叔母さんも怪しいですよね。ウィルがそう思わせているのか、本当に怪しいのかはともかくとして、何かしら裏がありそうな気はしています。この真相を辿るのは並大抵のことでは無理だと思いますが、「大抵は部屋で読書をするか、絵を描いて過ごされていたわね。使用人を連れて、外に赴かれることもあったわ」とあるので。ポイントは、どんな本を読んでいたのか、どんな絵を描いていたのか、その時の使用人は誰か、外出してどこに行き何をしていたのか……あたりでしょうか。そのあたりから事実関係を整理していって、真相にたどり着けると良いんですけどね。さてさて。
 今のところ何かを確定させる情報は描かれていないと思うので、可能性はたくさんあるだろうなと思っています。真相にたどり着けるのか、たどり着けたとしても彼女の立場や能力で何かをどうにかできるのか、色々と気になる第一話だったと思います。

3-10 国内浄化ダーツの旅 ~放蕩第三王子一行の浄化ピクニック地は、必ず繁栄するらしい~

 いいですねぇ、人知れず世界を救う第三王子の旅。
 飄々とした王子の様子が印象的ですが、配下となる二人のキャラもすごくいいと思うんですよね。対等に話をしてくれるクライと、メイドのセイレイン。色々と言い合いながらも、三人が信頼し合っている様子が伝わってきて、読んでいてほっこりしました。なんだかんだ大変なこともありつつ、みんなでピクニックを楽しむんでしょうね。楽しそうで良いです。
 最初の敵は、水霊属にゴーレムが寄生したもの……というところで、なかなか奇抜な問題が出てきましたね。岩の多かった沼地を緑化する、つまりは環境を改変することで生物相が変わってきてしまうという問題。これをどのように解決して、また周辺地域の復興にまで繋げていくのかというあたりも楽しみなところです。単純に元の環境に戻せばいいって話でもなさそうですし、どんな落とし所を想定しているのか今のところ予想しきれなくて楽しみだなと思いました。
 地元の人はまだ登場していませんが、おそらくは交流もあったりするんだろうなぁと思います。統治する貴族との関係性なんかもあると思いますが、基本的には書き出しの雰囲気で緩やかに進んでいくんだろうなと思っています。王子のダーツ能力は特殊ですが、みんなそれぞれ何か特技があったりもするんですかね。そういったあたりも楽しみでした。

3-11 おとうとに会いに行く

 なるほどなぁ、ちょっと不思議なお話でしたね。
 激しい事件が起きるような話というよりも、ヒューマンドラマが中心になるのかなぁと思っています。少々気になっているのは、主人公と弟の関係ですよね。自分から結婚の件を伝えるのではなく、母親経由で伝言を残した……そのあたりに、兄弟の関係に何かまだ描写されていない塊が一つぽんとあるような気がしています。こうして弟を探す中で、そういう割り切れないものが何か解決する物語になるんじゃないかと想像しています。
 弟のキャラはちょっと独特ですよね。度の過ぎたお人好しで、あまりにも自分を顧みずに親切をしすぎる。彼に救われた人はきっと多いんだと思いますが、逆にそれが原因で上手くいかないこともあるのかなぁと思っています。兄弟の仲を訝しんだのもそのあたりですよね。物事の優先順位が人と違うということは、状況によってはトラブルになることもあると思いますから、過去にも何かあったんじゃないかなぁと思います。もしかすると母親も、そんな二人を見かねて主人公を派遣したのかもしれません。
 ミナさんはどうなんでしょうね。弟のことを好きなようですが、亡くなった彼氏のことも重くのしかかっていそうで。一緒に暮らしていて手を出されないことにも何か思うところがあったりするのでしょうか。いえ、だからこそ好きになったのかもしれないんですが。そういった心のわだかまりなんかも、解決していくと良いですよね。

3-12 9年12組Z番 上田莉奈さんの生態調査部。

 わー、面白かったです。どんな話になっていくのかワクワクしますね。
 尖っていたのは、主人公の性格ですよね。好奇心旺盛で、不思議な思考回路をしている。こういった謎を追うに相応しいキャラだと思っています。先生とのやりとりも愉快でしたし、語り口が常に面白くて気がついたらのめり込んでいました。
 学校の七不思議みたいな裏部活の話も突飛で面白かったですよね。一つ一つのネタがけっこう面白いなぁと思っていて、それだけでも何かストーリーを作れそうな気がしてきます。それをどんどんと叩きつけてからの、最後のハつ目が「9年12組Z番 上田莉奈さんの生態調査部」となるわけですね。これは気になります。一体何をする部活なんでしょうか。
 主人公の語りによると、これは「無意味で空虚な馬鹿げた話ではない」とあるので、何かしら意味のあるものなんだろうと思います。また扉を開けるというのが比喩的に使われている一方で、教室の扉を開けて鴉崎に話を聞きに行くという具体的な行動とも二重の意味を持たせているのがすごくいいんですよね。廊下で話している二人と合流して謎を追っていく話になるのか、それとも情報を聞くだけ聞いて一人で探っていくことになるのか。今後の展開が楽しみになる書き出しだったと思います。面白かったです。

3-13 紫紺の瞳は闇を視る 化け込み記者・長月千代子の大正あやかし事件録

 いいですねぇ、潜入取材による事件解決。面白いです。
 本作の良いのは、第一話でしっかりと最初のエピソードの解決までを見せてくれたことですよね。それによって、彼女の仕事内容であったり、どんな能力を持っていて、どんな活躍をするのか。そういったことが分かりやすく提示されていたことだと思います。エピソードとしても、可哀想な子どものために正義をなすという内容だったので、もう素直に応援できました。これは今後に期待の持てる第一話だったなと思います。
 世界観としては、大正に入って婦人運動なんかが活発化している中、それでもまだ古い価値観とせめぎ合っているあたりが舞台でしょうか。時代が移り変わる中、山神様からもらった目を使って、様々な事件に立ち向かっていく。やはり現代にしすぎると、あやかしなんかがどう関わってくるのかが難しくなってきますからね。時代背景としても自然で、すごくワクワクする舞台を用意されたなと思っています。
 橘刑事はどういうポジションになっていくんでしょうね。彼女のことを心配しつつもその活動を後押ししてくれる、ちょっと気持ちの矢印が彼女に向いている雰囲気を感じますが、男がいると聞いて唸っている。いい人っていうのがどういう意味合いで言われているのかはちょっと要審議ですが、重要な人物にはなってくるだろうなと思っています。

3-14 限界領主と化け物召使い

 いやぁ、びっくりしましたね。どんな作品になっていくんだろうなぁ。
 最初は主人公とメイドのいい感じの関係を見せてくれるのかなと思ってたんですよね。それで、限界状態の領地を内政的に復興させていく話かなぁと。メイドさんはなんかめっちゃ強いんだろうなと思っていましたが……そこから、まさかメイドさんに夫がいるとは思わなかったので、これはどうなるんだと思っていると。さらには、襲ってきなナニカをちゅるちゅるしちゃうとは思わないじゃないですか。
 ただ、なんか引きちぎられたはずの子どもたちは無傷の状態。だとすると、人外の何かしらが取り憑いていたのを引っ剥がして食べちゃったってことなんでしょうかね。そして、執事の方は食べる様子はみえませんでしたが、黒い液体のようなものがこびり付いていると。これは、色々と考察のしがいがあるなぁと思って。執事は何者か……化け物メイドと同種の存在なのか、それともメイドを従えているのか、もしくはメイドの奴隷のような扱いなのか。何かしらこう裏があるような気はするんですが、今のところは特定はできませんよね。
 さて、ここからどんな方向に物語が転がっていくのか、読めないですよね。想像していた展開が何度もひっくり返されているので、ここから先もびっくりの連続になるんでしょうか。面白かったです。

3-15 恐怖! 祠人間

 祠壊しは次のステージへ……!
 怖っ。こんな危ないこと中一にさせちゃあかんですよね。ただ、周囲の大人たちは子どもたちの様子を見て、色々と本気にしてないっていうことを重々承知の上でこのイベントを行っているように見えるのが恐ろしいところです。そもそもこんなことになるんなら、あらかじめかなり厳しく教えると思いますし、そもそも中一にこんなことをさせませんし……と考えていくと、大人たちはやっぱり分かってやっているんでしょうね。つまり、大人を頼ってこの事態を切り抜けるのは無理ってことになります。あぁ、改めてあらすじを読むと「大人たちが隠している秘密」ってありますね。これはもう怪しさしかないです。
 さて、祭りでは小坂がさっそくやらかしましたね。彼が見た武見はたぶん本人ではないと思うんですが、ここでは一体何が起きているんでしょうか。分からなくて謎です。いや、本人だった場合&黒幕に近い側ってパターンもありえるのか……なるほど。一方の堀辺ですが、この現れたのは祠人間なんでしょうかね。あまり有害そうには見えなかったので、少なくとも敵性の存在じゃないような気はするんですよ。さて、この祭りは一体何を意味しているのか。なんか碌でもないことが起きそうですよね。
 いやぁ、これは大変なお祭りが始まってしまいましたね。ここからどんな風に転がっていって、どう決着するのか。どんな真実が隠されているのか。いろいろと気になる書き出しでした。

3-16 アトロポスの鋏

 ほっほう。これは面白いですね。青春の延長線上……大学生の戯言に過ぎなかった会話が、十年越しに事件になると。
 穿った見方をするなら、後半の「僕」が建築家、蒐集家、魔女の誰であるかは不明なんですよね。「僕が設計した別荘」あたりがミスリードの可能性があって、叙述トリックを仕掛けてるかもしれないなーとちょっと疑ったりもしています。ただ、現状では彼らの人を入れ替えたところで推理には大した影響がないので、一旦は素直に建築家と読んでおきましょうか。おそらく続きの中で明かされていく四人の過去の中ので、色々と情報が錯綜するんじゃないかなーと思ってます。あと、サイナが「僕」を殺そうとしていた線も実はちょっとあるかなと思ったりしてます。基本的に四人は同類ですし。
 単純な探偵ものというよりも、どちらかというとサイコパスの心理戦のような形になっていくのかなぁと予想しています。誰が一番素晴らしい完全犯罪をやり遂げられるか、みたいな駆け引きがあるような気がしていて。だからこそ、北海道の事件を「僕」は「挑戦状」と受け取ったんじゃないかなぁというのがざっくりと考えていたことになります。
 推理小説の中ではある意味で「お約束だから無視してね」とされている部分を本作は現実に落とし込んだ上で、探偵側じゃなく犯人側がいかにうまくやりおおせるかみたいな部分を読ませてもらえるような気がしています。できれば一冊まるまる紙で読みたい作品ですね。ありがとうございました。

3-17 雨の中、路地裏書店、恋の頁

 素敵な恋愛物語の冒頭でした。可愛いお話でしたね。
 好奇心はあるけど臆病で、等身大の女の子って感じな主人公。そして、ちょっとミステリアスで物腰柔らかなお兄さん。雨の日だけ空いている不思議な書店で、ゆっくりゆっくりと交流する二人の優しい会話がすごく良かったです。静かな空間で時おり心がぴょんと跳ねるような、出会いの一ページでしたね。読んでいて心が浄化されるようでした。すごく良いです。
 話の展開がスローテンポで、だからこそ良いというか。本作は急いで展開を転がしていくような作品ではないのだと思っています。読み口が退屈にならないのは、主人公のワードチョイスが可愛いくて面白いのと、二人の会話が心地よいからだろうなと思っていまして。もちろん文章としての読みやすさもありますし、静かに自然と引き込まれるような作品だったなぁと思っています。絶対うまいひとのやつですよね。
 私もこういう素敵な交流を書いてみたいなぁとちょっと憧れます。二人の恋がゆっくりゆっくり進んでいくのを、じれじれと見守りたくなるような作品でした。とても良かったです。

3-18 「推ッ忍ッッ!!!」萌えよッ!キュン死郎伝説ッッ!!

 一つだけ言わせてもらうとなぁ、ライブを見ろよ……!
 いやぁ、勢いで笑っちゃったじゃないですか! これは愉快な作品でしたね! アイドルライブについてはエアプ勢なのであんまり良く分かってないんですけど、さすがに閃光を放ったりペンラ降らせるのはめっちゃ推しの邪魔になってると思うんですよね! 閃光に四百万かけるくらいならグッズ買ってやりなよ! あと二人が目立ちすぎて推しが空気みたいになってるから、全然推せてないと思うんですけど! なんという世界観なんだ!
 他の作品に言及するのは無粋ですけど! 一個前の作品がすごくスローテンポでしっとりと心に響く作品だったじゃないですか! 温度差! 温度差が酷いんですよ! たぶん読者の何人か風邪を引てますよ! ずっとツッコミどころ満載でついつい笑っちゃったじゃないですか!
 いやぁ、「細けえことはいいんだよ、考えるな感じろ」って勢いだけで突っ切っていくの、愉快すぎましたね……! ゴリ虫さんの正体も気になるところです! 誰だこれ書いたの!

3-19 【速報】十年後の世界から来た俺が、何故か「美少女」で「勇者」だった件!

 勇者が騙されやすすぎてめっちゃ笑っちゃいました。
 いやもう、緑茶のくだりで気がつけよーと思っちゃいますけどね。陽太はオタク趣味っぽいですけど、とにかく明るくて憎めない奴だなぁと思います。話していると気が抜ける感じがするんですけど、案外こういうのが世界平和のために重要だからこそ勇者になったんですかね。ろくに疑わずに全力で騙されてますけど。ろうはならんやろぉ→なっとるやろがい! みたいな感じで何度も腹を抱えて笑っちゃいました。隠しフォルダの名前は未来の自分が教えちゃったりしたんでしょうかね。
 聖女についてはどうなるのかなぁ、今のところちょっと勇者という肩書きに対して過大に期待しすぎているというか、夢を見ている感じですが。出会い方が違えば関係も変わってくるんでしょうけど、あらすじの感じだとだいぶ拗れそうですよね。それに、魔王ちゃんの動機の細部がまだ見えてないんですよ。それこそ、シリアスに展開するなら陽太を殺してしまうのが手っ取り早いと思うんですが、そうせずに一緒に異世界に向かって何かしらやりたいことがあるってことなんだと思います。
 今後どうなっていくのか……騙されている陽太ですが、なんというかこう、それで不幸になりそうな気が不思議としないんですよね。なんやかんやと上手い着地点に落ち着いてしまいそうな雰囲気を持ってるなぁと思っていまして。最後まで笑って読ませていただきました。楽しかったです。

3-20 雄弁な子どもたちは沈黙する

 なるほど、あらすじから想像していた感じではなかったですが、面白かったです。何があったんだろう。
 ちょっと考えてみると。あらすじには「母・瞳」とあるのに、森愛は彼女を名前で呼んでいて「榊瞳」と名字が違うことから、何かしらの複雑な家庭環境なのかなと思ってます。ありそうなのは、両親が離婚していて父親と二人暮らし瞳を母と呼んでいなかったとかでしょうか。それで、たぶん被害者を殺したのは愛だと思うんですが、瞳はそれを庇って罪を被り死んだのかなと思っています。父親が電話で「人を殺した」と言っているのも、自分が罪を被ろうとしていたのかなぁと。被害者の男がどういう者だったのかは情報がないのでわかりませんが、ロクな事情じゃない気はしています。
 さて、真についてですが。私もわりとのんびり成長してきたタイプなのでけっこう共感する部分はあるんですが、息子である哲の死に直面してしまうと。死の状況がなかなか不可解ですよね。そして現れる成長した森愛の口から語られる不思議な言葉。ここから、どのように転がっていくのか……彼女の口から何かしらの真実が語られていくのでしょうか。
 親子とはいえ人間と人間ですから、上手くいく時ばかりではないですよね。まして、親が子にどこまで干渉するか、何を自由にして何を与えるのか、そういった難しさは常にあると思うんですよね。本作はそんなことを色々と考えさせられそうな話かなと思いました。ありがとうございます。

3-21 となりのサキュバス~JKでもオトナの小説で世界を取りたいです!~

 面白い二人組でしたね。テンション高くて楽しそうです。
 二人ともすごく残念な感じなのがいいんですよね。とりあえずJKのエロ小説には爆笑してしまいました。知らないからこそ夢があるっていうのはまぁそれはそれとして、混乱してパスタを茹でるの強すぎる。エロを書こうっていう気概が見えないのはそれはそうですけどね。一方のメジェド様の方は、こっちも残念そうですよね……お化けだし。二人の展開する気の抜けた会話がすごく楽しかったです。
 ひとまずはJKのエロ知識を増やしていくところから始めるんでしょうか。なんというか、思春期男子を超える欲求を滾らさているみたいなんでね、どんなことになるのか恐ろしくもあり、楽しみでもあります。あと小説書きとしてのスキルも磨いていくことになるんでしょうかね。あのジャンルはそっちの語彙力も大事になってくると思うので、実はけっこう勉強が必要になるというか、気がついたら勉強しってるくらい色々と読み込んだ人が書くんだろうなと思ってるんですけどね。
 何にせよ、世界を取るのは大変だと思います。残念な二人が成功する姿をあまり想像できていませんが、そうやってわちゃわちゃする過程が楽しみになる作品でした。面白かったです。

3-22 声の波間をおよいでく

 いやぁ、本当に大変だと思うんですよね。
 男の身なので共感することはできないんですが、本当に大変そうだなぁと思います。しかも作中の描写から想像すると、激重みたいですからね。動いていた方が楽とかは、もう「あ、そうなんだ」と想像することしかできないですが……これは辛いだろうなぁと。大変そう。
 そんな中、なんだか素敵な出会いがあって良かったですよね。学校を休んで散歩をして、たどり着いたのは音楽バーみたいなところでしょうか。ドラムと歌という組み合わせで美空ひばりさんを歌うというのは、あまり聞かないパターンですよね。不思議な光景ですが、やはり音楽で人と繋がるというのは楽しいことだとも思います。お兄さんも優しい人みたいですし、この繋がりから楽しい未来に繋がっていくと素敵ですよね。
 ここから先は、またお店に行ってお兄さん以外にも色々な人と関わりを持ったりするのでしょうか。ドラムだけじゃなくて他の楽器も店においてあるみたいなので、いい感じの交流が生まれて楽しい生活を送れるようになるといいですよね。すごく素敵な作品だったなと思います。

3-23 ユーフォリアに感傷を

 不思議で優しい作品でしたね、切ない気持ちになりました。
 最初に光に包まれた時は、猫に触れようとしたところにトラックでも突っ込んできたのかと思ってちょっとドキッとしてしまいました。その後の世界が天国みたいな雰囲気だったのもあったので。そして、不思議な少女との出会い……十字架を持っているところからすると、キリスト教系の子でしょうか。白猫との別れも、すごく優しい雰囲気で胸が温まりました。
 そうして現実世界に帰ってきたので、ちょっとだけホッとしました。主人公が死んだって展開ではなかったみたいですね。そして、少女とこちらでも話をすることになる。なるほど、成仏できない魂が現世に留まるための世界か……不思議な設定ですね。おそらくは、恨みを持って留まっている魂は恐ろしい世界を持っているんでしょうし。今回の白猫は優しい世界でしたが、そうとばかりはいかないんでしょうね。
 そして、この世界を見られるのは特殊な才能だという。少女はきっと宗教的に「祓う」力を身に着けているけれど、主人公はそうではないですから。力ではなく説得によって成仏させられるかもしれない、ということなんでしょうか。大変そうですが、切なくも優しい物語になるんじゃないかと思っています。

3-24 伝説の戦士、再就職する

 なるほどなぁ、だいぶ落ちぶれちゃってる感じですね。
 技術の進歩についていけないのは、もうある程度は仕方ないですよね。歳を重ねるごとに、新しいものを試すことには抵抗感を覚えるものだと思います。ただスマボは聞く限り便利そうなので、爆発的に広がったのも分かりますし。若者はそういった新しいものが既に身の回りにある状態で育ってきているので、適応できない世代を「老害」と呼ぶなんてことは、現実世界でもありふれています。過去の功績を考えればなんとも切ないものですが、ある程度は割り切ってやっていかないといけないんでしょう。
 さて、そんなスーヴェンを教員として雇うと。ただ、彼の世代の最善がスマボ世代の最善と同じとは限らないのが厄介なところでしょうね。活かせる知識もあれば古くなってしまった知識もあり、もしかすると彼はこれからそういったものとも直面しながら生きていかないといけないのかもしれません。いつまでも最新技術から目を背けていれば、いずれ教員としても上手くいかなくなってしまうと思うので。
 リエッタは救いの女神になるんですかね。彼女はスマボも使いこなしているようですし、冒険者学校を運営しているということは知識も更新していっていることでしょう。やさぐれているスーヴェンも彼女の言葉だったら聞くような気がしますし、良い未来が待っていると良いなと思います。

3-25 鬼崎君と見えちゃう私

 なるほど、これはローファンタジー&青春でしたね。
 ホラーという感じがあまりしなかったのは、軸にあるのがボーイミーツガールだからかもしれません。鬼崎君は怖い人ではないようですし、その強さもけっこう人間離れしているので、ファンタジー色が強いのかなという感覚を持っています。それと、二人は心に抱えているものが似ていますからね。人にはない力を持っているが故の孤独。それでも人との関わりを求めて、お互いに歩み寄ろうとしている。どちらかというと鬼周りの設定よりもこういった心の交流が本作の主軸なんだろうなと読んでいました。
 あらすじによるとヤバい事件に巻き込まれるとのことですが、彼女もなにか身を守る方法を身に着けていったりするんでしょうかね。設定としてはけっこう色々な広がりを持たせられる気がするので……それこそ、鬼狩りの一族がいるくらいですから、陰陽師系の集団がいてもおかしくないですしね。力のない女子高生でも戦えるとすると、何かこう式神めいたものと仲良くなれると安心かもしれません。
 この後はどうなっていくんでしょうね。鬼崎君と一緒に行動するようになって、周囲の友人たちとの関係性もちょっと心配ですし、鬼に襲われたりなんてことも多くなるのかも知れません。大きな事件を乗り越えたりして、そういったことを一つ一つ片付けながら関係を深めていくのかなと想像しています。

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