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第23回 #書き出し祭り 第四会場感想

 さて、書き出し祭りも残すところあとわずか。 #第四会場 の感想に入っていきたいと思います。最後まで楽しく読んでいきたいと思います。


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第二十三回 書き出し祭り 第四会場

タイトル・あらすじ感想

第四会場

第四会場 タイあら感想

本文感想

4-01 イーストランドの終焉

 第四会場、初っ端から痺れる作品でしたね。
 ジャンルとしてはSFアクションとかになるんでしょうか、未来世界を舞台に緊迫した空気の中で行われる命のやりとり。攻防や駆け引きにドキドキさせられました。ハードボイルドな空気で終始進行していき、気がつけばぐんぐん引き込まれるような作品だったと思います。これは面白かったですね。私にはどうしても書けない雰囲気の作品だと思っていまして、色々と勉強させていただきたいと思いました。
 姉チュンファはどんな感じなんでしょうね。行方不明ってことですが、まだ可能性としては広すぎて推測も難しい状態かなとは思っています。もちろんまだ第一話ですし、色々と情報が出てくるのはこれからなんだと思いますが。世界観としてかなり切羽詰まっている感じがするので、裏切りなんかも多そうですし、ずっとソワソワしたまま物語が展開していくのかなぁと思います。
 キャラのネーミングは中華風ですが、このあたりもなにか展開に利いてくるのかなぁと薄ぼんやり想像しています。ダークでシビアな舞台ですので、どう転がっていくのかドキドキしますね。

4-02 追放勇者の魔王軍復活作戦

 いいですねぇ、勇者の闇落ち復讐譚。
 闇落ちと言いますが、これは完全に王国側の失策ですよね。力のあるやつを冷遇してやり返されるなんて。それに、勇者側の立ち上がる理由もすごく納得いくものでした。かつての仲間が自殺させられたのは大きい出来事だったんだと思います。いやほんと、これは勇者側を応援したくなる事情だったなぁと思います。ゴブリンたちも可愛いですしね。
 かつての仲間の中で、聖女は立ちはだかることになるんでしょうか。でも、戦士が自殺させられたのは聖女としても思うところはあるんじゃないかと思うんですよね。それと、飲んだくれのタンクはどうなるだろうなぁ。彼も冷遇されているメンバーの一人って感じですが、まだキャラが読めないですからね。この先の展開を想像すると楽しみになりました。
 アイシャとレーヴェはこれでお尋ね者になりましたが、かつて勇者として魔王を討った二人には安心感がありますよね。それに国がまた勇者を集めようとしても、今回の経緯が知らしめられれば勇者に手を挙げる人もあまり出てこなそうな気はします。魔王軍の残党を強化して、ぜひとも腐った王国をひっくり返してほしいなと思いました。

4-03 喫茶『古灯』は深夜零時から

 なるほど、そういう流れであらすじに。これは驚きましたね。
 あらすじを読んだ時の印象としては、ホラーかなぁと思ってたんですよ。それもけっこう猟奇的な感じの。お客さんに人肉をお出ししちゃう系のやつですね。ですが、最初から「幽霊がやって来る喫茶店」ということで、おおっと思って。これは想像したやつじゃないぞと思いましてね。
 ひまりちゃんの野食設定はけっこう面白いですよね。私も大学時代どんぐりクッキーとか作ってた人なんで、わりとこういうの好きなんですよ。といっても、カミキリムシの幼虫を食べたことはありませんが。この尖った趣味に邁進している女の子っていうのがもう、彼女の面白さを強く感じさせてくれると思います。
 それで、月橋くんとの会話でちょっと青春味を感じてニヤニヤしちゃうじゃないですか。普通の人とはちょっと違う二人が、ひょんなことから知り合って仲良くなっていくという感じで。それで楽しくなって、この時点であらすじのこととかすっかり頭から抜けているところに……まさかのひまりちゃん死亡というね。いや、そんな飲んだら死ぬコーヒーなんかなんで出したんじゃいって思いますけど。そうくるのは予想外でしたね。あらすじの肉は彼女の肉だとは思わないじゃないですか。
 これで死んでおしまいとはならないと思いますが、お父さんの件も含めてどうなるのか。楽しみになる第一話でした。

4-04 魔女と妖狐の善行道中

 いやぁ、面白かったですねぇ。
 お兄ちゃんの話からすると、舞台としては現代なんだと思います。ただ、隠れ潜むようにして妖狐や魔女なんかが暮らしていたりする。たぶん他の人外な存在も暮らしていたりしますよね。結界を作って暮らしていると。なんとなくハリー・ポッター的なローファン世界を想像してました。たしかに今は、戸籍なんかの制度がしっかりしているので、妖狐が人間社会に溶け込むにはちょっと生きづらい場所かもしれませんね。お兄ちゃんが山に帰りたくなる気持ちも分かります。その一方で、醤油ラーメンの味を覚えてしまったので、また外に出たくならないかなぁというのは心配になりますよね。
 一方の魔女については、けっこうサイコパス味が滲んでて愉快でしたよね。マッチポンプするのは善行じゃないっていうのをいつか分かってくれるといいんですが、理解してもらうのはなかなかむずかしそうです。そして、コンがすっとぼけているので二人の思考がまったく正しい方向にいかないというのも面白いところ。ツッコミ不在で暴走しまくりボケ倒す系の漫才でも見ているかのようで面白かったです。
 二人の珍道中はどんなことになるんでしょうね。けっこうシビアなテーマも扱うのかなぁという印象を持っているので、この二人が人間社会を斜め方向からバッサバッサと切り捨てる話になるといいなぁと思います。

4-05 追放された令嬢は、川流れ公爵と出会う

 いやぁ、大爆笑でした。めっちゃ面白かったです。
 冒頭はあらすじの通り、追放された元貴族令嬢のちょっと切なくも幸せな半生が綴られているのかなと読んでいました。身分の上下ではなく、心の安寧っていうのは大切ですよね。決して楽ではない暮らしですが、今はきっと楽しくやっているんでしょう。世間知らずのお嬢様だったところから少しずつできることを増やしていって、色々と任されるようにもなったんだなぁと思います。心が温まりますよね。
 そこからの、流れてくる男性にめっちゃ笑いました。お腹痛い。なんでいかだに正座して桃ひっつけて流れてくるのか意味が分かりませんよね。そのまま通り過ぎていったのでもう声出して笑っちゃいましたし、その理由も「どんぶらこの検証」というどうしようもないものでおかしくて仕方ありませんでした。そして、レナの内心とは裏腹に頑張って庶民言葉を使っているのも笑いましたし、アンからたびたびツッコミ入れられてた過去がいちいち面白くてヒーヒー言っちゃいました。面白すぎる。
 名乗りを聞いてピンとくるってことは、アルさんはけっこう有名だったりするんですかね。こう、奇行的な意味で。こんなん常にやらかしてたら、そりゃあ庶民の間でも有名になると思います。いやぁ……二人とも世間からかなりズレてる様子ですからね。どんなことになっていくのか楽しみで仕方ありません。同僚のアンにはツッコミとして入ってきてもらいたいですね。

4-06 「誰でもいいからエッチしたい!」

 なるほど、これはエッチできないパターンの物語ですね。うんうん。
 これは延々とチャンスを逃し続けて、要所要所でタイトルを叫ぶっていう物語になっていくんじゃないかなぁと予想しています。タイトルにパンチが効いてますよね。でもきっと、誰でもいいからって言っている限りは成功しないんじゃないかなぁっていうのが、現実としても創作世界としてもわりと真理に近いよなぁって気がしています。
 物語のパターンとしては、自分の欲求や理想だけを追い求めて他者の感情を顧みない者が失敗するって話はよくあると思います。これは別に思春期男子の性的欲求に限った話じゃないんですが……例えば自分の頭の中にある理想の子どもの姿に現実の子どもを当てはめようとして失敗するとか、相手の収入だけを見て婚活する女子だとか、たぶんこの話もそういったテーマになってくるんじゃないかなぁと思うんですよね。なので、彼が本当にそれを手に入れられるのは、「エッチなんかどうでもいいんじゃい!」となった後のことなんじゃないかなと思うので。それはやっぱり、物語の終盤にくるんじゃないかなと思います。
 一話の末尾ではさっそくチャンスがやってきますが、やっぱりこの感じだと無理そうですよね。ドタバタな青春コメディになりそうです。

4-07 それいけ聖犬フェンリル!〜うちのしず江(14)はシーズーです〜

 しっずっ江! しっずっ江!
 いやぁ、面白かったですね。とんでもない状況に笑っちゃいました。とりあえず、女神が不審者すぎるのと、明らかに選択を間違っててツッコミどころ満載でしたね。冒頭の警察に電話するとことかめっちゃ笑っちゃいました。しかもこれ、一度警察に繋がって「変なコスプレ女が」みたいな音声もたぶん残ってますよね。下手するとちょっとした事件になってますよ……! というのも想像して笑っちゃってました。
 それと、おそらく落ちる時間は色々と読者に情報提示するチャンスだったんですが、それをあえて棒に振ってひたすらしず江と落ちていく姿に腹を抱えてました。面白すぎる。そしてやってきた異世界。どんな感じかなと思ったんですが、やっぱりしず江のスペックには異世界人も困惑だったようで。これは完全に女神のミスだと思うんですが、めっちゃ事故案件みたいになってて面白かったです。そりゃあみんな困りますよね。
 全体を通して、何も分かっていないしず江さんとめちゃくちゃな女神によってしっちゃかめっちゃかになっていくのがとても楽しい作品だったと思います。面白かったです。

4-08 王の理想、少女の希望

 面白かったです。彼女は両親を助けられるんでしょうか。
 あらすじ時点では事態が分かっていませんでしたが、脳に埋め込んだチップか何かによってAIに支配されている島を舞台にしているわけですね。おそらくは幼少期の抵抗できない段階で埋め込まれるんでしょうね……とはいえ、AIの目指している完全な秩序っていうのは何なんでしょうね。ディストピアを作りたいんだとは想像できますが、動機のあたりにも色々とドラマがありそうな気がしています。
 ハックの存在も色々と気になりますね。相棒っていうのはどんな存在なのか。この島で何をしようとしているのか。今はまだAI支配の影響を受けている主人公ですが、刷り込まれたそれをどのように脱却していくのか。おそらくは完全な味方というわけではなく、彼にも目的があって行動しているんだと思いますが、それでも人間としては「いい人」そうですからね。どんな風に物語が転がっていくのか楽しみになります。
 どうやら完全な支配というわけではない(両親が主人公を庇っていた、ということは自由意志での行動はできる)ことから、具体的にどんな形式で支配された島なのかが色々と気になるところです。

4-09 幻の「満漢全席」完全再現を目指します!

 満漢全席かぁ。いやー、夢がありますよね。
 本文を読むまでは、中華風なのかなぁという想像もしていたんですよ。満漢全席って満州族と漢族の料理の美味しいやつを全部並べて宴じゃってする印象が強いのですが、エルナの名前からすると洋風じゃないですか。なので、けっこう長旅をして中華風の国を渡り歩いたりするのかなぁという想像をしていました。が、たぶん本作におけるアルヴェイン国はそんな中華っぽさはないので、もうちょっと概念的に豪華な料理が並んでいる感じと捉えるのがいいですかね。
 楽しい本文とは裏腹に情勢はけっこうシビアで、おそらくはノラディア国は帝国主義らしき動きをしている感じですよね。本作の大筋とは関係ありませんが、これは満漢全席で接待したからといって諦めてくれる感じじゃないと思うんですよね。いちゃもんをつけたり別の要求をしたりして、結局攻めてこようとしてくるんじゃないかなと思っています。エルナたちの旅の中で、どこまでそういうある種の戦記的な要素まで取り扱うかも気になるところです。なんか暴動が起きかけているあたり、何かしら波乱がありそうな気がするんですよね。最終的にキリオス国を救う話になるかなーと。
 メイン三人の構図も好きなやつなので、面白いファンタジー料理を中心にして色々な物語が展開されていくといいなと思っています。面白かったです。

4-10 コックローチ飛岩さん

 可愛い! ゴキブリなのに可愛い話でしたねぇ。
 私も実はゴキブリの出ている話を書いたことがあるんですが、その時もらった感想によると人によっては読むのも辛いみたいですね。読者をめっちゃ選ぶというか、時代が追いつくのを待つしかないのかもしれません。
 それはそれとして、青春舞台の可愛い話だったなぁと思います。引きこもりだった自分を復学させてくれたライラ氏。友だちになりたいけど、どうしたらいいか分からない。そういう純粋な感情が可愛いなと思います。そして、絵面としてはゴキブリなのにめちゃくちゃコミュニケーション成立していて仲よさげな雰囲気なのがすごくいいなぁと思いました。
 本来だったらゴキブリと仲良くなろうとは思わないと思うんですが、そこは等子ちゃんの独特な感性って部分でもあると思います。さすがに頬にぶつかってきて肩に乗られたら悲鳴の一つも上げるんじゃないかなぁと思うんですが、等子ちゃんはコミュニケーションにおいては臆病なのに変なとこ肝が座ってるのがほんといいですよね。本当にライラ氏=カブリさんなのかはまだ分かりませんが、そうっぽい感じはしますからね。今後の展開が楽しみだなぁと思っています。

4-11 売れない地下アイドルグループ、運営資金を稼ぐために超能力で探偵やります!

 わー、仲よさげで面白かったですね。
 人数的には多かったものの、ちゃんと書き分けもされていて楽しく読めました。グループでの能力ものという設定もしっかり活きていて、それぞれ単体では微妙な能力を使って協力して仕事にあたるのがいいですよね。これがあまり強すぎると今度は異能バトルのようなものが始まってしまうので、このくらいが良い塩梅かと。正直、アイドルとしての成功はちょっと微妙かなぁなんて思ってしまいますが、探偵としては色々と面白い活躍を見せてくれそうな気がします。
 最初の依頼の人探しは、なんと二人しかいないファンの片割れ。差し出すだけで三百万という美味しい仕事を引き受けてしまうわけですが……あからさまに怪しいですからね。メタ的な視点で見るなら、ファンを売って金を得るアイドルって構図にはしないと思うので、何かしら彼にまつわる問題を解決するんじゃないかなぁと思います。
 この後でどんな展開になっていくのかは分かりませんが、できるなら、みんなずっとワチャワチャと仲良くやっていってくれるといいなと思います。

4-12 アリス、甘やかに微睡いて。

 最初から人間が滅亡してるのは面白いですよね。
 たぶん本作の世界では、人間と亜人の間に子どもは生まれないんでしょうね。そうでなければ、アリスたちの扱いはまた違ったものになっていたと思いますから。そして、エルフは長命ですが人間はおそらく短命なんでしょうね。ファンタジーが舞台ですが、けっこうSFチックでシビアな設定のお話だなと思っています。
 アリスが魔女の娘だということは……人間を滅ぼすくらいの力を持った魔女ですから、何かしら仕掛けをしていそうですよね。この世界でのアリスの価値を考えたら買い手は付きそうなものですが、白いアリスがどうして売れないのか、みたいな謎もあります。魔女の一人娘っていうのが売れない理由なんでしょうかね。そのあたりがまだ何かあるのかなと思ってまして。
 それと、個人的にはどんな種族がいるのかも色々と気になっています。鉄造の国にはドワーフとかいるんでしょうかね。暗闇の国には魔族的なやつらもいそうな気がしますし。どんな世界観なのか、ちょっと色々と知りたくなっちゃいますよね。二人の旅がどんな風に進むのか気になるところですが、優しい結末になってくれるといいなぁと思います。

4-13 かみものゝ見世

 不思議で楽しそうな見世ですね。私も迷い込みたくなります。
 主人公はどういう存在なんでしょうね。人に近い感覚を持っていそうでもあり、でも人ではなさそうな存在の雰囲気がしますよね。浮世離れしているというか。やはり神様に近いのか、そのあたりもふんわりしているのが本作の不思議な魅力になっているのかなぁとも思います。こう、全てを明瞭に説明付けるサイエンス的な世界観の描き方ではなくて、不思議な和風世界の雰囲気を持ったまま、最初から最後までいくんですよね。怪しくも柔らかい雰囲気で、優しい中にもルールがあり、店主には名前もない。ひとことで言えない独特の世界観の作品だったなと思います。
 うろんちゃんは可愛いですよね。私も遭遇したことあります。こういう妖怪じみた存在が飼われているのも面白いですよね。作中ではまさにこの世界を象徴するような不思議な猫ちゃんだったなと思います。それに、それぞれの見世が自分の趣味を反映しているのも面白い要素ですよね。そんな中、迷い込んだ彼はどうなってしまうんでしょうね。彼もここの一員になるのか、それともお客さんとして一時の不思議な体験をするに留まるのか。色々な展開がありそうで楽しみになりました。
 こういう読み味の作品を書けるのすごいなぁと憧れます。私にはなかなか書けない種類の作品で、作者様の筆が光っていたなと思いました。とてもおもしろかったです。

4-14 ただの羊は人間社会を夢見る

 面白かったです。この設定は良かったなぁと思います。
 私はSFが好きなのでどうしてもそういう見方をしてしまうんですが、これ宇宙人にでも改造されたんじゃないかなぁってちょっと思いながら読んでいました。たぶん、どっかのめっちゃ技術が進んだ惑星の小学生による自由研究か何かで、人化して喋る羊を放り込んだらどうなるか観察してるんじゃないかなぁと思ってます。
 それともかく、羊を通報する太郎って絵面がとても愉快でした。それぞれキャラが分かりやすく立っていて、楽しんで読めたなと思います。普通は化け物に出会ったら人間のほうが腰を抜かすと思うんですが、駆除に怯える羊/畝を壊されてキレる太郎って構図が面白いなと思って読んでいました。
 あらすじによるとこの後は保護していたところを保健所職員がSNSに乗せてバズるってことになるんですが、この感じだと彼はバズること自体をあまり前向きに捉えないような気がするんですよね。面倒事を起こしやがって今度こそ処分してやるみたいな雰囲気になっていくんじゃないかなと想像しちゃいます。さて、羊はどうなってしまうのか。楽しみですね。

4-15 【寝押しの子】

 すごい、ツッコミどころの嵐でしたね。
 寝押しって本作を読むまで分かってなかったんですが、服の皺なんかを伸ばすために布団の下とかに入れて寝ることなんですね。ほええ。語彙が一つ増えました。そうだったのか……そして、なんか分からないんですが寝押しが重要な要素になっているファンタジー和風世界。時代背景は考えるだけ無駄。考えるな感じろっていう作品でしたね。怒涛でした。
 私はもう読みながらツッコミが追いつかなくてひたすら笑っていたんですが、ワードがちょいちょいコミカルなところから、時代観が行方不明になるやり取り、唐突なファンタジー展開なんかがどれも面白かったです。コメディとしてハイレベルで、あの手この手でおかしさを打ち出していました。気合いを入れて勉強させていただきたいと思います。楽しい作品でしたね。
 あまり続きを想像する感じではなかったというか、一話で全力で面白さを出してきたので満足するまで味わえたなと思っています。新聞のフレーズがいい感じにオチっぽくなっていて、収まりが良かったです。楽しませていただきありがとうございました。

4-16 ファンタジー・パンク 消えた魔王と砂漠の都市

 ほほう、これは面白いですね。
 あらすじからはパンクさは読み取れなかったのですが、おそらくは石化が解けたのはかなり未来の世界なんだろうなと思います。ここからはまだ描写されていないので推測に過ぎませんが、時代が進みすぎて今のこの場所はディストピアみたいな状態になっているんじゃないかと思ってまして。どういう経緯でそうなったのかは分かりませんが、かなりの時間を跳躍することになったんだろうなと。なので、勇者たちは自分たちの正義観に基づいてこの世界の支配体制に反抗していく――っていうのが「ファンタジー・パンク」という字面から想像したストーリーラインだと思っています。
 彼らの価値観は、やはり過去で止まっている様子ですからね。今は世界観とミスマッチですが、これからどうなっていくのか。もはや異世界に来たって言われても納得するくらい様変わりしている世界ですからね。この世界の人と接して何がどう変わるのか、やはり勇者一行としては考えが相容れない部分は絶対にあると思いますし、そういった時代による価値観の差みたいなものも読めると楽しそうだなぁと想像しています。
 石化から戻った勇者たちがどんな風にパンクをするのか。ぜひ楽しみにしたいと思います。

4-17 俺は『氷漬けの魔女』

 謎が多いですね。これはどんな真実が待ってるのか予想しきれません。
 マコイラの氷像は、氷の魔女である彼女が自分を模して作ったってことなんでしょうかね。そして何かから逃げるように出ていく。実際に彼女たち家族を追っている存在がいるんでしょう。そんな中、まさかのシューセンが『氷漬けの魔女』だったという。これはどういうことなんでしょうか。
 シューセンの一人称はたぶん大事な要素なはずだと思うんですが、二行目では「俺」になっていてその後は「僕」になり、最後に手紙の内容を受けて「俺」に切り替わる。このあたりの揺れ動く一人称がどういう意味を持っているのか、私は類推できてなかったんですよね。
 それと氷漬けの魔女っていうのは、存在というよりも能力や資質を指しているんでしょうかね。十歳の頃の『氷の魔女に?』『違う、氷漬けの魔女!』のやりとりはおそらく、シューセンは『氷の魔女に(殺されたら)?』と聞いたのに、マコイラは『氷漬けの魔女(にお手紙を書くの)!』という意味で答えているように見えました。
 さて、真実が何一つわからない状態ですが、これからどんな風に物語が展開していくんでしょうかね。マコイラの事情が明らかになるのはもうちょっと先なのかも知れません。おもしろい話でした。

4-18 裏催眠アプリが世界中で流行ってから、早二十二年

 いいですねぇ、催眠アプリを起点にした能力もの。
 催眠アプリそのものはR18界隈でよく使われる設定だと思いますが、本作はそこを背景に持ちつつも、それとはまったく異なる路線の雰囲気の作品ですよね。主人公の身の回りの様子からかなりシビアな現実を突きつけられているのが分かりますし、そりゃあ法整備もされると思います。
 そんな中、どういうわけかアプリを使わずに催眠能力を持つ子たちが現れる。SF的に勝手に妄想するなら、かつて催眠アプリを広めたのは地球外の何かの存在だったりして、アプリを使って好き勝手に種をばらまいていたやつの遺伝子に乗って能力を持った子どもたちが生まれるようになった――みたいな背景かなぁと想像しています。死んでしまったヒラ姉は少なくとも催眠能力によって死んだのだと思いますし、もしかすると彼女も能力者だったのかもしれません。謎の女を「ヒラ姉に似ている」と思ったのは、催眠により認知を歪められていた説もありますが、能力者の匂いを感じたのもあるのかなぁと。そこのところは、きっと続きの中で明かされていくんでしょう。
 妹分の遙花ちゃんも何かしらありそうですし、主人公にとっては胃の痛い展開が続くんじゃないかなぁと思っています。催眠能力者が社会的に排除対象となっている舞台ですから、生き残りも大変ですしね。ドキドキワクワクの作品でした。ぜひ続きも読みたいなと思っていますので、連載の希望を出しておきます。

4-19 呪、承ります

 いいですねぇ、呪いを処分してくれる怪しい店。
 香織の追い詰められた状況が伝わってくるようですね。倒れた叔父さんや母親。水子の霊に取り憑かれたこけし。恐ろしい思いをして、縋るような気持ちで都市伝説を試してみたのだと思います。おそらくはこれで、彼女の問題は解決したのかなと思うので、それは良かったなと思います。
 私が気になったのは、店主の「ソレの本来の主は叔父さんじゃないし、巻き添えのお母さんでもない。ソレ、引き受けてもいいぞ」という言葉ですね。これは、こけしの本来の呪う相手が叔父さんだったら事態を放置していただろうとも聞こえますからね。このこけしを受け取った後、こけしに込められた負の想念を正しい復讐相手に向けるような話になっていくのかなと想像しているんですよね……つまりは、このこけしを作るに至った原因となる男なり女なりが今ものうのうと生きているんじゃないか、と思いました。最後の怪しい笑いのようなものも、そういうこの後の展開を暗示しているような気がしたんですよね。気のせいかも知れませんが。
 水子っていうのはホラーでもよく使われることがあり、色々な側面を持っていると思っていますが、私は基本的には優しい概念だなと思っていまして。時代や場所が変われば、生まれてくることのできなかった子を偲ぶことすら許されなかったり、責められたりもしますからね。本作の第二話以降がどうなるかは分かりませんが、この件に関わる様々な人の感情の柔らかい部分なんかをケアしてあげるような話になっていくと嬉しいなと個人的には思っています。面白かったです。

4-20 ひそかに世界の危機ですが、みんなの力で激ヤバダンジョンなど攻略してやりますわ

 面白かったです。あらすじの想像より世界観がしっかりしてましたね。
 天恵っていうのはみんなが持っているのか、特別な人が授かるのかってあたりが気になるところです。今のところ出ているのは、国王の魂縛、妹の絶対予知、顔を隠した男の自動修復(名前は不明)ですかね。それで効果としては、魂縛と自動修復があれば理屈の上では無敵ってことになるので、彼はおそらくティルナノクの救世主になるんじゃないかなぁと思います。とはいえ罠なんかにかかったりすると、絶対に死ねないまま苦しみを味わい続けるっていう悲しい事態に陥ったりもするんでしょうけどね。
 ティルナノクだけでなくアヤート国も激ヤバってことで、物語の大きな山がいくつかあるのが示されています。まずは自分のところのダンジョンを安定させるのが大前提として。そちらを落ち着かせたら、他国まで手を広げて世界を救っていく話になるんでしょうか。雰囲気は軽く進んでいきますが、実はけっこう人類の危機みたいな状況にも見えますよね。
 ブレイズは大国のようですが、そちらの国同士の関係も場合によってはなかなか難しいものになるかと思います。いろいろときな臭い感じになるんじゃないかなぁと想像して、楽しみになってます。

4-21 チクチクぬいばり

 怖い怖い。どうしてこんなに怖いんでしょうね。恐ろしい。
 本作はなんとなく、ホラーノベルゲームをやっているような感覚で読んでしまいました。語り口からそんな印象を受けたんですよね。理由は定かじゃないんですが、どうしてこんな恐ろしい空気を出せるのか。これは同じプロットで私が書いても、ここまで怖くは書けないなぁと思います。
 まず最初に目を引いたのは「あなたのおよめさん」ですよね。意味深。そして、一体何を縫っているのか分からないから怖い。布を探しに行くっていうのは、何かを縫うのを目的にしているんじゃなくて、縫うことをのものが目的のような気がするんですよ。そして、灰色の森(なんで)で泣いている小さな人形(意味深)を見つける。本当に人形か……? さらには兵隊の人形がやって来て(なんで)、自分の布を分けてくれて(意味深)、ほしいぶんだけ取ってって(怖い)、持ってった布(布?)を自分の身体に縫い付けて(怖い)、針が刺さって痛いけど我慢してたら(怖い)、新しい私が完成したよ(怖い)って、改めて振り返ると怖いとこしかないお話でしたね。優しい言葉でぼかして書いてあるのであれですけど、怖い怖い。
 さらには主人公がループしてるのが怖い。なんか絶対ろくでもないものに巻き込まれてるじゃないですか。顔も知らぬ人の口内で咀嚼され、ネチャネチャとした粘性と水気を伴うガムが身体についたような感覚……食べられて咀嚼されてるからループしてるような感じなんでしょうか。いやぁ、恐ろしい話でしたね。どうやったらこんな怖いの書けるんでしょうか。とても面白かったです。怖いなぁ。

4-22 岐阜城花嫁殺人事件 

 ほほう、これはまた奇抜な事件ですね。
 被害者の姿が特徴的で、ウェディングドレスを着て切り離された首を膝上に抱えていると。しかも血抜きまでされている状態。妊娠していた可能性ありで、謎の動画が残されている。女性らしき撮影者の右手には指輪。いろいろと材料は提示されているように思いますが、真相に迫るにはまだまだ情報が足りない状態ってところでしょうか。猟奇的なインパクトがありつつも、謎が多くばらまかれている状態ですよね。
 そして、事件を追うバディがまたいい感じの二人です。何やら幽霊らしきものを見れるらしい上さんと、有能そうな咲。同僚として気安い雰囲気もありつつ、しっかりと刑事としての仕事に取り組んでますからね。これは良いバディだなと思います。オカルト要素が事件解決にどう絡んでくるのかも楽しみなところです。謎の少年は何者なんでしょうか。
 突飛な要素もありますが、どちらかというと本格ミステリに近いような形で推理を楽しませてくれる作品になっていきそうだなと思っています。次話あたりからは容疑者も出てくるんでしょうかね。面白かったです。

4-23 タイムパクリックス・ゴーストライター

 なるほど。私としては、この主人公には他の小説投稿サイトという選択肢を視野に入れて活動するのが建設的かなぁと思いました。
 まず初めに、人間は自分の好みじゃないものに対しては解像度が低くなるというのが世の常だと思います。本作でも描写されている通り、「自分の好みじゃないものが流行り始めると、目の前に並ぶものを"全部同じじゃん"と批判したくなる」というのは、どの創作分野でもよくある流れだと思っています。主人公が作中で苦々しく語っている「なろう系とひとまとめにして馬鹿にする」人々と、「女性向けとひとまとめにして馬鹿にする」主人公は、つまりは完全に同類だという構図を意図的に提示してくれていますよね。
 世の中の流れというのは常に変化するものですから、なろうの掲載作品が自分の好みとは外れてしまったのを嘆くのは仕方のないことです。ただ、今はなろう一強という時代でもありません。他もけっこう盛り上がってますからね。投稿サイトを選ぶ上で「現在のなろうは女性向けが強い」と分析をして、「より自分の好みに近い場所へと軸足を移す」と決断するのが現実的な解決策だろうなと思っています。それか公募で戦うか、でしょうか。
 しかしここで、本作の主人公は「今の流行は間違っている! 俺の好みに合わせろ!」と主張した上で、やることが「過去に戻って人気作をパクろう」ですから、まぁ読者としては素直に「ダサい」という印象になるわけです。これは読者に対しては意図的にヘイトの溜まる造形にした主人公だと思いますので、作品の流れとしては今の甘い考えでは上手くいかずに痛い目をみる→改心してからが本番、という作品になると予想してます。
 ちなみに似たようなコンセプトの作品で、まさに作中で名前の上がっている『無職転生』の孫の手先生が書いた『小説投稿サイトでランキング一位を取らないと出られない部屋(https://ncode.syosetu.com/n1077eb/)』という作品をオススメしておきます。八年くらい前の作品ですね。こちらは一位を取らないとループを抜け出せないという極限状態で主人公が小説を書いていく話になっています。パクリなどのテーマについても考えさせられ、読後感もすごく良い作品になりますので、ぜひご参考までに。

4-24 歓喜の波が吹く土地で

 独特の世界観の作品でしたね。
 今のところ、まだ設定をぼかしている部分が多いなという印象です。希望と絶望の感情を込めて弾を打ち、戦う相手は「風」である。というのはなんとなく分かったんですが、希望弾や絶望弾というのはどういう技術なのか(あるいは魔法的な何かなのか)といったところが気になるところです。歓喜の波というのも謎が多いですし、そもそも風に向かって弾を撃ってかき消していくというのが独特で、防衛に失敗するとどうなるのか……物理的にではなく精神的に死に至らしめるっぽいですが。どんなレベルなんですかね。戦闘方法が「弾」が適切なのかなという部分も気になるので、こういったところも歴史的経緯も踏まえて明かされていくのかなと想像しています。
 主人公のキョウはかつて希望弾の使い手でしたが、少女を助けられなかったことで使えなくなってしまった。感情がもろに戦力に反映される世界観ですから、これは痛いですよね。おそらくは前線の戦士が絶望に苛まれないよう組織的な試みなんかもしているだろうなと想像していて、人類の存亡がかかっていれば危ない薬なんかを投与されてもおかしくないと思うのですが、そういう感じでもなさそうです。
 そして件の少女が歓喜の風の発生源になってしまっている。怪しい事態になってきましたね。この先どうなるんだろうな……キョウがまた希望弾を使えるようになる、というのが本作の一つの山場になると思うので、それまでの流れを色々と妄想してしまいました。面白かったです。

4-25 冷徹無慈悲な暴君陛下へ、アナタに愛を教えて差し上げますわ!

 これが本作の正しい楽しみ方なのかは分からないんですが、私は読みながら脳内に皇帝の副音声が響いてました。皇帝さん頑張ってくれ……!
 いやぁ……まずね。大前提として、アレクシアスさんめっちゃいい人じゃないですか。敗戦国から人質として送られてきた王女を「皇后」にするなんてめっちゃ手厚すぎますし、その上で彼女の気持ちに配慮して手を出さないだとかね。初手でカレンシアを思いやる発言をして。彼女が何をやらかしても、どうにか穏便に場を収めようと心を殺して冷静に対処して。正直、めっちゃ善人の苦労人にしか見えなかったんですよね。なので、私はアレクシアスさんの悲痛な心の声を想像しながらずっと応援していました。頑張って!!!!!
 えーっとまず、戦争に関するカレンシアの意見ですが。あれは一面的には間違っていないものの、ちょっと理想論がすぎると思ってます。しかも、多くの人が集まっている場で軍事的判断の詳細なんて語れるはずがないんですよね、なにせ普通に考えて国の重要機密ですから。数字としてどれくらい国庫を圧迫していたのかとか、裏切りや何からかの明かせない事情があったとか、政治的な判断には相応の理由があるはずで、しかもカレンシアにそれを語る道理もないですからね。本来なら「お前の知るべきことじゃない」とピシャリと断ってもいいところを、アレクシアスさんは穏便に着地させようと彼女と会話をするわけです。めっちゃいい人。あんた優しいよ。民の命を自分の所有物として大事にしていたり、死を命じても構わないと?→愚問だなの返答、そしてカレンシアの立ち回りのマズさを心配する言葉。皇帝という立場上問題にならないレベルで最大限の優しさを発揮してます。すごい。
 そうして、自分が泥をかぶるような印象付けをしつつ、どうにか彼女に対する周囲の印象を和らげつつ着地させようと言葉巧みに頑張っていたら――ビンタですよ。カレンシアは「自分が正しい」という考えを崩さず、これまでろくに関係性も築けていない初対面の皇帝にビンタをかますわけです。これは絶対にまずい。普通に殺されます。が……アレクシアスさんは優しいから、キレないんですよ。むしろ困惑して無言になってる。この後どうしたらいいのかめちゃくちゃ考えてると思うと、泣けてきますよね。
 だって、彼女の出自はオーシス王国の王女で、人質です。それなのにビンタをしたわけですから。言葉での説得と物理的な暴力では全く意味が変わってしまいます。カレンシアは自分の命だけを賭けているつもりでしょうが、そんな甘い話ではないですよね。普通にオーシス王国滅亡の危機です。
 仮にアレクシアスさんが何もしなければどうなるかというのを想像すると、めちゃくちゃ恐ろしいんですよね。おそらくは、和平を結んだ(戦に負けたとあるので、おそらくは実質的に属国になった)オーシス王国への政治的な報復がこの後に行われる流れになるでしょう。少なくとも現状で、皇帝が何もしなければ配下はそのように動くつもりのはずです。というのも立場上、彼女はオーシス王国を背負っているので、つまり王国が帝国に差し出した人質であると同時に、彼女にとってはオーシス王国が自由を奪う足枷である必要がありますから。属国の民はただでさえ財産を搾り取られているところに、王女の振る舞いによってさらなる苦境に追い込まれ、わりと大惨事になるんじゃないかなぁと想像してます。下手をすると、オーシス王国にいる家族の首が贈り物として彼女のもとに届くことすら考えられます。
 せめて二人きりの場面で頬を張るならまだしも、公衆の面前で皇帝に説教する場面を「見世物」にしてしまいましたからね。これを皇帝側が許すロジックは今のところ浮かばないです。それと、そういう激しい性格の皇后だという話が広がってしまえば、語っている内容の是非ではなく、配下はパワハラや巻き添えを恐れて彼女に近寄らなくなる……というのを、放置するアレクシアスさんではありませんからね!!!!!
 アレクシアスさんがどう対処するのかは、あらすじからなんとなく推測できます。事実がどうかはともかく、彼はカレンシアやオーシス王国を守るために「気が強く慈愛に溢れたカレンシア」というストーリーに持って行くためにめっちゃ頑張るんだと思うんですよね。だってアレクシアスさんが頑張らないと、カレンシアに対する配下からの印象も最悪ですし、彼女やオーシス国にはガチの破滅が待ってますから。いやでも……このカレンシアの性格だと、そういうアレクシアスさんの苦労をぶっ千切って色々とやらかしそうなんですよね……苦労人気質がめっちゃにじみ出ていますが、どうか彼には頑張ってほしいです。めちゃくちゃ応援したくなります……!!!

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