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時間を掛けて、吟味する場を

父の形見の時計が少しずつ早くなってきている。
何度時間を調整しても、時計の針がどうしても早く進んでしまう。

自動巻きの時計は、何年かに一度オーバーホールをしなきゃいけない。
時計を分解して、正確に時を刻めるように職人が修理をする。
電池式の時計が主流の昨今だが、永く使うためのこの工程が結構好きで。
お金はかかるんだけど笑

時計の仕事は、正しく時を刻む事にある。もちろんデザイン性もあるけど、正確に時を刻めないと、それは時計とは言えない。

人間も同様にシンプルに生きれたらいいのにと思う時がある。

でも、単純化できないからこそ、生きるのは面白い。

VUCAの時代と呼ばれるくらい、僕らは答えがない時代を生き抜こうとしている。
この先どんなことが待っているか、誰も分からない。
正解が分からないからこそ、不安になるのも無理はない。

こんな時代だから、マウントを取ろうとする奴がたくさん出てくる。
人の意見を真っ向から否定したり、自分の意見を押し通して、絶対性を主張する。
大事なのは論破することじゃなくて、お互いが納得する現時点での答えを見つけて行くことなのに。

複雑になればなるほど、シンプルに生きようとしてしまう。
シンプルな正解が欲しくなってしまう。
そうしないと、とても不安だから。ついすがってしまう。

ドイツ語でクリティーク(Kritik)という言葉がある。
これは日本語に訳すと「批判する」という言葉が当てられる。
しかし、日本における批判は、マイナスな表現となる。否定する、非難するとかそんな風に捉えられてしまう。

哲学が大事にしてきた「批判」は全く違うらしい。
「否定する」ではなく、「吟味すること」。冷静に、問題がどこにあるかを分解して考えてみる。違う見方をしてみる。
もうお分かりだと思うが、「否定すること」と「吟味すること」は意味合いが全然違うと思う。それくらい、解釈の違いは怖いということを思い知らされる。

最近読んで感動したnoteの記事をご紹介したい。

小説を紹介しながら、世の中にはびこる「普通」や「まとも」という言葉に対して問いを持ちながら、自分なりの解釈を織り交ぜて表現している。
ハッとさせられる視点が素晴らしく、優しい文面に癒される。
文章のリズムが軽快で読みやすく、親近感が湧いてくる内容だ。
とても勇気をもらった。

世の中の普通が分からない感覚と、普通でいたい感覚。
人間だから、仲間でいたいという願望は誰しもあるはず。

だからこそ思うのである。
仲間かどうかを分類をするのではなく、仲間のサークルを広げていければいいのではないかと。

そのために必要なのは、誰かを論破することではなく、時間を掛けて、吟味していく場だと思う。
じっくり考える時間があって、決して遮ったりすることは無く、じんわり暖かい、答えを求めない議論の場が。

そんな優しい歩み寄りがお互いできたら、もっと良い社会になるんじゃないかと思う今日この頃である。

今日もいい1日になりますように。
感謝を込めて。


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